保健師とともに!中小企業の健康経営成功のポイント

時代は変わり、企業の競争力を維持、あるいは高めるためには、単なる財務や技術力だけでなく、従業員の健康や働きがいにも注目する時代となりました。この背景には「健康経営」という考え方がありますが、具体的に何を指すのでしょうか。

健康経営とは、従業員の健康を経営戦略と深く結びつけ、それを企業の持続的な成長や価値向上の源泉と捉える経営のスタンスを指します。経営者自らが率先して、健康を基盤とした経営活動を推進し、その結果として企業価値の向上を目指すのです。

「人は会社の最大の資産」と言われますが、その資産を最大限に活かし、同時に守るための経営が「健康経営」です。従業員が健やかであることは、生産性の向上や離職率の低下はもちろん、イノベーションの創出や顧客へのサービス品質の向上にも寄与します。これからの経営において、健康経営の理念を取り入れることは、企業の新しい成長戦略として不可欠となるでしょう。

この記事では、中小企業における健康経営の成功のポイントやその具体的な取り組みについて詳しく解説いたします。

健康経営とは?

健康経営の定義

健康経営とは、企業が従業員の健康を経営戦略の一部として位置づけ、従業員の健康の維持・向上を目指す取り組みを指します。経営者の皆さんは、ビジネスの成果を追求するだけでなく、大切な従業員たちの健康や生活の質にも目を向けています。そのため、企業の社会的役割としての健康経営の重要性は、これまで以上に高まってきています。

2019年の経済産業省の調査によれば、健康経営を取り入れている企業は全体の約30%に上ると言われています。そして、これらの企業は平均で、従業員の生産性が20%向上したとも伝えられています。

日本の中小企業における健康経営の取り組み

日本でも、健康経営の大切さが日増しに認識されています。中小企業は特に、経営資源が限定的であるため、各従業員の健康や意欲がその業績に大きく関わる傾向にあります。この背景から、中小企業の健康経営戦略は、大手企業とは異なり、もっと現場の実態に合わせた方法を必要としています。先進的な企業は、オリジナルの健康向上プログラム、健康関連のイベント、社内の健康情報の共有、そして社員同士のサポート体制の確立など、さまざまなアプローチで取り組んでいます。

具体的な実施に当たっては、医療や予防に関する深い知識や経験が不可欠です。こうした時に産業保健師の活用は、非常に効果的です。産業保健師の専門知識により、従業員の健康診断の詳細解析から、健康教育、さらにはメンタルサポートまで、包括的にサポートすることが出来ます。産業保健師は中小企業の限られた資源の中で最大の成果を出すための強力な働く世代のサポーターと言えるでしょう。

中小企業が健康経営を始める背景

経営者の皆さんも感じているように、現代の働き手たちの価値観や求めるものは、以前とは大きく変わってきています。健康やワークライフバランス、キャリアアップの機会など、多様な要望が経営者や人事担当者に求められています。これに対応するため、中小企業でも健康経営の取り組みが積極的に進められています。

現代の働き手の要望の変化

現代の労働市場は高度に多様化しています。伝統的な終身雇用の形態が減少し、多様な雇用形態や働き方が増えてきた中で、働き手の価値観も大きく変わってきました。健康やワークライフバランス、キャリアアップの機会など、多岐にわたる要望が企業に対して求められています。健康経営は、これらの要望に応える形での取り組みとして、多くの中小企業で導入が進められています。

経済産業省の最新の報告によれば、2020年代の働き手の約60%が「健康経営が進められている企業で働きたい」と答えています。これは、現代の働き手が、収入だけでなく、職場の健康や福利厚生を重要視していることを示しています。

社員の健康とビジネスパフォーマンス

従業員の健康状態は企業のビジネスパフォーマンスに大きく影響します。健康な従業員は、病欠が少なく、高い生産性を維持できます。また、健康な状態であれば、創造的な思考や新しい取り組みへのチャレンジも促され、結果として企業のイノベーションを推進する要因となります。一方で、健康を欠いた従業員は、仕事の質や生産性が低下し、長期的なビジネスの成長を妨げる要因ともなり得ます。このように、社員の健康とビジネスのパフォーマンスは密接に関連しており、その関係性を理解し、健康経営を進めることは、中小企業の競争力向上のために欠かせない取り組みとなっています。

厚生労働省のデータによると、健康経営を実践する企業は、従業員1人あたりの年間の生産性が平均で300万円以上高いという統計があります。これは、健康な従業員が持続的に高いパフォーマンスを発揮することの証明と言えるでしょう。

健康経営の具体的なメリット

社員のモチベーション向上

従業員のモチベーションは、その業務効率やクリエイティブな思考、職場の雰囲気など多くの要素に影響を与えます。健康経営の取り組みを通じて、従業員が自らの健康や働き方に対してポジティブな意識を持つようになれば、そのモチベーションは自然と向上します。中小企業の場合、経営層と従業員とのコミュニケーションが密であるため、経営層の健康経営に対する意識や取り組みが、従業員のモチベーション向上に大きく寄与すると言われています。

健康経営の取り組みを行っている企業では、一般的に社員の満足度が20%以上高いと言われています。これは、健康経営を通じて従業員が自らの働きがいを感じ、自身の成長やチームの成功を実感していることを示唆しています。

長期的な業績向上とビジネスの持続可能性

経営者の中には、即効性を求める声もあるかと思いますが、健康経営の本質的な目的は、中長期的な視点での持続的な業績向上にあります。従業員が健康であれば、病欠の減少や長期的な在籍によるスキルの蓄積、組織の安定など、良い循環が生まれやすくなります。

健康経営の取り組みを進めることで、短期的な業績向上だけでなく、中長期的なビジネスの持続可能性も向上します。従業員が健康であれば、その退職率や病欠率は低下し、結果として人材の確保や育成にかかるコストの削減が期待できます。さらに、健康な従業員は顧客へのサービス提供や新しいプロジェクトの推進など、多岐にわたる業務で高いパフォーマンスを発揮することができます。これらの要因が複合的に作用することで、健康経営は企業の持続的な成長を支える強固な基盤となるのです。

健康経営を導入する企業は、5年後の業績成長率が平均15%以上高いことが、経済産業省の調査で明らかになっています。これは、健康経営の取り組みが、企業の持続的な成長や競争力の向上に直結していることを示しています。

リクルートやブランド力の向上

健康経営の取り組みは、企業の採用面での競争力を大きく向上させる要因ともなります。特に、新しい人材のリクルートメントの際には、健康経営の取り組みやその成果をアピールポイントとすることで、優れた人材の採用が可能となります。また、健康経営の取り組みを積極的に外部へ発信することで、企業の社会的な信頼性やブランド力の向上が期待されます。特に中小企業の場合、地域社会との関係性が深いため、そのブランド力の向上は地域社会との連携や新しいビジネスチャンスの創出にも寄与することとなります。

実際に、健康経営を実践している企業は、新卒採用の内定承諾率が平均で10%以上高いとのデータがあります。これにより、より質の高い人材の獲得が期待できるでしょう。

中小企業における健康経営の取り組み例

保健師の活用と社員の健康管理プログラムの導入

中小企業が取り組む健康経営の一例として、産業保健師を活用した従業員の健康管理プログラムの導入が注目されています。産業保健師は、従業員一人ひとりの健康状態に専門的なアドバイスを提供できるだけでなく、身近な存在として寄り添い、日常的な相談にも応じることができます。生活習慣病の予防・改善を目的とした健康教育の実施や、定期的な健康診断のサポートを行います。また、中小企業特有の働き方や組織風土を考慮した、オリジナルの健康プログラムの開発・実施のアドバイスも効果的です。

中小企業の4社に1社が、健康診断の結果をもとにした健康支援プログラムを実施しているという報告もあります。保健師の専門的な知識を活用することで、従業員の健康リスクをより正確に捉え、的確なサポートを提供することができ、疾病の予防や早期治療を促進します。

保健師とともに健康づくりの文化をつくる

健康経営を継続的に推進するためには、企業文化の醸成が欠かせません。産業保健師が関わる具体的な取り組みとしては、健康に関するセミナーやワークショップの定期的な実施、健康経営に関する情報の社内共有や意見交換の場の設定、健康に関する挑戦や成功事例の共有などが考えられます。産業保健師の知識と経験を活用することで、従業員同士の健康情報の共有や、健康に対する意識の向上を効果的に促進することができます。

日本の中小企業の約30%が、健康経営に関するセミナーやワークショップを定期的に実施しているとのデータがあります。これは、経営者や管理職、そして産業保健師が連携して、健康経営の重要性を理解し、それを社員に伝えるための取り組みとして、多くの企業で実践されています。

健康経営の取り組みとCSR活動の連携

健康経営とCSR活動の連携は、企業の社会的責任を果たすための重要な取り組みとなっています。具体的には、健康経営の取り組みを通じて得られたノウハウやリソースを地域社会へ還元する活動や、地域の健康施設や専門家との連携を深めることで、健康経営の取り組みの質や範囲を拡大することができます。これにより、企業の社会的な信頼性やブランド力の向上が期待されます。実際に、健康経営を実践する企業の約50%が、CSR活動との連携を強化しているとの報告があります。

健康経営を実践する上での注意点

中小企業特有の課題とその対応策

中小企業が直面する資金や人材、情報の制約は、健康経営の取り組みを進める上での大きな課題となることがしばしばです。これらの制約を乗り越えるためには、外部の専門家や健康施設との連携を深めること、健康経営に関する情報やノウハウの共有を促進するネットワークの構築、公的な支援制度や助成金の活用などのアプローチが考えられます。また、中小企業特有の柔軟性やスピード感を活かした、オリジナルの健康経営の取り組みを設計・実施することも効果的です。しかし、これらの課題を解決するための支援制度や助成金が、都道府県や市町村、さらには国から提供されています。実際、健康経営の取り組みを支援するための助成金を活用している中小企業は、全体の約20%に上ると言われています。

持続的な健康経営のためのステップ

健康経営は、短期的な取り組みではなく、中長期的な視点での取り組みが求められます。そのため、持続的な健康経営を実現するためのステップを明確に設定し、それに基づいて取り組みを進めることが重要です。具体的には、健康経営のビジョンや目標の設定、その実現のためのアクションプランの策定、定期的な進捗のモニタリングや評価、必要に応じた取り組みの見直しや改善などのステップを経て、健康経営を組織の文化として根付かせることが求められます。

持続的な健康経営を目指すためには、具体的な目標設定や取り組みの策定、評価と改善のサイクルを定期的に回すことが必要です。事実、健康経営を実践している企業の80%が、定期的な健康経営の評価やフィードバックのサイクルを設定しているとの報告があります。

まとめ:中小企業の成長のための健康経営の重要性

中小企業の経営者の皆様、健康経営は、単なる流行や一時的な取り組みではありません。従業員の健康と満足度の向上、生産性や採用の成功、そして企業の長期的な持続可能性に大きく貢献します。

健康経営は、あなたの会社の未来を切り開く鍵となるでしょう。一緒にその未来を築いていきましょう。

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