
「体力こそ夢を叶える力」—99%紹介で成り立つパーソナルトレーナーが語る、経営者の真の資本とは?|白金コンディショニングセンター
「健康でさえいれば、車を失っても、家を失っても、『もっといい家に住めばいいじゃないか』ぐらいのつもりで、やっていくこともできるわけです」——。
白金台にある白金コンディショニングセンター(株式会社Leaf)代表取締役の田口昌宏氏の言葉には、25年間のトレーナー人生で培われた深い洞察が込められています。99%が紹介・口コミで成り立つ驚異的なビジネスモデルを築き、「個人経営のパーソナルジムとしては相当な高額賃料」と苦笑いする港区白金台で、なぜ多くの経営者が彼のもとを訪れるのか。
その背景には、短期的成果よりも長期的な信頼関係を重視し、体力作りを通じて日本全体を元気にしたいという壮大なビジョンがありました。病弱だった少年時代の原体験から始まり、17年間の下積みを経て独立に至るまでの軌跡を通じて、真の経営者マインドとは何かを探ります。
病弱な少年時代と父の病気—人を支えることへの原点
「保育園より病院にいる時間の方が長かったくらい、本当に体が弱い子供でした」。田口氏は自身の幼少期を振り返ります。現在のたくましい体格からは想像できないほど、彼は病弱な子供でした。
転機となったのは小学校4年生の時。建築家として独立していた38歳の父が脳出血で倒れ、社会復帰が困難な状態になったのです。母親は中学校教師として働きに出ており、5歳下の弟との時間が自然と増えました。
「父の病気と母の仕事のため、弟と過ごす時間がとても多くなりました。5歳年下の弟にとって、私は兄というより父親のような存在でした」と田口氏は当時を振り返ります。この経験が、後の人生の軸となる「人を支える」という使命感の原点となりました。
高校では野球をしていた田口氏ですが、「どこにでもいるレベル」と謙遜します。しかし、自分が経験してきた野球や体力作り、怪我のケアを弟に教えることに大きな喜びを感じていました。弟は甲子園を目指す日大三高に進学し、実際に甲子園出場を果たすほどの実力をつけていきます。
「弟に野球を教えて、それが役に立って上達していくのを見るのが、本当に嬉しかった。人を支えて成長させる仕事をしたいと思ったのが、この仕事を選んだ一番のきっかけです」。
病弱だった自分が運動を通じて強くなった成功体験、そして愛する弟の成長を支えた喜び。女手ひとつで家族を支えた母の肩揉み、この三つの体験が、田口氏をスポーツトレーナーの道へと導いたのです。
17年の下積み時代—「10年かかっても夢を諦めない」という信念
専門学校を卒業後、田口氏は日本のトレーナー業界の草分け的存在である会社に就職しました。しかし、現実は厳しいものでした。
「専門学校時代に『一人前になるには10年かかる』と言われたんです。でも、そんなに時間をかけていられないと思って必死でした」。若き日の田口氏は焦りを感じながらも、必死に勉強し、チャンスを求めて努力を続けました。
しかし現実は甘くありませんでした。約10年を経てようやく、念願だったスポーツ選手やスポーツチームを担当する仕事に就けるようになったのです。「やはり10年かかってしまったな、というのが一番率直な気持ち」と田口氏は振り返ります。
「仕事をしてるのか、趣味をしてるのかもうわからない。いい意味で公私混同という感じで一生懸命だった」と語るように、スポーツ選手と共に汗を流す日々は、まさに夢を叶えた充実感で満たされていました。
しかし新たな課題が浮上します。経済的な問題でした。「会社員のままでは収入に限界があり、結婚して家族を養うのは難しいという現実に直面しました」と振り返ります。
「好きな仕事をしながら、家族を持って、できればマイカーやマイホームといったものが持てるようになりたい」。どこにでもある普通の夢でしたが、当時の田口氏にとっては大きな挑戦でした。

独立の決断—好きなことで家族を養うという新たな夢
独立への決断を後押ししたのは、建築家だった父の存在でした。「父も独立して会社を経営していた。その背中を見ていたので、いつかは自分も独立したいという気持ちがありました」と田口氏は語ります。
また、結婚という新たなパートナーシップも大きな支えとなりました。結婚式で友人が行ったスピーチが印象的です。「田口は思い込んだら突っ走ってしまうタイプだったけど、ついに手綱を持ってコントロールしてくれる人が現れました」。
田口氏は笑いながら振り返ります。「暴走してる馬からすれば、自分が暴走してるつもりはないんですよ。でも自分のことはわかってないんだなということを、結婚してすごく感じる機会が増えました」。
妻のアドバイスが功を奏したエピソードもあります。法人向けサービスの企画で、昔の「24時間働く」といったガッツあふれる提案を考えていた田口氏。それを見た妻から「少し熱くなりすぎかも」と冷静に指摘されたのです。
「大切な経営判断をするときは、必ず妻に相談するんです。自分では気づかない視点をもらえるので、とても頼りにしています」。パートナーとしての妻の存在が、事業運営において欠かせないブレーキ役となっているのです。
白金という立地選択—高額賃料に込めた覚悟と信念
独立にあたって田口氏が選んだのは、港区白金台という都内でも屈指の高級住宅地でした。「個人トレーナーの事務所としては、日本一高い賃料かもしれません」と田口氏自身が苦笑いするほどの立地です。
この選択には深い理由がありました。前職の会社がちょうど御殿山の店舗を閉める時期と重なり、経営者から「今のお客様が通いやすい場所で独立してはどうか」と提案されたのです。「本来なら競合として、お客様の取り合いになってしまうところを、会社の方から背中を押していただけたんです」。
しかし、高額な賃料への挑戦には明確な考えがありました。「お客様に『ここなら安心して通える』と思ってもらうためには、技術だけでなく、環境も大切だと考えたんです」。
「正直、無謀だったかもしれません」と田口氏は笑いながら振り返ります。「住宅ローンより高い賃料ですが、結果的にはお客様に選んでいただけているので、正しい判断だったと思います」。

99%紹介で成り立つビジネス—信頼関係構築の極意
田口氏のビジネスモデルで最も特筆すべきは、99%が紹介・口コミで成り立っているという点です。これは単に広告費を削減するためではなく、信念に基づいた戦略でした。
「信頼関係こそが商売の基本だと考えているんです。資金も知名度もない個人が事業を成功させるには、専門家として、そして人として信頼していただくしかありませんでした」。
特徴的なのは、従来の治療院とは違うアプローチを確立したことです。「一般的な治療院は『治ったら終わり』で、また痛くなったら来てくださいというスタイル。でもそれって、本当にお客様のためになっているのかと疑問に思ったんです」。
田口氏のアプローチは全く違います。「痛みを治すだけでなく、『今度は痛くならない体を作りましょう』と提案するんです。体力を向上させることで問題を予防し、さらに新しいことにもチャレンジできるようになります」。
お客様との関係性も一般的なパーソナルトレーニングとは異なります。「2〜3ヶ月で終了ではなく、信頼関係が築けたら一生お付き合いしていくつもりです。お客様の人生に寄り添い続ける、これが本当の意味でのパーソナルなサービスだと思います」。
信頼の秘訣について田口氏は語ります。「お客様は自分の体であってもよく理解できているわけではありません。気づいていない体の特性や魅力に気づいていただくことが重要です」。
経営者が集まる理由—「体が資本」を最も理解する人たち
なぜ田口氏のもとには経営者が集まるのでしょうか。それは意図的な戦略でもあり、自然な流れでもあったといいます。
「本来は誰をお客様にしても構わないと思っていました。ただ、『健康が一番大切』ということを真っ先に理解してくれるのは、アスリート以外では経営者なんです」。
実際に経営者の方々と話をすると、「『この先何が一番大切ですか?』と聞くと、ほぼ全員が『健康』と答えます」と田口氏は語ります。
もちろん、ビジネス戦略の面もあります。「1時間3000円の料金設定だと、1日に相当な人数を見なければなりません。ある程度の単価設定は必要だと思います」。
しかし、それ以上に深い理由があります。「『体が資本ですよね』『あなたが倒れたら会社はどうなりますか』といった話が、最も響くのが経営者でした。私の考え方を一番理解してくれるのも経営者なんです」。
田口氏自身の経営経験も説得力を与えています。「健康でさえいれば、どんな失敗も立て直せます。でも体調を崩してしまったら、気力も出ませんし、復活するのは難しいでしょう」。
「『健康は全てではないが、健康を失うと全てを失う』という言葉がありますが、この言葉を本当の意味で理解できるのは経営者だと思います」と田口氏は力を込めて語ります。

次世代への伝承—トレーナー養成事業に込める想い
現在、田口氏が最も力を入れているのがトレーナー養成事業です。これは単なる事業拡大ではなく、かつての自分と同じ悩みを持つ人たちへの恩返しでもあります。
「昔の私のように、好きなトレーナーの仕事で人を助けたい、でも結婚もして家族も養いたい。そんな夢を持つ人たちを応援したいんです。自分も家族もお客様も、みんなが幸せになれる働き方を伝えたい」。
教える内容は技術だけではありません。「技術はもちろんですが、どうすれば家族を養えるだけの収入が得られるのか、そのノウハウも含めて指導していきます。真面目に取り組んで、この仕事を通じて日本を元気にできる人材を育てたいんです」。
これは技術と経営の両方を教えるということです。「やはり『稼ぐ』ことは避けて通れません。治療技術に加えて、企業向けサービスの獲得方法なども含めて、総合的にサポートしていきます」。
そこには壮大な夢が込められています。「最終的には日本全体を元気にしたいんです。まず体の痛みで困っている人に『体力って大切ですよ』と伝える。そこから健康への意識を広げていく」。
「私一人でできることには限界があります。でも同じ志を持つトレーナーを育てることで、日本中に健康の大切さを広めることができると思います」と田口氏は将来を見据えます。
現在は一人での運営ですが、将来への構想は明確です。「過去の私のような立場の人たちに寄り添い、一緒に成長していくつもりです」。
まとめ:信頼関係を軸とした持続可能な経営哲学
田口昌宏氏の歩みを振り返ると、そこには一貫した哲学があります。病弱だった少年時代の原体験から始まり、17年間の下積み期間を経て独立し、99%紹介という驚異的なビジネスモデルを構築するまでの軌跡は、短期的成果よりも長期的な信頼関係を重視する経営哲学の実践そのものでした。
特に印象的なのは、「体力こそ夢を叶える力」という信念です。これは単なるトレーニング理論ではなく、人生哲学として一貫して貫かれています。経営者という最も「体が資本」であることを理解する人たちに支持される理由も、この本質的な価値観の共有にあるのでしょう。
また、家族への愛情と仕事への情熱を両立させている姿は、多くの経営者にとって共感できる等身大のストーリーです。妻という最強のパートナーとの関係性や、次世代のトレーナー育成への想いからは、個人の成功にとどまらず、業界全体、そして日本社会全体への貢献という視点の広がりが感じられます。
「健康でさえいれば何とかなる」という田口氏の言葉は、単純でありながら深い真理を含んでいます。短期的成果を求める時代だからこそ、長期的な信頼関係と本質的価値提供が最強の差別化になる—。田口氏の経営哲学は、すべての経営者にとって示唆に富む学びを与えてくれる貴重な事例と言えるでしょう。

プロフィール
株式会社Leaf 代表取締役
白金コンディショニングセンター 代表
田口昌宏(たぐち・まさひろ)
スポーツトレーナー、フィジカルコンサルタント。柔道整復師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。専門学校卒業後、株式会社スポーツプログラムス(現・株式会社フィットネスアポロ)で17年間、体育系専門学校の講師、スポーツクラブのトレーナーコンサルタントなどに従事。2015年に独立し、東京都港区白金台に白金コンディショニングセンター(SCC)を設立。
現在はSCCを拠点に4つの事業を展開している。
【事業内容】
- パーソナルコンディショニング事業:店舗での体力づくり及び体のメンテナンス
- チームサポート事業:相撲部屋の力士、高校バドミントン部、ジュニアサッカーチームなどの体力づくりや試合帯同。過去には実業団、大学、高校、クラブチームをサポート
- 法人向け健康経営事業:企業に対してオンラインでの運動プログラムを福利厚生として提供。業績を高めるための体づくりをサポート
- トレーナー養成事業:これまでの経験と知見を後世に伝え、信頼され人との繋がりで稼げるトレーナーを養成。自分・家族・クライアントを幸せにできるトレーナー育成を目指す
「正しく動けば問題は解決できる」をモットーに、プロとしての専門力を常に探求しつつ、一人ひとりに合った最適な方法での体づくりを指導。その場で改善できる技術は「田口マジック」と呼ばれ、プロゴルファー、ロードレーサー日本代表、幕内力士、マラソンオリンピック日本代表などの有名選手を指導。
トレーナー歴25年、延べクライアント数は1000人以上、延べセッション数も2万回以上。トライアルセッションからのリピート率は90%以上。顧客の99%が紹介・口コミによるもので、予約は1ヵ月待ちの状況が続いている。
ギャラリー




























著書
会社概要
資本金 | 500 |
所在地 | 白金コンディショニングセンター 東京都港区白金台2丁目19-2芝白金ホームズ102 |
従業員数 | 3人 |
事業内容 | パーソナルトレーニング事業 チームサポート事業 法人向け健康経営 トレーナー養成事業 |
HP | https://leaf-tokyo.co.jp/ |