
【社労士監修】「見せてください」に慌てない!就業規則の閲覧方法と法的義務をわかりやすく解説
「就業規則を見せてください」
この一言に戸惑った経営者の方は少なくないでしょう。突然の閲覧要求に対してどう対応すべきか、拒否しても問題ないのか、多くの中小企業経営者が悩むポイントです。適切な対応をしないと労働基準法違反となり罰則の対象になるだけでなく、従業員との信頼関係にも影響を及ぼします。
本記事では就業規則の閲覧に関する法的義務と実務的な対応手順を解説し、コンプライアンスを守りながら効率的に管理する方法をご紹介します。これにより法的リスクを回避しつつ、従業員との良好な関係を維持できるでしょう。

“見せる義務がある”って知っていても、いざその場になると戸惑う方、多いんです。
この記事では“今さら聞けない”部分までしっかりカバーしてますよ!
目次
従業員から就業規則の閲覧を求められた際の実践的な対応手順と法定周知方法
「就業規則を見せてください」という従業員からの言葉に、どう対応すればよいのか戸惑ったことはありませんか?実は就業規則の閲覧対応は、単なる企業の好意ではなく労働基準法で定められた義務です。ここでは、従業員からの閲覧要求への適切な対応方法と、法律に準拠した3つの周知方法について解説します。正しい対応方法を知ることで、法的リスクを回避しながら、従業員との信頼関係を構築できます。中小企業の経営者として知っておくべき実践的な内容をわかりやすくお伝えします。

労働基準法が定める就業規則の周知義務と閲覧に関する法的要件
就業規則の周知義務は労働基準法第106条に明確に規定されています。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し労働基準監督署に届け出るだけでなく、従業員に周知させる義務があります。
「周知」とは単に存在を知らせるだけでなく、内容を理解できる状態にすることを意味します。労働基準法施行規則第52条の2では、具体的な周知方法として、①常時各作業場の見やすい場所への掲示・備付け、②書面での交付、③電子的方法(データでの共有)の3つが規定されています。
これらの法的要件を満たさなければ、労働基準法違反となり罰則の対象になる可能性があるだけでなく、就業規則の効力にも影響を及ぼす恐れがあります。周知義務は、すべての従業員(パートやアルバイトを含む)に対して適用されるため、雇用形態に関わらず適切な対応が求められます。
就業規則を従業員に見せない場合の法的リスクと罰則
就業規則の閲覧を拒否することには、法的リスクが伴います。まず、労働基準法第120条により「30万円以下の罰金」に処される可能性があります。ただし、この罰則は周知義務違反だけでなく、他の労働基準法違反も含む広範な規定です。また、周知されていない就業規則は裁判所で効力を否定される判例も多く、懲戒処分や労働条件の変更などの根拠として使用できなくなる恐れがあります。
具体的なリスクとして以下が挙げられます。
閲覧拒否の背景には「従業員に細かくチェックされたくない」「就業規則どおりに運用できていない部分がある」といった事情があるかもしれませんが、これらは法的リスクを正当化する理由にはなりません。むしろ就業規則を適切に周知し、必要に応じて見直すことが企業防衛につながります。
紙媒体での閲覧方法:職場への掲示・備付けの実施方法と注意点
紙媒体での周知方法として最も一般的なのが、「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける」方法です。この方法を実施する際の具体的なポイントを見ていきましょう。
掲示場所の選定では、休憩室、社員食堂、事務所入口など、従業員が日常的に目にする場所を選びます。複数の建物や階がある場合は、各フロアに備え付けることが望ましいでしょう。掲示の際は大きなファイルや専用のラックを用意し、「就業規則」と明示することで閲覧しやすくします。
注意すべき点として、常に閲覧可能な状態を維持することが重要です。ファイルが紛失したり、管理者不在で見られなかったりする状況は避けるべきです。また、就業規則が改定された場合は速やかに差し替えを行い、常に最新版を掲示する必要があります。
紙媒体での掲示は導入コストが低いメリットがありますが、更新管理の手間や紛失リスクがデメリットとして挙げられます。特に複数拠点を持つ企業では管理が煩雑になるため、他の方法と組み合わせることをお勧めします。
書面交付による閲覧対応:配布の時期と更新時の再交付義務
書面交付は、就業規則を印刷して従業員一人ひとりに直接配布する方法です。この方法のメリットは、確実に従業員の手元に届き、いつでも参照できる点にあります。
書面交付のタイミングは主に以下の2つです。
交付の際は、「就業規則受領確認書」にサインをもらうことで、後々のトラブル防止になります。また、電子メールでPDFファイルを送付する方法も、一定の条件を満たせば労働基準法上の「書面交付」に該当する可能性があります。
就業規則の改定時には再交付が必要ですが、変更箇所をハイライトしたり、変更点サマリーを添付したりするなどの工夫で、従業員の理解を促進できます。特に不利益変更の場合は、十分な説明と周知期間を設けることが重要です。
コスト面では、人数が多い場合やページ数が多い場合は印刷・配布コストがかさむため、必要に応じて他の方法と併用することを検討しましょう。
デジタル環境での効率的な閲覧方法:社内システムの活用法
デジタル環境を活用した周知方法は、特に事務作業の効率化を図りたい中小企業にとって有効な選択肢です。労働基準法施行規則第52条の2第3号では「電子的方法」による周知が認められており、具体的には以下のような方法があります。
効率的なデジタル周知方法
デジタル化のメリットは更新が容易なことです。改定があった場合も、ファイルを差し替えるだけで全従業員が最新版にアクセスできます。また、閲覧履歴の記録や検索機能により、必要な情報へのアクセスが容易になります。
導入の際は、全従業員がアクセスできる環境整備が重要です。パソコンを使用しない職種の従業員がいる場合は、共用端末の設置や他の方法との併用を検討すべきでしょう。また、セキュリティ対策として、パスワード保護や社外からのアクセス制限など適切な措置を講じることも忘れないでください。
紙だと“どれが最新版?”って混乱しがち。
でも、デジタルなら“常に最新”が当たり前に。
社員からの質問も減って、管理コストもラクになりますね!

就業規則の閲覧に関する基礎知識と中小企業経営者が抱える課題
就業規則は企業運営の根幹となるルールブックですが、その管理や閲覧対応に悩む経営者は少なくありません。ここでは、就業規則の基本的な性質から閲覧・周知の違い、中小企業特有の課題と対策までを解説します。適切な就業規則管理は労使トラブルの予防だけでなく、企業の生産性向上にもつながります。人事部門がない中小企業でも実践できる効率的な管理方法と、従業員からの閲覧要求への対応をマスターして、コンプライアンスと業務効率を両立させましょう。

就業規則とは:作成義務がある企業と記載すべき必須事項
就業規則とは、労働時間や賃金、休日・休暇、懲戒など、職場における労働条件や服務規律を定めた文書です。常時10人以上の労働者を使用する事業場には、労働基準法第89条により作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。
就業規則に記載すべき事項は「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」に分けられます。絶対的記載事項は必ず記載しなければならず、始業・終業時刻、休日、休暇、賃金の決定方法などが含まれます。相対的記載事項は、定めをおく場合に記載が必要となるもので、退職金、表彰、制服などが該当します。
適切な就業規則を作成することで、労使間のトラブルを未然に防ぎ、円滑な企業運営が可能になります。また、労働契約法第7条により、就業規則で定めた労働条件は労働契約の内容となるため、法的拘束力を持つ重要な文書として位置づけられています。
就業規則の閲覧と周知の違い:経営者が理解すべきポイント
就業規則における「閲覧」と「周知」は関連する概念です。周知義務とは、従業員が就業規則を自由に閲覧できる状態にすることを意味します。労働基準法第106条では、就業規則を労働者に周知させる義務を使用者に課しており、閲覧制限をかけることは認められていません。
周知方法は労働基準法施行規則第52条の2で定められており、(1)見やすい場所への掲示・備付け、(2)書面での交付、(3)電子的方法による共有の3つがあります。単に「閲覧できる」だけではなく、すべての従業員が「理解できる状態」にする必要がある点に注意しましょう。
経営者としてよく混同しがちなのは、「社内に1部あれば良い」という考え方です。実際には、すべての従業員が必要なときに確認できる環境整備が求められます。また、更新時には変更内容を改めて周知する必要があり、特に不利益変更の場合は丁寧な説明が欠かせません。
中小企業特有の就業規則管理における課題と対策
中小企業では人事部門がないケースが多く、就業規則の管理に関して特有の課題があります。主な課題と対策を見てみましょう。
- 担当者不足の課題:経営者自身が管理するケースが多く、業務負担が大きい → 対策:クラウド型の就業規則管理システムの導入で管理工数を削減
- 専門知識の欠如:労働法規の頻繁な改正に対応できない → 対策:社会保険労務士との顧問契約や専門サービスの活用
- コスト制約:紙媒体での配布や管理にコストがかかる → 対策:電子的方法による共有で印刷・配布コストを削減
- 従業員への周知不足:忙しさから更新情報の周知が後回しになる → 対策:自動通知機能付きの管理システムの活用
特に電子的な管理方法は、更新の手間やコストを大幅に削減できるため、中小企業にとって効果的な解決策となります。今すぐ自社の就業規則管理方法を見直し、効率化を図りましょう。
従業員からの質問に備える:よくある質問と回答例
就業規則の閲覧時には、従業員から様々な質問が寄せられます。あらかじめ準備しておくと、トラブルを未然に防げるでしょう。
給与計算に関する質問
「残業代はどのように計算されますか?」という質問には、就業規則の賃金条項を示しながら、具体的な計算方法を説明します。法定割増率(25%以上)に基づく計算例を用意しておくと理解が早まります。
休暇取得に関する質問
「有給休暇はどのように取得できますか?」という質問には、申請方法や取得条件を明確に説明します。労働基準法の年5日取得義務についても触れると良いでしょう。
懲戒処分に関する質問
「どのような場合に懲戒処分になりますか?」という質問に対しては、具体的な事例を挙げず、就業規則に記載された懲戒事由を説明します。恣意的な運用ではなく、規則に基づいた公平な適用が重要である点を強調しましょう。
これらの質問への回答例をFAQとしてまとめ、就業規則と一緒に閲覧できるようにすることで、従業員の理解を促進し、個別対応の負担を軽減できます。
閲覧要求への対応チェックリスト:法令遵守と業務効率の両立
就業規則の閲覧要求に適切に対応するためのチェックリストを以下にまとめました。このリストを活用して、法令遵守と業務効率の両立を図りましょう。
対応ステップ | チェック項目 |
---|---|
事前準備 | □ 最新の就業規則を用意している □ 閲覧方法を従業員に周知している □ 記載内容が法令に準拠している |
閲覧要求時 | □ 迅速に対応している □ 閲覧場所と時間を確保している □ 必要に応じて質問に回答できる担当者がいる |
閲覧後 | □ 閲覧記録を残している □ 質問があった箇所を記録している □ 必要に応じてFAQを更新している |
定期メンテナンス | □ 法改正に合わせて内容を更新している □ 変更時に適切に周知している □ 定期的に閲覧環境を確認している |
上記の表にあるチェック項目はあくまで一例です。要求への対応だけでなく、平時からの準備と事後のフォローまで含めた一連のプロセスを整備することで、突発的な閲覧要求にも慌てず対応できるようになります。
特に重要なのは閲覧記録を残すことです。「いつ、誰が、どの部分を閲覧したか」を記録しておくことで、後々のトラブル防止になります。デジタル管理システムであれば、このような記録を自動で残せるため、管理負担を大幅に軽減できるでしょう。
特殊なケース別の就業規則閲覧対応ガイド
通常の正社員からの閲覧要求だけでなく、様々な立場の方から就業規則の閲覧を求められる場面があります。ここでは、パート・アルバイト従業員、内定者、休職中の従業員、退職者、社外の第三者など、特殊なケース別の対応方法を解説します。それぞれのケースにおける法的義務の範囲と実務的な対応のポイントを理解することで、トラブルを回避しながら適切に対応できるようになります。また、万が一就業規則を紛失してしまった場合の対処法についても説明します。

パート・アルバイト従業員からの閲覧要求への対応方法
パートタイマーやアルバイトなどの非正規雇用従業員も労働基準法上の「労働者」に該当するため、就業規則の閲覧を求める権利があり、会社はこれに応じる義務があります。労働基準法における「労働者」の定義に雇用形態による区別はなく、周知義務は全従業員に対して適用されるためです。
パート専用の就業規則を別途作成している場合は、該当する就業規則を閲覧させましょう。両方の規則を閲覧希望の場合も、拒否する法的根拠はありません。また、フルタイム従業員との待遇差について質問されることもありますが、その場合は「同一労働同一賃金」の観点から合理的な説明ができるよう準備しておくことが重要です。
閲覧方法としては、正社員と同様の方法(掲示、書面交付、電子的方法)で対応します。特にシフト制で勤務時間が不規則な場合は、休憩室への掲示やデジタル環境での共有など、勤務時間に関わらず閲覧できる環境を整えるとよいでしょう。
入社前の内定者からの閲覧要求:対応の必要性と方法
内定者は労働契約が成立しているとみなされるため、就業規則のうち労働条件に関する部分を開示する必要がありますが、服務規律等の他の部分については開示義務はありません。労働契約法では、労働契約の内容は周知された就業規則によるものとされており、厚生労働省の通達でも労働契約の締結時には就業規則を周知することが要請されています。
内定者に開示する際の範囲については、労働条件に関する部分(労働時間、休日、休暇、賃金など)を中心に共有するのが一般的です。一方、懲戒規定や機密情報の取扱いなど、入社後に詳しく説明するべき内容は、概要のみを伝えるなどの配慮も必要です。
開示方法としては、入社前の説明会や内定時の面談で概要を説明し、詳細を知りたい場合は個別に対応するというステップを踏むとスムーズです。内定者専用のポータルサイトがある場合は、そこで閲覧できるようにすることも効率的な方法といえるでしょう。
休職中の従業員からの閲覧要求への適切な対応
傷病休職や育児・介護休業中の従業員も、在籍中の従業員として就業規則の閲覧権利があります。特に休職中は給与や復職条件など、就業規則の内容に関心が高まる時期でもあるため、丁寧な対応が求められます。
休職中の従業員への配慮点として、自宅や療養先でも閲覧できるようにする工夫が必要です。紙媒体での郵送、PDFファイルのメール送付、専用サイトへのアクセス権付与など、従業員の状況に合わせた方法を提案しましょう。
また、休職中に就業規則が改定された場合は、特に影響のある部分については個別に連絡することが望ましいでしょう。休職制度や復職条件に関わる変更の場合は、休職中の従業員に不安を与えないよう、変更理由や適用時期について明確に説明することが重要です。

退職者からの閲覧要求:法的義務の範囲と対応方針
退職した元従業員からの閲覧要求については、原則として応じる法的義務はありませんが、会社との間に一定の紛争が生じている場合に限り、退職者に関わる規定部分について労働基準監督署で閲覧が認められる場合があります。
ただし、退職金の計算や未払い賃金の請求など、特定の権利に関わる部分については、合理的な範囲で対応することが労使トラブル防止につながります。特に退職時に適用されていた就業規則の条項について質問がある場合は、該当部分のみコピーを提供するなどの対応を検討するとよいでしょう。
なお、退職者は労働基準監督署で事業場に適用されている就業規則を閲覧できる可能性があります。この点を理解したうえで、拒否することによる無用なトラブルを避けるため、状況に応じた判断が求められます。
第三者(社外者)からの閲覧要求への対応と情報管理
取引先企業、就職希望者、競合他社などの第三者から就業規則の閲覧を求められた場合、法的には応じる義務はなく、企業の判断に委ねられています。情報管理の観点から全面開示には慎重であるべきですが、状況に応じた対応を検討しましょう。
就職希望者への対応は、採用活動の一環として概要を伝えることでミスマッチを防ぐ効果があります。労働時間や休暇制度など、労働条件の基本的な部分を中心に説明するとよいでしょう。
取引先企業からの要求は、取引条件や監査の一環である場合が多いため、必要な範囲で応じることを検討します。一方、競合他社からの要求には応じる必要はなく、企業秘密保護の観点から拒否することが一般的です。
いずれの場合も、開示する際はコンプライアンス担当や上司の承認を得るプロセスを設け、開示範囲と方法を明確にすることで、情報漏洩リスクを最小化することが重要です。
就業規則を紛失した場合の対処法と法的手続き
就業規則の原本を紛失したり、電子データが消失したりした場合は、速やかに再作成する必要があります。紛失に気づいたら、まず以下の手順で対応しましょう。
- 労働基準監督署に届け出た控えの写しを取り寄せる
- 基本的に1で対応できることが多いが、控えがない場合は、過去の版などを頼りに再作成する
会社が保管する就業規則を紛失した場合は、労働基準監督署に経緯を説明することで、閲覧申請をおこなうことができます。万が一、データを削除した、冊子を廃棄したなど、就業規則をなくしてしまった場合は、労働基準監督署に経緯を説明し、閲覧申請をおこなうことができます。
再発防止策としては、原本の保管場所を明確にし、複数の場所にバックアップを保存しておくことが重要です。デジタル管理システムの導入も有効で、紛失リスクを大幅に低減できます。
中小企業のための就業規則管理・閲覧システムの構築方法
就業規則の管理や閲覧方法に頭を悩ませていませんか?特に人事部門を持たない中小企業では、紙の就業規則管理が業務負担となり、更新や従業員への周知がスムーズに進まないことがよくあります。ここでは、限られた予算とリソースの中で、効率的な就業規則管理を構築する方法を解説します。デジタル化によるメリットや導入時の検討ポイント、コスト削減の工夫まで、すぐに実践できる内容をお届けします。システム導入により法令遵守と業務効率の両立を図り、人事労務管理の質を向上させましょう。

デジタル化による就業規則管理の効率化とメリット
就業規則管理をデジタル化することで、中小企業にもたらされるメリットは数多くあります。最も大きな利点は更新管理の容易さと即時反映です。紙媒体の場合、更新のたびに印刷・差し替え・再配布といった手間がかかりますが、デジタル管理では一度の更新作業で全社員に最新版を提供できます。
コスト面では、印刷費や保管スペースの削減、更新作業の工数削減などが期待できます。さらに、検索機能により必要な条項をすぐに見つけられる利便性や、権限設定によるセキュリティ強化など、業務品質の向上にもつながるでしょう。
中小企業にとって特に重要なのは、限られた人的リソースの有効活用です。人事担当者がいない環境でも、システム化により経営者や担当者の負担を大幅に軽減できます。また、テレワークなど働き方の多様化にも対応し、場所を選ばず閲覧可能な環境を整備できる点も見逃せません。
コストを抑えた就業規則閲覧環境の整備方法
限られた予算の中で効果的な就業規則閲覧環境を整備するには、段階的なアプローチが有効です。まずは無料または低コストのツールから始める方法を検討しましょう。
Google DriveやDropboxなどの一般的なクラウドストレージサービスを活用すれば、初期コストをかけずに電子的な就業規則の共有が可能です。ただし、閲覧履歴の管理や更新通知などの機能は限定的なため、運用ルールの整備が必要になります。
既存のイントラネットやグループウェアがある場合は、それらを活用する方法も効果的です。多くの場合、文書管理機能が標準で備わっているため、追加コストなしで就業規則の管理・閲覧環境を整備できます。
就業規則の更新時の周知プロセスと確認体制の構築
就業規則を更新した際の効率的な周知プロセスは、コンプライアンス遵守と従業員の理解促進に不可欠です。デジタル環境では、更新通知の配信により、全従業員に確実に情報を届けることができます。
効果的な周知プロセスには以下のステップが含まれます。
- 更新内容のサマリー作成(重要な変更点をわかりやすく要約)
- 更新通知の配信(メールやシステム通知で全従業員へ一斉配信)
- 必要に応じて朝礼などで口頭でも周知
また、従業員からの質問対応の仕組みも整えておくと良いでしょう。FAQの整備やQ&A掲示板の設置、問い合わせフォームの用意など、従業員が疑問を解消できる環境を提供することで、変更内容の理解が深まります。

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まとめ
この記事をお読みいただき、誠にありがとうございます。就業規則の閲覧対応は、中小企業経営者にとって法令遵守と業務効率の両立が求められる重要なテーマです。突然の閲覧要求に戸惑わないよう、適切な対応方法を理解し、効率的な管理体制を整えることが大切です。ここでは、記事の重要なポイントを改めてご紹介します。
- 就業規則の周知は労働基準法第106条で定められた法的義務であり、違反すると30万円以下の罰金に処される可能性がある
- 法定の周知方法は「常時各作業場の見やすい場所への掲示・備付け」「書面での交付」「電子的方法による共有」の3つ
- パート・アルバイトを含むすべての従業員に周知義務があり、内定者には労働条件に関する部分を開示する必要がある
- デジタル環境を活用した管理方法は、更新の容易さ、コスト削減などのメリットがある
- 就業規則を更新した際は、変更内容のサマリー作成と通知配信など、効率的な周知プロセスが重要
適切な就業規則の管理と閲覧対応は、労使間のトラブル防止だけでなく、企業の生産性向上にもつながります。本記事で紹介した方法を参考に、自社の状況に合った効率的な管理体制を構築し、コンプライアンスと業務効率の両立を図りましょう。就業規則は企業運営の根幹となるルールブックです。従業員がいつでも確認できる環境を整えることで、透明性の高い職場づくりと、円滑な企業運営を実現できるはずです。
●● この記事の監修者 ●●

田渕花純 – Kasumi Tabuchi –
KT社会保険労務士事務所 代表社会保険労務士。国内・外資系航空会社を経て、化粧品販売業に従事。その後、大手社会保険労務士法人にてキャリアを積み、スタートアップ企業や建設業向けの労務手続きを専門的に担当。現在は「ヒトの力で企業の未来を切り開く」という理念のもと、会社設立時の労働保険・社会保険申請業務、建設業の労災保険手続きなど、事業主が安心して本業に専念できるよう丁寧かつスピーディなサポートを提供している。社会保険手続き、給与計算、助成金申請、労務コンサルティングなど幅広い業務に精通。