
父の「なぜ?」が育てた経営哲学。仕事も育児も健康も、”全部取り”で理想を実現する生き方
「描いたことは実現できる。本当にそう思っています」——。
株式会社LifeLab代表取締役の志賀香織氏は、穏やかな笑顔でそう語ります。整体サロン、キャリア支援、システムコンサル、美容事業。一見バラバラに見える事業すべてに「誰もが輝ける社会を実現したい」という想いが流れています。25歳でリクルートを退職し、約5年間の準備を経て独立。現在は子育てをしながら、仕事も家庭も健康も手に入れる”全部取り”の人生を実現しました。その経営哲学の源流には、幼少期にお父様から受けた「なぜ?」という問いかけがありました。
寡黙な父と社交的な母。対極の両親が教えてくれた「自分で決める」ことの大切さ
志賀氏のお父様は、貧しい母子家庭から奨学金で大学に進学し、トヨタ自動車のグループ会社で社長まで上り詰めた人物です。寡黙で仕事の話はほとんどしませんでしたが、娘に対してはいつも同じ問いを投げかけていました。
「高校から大学に進学するとき、父に『お前は何のために大学に行くんだ?』と聞かれたんです。誰がお金を出すのか、いくらかかると思っているのか、と」
当時、地元の進学校に通っていた志賀氏にとって、大学進学は当たり前のことでした。
しかし、大学に進学したいという明確な答えを持っていなかったのです。
一方で、中学3年生のときに「塾に行きたい」と言ったときは、すんなりと認めてくれました。行きたい高校があり、そのために必要だという明確な理由があったからです。
「父は常に『何のために』を問いかけてきました。でも、理由がちゃんとあれば、必ず応援してくれる。自分で納得して決めることの大切さを、父は教えてくれたんです」
対照的に、お母様は社交的で、一流のものに触れさせることを大切にする人でした。「旅行に行くならヒルトン、みたいな感じ。子どもの頃は当たり前だと思っていましたが、今思えば価値あるものを見極める目を育ててくれたんだと思います」
インタビューの途中、志賀氏は初めて気づいたように言いました。
「今話していて思ったんですが、父の教育方針が、今の私の経営哲学の源流だったのかもしれません。製造業では『なぜなぜ分析』が基本じゃないですか。それが自然と家庭にも表れていたんだと思います」
お父様から受けた「なぜ?」という問いかけ。それが、志賀氏の質問力を育て、「人を輝かせる」事業の原点となっていたのです。
リクルート3年半で見えた限界。「このままでは壊れる」危機感が導いた独立への道
大学時代は常に2〜3個のアルバイトを掛け持ちしていた志賀氏。しかし就活で自己分析を始めると、「私、何者?」という壁にぶつかります。
「打ち込めるものが欲しい。20代で思いっきり成長したい」。そう考えた志賀氏は、塾講師のアルバイトで進路相談に乗ったときのやりがいを思い出し、リクルートへの入社を決めます。
リクルートでの3年半は、頑張った分だけ成長も成果も実感でき、充実していました。しかし25歳のとき、転機が訪れます。
「かなり働いていたので、体を壊しそうになったんです。このままではまずい、と」
同期がポロポロと辞め始めていた頃でした。志賀氏は、リクルートを卒業した先輩たちに相談するようになります。その中には、独立して自分で働く時間や場所を決めている人、家族との時間も大切にしながら事業を続けている人もいました。
「その働き方や生き方に憧れるようになって。家族ができたときに、家庭も仕事もどちらも諦めたくない。そう思うようになったんです」
ただ、何の事業をやるかは全く見えていませんでした。そこで志賀氏は、リクルートの先輩に紹介してもらった経営者の方に、経営の基礎を教えてもらうことになります。その経営者の方がこう言いました。
「事業を立ち上げるのは誰でもできる。でも、それを大きくしたり維持するのは大変。何の事業をやるかも大事だけど、あなたと仕事したいという人がどれだけいるかの方が大事だよ」
この言葉が、志賀氏の事業設計の根幹となります。
リクルート退職後、志賀氏は別の会社に勤めながら、約5年間、独立の準備を進めました。事業内容を考えるより、人との出会いを大切にし、自分が役に立てることがないかを考え続けた5年間でした。
そして2020年1月、株式会社LifeLabを設立。社名には、「人生をどこまでも探究し続ける」という想いが込められています。
「何の事業をやるか」より「誰と仕事するか」。求められるものを形にしてきた事業展開
整体サロン、キャリア支援、システムコンサル、営業代行、そして2026年初旬オープン予定の美容サロン——。現在、志賀氏が展開する事業は多岐にわたります。
「正直、私は『この事業をどうしてもやりたい』というのはないんです。求められるものを形にしてきたんです」
最初に始めたのは、リクルート時代から相談を受けていたキャリア支援と営業代行でした。独立後も転職相談が絶えず、「それなら、みんなで集まって理想の人生を考える機会を作ろう」と、キャリアデザインワークを定期開催するようになりました。
システムコンサルは、エンジニアの知人たちとの交流から自然発生的に生まれました。「コロナで在宅勤務が増えて、『もっと交流したい』『自分でも案件を取りたい』という声があったんです。それで交流会を開いて、そこから一緒に案件を受けるようになりました」
整体サロンは、志賀氏自身の切実なニーズから生まれました。妊娠・出産期に週1ペースで通い続けた経験から、「もっと近くに、もっと通いたくなるような整体があったらいいな」と考えたのです。
2023年1月に白金に美容サロンをオープンしていたところから、2025年6月に浜松町・大門エリアにて整体に業態を変えて出店。サロン名は「わたげのまにまに」。「『没入整体』という一般的な整体とは違って、『五感で整う』ことを大事にしています。寝られるほど気持ちいいけど、本格的な施術を受けられる。それがコンセプトです」


そして年明けには、脱毛とまつげ・眉毛の美容サロンもオープン予定です。「転職活動では第一印象がすごく重要。身だしなみを整えているときって、背筋が伸びる感じがするんです。あと、綺麗になると単純に気分が上がりますよね。」
一見バラバラに見える事業。しかし、すべてに共通する軸があります。それは「人が輝くためのサポート」です。
「自分が『これ欲しいな』と思ったことは、誰かも同じように思っているはず。だから形にする。それを繰り返してきました」
志賀氏がこれだけ多角的に事業を展開できる理由。それは、各事業に責任者がいるからです。
「各事業に、責任を持ってくれている人がいます。だから安心して任せられる。そのおかげで、新しいことを始められる状態を作れているんです」

整体もキャリア支援も美容も。「人が輝く」ための土壌を多角的に作る理由
志賀氏が目指すのは、「誰もが輝ける社会」です。では、志賀氏にとって「人が輝いている状態」とは何でしょうか。
「結局、自分はこう生きる、私の幸せはこれだ、と決めている人が一番強くてかっこいい。全員そうなれると信じています」
勉強して、大手に行って、いい給料をもらって、結婚して、子どもを産む——。そんな「一般的な幸せ」の概念は、すでに壊れていると志賀氏は言います。
「人生に正解がない中で、誰かの評価や承認で自分を満たすのには限界があると思うんです」
お父様から繰り返し受けた「なぜ?」という問いかけ。それが、志賀氏に「自分で決める」ことの大切さを教えていました。
「そんな人が、自分をきっかけに一人でも増えたら嬉しい。そんな人が育つ土壌を作りたい。だから、いろんな事業をやっているんです」
「本当にそれをやりたいの?」質問力が引き出す、相手の中にある答え
志賀氏の質問力は、どこで磨かれたのでしょうか。
「リクルート営業では結構鍛えられましたが、やっぱり大きいのは、経営者の先輩方から受けた質問だと思います」
独立準備を始めた頃、志賀氏は先輩経営者から何度も問いかけられました。
「なぜあなたはそれを目指すのか。本当にそれをやるぐらい、本気なのか。何のために、それをやりたいのか——」
問いかけられるたびに、志賀氏は自分自身と向き合いました。そして今、志賀氏も同じことをしています。
「たくさん聞かれてきたから、私も相談に来る人に、同じように聞くんです。本当にそれやりたいの? 何のために? って」
ただし、志賀氏の質問には、テクニックを超えたものがあります。
「本当にその人に輝いて欲しいと思っているから、質問が生まれるんだと思います」
志賀氏の目的は、相手を納得させることではありません。
「関わったからには、何か残して欲しい。もしかしたらモヤモヤする質問かもしれない。でも、それがきっかけで何か考えたり、新しい気づきがあったりしたら嬉しいんです」
答えを持っているのは、その人自身。だから志賀氏ができることは、質問だけ——。
製造業で必須の「なぜなぜ分析」が、お父様を通じて志賀氏に受け継がれ、今では「人を輝かせる」ための質問力となっているのです。
描いた理想は実現できる。25歳から32歳までの7年間で証明した”全部取り”の方法
25歳のとき、志賀氏は理想の状態を紙に書き出しました。
子育てをしながら仕事をしたい。でも仕事には思いっきり打ち込みたい。素敵な仲間に囲まれながら働きたい。時間や場所を自分で自由に選べるようになりたい。リクルート時代以上の収入を得たい——。
どれも実現できるかわからない、夢のような目標ばかりでした。
「でも、32歳までにその状態を作ると決めたんです。そして、ほぼ全部実現しました」
現在、志賀氏にはお子さんがいて、育児と仕事を両立しています。各事業には信頼できる仲間がいて、時間を自由に使えます。収入も、リクルート時代以上に得られるようになりました。
「描いたことは実現できる。本当にそう思っています。だから、理想を描くことにびびらないことが大事なんです」
では、理想を実現したら、志賀氏は満足したのでしょうか。答えは「いいえ」です。
「満足している自分に飽きてくる。成長したいって思う。だから、また新しい理想を描く。その繰り返しです」
特にお子さんが生まれてから、志賀氏の視野は大きく広がりました。
「子どもが生まれてから、優先順位がかなり変わりました。同時に、限りある自分の資源を何に使うか、を真剣に考えるようになりました」
そして今、志賀氏の関心は、自分や周囲の幸せから、より大きな社会へと向かい始めています。
「最近、政治のことをいろいろ調べているんです。日本のために何かしたいという思いが強くなって。子どもの未来に何を残せるか、を考えるようになりました」
“全部取り”の秘訣を聞くと、志賀氏はシンプルに答えました。
「自分の理想を思いっきり描く。それは自分なら実現できると信じる。そして、できるまでやると決める。毎回これの繰り返しです」

かわいがられる秘訣は「フルオープン」。メンターとの関係が事業を支える
志賀氏が今日まで事業を続けてこられたのは、メンターの存在があったからです。
「困ったとき、迷ったとき、本当にこれでいいのかわからなくなったときは、必ずメンターのところに行きました」
特に独立当初は、気持ちの波が激しかったといいます。
「『やるぞ!』というときと、『本当にできるかな』と不安になるときの波が激しかったんです。そんなとき、『お前、やるって言ったやろ』『諦めるんだったらやめちまえ』って、本気で怒ってくれた先輩もいました。むかつくんですけど、でも図星なんですよね」
では、志賀氏はどうやってメンターとの関係を築いてきたのでしょうか。その秘訣を聞くと、即答しました。
「フルオープンです。全部さらけ出しています」
礼儀は大切にしながらも、変に取り繕わず、ありのままの自分を見せる。
「強みも弱みも、思考の癖も、全部話しています。迷っていたら『迷っています』、困っていたら『困っています』って。わかりやすくいることが大事だと思うんです。わかりにくいと、フォローしにくいじゃないですか」
メンターに対しても、思うことがあればはっきり伝える。そして、小さなことも決して疎かにしません。
「先輩のお店がオープンしたら、すぐ行く。そういうちょっとしたことを大事にしています」
信頼は簡単に失われてしまう——志賀氏はそう考えています。
「ちょっとしたことで、信頼がガーッと落ちることってあるじゃないですか。一度落ちた信頼は、戻せないですから」
メンターとのオープンな関係、そして小さな積み重ね。それが、志賀氏の事業を支え、新しい挑戦を可能にしているのです。
コントリからのメッセージ
「なぜあなたはそれを目指すのか」——お父様から繰り返し問いかけられてきたこの言葉が、志賀香織氏の経営哲学の源流となっていました。製造業のトップまで上り詰めた父の背中と、一流のものに触れさせてくれたお母様の愛情。対極の両親から学んだことが、今の志賀氏を形作っています。
志賀氏の経営で最も印象的なのは、「何の事業をやるか」ではなく「誰と仕事するか」を重視する姿勢です。5年間の準備期間で人との関係を丁寧に築き、「あなたと仕事したい」と言ってもらえる人を増やしてきた。だからこそ、信頼できる仲間と共に、複数の事業を展開できる体制を作れたのです。
そして、25歳で描いた理想をほぼ実現した事実は、「描いたことは実現できる」という志賀氏の言葉に説得力を与えています。仕事も育児も健康も、すべてを手に入れる”全部取り”の人生は、決して夢物語ではありません。
志賀氏が目指す「誰もが輝ける社会」。それは、一人ひとりが自分の人生を自分で決め、自分なりの幸せを追求できる社会です。整体サロン、キャリア支援、美容事業。一見バラバラに見える事業は、すべて「人が輝く」という一つの目的に向かっています。
お父様から受け継いだ「なぜ?」という問いは、今、多くの人の人生を照らす光となっています。
プロフィール

株式会社LifeLab
代表取締役
志賀 香織 – Kaori Shiga –
株式会社LifeLab代表取締役。1986年愛知県生まれ。名古屋大学経済学部卒業後、株式会社リクルート(旧株式会社リクルートエージェント)に新卒入社し、中途・新卒採用支援に従事。25歳で退職後、約5年間の準備期間を経て、独立。2020年1月に株式会社LifeLabを設立。「誰もが輝ける社会を実現する」を理念に、キャリア支援、システムコンサル、整体サロン「わたげのまにまに」、美容サロンなど多角的な事業を展開。「何の事業をやるか」より「誰と仕事するか」を重視し、各事業に信頼できる責任者を置く経営スタイルを実践。キャリア支援1000人以上、採用支援100社以上の実績を持つ。現在は育児と仕事を両立させながら事業を推進中。
ギャラリー












会社概要
| 設立 | 2020年1月 |
| 資本金 | 200万円 |
| 所在地 | 東京都港区芝大門1-15-10 |
| 事業内容 | 整体サロン(わたげのまにまに) キャリア支援 営業代行 等 |
| HP | https://s-lifelab.com/ |

