丸菱製作所の挑戦!伝統技術と革新の融合が生む新たな価値 | 株式会社丸菱製作所

「日本のものづくりは町工場が支えている」
そのような言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。日本には約22万事業所の工場が存在しており、様々な製品を高度な技術力を武器に製造しています。しかし、製造業界は、後継者問題(事業承継)が大きな課題となっています。実際に後継者がおらずに廃業に追い込まれている企業様も少なくありません。
今回のインタビューでは、そのような製造業の課題に真っ向から立ち向かっておられる株式会社丸菱製作所の戸松裕登 専務にお話を伺いました。戸松専務の熱いメッセージをぜひ感じてみてください。

株式会社丸菱製作所の事業について

コントリ編集部
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まずは御社の事業について教えていただけますでしょうか?

丸菱製作所は、創業から70年の歴史を重ねてきている会社になります。社名に「菱」という文字が付けられているように、スタートは三菱電機様の仕事をやるために立ち上げた会社です。創業当時は、現在の春日井市とは別の熱田というところでボルトの転造事業からスタートしました。1959年の伊勢湾台風が発生したタイミングで、春日井市に拠点を移し、ボルトだけではなく、板金や溶接、機械加工などの仕事もお客様の要望に合わせてやるようになりました。そして、最終的に大物の特注品(製缶加工品)を製作するようになりました。

現在は、エレベーターの枠組み部分をはじめとした各種部品や、工作機械用の大型部品などの製造をさせていただいております。このようにして、社内に蓄積した技術を活用して、一貫生産できるというのが弊社の強みだと思っております。ちなみに、現在はボルトの転造は行っておらず、最初の事業からはだいぶ変わってきてはいますが、お客様の求めるものをつくることに最大限の力を注ぐのが丸菱製作所です。

コントリ編集部
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お客様の声をしっかりと聞き、現在の事業に成長されたということですね!
ちなみに、現在も三菱電機様向けの売上が多いのでしょうか?

三菱電機様向けの売上が90%くらいになります。ただ、変化が大きいこの時代において、世の中の変化に対応できなくなるのは致命的です。そのような変化にも柔軟に対応できるような体制を作ろうということで、「質的な成長」を目指して新しい事業にチャレンジしています。

コントリ編集部
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新しい事業にもどんどん取り組まれているのですね。
具体的にはどのような事業に取り組まれているのでしょうか?

本業である、大物製缶加工品の事業の他に取り組んでいる事業としては「マリン事業」と「ASNARO事業」があります。マリン事業については、「トマ・オーニング」という商品名で売り出している船舶用のオーニング(日よけ・雨よけ)を製造する事業となっています。この事業は、私の父である社長が始めた事業になります。

一次サプライヤーとして、サプライチェーンの中だけの仕事をしていると、仕事内容が固定化してしまうというところがあります。また、販売価格についてもコントロールが難しい傾向にあります。そのような状況から抜け出す一つの方法としてマリン事業を始めました。

コントリ編集部
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確かに、一次サプライヤーとしての仕事ですと、価格競争や値引き交渉などの影響も受けやすそうですね。

商品の値段の付け方というのは、3種類あると考えています。
1つが、「製造コストから計算される値段」です。2つ目としては、「競合他社との競争によって付けられる値段」です。多くのメーカーというものは、このどちらかの方法で決まった値段で製品を販売しています。
3つ目の値段の決め方としては、「お客さんが欲しいか欲しくないかで決まってくる値段」というものがあります。実は、弊社のマリン事業はこの値段の付け方を採用しています。これを実現するために、自社製品であるトマ・オーニングを開発・製造しています。

コントリ編集部
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値段の付け方の異なる自社製品を作って展開する。この発想は素晴らしいですね!
柔軟な発想があったからこそ立ち上げることができた事業ですね。

新規事業「ASNARO」を始めたきっかけについて

コントリ編集部
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「ASNARO」を始められたきっかけについて教えていただけますでしょうか?

「ASNARO」は私自身が立ち上げた事業です。弊社の大型製缶事業のように、サプライチェーンの中だけで仕事をしていると、どうしてもその依存度が高くなってしまいます。弊社の場合は、三菱電機様の売上が90%というのが現状なのですが、そこに依存するとなると、今後の変化によって競合他社に負けてしまうこともあります。また、90%の売上があるからといって、必ずしも工場がコンスタントに90%稼働しているわけではありません。繁忙期は200%くらいになることもありますし、少ない時には50%くらいの稼働率になることもあります。

これでは、せっかく確保している生産能力を無駄にすることになってしまいます。弊社のように大型製缶を一貫して生産できる技術をもっているのにもかかわらず、既存のお客さんだけにしか売れないという状況は非常に危険だと思っています。このように、弊社のような町工場が持っている技術を自由に売りたい形で売ることができるマルシェのような場所を作ろうとしたのがこのASNAROというものです。

また、弊社が取引するサプライヤーさんが言っていた言葉が私の中では非常に衝撃的でした。その方は、「この設備が壊れたらこの事業はやめようと思っている」ということをおっしゃっていました。この言葉は、コロナで仕事が大幅に減ってしまった時に出た言葉ではなく、これからどんどん仕事が増えていくという時に出てきた言葉でした。

コントリ編集部
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衝撃的な言葉ですね。。。

なぜこれから仕事が増えていくタイミングでそのようなことをおっしゃられたのでしょうか?

その方はこのようにおっしゃっていました。

「今までは設備投資をすれば、必ず何年かで元は取れる。だから、誰も不安なんてなかったんだよ。だけど、今の日本でやる仕事って5年先のこともわからない。今までと同じような仕事をやり方をしていたら30年先に元が取れると言ったようなことになってしまうかもしれない。それまで生き残れるような余力や将来性が今はないのだから、今の仕事は今ある設備で続けるけれども、だからと言って、今の状態だけで次の30年を目指せる訳ではないんだよ」

コントリ編集部
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この言葉からも、現在の町工場が置かれている状況がイメージできました。
ASNAROはこのような困りごとを解決しようと立ち上げたサービスということなのでしょうか?

このような悩みは、このサプライヤーさんだけの話ではありません。弊社も例外ではありませんし、同じような悩みを持った会社さんはたくさんいらっしゃると思います。ただ、この悩みを解決できるようなサービスが今まではありませんでした。そこで作ったのがASNAROというサービスです。

コントリ編集部
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ASNARO事業の内容について、具体的に教えていただいてもよろしいでしょう?

日本には、素晴らしい技術を持っている企業がたくさんあります。しかし、その技術がしっかりと活用されているかというと、疑問が残る点もあります。その技術を持っている会社がいることすら知らずに依頼できないというケースも実際にあります。そこで、ASNAROのプラットフォーム上にその技術を出品することで、より多くの人に知ってもらうことができ、新たな仕事を作り出すことができます。

閑散期には自社の技術を商品として出品し、繁忙期には、他社様の技術を活用させていただくということがASNAROのプラットフォームを使っていただくことで実現できます。

コントリ編集部
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ありそうでなかったサービスですね!!
これは、求めている方がたくさんいらっしゃいそうです!

「ASNARO」の今後の広報戦略について

コントリ編集部
コントリ編集部

ASNAROの今後の広報戦略について教えていただけますでしょうか?

現状は、愛知県でスモールネットワークでしっかりと立ち上げることが重要だと思っております。Facebookも最初はハーバードの大学の中から流行し、そこから有名大学のネットワークができ、徐々に広がっていきました。弊社のASNAROについても、全く縁もゆかりもない地域で広げていくのは難しいと思っているので、全国展開というよりもものづくりの中心地である愛知県でまずは着実に広げていきたいと感じています。

コントリ編集部
コントリ編集部

まずは地元からというのは非常に良いですね!
具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

ドブ板営業ということで、電話アポイントから始まり、そこから実際に訪問してASNAROの内容についてご説明を差し上げています。その上でASNAROや私たちの考えに共感いただいた方にだけご登録いただいているというのが現状です。

コントリ編集部
コントリ編集部

テレアポからスタートされているのですね。しっかりと想いを伝えた上でご登録いただいているという姿勢が非常に素晴らしいです!
その共感の輪が広がっていったら本当に面白いことになりそうですね。

そうですね。ただ、このようなプラットフォームは日本全国で共通の仕組みを使うことで悩みを解決できるようになります。「愛知はASNAROで岐阜はまた別のプラットフォーム・・・」となってしまうと、本質的な問題の解決は困難になってきます。

コントリ編集部
コントリ編集部

確かに、各都道府県でバラバラのプラットフォームを作ってしまったら、都道府県の枠を超えたコラボレーションは生まれなくなってしまいますからね。だからこそ、ASNAROの全国展開は非常に重要なミッションになってくるのですね!

全国展開は絶対にやっていきたいですね!そのためには、丸菱製作所が各都道府県に支店を作るというのも一つの策ではありますが、愛知県以外の皆様に共感を得られるかというと、不安な部分もあるというのが正直なところです。
ですので、各地にASNAROの想いに共感していただけるようなパートナーを作って、みんなで拡大していくような枠組みに少しづつ変えていきたいと思っています。

コントリ編集部
コントリ編集部

信頼できるパートナーさんが全国でASNAROを広げているという状況を1日でも早く実現したいですね!!
ASNAROを知ってもらうために他に取り組まれていることなどもあるのでしょうか?

ビジネスピッチコンテストなどにも参加しております。今までは、愛知県が多かったのですが、2023年4月の日本青年会議所の価値デザインコンテストで経済産業大臣賞を受賞させていただきました。少しずつ全国に周知できるような動きを取るようにしています。皆さんに認知していただき、少しずつASNAROを広めてくれるようなパートナーを集めて、拡大できればと思っています。

コントリ編集部
コントリ編集部

価値デザインコンテストでの経済産業大臣賞の受賞は、ASNAROの認知度アップに大きく貢献しそうですね!

全国展開へのスケジュール感はどのように考えられているのでしょうか?

団塊世代の高齢化により、2025年に全国で500万人くらい人手が足りなくなってくると言われています。製造業では60万人ほど人手不足が発生します。そのような状況において、ASNAROのようなサービスは絶対に必要になってくると考えています。そのタイミングまでに、しっかりとした体制を作っておくことが大事だと考えています。2027年までには全国展開を実現して、全国の皆様のお役に立てるようにしていきたいと思っております。

コントリ編集部
コントリ編集部

2025年がまずは直近のハードルということですね!
ちなみに、ASNAROを皆様に広めていく時に意識されているポイントなどはありますでしょうか?

「熱意」を込めてお伝えし、「共感」していただくということを強く意識しています。ASNAROは、町工場が持っている素晴らしい技術を、それを求めている方が探せる場所です。ただ、そのような取引を発生させるようにするためには、ASNAROに登録いただいている企業様の数が非常に重要になってきます。

その登録数を増やすべく、電話アポイントなどをしていますが、3割の方は電話に出ていただけません。そして、3割の方は、「マッチング」という言葉を出した瞬間に切られてしまいます。残りの方に対しては、熱意を持って「マッチングで実現できなかったことを実現したいんだ!」という形でお伝えすると、話を聞いてくださり、その中で7割くらいの方に登録していただいております。この電話アポイントの時に「熱意」がないともっと登録してくれる方は減ってしまうと考えています。

現在は、ASNAROの考え方に「共感」していただける仲間を集めているような段階です。ただ、2025年までには共感だけではなく「メリット」で話をしていかなければなりません。ASNAROに登録いただくと、必ず利益が出ると言えるようにしっかりと準備を進めていきたいです。

コントリ編集部
コントリ編集部

2025年にはたくさんの良きご縁がASNAROのプラットフォーム上で生まれていることを強く願っています!

世の中には素晴らしい技術を持っている町工場がたくさんあります。
このような企業さんが主役になっていくようなプラットフォームをASNAROで実現します!!

事業に対する「想い」と今後のビジョン

コントリ編集部
コントリ編集部

事業に対する「想い」について教えていただけますでしょうか?

私は、今後、丸菱製作所の3代目の代表になっていくのですが、その際には、先代、先々代が作り上げてきたストーリーを引き継ぐという感覚でやっています。その中で私自身がどんなことができるのか?というように考えています。

今まで丸菱製作所がやってきたことを大切にしていきたいですね。先代の夢などもしっかりと叶えていくようにしていきたいと思っています。世の中には、24時間、全自動で加工をするような方法で事業を行っている会社も存在します。このような会社の場合は、100人中、98人がプログラミングをしており、現場にいるのは2人だけというような驚くべき人員構成で事業を行っていたりします。

ただ、このようなやり方を丸菱製作所がやるかというとそうではありません。そんなことをしたら、今まで積み上げてきたものが無駄になってしまいますし、弊社の場合は、従業員100人中70人がものづくりをしています。私としては、この70人の従業員がしっかりと評価されるような場所を作っていきたいと思っています。

コントリ編集部
コントリ編集部

経営陣がそのように考えてくれているというのは、従業員さんにとっても頑張る理由にもなりますよね!

私は、元々、ものづくりをする人間ではなかったのですが、今ではものづくりの技術がおもしろくてのめり込んでいます。ものづくりをしていなかった私がそうなるのですから、きっとものづくりというものはおもしろいものなのだと思います。

だからこそ、丸菱製作所は毎日同じことをするのではなく、新しいことにも積極的にチャレンジし、「ものづくりはおもしろい」と思ってもらえるようにしていきたいと思います!

コントリ編集部からひとこと

今回のインタビューでは、愛知県春日井市の株式会社丸菱製作所の戸松裕登 専務にお話をお伺いさせていただきました。元々、ものづくりには全く関わっていなかった状態から、家業を継ぐために「ものづくり」に関わり、そのおもしろさに魅了されていったというストーリーは「ものづくり」というものの魅力を表現していると思いました。
また、インタビュー中、終始熱く語っていただきました。そんな戸松専務からは、とても大きなエネルギーを感じさせていただきました。きっと、戸松専務であれば、株式会社丸菱製作所の本業である大物製缶事業はもちろんのこと、新規事業のASNAROも含め、丸菱製作所様の事業をこれからどんどん飛躍させてくれるだろうと確信しました。

ギャラリー

戸松 裕登 様 プロフィール

1986年に愛知県で生まれ、早稲田大学を卒業後に家業である株式会社丸菱製作所に入社。現在は、株式会社丸菱製作所 専務取締役本部長という立場で丸菱製作所の経営に関わる。本業の製造とは異なるウェブプラットフォーム事業である「ASNARO」の立ち上げなど、過去の常識に捉われない行動力を持つ。
趣味は、ロードレース。特技のカラオケ(モノマネ)はお客様から好評。座右の銘は「目の前の課題に取り組んだ結果が将来を作る」「ワークアズライフ」。

【会社概要】株式会社丸菱製作所

創立昭和28年4月1日
資本金3,600万円
所在地愛知県春日井市大手町字川内1045番地
従業員数102人
事業内容エレベータ、エスカレータ重構造部品、三次元レーザー加工
厚板板金製缶加工、大型機械加工、塗装、組立
プレジャーボート用オーニング トマ・オーニングの製造販売
製造業加工受発注プラットホームASNAROの運営
URL丸菱製作所ウェブサイト
トマ・オーニングウェブサイト
ASNAROウェブサイト

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