自分自身の美しさを知る、心寄り添うブランディングの根源をたずねて|株式会社流義

本日ご紹介するのは、株式会社流義代表、岩城博之さん。大手代理店などの経歴を経て、今、人の心の「あり方」に向き合いながらブランドプロデュースに携わる同氏が、何を思い何を感じて日々を送っているのか。その本質に迫ります。

どうして人は比較して争い、苦しんでしまうのか。迷いはどこから生まれるのか。自分自身とどのように向き合って、理想を目指すのか。せわしない日々に見落としてしまいがちなそれらに、今一度腰を据えて向き合う、心に響く時間をぜひ感じてみてください。

数字ではない、哲学から生まれるブランディング

コントリ編集部
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本日はよろしくお願いいたします。初めに、株式会社流義様の事業内容について教えてください。

私たちはブランドプロデュースや企業研修を通じて、理念やビジョン、哲学を明確にし、企業様のブランド化をお手伝いしています。ブランド化というのは、単に規模を大きくしたり売り上げを上げたりすることではありません。熱狂的なファンが生まれる状態、これを私はブランドだと定義しています。ですので、たとえ1人や2人の小規模な会社であってもブランド化は可能です。

コントリ編集部
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ブランド化するために必要なものとは何でしょうか。

ブランド化には「哲学」が重要です。哲学とは、その会社が大切にしている理念や価値観、その会社らしさを指します。理念は心の中に持つべき指針であり、一方でビジョンは目的でありいわば「追いかける星」のようなものです。このビジョンは社会に対してどのような価値を創造し、どのような課題を解決し、誰をどう幸せにするのかを表します。

自社のためだけに設定された目標は、ビジョンではありません。会社の存在意義や誰をどう幸せにするのかがビジョンであり、目的です。そして、目的は数値化できるものではなく、言葉で表現されるものです。それを達成するための具体的なステップが目標です。たとえば「この人をこう幸せにする」という目的に向けて、「何をいくらで、何個売るのか」という目標が設定されます。その目標から逆算することで手段や方法が見えてきます。

コントリ編集部
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具体的には、どのようにブランドプロデュースを進めていくのですか。

まず面談を行い、経営陣や幹部の方々と月ごとに研修を重ねます。そこから本音を引き出し、社長の考えや社員さんの感じていることを整理します。このプロセスを通じて、会社の理念やビジョンを明確にしていきます。

私は心理学の講師でもあるので、そのスキルを活かして場の空気を読み、参加者の本音を引き出すことを得意としています。自分自身、適性検査では直感や感性、ひらめきが高い結果が出ており、人の心を理解し、動かすのが得意だと自分でも感じています。話の流れを調整したり、適切な例え話を用いたりして、相手の心を動かす方法を見つけます。

たとえば、「美しさ」という概念を用いて議論を深めることがあります。「正しさ」と「美しさ」の違いについて話し合い、共感や共鳴を引き出します。その中で参加者の価値観や本音が表れます。こうしたプロセスを通じて、日常業務に埋もれがちな本音を引き出し、企業全体の理念やビジョンに結びつけていきます。

コントリ編集部
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なるほど。ハウツーを学び、PDCAを回して結果を出すことばかりに集中していると、今のような「考え方」に向き合うことはなかなかありません。

そうですね。仮に向き合ったとしても、深いところまで入り込むのは難しいと思います。

深い会話をするためには、良質な問いが不可欠です。また、適切な事例が出てこないと、深い話題には踏み込めません。これこそが私の得意分野であり、私にしかできない引き出し方だと思っています。

テレビ番組で言うと『プロフェッショナル 仕事の流儀』、『情熱大陸』が興味深いです。普段テレビはほとんど見ませんが、これらの番組だけはつい見てしまいます。他の番組とはまったく違い、哲学を語っているところが魅力的です。やり方ではなく「あり方」を取材し、それを見せるからこそ面白いのだと思います。

私は、こんな手法を使って売上が何倍になったという話にはあまり魅力を感じません。それは一時的なもので、10年後にはどうなるのか分かりません。一方で、変わらない部分にスポットを当てたいというのが私の原点です。

大手勤務時代にはマーケティング、営業手法などのやり方ばかりを追求してきました。やり方を追求する仕組みの中で売上をつくる仕事は楽しかったのですが人の心が蔑ろになったり、一人ひとりのやりがいがおざなりになったりすることには強い違和感を覚えていました。やり方のコンサルタントの方をたくさん見てきましたが、やはり大切なのはあり方だという結論に至り、あり方のコンサルタントになりました。

コントリ編集部
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そんなブランディングの本質に気づかれたのはいつ頃ですか。

会社員時代は、自分の得意とする部分が閉じていた頃もあったと思います。自分の一番の魅力には自分では気づきにくいものです。それに気づくのは、身近な人やお客様など、長く自分を見てきた人たちの指摘がきっかけになることが多いです。

自分が得意だと思っている部分が実はそうではなく、逆に自分の最高の強みが別のところにあることが多いです。それを知っているのは、親しい存在や長年の知り合い、評価してくれるお客様などです。

コントリ編集部
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岩城さんの場合、ご自身の空気を読む能力についてはどう気づかれたのですか。

自分の一番の魅力には自分では気づきにくいものです。自分が得意だと思っている部分が実はそうではなく、逆に自分の最高の強みが別のところにあることが多いです。それを知っているのは、親しい存在や長年の知り合い、評価してくれるお客様などです。その方たちの指摘がきっかけになることが多いです。

私の場合、中学校の同級生が教えてくれました。同級生から「誰とでも仲良くできるよね」と言われたことがきっかけです。それが当たり前だと思っていましたが、自分にとって自然な行動が他者には特別に映ることを知りました。

それから、妻にもつい最近言われたことがあります。雑談の中で「私は完璧主義者の人が少し苦手」と話したところ、妻から「それはあなた自身のことよ」と指摘されました。

自分が完璧主義者だという自覚は全くありませんでした。自分では妥協しているつもりだったのです。しかし、妻から「書道で墨を磨ることにこだわる姿勢や、決めたことをやり遂げる姿勢は完璧主義そのものだ」と言われて初めて気づきました。それが2年ほど前のことです。

また、お客様からもストイックですねと言われることがありました。ただ、自分ではストイックだとは感じていません。あくまで日々のルーティンをこなしている感覚です。私の場合、美しさがすべての判断基準です。美しくない振る舞いや行動は排除するように意識しています。常に美しくあることを徹底しています。たとえば、毎朝4時半に起きてランニングし、筋トレや座禅、書道を行うのが日課です。自分に嘘をつかず、内側と外側が一貫している状態を目指しています。それが「美しさ」として表れるのです。そういった思考が心をつくり、それが外に現れます。顔の表情や仕草、佇まいにも表れる。「40歳を超えると自分の顔に責任を持て」という言葉がありますがまさにあり方が顔に出るのだと思います。

足し算の思考から、引き算の思考へ

コントリ編集部
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ストイックという言葉ではくくりきれない、岩城さんの哲学に触れました。一方で、奥様から、最近マラソンをやりすぎだと止められたという話もお聞きしました。

そうなのです。実際、突き詰めすぎると体に負担がかかります。毎日湿布を貼りながら続けていて、体がボロボロになっていました。睡眠時間も削られて、次の日の朝早くから予定があるのに、結局睡眠時間を逆算しても全然足りない。そんな状態が続いていましたので、心配してくれていました。

続けているのは健康のためではありません。自分に負けたくないという気持ちが強くて、毎日走ることを決めていました。雨の日だけは休むようにしていますが、それ以外は休むと自分が弱くなったように感じてしまうのです。一度休んでしまうと、翌日も休む理由を見つけてしまうのでは、という不安もありました。

コントリ編集部
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休息を勧められたことについて、どのように感じましたか。

2日に1回、3日に1回走るくらいが良いと言われました。でも、それだと自分に甘えている気がして、結局毎日走ることを続けています。ただ、そうやって無理を重ねていると、体が追いつかなくなってきます。体がボロボロになるまでやるのは問題だと感じています。ただ、精神的にはそれで満たされている部分もあります。体よりも精神の力が勝っている状態というか。ですが、その一方で、自分が大事にしている「心の引き算」ができていないことに危機感を覚えます。心を整えるためには、無理をするのではなく、本来のあり方を見つめ直すことが必要だと気づきました。

コントリ編集部
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「心の引き算」について、詳しく教えてください。

私の仕事は「あり方」を整えることです。お客様や目の前の方の心のあり方をサポートするのが役割です。だからこそ、自分に嘘をついていたら、そのオーラが相手に伝わってしまいます。逆に、自分が徹底的に真摯に取り組んでいれば、それもまた自然と伝わるものです。その意味で、日々のルーティンが自分を整える重要な時間になっています。

起業してからのことではありますが、もともと会社勤めの時からいろいろな学びを取り入れていました。たとえば、ネガティブな言葉を使わない、人の悪口を言わない、感謝の言葉を口にする、といったことです。その延長で、日々のルーティンを構築してきました。ただ、以前は「足し算」のルーティンが中心でした。

コントリ編集部
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「足し算」のルーティンとはどのような意味でしょうか。

毎朝日経新聞を読み込んで市場の動きを分析したり、ビジネス誌を読んで先を見据える努力をしたり、といったインプット作業です。それを20年以上続けてきました。しかし、2〜3年前から「引き算」に重点を置くようになりました。

情報をどれだけ取り込んでも、自分のあり方が整っていなければその情報に振り回されるだけです。逆に社会の本質を捉えた自分のブレない軸があれば必要な情報はそれほど多くありません。そのことに気づいてからは新聞や雑誌を読むことにこだわる習慣を断ち切りました。周りの情報に振り回されるのではなく、自分の内側にある軸を信じて進むことが大切だと思えるようになりました。

今は、1000年前に生きていても、100年後に生きていても大丈夫だと言えるような「あり方」を目指しています。それだけが自分にとっての絶対的な指針です。

コントリ編集部
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「あり方」を重視されるようになったきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけと言えるほど、最初からそこまで振り切れたわけではありませんでした。まずは「足し算」が大事だと考えていました。そうして色々と試してみる中で、「これでいい」「ここだけでいい」という形が見えてきます。そして、最終的に「やり方」ではなく「あり方」が重要だと気づいたのです。

日本の文化や世界の哲学など色々と勉強していくとその道を極めた人たちが必ず言っている共通の言葉があります。それが「自分らしさを大切にする」ということです。

究極的には、自分らしさで生きていくことが大切だというところに行き着きます。これは自分を知るということでもあります。つまり、「自分は何者なのか」「自分にしかない美しさとは何か」を理解することです。これが分かれば、他に何も必要ありません。

美しさとは人間の計らいを超えたもので、自然の流れや人と人の心が繋がる瞬間にこそあると思います。たとえば桜の花や川の流れ、あるいは共感や共鳴が生まれる瞬間。それは本当に美しいと感じます。一方で、自分本位の振る舞いや、計算された煌びやかさには心が動かされません。すなわち自分の美しさとは、自分の中で答えを持ちそこからブレないことだと考えています。自分の本当にやりたいことは何なのか、自分に求められていることは何なのか、自分にしかできないことは何なのか。それらの答えを持ったときに迷いがない美しい状態になると考えています。

人間は裸で何も持たずに生まれてきます。その時点で既に唯一無二の価値を持っています。しかし多くの方が自分と周りと比較して自分にはまだこれが足りない、自分には特別なものなんてない、という思考に陥りがちです。そうしてもっと足し算をしなければ、という方向に走ってしまい本来の自分からどんどん遠ざかってしまいます。

私も散々足し算をしてきたからこそそこに気づけたのだと感じています。日本の文化などを深く勉強すればするほど引き算の重要性に気づくことができました。そこからは足し算をやめ、あり方に時間と命を使うことに集中しました。

コントリ編集部
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その変化は、実際にどのような成果を生みましたか。

講演を頼まれることが増えたり、クライアントから深い共感を得たりするようになりました。最近では学校の先生への講義も評価が高く、次年度の依頼もいただきました。それは、やり方ではなくあり方に基づいた結果だと思います。

もちろん、情報収集をやめることには抵抗や不安はありました。しかし、1000年前の本を読むと、同じように「それでいい」と書いてあります。それを徹底する勇気を持つことが重要です。中途半端にやると、やり方が目立ってしまい、揚げ足を取られることもあります。それを避けるため、徹底的にやり方を排除しています。

もちろん、必要に応じてやり方も取り入れますが、それは最終的に「あり方」を際立たせるためです。たとえば、クライアントとの対話では、差別化やポジショニングについて話すこともありますが、いずれはそれを超えて「独自性」に到達します。「差別化」は比較の中で生まれる概念ですが、「独自性」は比較を必要としないものです。

そうやって人の心に寄り添い、その人自身のあり方を引き出すため、ステップを踏みながら、一緒にその本質に近づいていくのが私の役割だと考えています。

コントリ編集部
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人の心に寄り添うことを通じて、人々の心を結びつけることを最も大切にされているということですね。その信念を持ち続け、推進力を保つ秘訣は何でしょうか。

私にとって、全てをフラットに、0ベースで考えた時、究極的に何が大切なのか、何が残るべきなのかと考えます。ビジネスモデルなども含めて不要なものは削ぎ落としたとき、最終的に大事なのは「人の心と心のつながり」だけだと思うのです。

そのために、今何が必要か、どんな情報やたとえ話が効果的かを常に考えています。最終ゴールは心と心がつながること。これが私の信念であり、揺るがない軸です。

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その信念に基づいて、どのように価値を創造されていますか

私は3つの丸が重なることを重要視しています。1つ目は「自分がやりたいこと」。2つ目は「社会から強く求められていること」。3つ目は「自分にしかできないこと」です。この3つが重なる部分こそが、本当のブランド価値であり、最も美しい部分だと思っています。

「自分にしかできないこと」というのは、一番難しい部分です。しかし、その重なりこそがあなたらしさを表すものであり、私はそれを鋭く美しく表現することに注力しています。

コントリ編集部
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具体的にはどのような取り組みをされていますか。

私が手掛けるものすべてのコピーライティングやデザインを自分で行っています。以前はデザイナーに頼んでいましたが、今年は紙選びまで含めて全て自分で行いました。ちなみに、使用している紙は愛媛県の和紙で、「弥生」という名前の和紙を使用しています。これは偶然にも私の母の名前と同じです。私の生まれ故郷である愛媛県松山市の市花である椿の花も取り入れています。椿の花言葉は「控えめな優しさ」「控えめな美しさ」「誇り」などで、私の哲学とも一致します。

ちなみに、私の誕生日の花も椿で、誇りという意味を持っています。

プライドは捨てるべきものですが、誇りは持つべきもの。日本人にとってこの2つは全く異なる意味を持っていると思います。

大切にするものと、目指す世界のあり方に迫る

コントリ編集部
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ご家族との関係も信念に影響しているのでしょうか。

はい。私にとって大切なのは家族です。息子や妻に対して、一番大切なことを伝えることを心がけています。大切なこととは形のないもので、思いやりや優しさといった心の部分です。これを大事なことと区別する必要があります。大事なことはルールやマニュアルなどの「必要なこと」であり、異なる性質のものです。大切なことと大事なことは違います。

また、家族と常にオープンな関係を保っています。年間100回以上の講演には、妻や大学生の息子を連れて行くことも多いです。家族が私の言葉や行動を常に見ていますから、嘘偽りのない生き方を貫けているのだと思います。

周りからストイックだと言われることもありますが、ただ、自分が何を大切にしているかを明確にし、それに忠実に生きているだけです。特別な努力をしているわけではなく、自然とそうなっているだけですね。

コントリ編集部
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何を大切にしているかが、日常やコミュニケーションにも表れるということでしょうか。

そうです。それが嬉しいことに、妻から「世界一優しい」と言われる部分でもあると思っています。私は相手に優しくありたいと思っていますが、それは正義を押し付けるのではなく、自分の考えを伝えるだけです。たとえば、妻のぽわんとした性格は、それこそ彼女の魅力だと感じています。私が持っていないものをたくさん持っているので、それがとても素晴らしいと思います。

それから、私が大切にしているのは、一貫性です。内面で思っていることを明確に言語化し、それを見た目や行動で表現する。それこそがブランドであり、ブランディングだと思います。内面と外面を繋げることで、本物の信頼を築くことができます。一貫性がないと、信頼は簡単に崩れてしまいます。これまで多くの反面教師を見てきたからこそ、徹底することの大切さを実感しています。同時に、素晴らしい師匠からも多くを学びました。それぞれの素晴らしい部分をエッセンスとして取り入れて、自分の美学を磨いてきました。

いろいろな方との出会いを通じて、自分のありたい姿を明確にしてきました。

コントリ編集部
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日本人特有の価値観や文化については、どうお考えですか。

日本の、曖昧さを大切にする文化や八百万の神の考え方は素晴らしいと思います。

鳥居を見て外国人がゲートだと考えるのは興味深いですが、実際には神様の道として端を歩くというルールがあります。また、無人販売所のように信頼を基盤とした仕組みも、日本人の美しさを象徴しています。これらは宗教ではなく、DNAとして受け継がれているものだと思います。

日本人が持つDNAのしなやかさを引き出し、それを企業や社会の活動に活かすことで、日本はもっと良くなると思います。それが私の目指す方向性でもあります。日本人にしか当てはまらないとは言えませんが、日本人のあり方が世界中に広がれば、世界はもっと幸せになれると考えています。

コントリ編集部
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究極の目標として追求されているものは何ですか。

それは「世界平和」です。普段あまり言わないし書いてもいませんが、本当にそれを目指しています。世界平和というと漠然としたイメージを持たれがちですが、実はそうではなく、一人ひとりが自分の美しさを見出すことが重要だと思っています。自分の美しさを見出せれば、世界平和は可能です。逆にそれができない限り、争いや戦争はなくならないのです。

コントリ編集部
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争いや戦争の根本原因は何だとお考えですか。

争いや戦争は正しさのぶつかり合いから生まれます。自分は正しく、相手は間違っていると主張することで敵や対立が生じます。だからこそ、私は「正しさ」ではなく「美しさ」を重視しています。私の正解は誰かにとっての不正解になることを理解しているからです。

自分の美しさを見出すと、他人との比較を必要としなくなります。自分の美しさが見えていれば、「私はここが美しい」「あなたはそこが素敵ですね」という対話が可能になります。共感する人とはいいですねと言い合い、共感しない人に対しても、なるほど、そういう考えなのですねと認め合える関係が生まれます。心で共感できなくとも頭で理解することは可能です。

すべての人が自分にしかない美しさを見出し、互いの美しさを認めて対話が増えれば、平和な社会が実現するでしょう。大切なのは、自分の美しさで誰かを幸せにすることです。それこそが本当の美しさだと考えています。

コントリ編集部
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美しさを広めるにはどのようなアプローチが必要でしょうか。

これは一気に広められるものではないと思っています。大切なことほど伝わるのに時間がかかりますし、簡単には広がりません。しかし、その努力を続けることが重要だと考えています。ネガティブなニュースは瞬時に広がりますが、本当に大切なことはじっくりとしか浸透していきませんよね。

理想の実現が難しくても、追求し続けることが大切です。それが諦めないことにつながります。今この瞬間に自分が理想を追求しているかどうか、それだけが重要なのです。

また、迷いなく追求し続けることで、共感や共鳴が生まれます。それが一人から二人、そしてさらに広がっていくのです。追求し続けることで、日々の仕事や行動が変わり、結果として価値を生むのです。

コントリ編集部
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最後に、理想を追求する人生についてどうお考えですか。

私にとって、理想を追求することは究極の人生だと思います。結果がどうなろうと、今日この瞬間に理想を追求できていることが大切です。それを続けることで価値が生まれ、自分自身も満たされるのです。

つい先月、クライアントの社員さんが、「岩城さんと出会って丸2年、毎月研修を受けることで本当に人生が変わりました。心が豊かになりました」と言ってくださいました。本当に嬉しかったですね。

30歳くらいの女性クライアントさんは「夫婦関係がとても良くなりました」とおっしゃっていました。それまでおざなりにしていた家庭内のことについて、家族で話すようになり、家族関係が全く変わったそうです。妻もその話を隣で聞いていて、「価値が伝わっていて良かったね」と帰りの車の中で話しました。私が何を大切にしているかが相手に伝わり、それが明確になったと感じます。

コントリ編集部
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素晴らしいですね。そういった方々が増えることで、社会全体も変わりそうです。

本当にそう思います。押し付けずに、でも一貫した生き方をする人が増えると、美しい世の中が広がるのではないでしょうか。人それぞれが持つ素材の良さを活かすことで輝ける。これが私たちの目指す方向です。

先ほどもお話ししましたが、これは日本文化にも通じています。たとえば茶道や華道では、自然の美しさをそのまま大切にしていますよね。それは私たちの文化に根付いているものだと思います。自分自身も、余計なものを足さずに、本来の美しさを追求することが大切だと思います。

日本の四季があるからこそ、微妙な変化や曖昧なものを大切にできるのだと思います。和食や着物なども、季節に合わせた工夫が凝らされています。日本の色の名前にしても、「四十八茶」や「百鼠」といった細やかな表現があります。感性を言語化してきたのも日本の特徴です。漢字、カタカナ、ひらがなを使い分けることで、微妙なニュアンスまで表現できる。これも日本独自の文化です。

コントリ編集部
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なるほど。そこから「あり方」を考えることが重要だというお話に繋がるのですね。

はい。季節や自然に合わせたあり方を大切にすることで、人も社会もより美しく、調和が取れるのではないかと思います。それを実践する人が増えると、非常に気持ちの良い社会が作れると信じています。

コントリ編集部
コントリ編集部

たくさんのお話をうかがわせていただきました。最後に、岩城さんからこれだけはということがあれば、一言いただきたいなと思います。

全部言ってしまいましたね。言い残すことは特にないですが、究極的には自分の美しさを見るということに尽きると思います。

ただ、それだけでは伝わらないのも事実です。「自分の美しさとは何か」「美しいとはどういうことか」「なぜ美しさが大切なのか」といったテーマについて、段階を踏み、あらゆる角度から伝えていかなければ、本質は伝わらないと思います。そこは常に試行錯誤しながら進めていきたいところです。

迷わずに、悩み続けることが大切だと思います。迷いとは、「行くべきか、やめるべきか」といった判断をぐらつかせる状態のことです。この状態では、良い仕事はできません。一方で悩みとは、「どうすれば最も伝わるか」と考え続けることです。ある相手にはどう伝えたら効果的か、他の相手にはどのように工夫すれば良いか、といった問いを突き詰めることです。これらの悩みはなくなることがありませんが、そうした過程が私にとって人生そのものです。

コントリ編集部
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悩みながら進めるためにも、やはり軸が重要ということですね。

その通りです。迷わないためには、明確な軸を持つことが大切です。そして人生には様々な壁がありますが、それを悩みながら、そして楽しみながら乗り越えていくべきだと思います。自己成長を図る上では、自分が本当にやりたいこと、社会から求められていること、自分にしかできないことの3つが重なる地点を見つけることが重要です。この3つが揃うと、迷いは消えます。それが人生の使命だと思います。

使命とは「どう命を使うか」ということです。それを私は、どう美しく、鋭くいられるかという軸で考えています。この基準で日々の判断を行い、引き算的に選択しています。要は、美しいかどうかですね。これ以上にシンプルな基準はありません。冒頭からずっと触れている哲学とは「誰かのために」「社会のために」といった、自分を超えた視点に根差すものだと思います。自分の利益だけを追求するのは野心や野望であり、哲学ではありません。哲学は時代や状況に左右されない普遍的なものであり、そこに使命が生まれるのではないでしょうか。

コントリ編集部
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非常に深いお考えです。もうひとつ、最近話題の「レジリエンス」という言葉についてもお考えをうかがえますか。

レジリエンスとは「折れにくい心」という意味です。困難な状況に直面しても回復できる力のことです。心が折れやすい人とそうでない人の違いは、自分を見つめているかどうかにあると考えています。自分を持っている人は、他人と比較せず、自分自身をしっかりと見つめています。一方で、比較に囚われる人は、自分に価値がないと感じやすく、最悪の場合、自分の存在意義を見失うことさえあります。

コントリ編集部
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それらの考えを、どのように教育や指導に活かされていますか。

私は愛媛県の認定講師として活動していますが、学歴や肩書きではなく、私にしかできない方法で伝えることを評価いただいていると思います。この活動が広がることで、愛媛県だけでなく、他の地域にも良い影響を与えられるようになれば嬉しいですね。学校や企業でも、美しさを重視する価値観が必要だと思います。正しさは数値化できますが、美しさは数値化できません。学校の評価がテストの点数だけではなく、生徒一人ひとりの輝きを評価するものになっていくことを願っています。

息子にも、小さい頃から「他人との比較ではなく、自分の美しさを見つめることが大切だ」と伝えてきました。学校では比較評価が避けられない現実がありますが、家に帰ったら「それはどうでもいい、自分の美しさに立ち返れ」と言い続けています。それを考え続けることが、人生において最も重要なテーマだと思います。

コントリ編集部
コントリ編集部

非常に感銘を受けました。本日は貴重なお話をありがとうございました。人の心やその美しさに迫ることで、「ブランディング」という事業に新しくも本質的な一手を投じておられるということがぐっと伝わってきました。多くの人に思いが届き、人が自分の美しさと向き合える社会を、私たちも実現していきたいと考えさせられました。

コントリ編集部からひとこと

岩城氏が語る「あり方」重視のブランディング論は、現代のビジネス環境に新しい視座を与えてくれます。数値化や比較による差別化ではなく、その人や企業にしかない「美しさ」を見出すというアプローチは、ともすれば成果主義に偏りがちな現代社会への警鐘とも受け取れます。

特に印象的なのは、「足し算」から「引き算」への転換と、「正しさ」から「美しさ」への価値観の転換です。情報や知識を増やすことよりも本質的な価値を見出す姿勢、そして対立を生みやすい「正しさ」の追求ではなく、共感を生む「美しさ」の追求を重視する考えは、分断が深まる現代における新たな対話の可能性を示唆しています。

この度は貴重なお話を聞かせていただき本当にありがとうございました。

コントリ株式会社
代表取締役
飯塚 昭博

ギャラリー

プロフィール

株式会社流義
代表取締役
岩城 博之

ブランディングコンサルタント 1976年2月3日生まれ。高校卒業後、ダイキ株式会社を経て、イオン株式会社、株式会社リクルートなど複数社で要職を歴任。統括マネージャーや営業所長として組織マネジメントの経験を積み、39歳で独立。

現在は、企業のブランディングと人材採用・育成に特化したコンサルティングを展開。2019年7月には東京オフィスを開設し、首都圏や中部地域を中心に活動領域を拡大。企業理念の構築からブランド戦略の策定まで、中小企業の持続的な成長をサポート。

全国各地での講演・セミナーは年間200回を超え、実践的な知見を活かした独自のブランディング手法には定評がある。企業の「想い」を形にし、選ばれる企業づくりのエキスパートとして活躍中。

会社概要

設立2016年4月
資本金50万円
所在地愛媛県松山市東長戸3丁目1-22
従業員数2人
事業内容企業研修を通じた、ビジョン、哲学を明確にするブランディングのプロデュース
HPhttps://ryugi.co.jp/

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