好きな仕事で、新しいキャリアを。アナウンサー業の無限の可能性を創る|株式会社トークナビ

テレビでの華やかさが目立つアナウンサーという仕事ですが、実際はワークスタイルによる壁があり、長く安定して活躍することが難しい職業でもあります。株式会社トークナビの樋田 かおり代表は、既存の枠組みを超えてアナウンサー業の魅力を広い分野に届けることで、新しい働き方を実現しました。

司会として、広報として、時には営業や人事として。ライフステージが変わりやすい女性たちが、「女性でも」ではなく「女性だからこそ」輝ける環境はどうやって創られたのでしょうか。樋田代表自身のアナウンサー経験、そして経営者として手探りで道を切り開いてきた足跡を辿ります。

「話す・伝える」力で輝く多様な事業

コントリ編集部
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初めに、御社の事業内容について教えてください。

大別して3つの事業があります。今売り出し中の「女子アナ広報室」は、声を使った仕事や取材経験のスキルを活かして社会の役に立ちたいという方に向けて、アナウンサーのセカンドキャリアを作るために立ち上げた事業です。

私たちがクライアント企業の広報担当者として会社の魅力を代弁することで、取材を呼び込んでいます。それまで全くメディアから注目されていなかった会社がたくさんの記事になったり、時にはテレビ取材で特集されたりする。そんなことが実現できるサービスです。

もう1つは、アナウンサーが講師をする、「話す力」に特化した研修事業を行っています。トークナビという社名はトークをナビゲーションするという意味でつけておりますので、まさに弊社らしい事業だと思います。

立ち上げ初期は個人を対象に、話し方教室でレッスンをしていました。しかし、ビジネスの可能性を広げるために法人化し、半年後には法人向けの研修事業に切り替えました。初めは話すことが苦手な新人営業マンなどを対象に実施していましたが、今は管理職の方に受講していただく研修も組んでいます。

3つ目はまたガラッと変わるのですが、「女子アナ司会部」という事業です。これは、私達自らがクライアントの現場に出て話す事業です。アナウンサーとして出演したり、インタビュアーになったり、東京ビッグサイトのような展示会場や、ホテル内での企業のキックオフイベントなどで喋ったりと、現場の種類は多岐に渡ります。話すスキルが求められる現場はたくさんあるので、そこにアナウンサーをキャスティングする事業が「女子アナ司会部」です。

コントリ編集部
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最初からこの3事業を柱に考えていたのでしょうか。

いえ、事業を展開していく中でこれらが主力になっていきました。

女性が活躍できる事業を考える上で重要なのは、拘束時間の壁を取り払うことです。人前に出て話す仕事、例えばイベントの司会をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。会場までの移動に往復1時間、イベントとその準備撤収で短く見積もって4時間かかるとして、こうなると実質丸1日拘束されることになりますよね。独身でフルで動ける時代は活躍できますが、子育てが始まると3~4時間拘束だけでも保育園に預ける事情で難しいのが現状です。ましてやテレビで担当番組を持つようになれば、決まった曜日・日時に決して穴を空けられません。

コントリ編集部
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確かに、必ず同じ時間に、同じアナウンサーの方が番組に出演されているのが視聴者にとっても当たり前の感覚がありました。体調管理などプレッシャーはかなり大きなものだったのではないでしょうか?

今後時代と共に変わっていく部分ではあると思いますが、私がアナウンサーとして働いていた頃は、穴を空けないことが当たり前という認識でした。自分自身が作るプレッシャーもありますし、多かれ少なかれ会社や業界が求める常識でもありました。私自身、一度大きく体調を崩して代わりをお願いしたことがありますが、それ以降、穴を空けるのが本当に怖かったのを覚えています。

自分の体調管理だけでもシビアな環境の中で、ましてや子供や親などの家族の体調に勤怠が左右されるようになってくると、自分の番組を持つことは当然難しくなります。このように、時間の制約は常に30歳前後からのアナウンサーの悩みでした。子供が大きくなってからまた働きたいと思っても、急にテレビに戻ることはできません。単発の司会業は1本あたりいくらで働くので、不安定な働き方になってしまいます。その人の本領を発揮できるようにするためには、もっと安定的にできる仕事が必要です。事業を作る際はそこを意識しています。

コントリ編集部
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ビジネスマナー研修というくくりで考えると、競合する会社は多いように思います。その中で御社の強みはなんでしょうか。

強みは、新入社員から経営者まで広く研修対象としてカバーできるところです。

伝えることに関する課題は、社会人の各フェーズに幅広く横たわります。新入社員の時は「自分の考えがうまく伝えられない」という課題が多いですが、管理職になると「部下にどう伝えるか」という能力が求められます。自分がうまく話せるかどうかだけではなく、部下の育成のための伝える力が必要になります。

また、経営者の方はパートナー企業やお客様と新しく出会う機会も多く、社員や顧客へのメッセージ発信など、日常の全てが「伝える」ことに集約されています。いろいろな経営者にお会いするうちに、話す・聞くことがお上手な経営者がおられるほど、会社の規模が大きくなっているという共通点を見つけました。向上心のある経営者の方にレッスンを届けることは、そこで働く方々の喜びにも繋がります。そう考え、研修範囲を新入社員から社長向けまで組んでいくことにしました。

コントリ編集部
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いわゆるスピーチやプレゼンだけではなく、日常シーンの話し方指導もなさるというのは、とてもユニークです。日々の会話でどう物事や想いを伝えられるかというところが仕事の業績やスムーズさに影響するのは、まさにおっしゃる通りです。

上京して見えた壁と起業の第一歩

コントリ編集部
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この事業を起業したきっかけを具体的にお聞かせください。

28歳の時に地方のテレビ局を辞めて東京に出てきました。

地方局アナ時代に、10歳ぐらい年上の先輩がアナウンサーではない部署に異動になる様子を見てきました。専門職で生きていきたくてテレビ局に入ったのに、先ほど挙げたような課題や社会的な需要で、先輩方は職種を変えざるを得なくなったのでしょう。

また、同時期に私が運良くニュースやバラエティー、ナレーションなど幅広い仕事をさせていただいたことで、もっと広い世界を見たくなり、東京に出ることにしました。

コントリ編集部
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それが28歳。実際に上京してみて、地方と東京で違いはありましたか。

より業界のリアルを感じられました。アナウンサーはみんなタレント事務所やアナウンサー事務所に入っているのですが、現実は厳しく、たまに番組には出ているけれど生活費を補うためにアルバイトをしている人がたくさんいました。同じ系列の先輩やフリーになった方にも直接話を聞きましたが、よほど名が売れている一握りの人以外は、そうやってなんとか生活している人ばかりだということに驚きました。また、キー局の番組を持っている人でも、いつ番組が終わるかわからない危機感を常に持っておられます。

そういう業界なのが悲しくて、なんとかしなきゃと思いました。1年ほどは転職活動で様々な事務所を訪ねましたが、入ったとしても所属するだけですぐにお仕事があるわけでもありません。安定して働ける場所がないなら自分で作ろうと思って、起業を決意しました。

コントリ編集部
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課題を感じてはいても、20代で起業に踏み切れる方はそういません。背中を押してくれた人がいたのでしょうか。

いえ、多分深く考えていなかっただけですね。

会社の登記手続きを税理士さんに頼んだときは、相手にしてもらえませんでした。貯金はどのぐらいあるの?とか、会社を作るって大変なんだよ、簡単に作るって言ってるけど作っても継続できず潰れちゃうところが多いんだよ、って。それでもこちらはやると決めているので、「税理士事務所 銀座」で検索して何軒も回りました。

周りからの向かい風は他にもありました。私自身は気にしていなかったのですが、「20代で講師になるって何を考えてるの?」と、プロダクションの先輩に言われたことがあります。弊社に所属してくれた方も、「講師っていうのは、50歳とかキャリアをたくさん積んだ人がやるんだよ」と業界の人に言われて、不安になっていたこともありました。

私としては、年齢なんて何歳でも構わないと思っています。大学生の時、若い講師の方が、アナウンサーの講座を教えに来てくださったんです。ベテランの教授ではなく、年齢が近い経験者の方だからこそ、少し先の未来を教えてくれる素敵な存在だと感じました。そんな風に若い先生も大学生にとってはニーズがありますし、キャスティングする場所次第で活躍できると思っています。

コントリ編集部
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その通りですね。周りの声を重く受け止めすぎなかったのは、自分の中でこうするべきだという想いが固まっておられたからですか。

目の前に、実際に生きてけなくなっている人たちがいたからだと思います。地方では有名だった先輩方も、東京では誰にも知られていません。仕事を増やすために異分野の資格を取っている方もいますが、それを活用してフリーアナウンサーとして活躍されている方も滅多におられません。アナウンサーには勉強したいタイプの方が多いので、保育士だったり専門性のある資格は取っておられるのに、それを発揮する場がありませんでした。

コントリ編集部
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その場がないなら作ってしまえというのが起業のきっかけということですね。

シンプルですが力強い理由です。

本当に当時はまだふわふわっとしていたので、起業できるわけないと思われていたと思います。
でも、人それぞれ自由でいいじゃない、という気持ちがあったので前に進めました。

声を届けるチームワークと個人スキル

コントリ編集部
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御社のサービスを採用された企業の反応はいかがですか。

私達のサービス・支援を通して複数のメディア露出を実現できることが多く、クライアント企業には「今まで全くできなかったことが、急に変化した」と感じていただけています。また、特に社長に対しての取材の機会がどんどん増えることで、社員さんからもモチベーションが上がったという声をいただくこともあります。取材には大きな力があって、経営者が普段わざわざ言葉にしない部分を棚卸ししたり、取材を通して過去を語ることで当時の自分の信念を思い出して、この先もっとやっていこうという想いが言葉になったりします。

そういうメッセージが働く方を奮い立たせることも多く、すごく喜んでいただいています。

コントリ編集部
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従業員の方も、掲載されたものを見てくださるのは良いですね。

そうですね。社長は案外、想いを社内に伝える機会がありません。自分ではずっと思っていても、働いている人に伝わってないことも多いです。取材では社長は外向けに話しますが、出来上がってきた記事を読んだ社員さんが「うちってこうなんだ」と改めて実感してくれます。出た新聞を親に見せたら安心してくれた、とか。1つの取材が社長だけではなくて社員さんにもその家族にも喜んでもらえるきっかけになるという、ご依頼時の予想を超える効果を感じていただけることが多いです。

他にも、日経新聞に出たとか全国紙に出たなどの実績も得られます。大きい会社と協業や連携する時には、それだけで信頼に繋がっていくケースもあります。それで提携が決まりましたという報告をもらうこともあり、私たちも嬉しいですね。

コントリ編集部
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知名度UPだけではなく、採用面や営業面など、様々な会社拡大フェーズで取材されたものが活用できそうです。

記事を新聞社に許可を取ったうえで営業資料に入れて使う事例もありました。あとは、求職者が検索したときに社長の思いがたくさんweb上にあると、その会社のことを身近に感じやすく調べやすいという利点もあります。様々な喜びの声を届けていただいて、やりがいがあります。

コントリ編集部
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依頼された企業さんが多くのメディアから取材されるためのポイントや、御社の得意とする手法などを聞いても良いでしょうか。

数だけで言えば、一般的なPR代行よりはるかに多く取材を引き込めています。

日々開拓しているメディアのパイプが全国に900ぐらいあるのが強みですね。アナウンサー時代の繋がりではなく、立ち上げ時はゼロからのスタートでした。まずは自分が働いていた局のディレクターなどからつては広げていきましたが、大半はものすごい勢いで新規開拓をした結果です。

コントリ編集部
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元々メンバーの皆さんも新規開拓の営業力をお持ちだったのでしょうか。

そんなことないです。むしろ、営業なんてやりたくないというメンバーもたくさんいます。ただ、声の仕事で誰かを喜ばせたいという想いはみんな絶対にどこかにあるので、それが実現できる感触が働き出してから見えてきたのではないでしょうか。それは働く原動力になると思いますし、自信を持って営業もできます。

冒頭にお話ししたように、フリーのアナウンサーは1本あたりいくらという報酬で現地に行って働くのが当たり前の仕事でした。在宅で働くなんてまず不可能だったのを、メンバー1人ずつがロールモデルになって実現してくれました。そうやって伸びて変わっていく姿をお互いに見て、成長していけたのだと思います。

コントリ編集部
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素敵ですね。身近にロールモデルがいるというニーズは、特に女性にとっては大切なのかなと思います。個々人の成長スピードもすばらしいものですが、チームとしての動きもあるのでしょうか。

もちろんです。私達がアプローチする媒体は幅広く、マスメディア、つまりテレビ・ラジオ・新聞・雑誌などが対象です。地方のケーブルテレビから大きい局までありますが、メンバーそれぞれが異なる分野にアプローチしており、定期的にミーティングをしています。チーム連携がうまいメンバーなので、集まることで情報共有ができます。

コントリ編集部
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アナウンサーは個人プレーの仕事だという見方が世間的にはありますが、チームプレーが得意な方々だったのですね。

アナウンサーとひとくくりにすると、そこは分かれますね。たとえばエンジニアとひとくくりにしても色々あるのと同じように、アナウンサーにも民放系で番組の演者として出る割合の高かった人もいれば、自分でニュース原稿を書いて動画の編集までするような企画が得意な人もいます。地方局の場合だと、一人でディレクター、兼記者、兼編集、そして最後は自分がナレーションを入れて完成させるなど、業務の半分以上は裏方です。

世間的にはキー局のアナウンサーのような、ザ・演者のような人をイメージすると思いますが、地方のアナウンサーは「作る人」なんです。

作る人をさらに分類すると、チームでやることが得意なタイプと、黙々と個人プレーで編集して納品する人とに分かれます。個人のやり方もありますが、勤めた会社や局の方針にもよります。

コントリ編集部
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御社にはどういったタイプの方が多いなど、傾向はありますか。

地方局の経験やニュースを書いていた経験が長い人は、弊社でも取材から執筆まで担って活躍するパターンが多いです。また、NHKなどの経験者の方は「何分の特集を月2本納品する」というようなディレクター業務にも慣れておられるので、企画力に優れています。そういう方は女子アナ広報室の取材班をやってくれています。タレントとして前に出るのがメインの方よりも、幅広いことに経験値がある方や、経験はなくても苦手意識のない方が活躍していただきやすいかなと思います。

コントリ編集部
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ということは、元々ビジネススキルを磨かれた方が活躍しておられるということでしょうか。

いえ、ビジネススキルについては、弊社に来てから学ぶ方が多いです。正直、アナウンサー時代は部分的な業務が多すぎて、一般のビジネスマンのようなビジネススキルの訓練を受ける機会は少ない傾向にあります。むしろ取材先でお客様扱いを受けるというか、取材に来てくれてありがとう一緒に写真を撮りましょうと、割ともてなされがちな職種です。

30秒や3分といった決まった尺できっちり伝えるための研修はひたすら受けていますが、BtoBのビジネスマナーやパソコンの操作には疎いことも多々あります。

コントリ編集部
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アナウンサーというキャリアを一通り極めた方が、そこからゼロスタートで新たなスキルも磨かれる。なかなかできることではありません。

だからこそ弊社は入社後の研修期間を長く取っています。パソコンを使って文章を書くリリースの研修や、ビジネスマナーの研修。それから、アプローチ研修といって、メディアにアタックして営業成果を獲得していくための研修もあります。新しく来た方は順番にそれを受けてから、今活躍している先輩を見てOJTを繰り返すので、一般的な会社より研修期間が長いですね。

弊社は元々研修会社なので、まずは自分たちも研修を受けてスキルを身に着けてもらっています。

コントリ編集部
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ベンチャー企業で、1から丁寧な研修を設けているというところはなかなかお目にかかれません。キャリアをまた作り直すのはすごくエネルギーがいることだと思うのですが、みなさんタフな方が集まっているというのがここまでのお話から伝わってきました。

女性の活躍、そして全ての人の輝く場所へ

コントリ編集部
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女性の従業員が生き生きと働くために工夫されていることは他にありますか。

女性主体の組織作りは私もずっと苦労しながらやってきて、明確な答えはまだありません。この5年間に試行錯誤し、今ようやくまとまってきたなという感じです。バレーボールの全日本女子代表監督であった眞鍋政義氏の本を読んだり、マネジメントの本を読んで載っていたことを実践してみたりしました。途中コロナ禍もあり、女性ばかりの組織はちょっと無理があるのかなと思った時期もありました。しかし、女性だけで作っている強いスポーツチームがあるのだから、女性だからダメなんてことはないと考え直しました。重要なのは仕組みと、監督がどう声をかけていくかだな、と。

コントリ編集部
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声のかけ方や気配りについて、実際にどんなことを意識しておられるのでしょうか。

たとえば、女性は気配りや想像力が働く一方で、言葉を深読みして解釈してしまう人も多いです。良かれと思ってかけた言葉がネガティブに受け取られる経験はみなさんにもあるのではないでしょうか。そこで、女性部下に対する声掛けでは意図を添えることを意識しています。相手のタイプを考えて、一度「どう受け止められるか」を想像してから発言することをルールにしています。仕事を頼むときも、「これはこういう仕事で、細かいところに目が行き届くことが大切だから、ぜひそういうことが得意な〇〇さんにお願いしたい」と伝えるなどですね。

また、女性部下とは1対1の対話を重視し、あなたの味方だというメッセージを伝えて安心感を持ってもらうことも重要です。

コントリ編集部
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なるほど。大切な心遣いですね。
樋田さん自身がそういった声かけができるのは、継続的に意識された結果でしょうか。

はい。だいぶ変わったように思います。私だけでなく、みんな最初に入ってきた時と今の状態は別人ぐらい違います。本当に人って成長するなとみんなに教えてもらっています。

他にも、考え方を変えてくれた現場もあります。司会の仕事も引き続きさせていただく中で、あの霊長類最強女子・吉田沙織さんにインタビューさせていただく機会がありました。その時に男女は関係ないなと思いました。女性でもここまで行ける人がいるのだから、女性だからダメだとか過去の経験が浅いからダメだとかそういうことではないのだと思いました。やりたいことをいかに全力でできるかの方が重要なんだと考えられるようになりました。

アナウンサーの仕事はスポーツのようだと他のインタビューでお話ししたことがあります。華やかなイメージとはギャップがあって、現場で1秒単位のコントロールをして話しているところはアスリートに近いと思っています。

実は、私の実家はマラソン選手の高橋尚子さんのご自宅が近所なんです。小さい頃って、ご近所の有名人はヒーローじゃないですか。だから高橋さんが自分の中で女性の憧れの存在でした。私もマラソンをやっていて、いかに1秒でも早く走るかという記録を日々更新していました。

アナウンサーの勉強では、常にストップウォッチを持って3分以内に喋るなど、決まったトーク尺を1秒単位で調整することが必要でしたので、自分の中で全てが繋がる感じがありましたね。

コントリ編集部
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そういった秒単位を突き詰めるお仕事は、ストレスがたまるものではないですか?

ストレスというよりも、達成感がある業界だと思います。番組は、オンエアが終了するたびに反省会を繰り返します。私はアナウンサーという演者の立ち位置ですが、チームは何十人もいて、みんな同じスタッフです。みんなで何かを成し遂げる感覚が毎日あります。

普通の仕事だと今日架電して商談しても、成約が0件だったら達成が何もないじゃないですか。業種によっては1か月頑張っても0なんて場合もあるところが、アナウンサーは毎日、しかも1日に担当するニュース本数分の達成感があります。冒頭はアナウンサー業の壁ばかり話してしまいましたが、ひとつひとつはなんて面白い仕事なんだろうと思っています。

コントリ編集部
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なるほど。プレッシャーはあれど、そうやってポジティブに捉えて愛着と誇りを持って働く方もいらっしゃる。素敵な職業です。

そうですね。様々な人に見られる仕事なので、放送が終わった後はご指摘やフィードバックがたくさん来ます。働き始めた頃はびっくりしました。自分を否定されたような意見もいただきますが、数が多すぎるとあの人はこう言ってたけどこの人はこう言っていた、じゃあ気にしても仕方がないなというように、理不尽すぎる意見に左右されず芯を持つ経験も積めます。個人的には、むしろ仕事がないことの方がストレスですね。

コントリ編集部
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忙しく頑張る人がよくおっしゃる言葉です。

現在、採用は年に3回オーディション形式で行っているとうかがいました。採用の基準はどのようになっているのでしょうか。また、年度ごとではない採用時期を選ばれた理由があれば教えてください。

私はマイペースなので、最初に会社を作った時、1年間で1年のことをやろうとしていたら半分ぐらいしかできないと思いました。そこで、1年の目標をクリアするためには4周やろうと思い、3ヶ月を1年だと思って生きてみました。

コントリ編集部
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時をねじ曲げたわけですね。発想の1つ1つが起業家らしくて面白いです。

経営の経験もないので、まずは数をこなして失敗しながらやり方を見つけるしかないなとも思いましたね。とにかく3ヶ月で1年だと思い込んで、新しく入った人に3ヶ月後には後輩が入ってくるからねと言っていました。

数をこなせれば見えてくるものが違ってきます。採用の基準も最初はアナウンサー経験者ばかりを採っていました。しかし、そういう人ばかりだとどうしても過去の自分の経験に振り回されてしまうところがあるというか、今を見直したり前に進むにはミスマッチになりやすいと途中で気付きました。

元バスガイドという経歴のスタッフもいますが、求職の時点でアナウンサーかどうかではなくて、これからアナウンサーとして活躍したい、この仕事を通して声の力を役立てていきたいと先を見ている人の方が活躍できるということが採用活動を経験してわかりました。

コントリ編集部
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確かに、過去の成功体験から離れられないと、現状が辛くなってしまうことがあります。

採用基準の項目の中で最も大事にしているのは「自分を信じる力がある人」というポイントです。仕事ができないと悩む時、大体その人自身がもう自分はできないと思ってしまっていますよね。一方で、できる人というのは何回できなくても自分ならできるかもと思って何度も挑戦するからこそ、できるようになっていくのです。

その乗り越える力の大元はなんだろうと考えた時に、自分を信じることができる人なのかなと思い、採用基準に入れました。

コントリ編集部
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「自分を信じる力」の有無は、どうやって見分けておられますか。

それこそ「使っている言葉」ではないでしょうか。その人が使う言葉には、過去の経験や思考が表れてきます。肯定的な言葉を使う方は自分のことも相手のことも肯定することができる。しかし、「でも」とか「これは苦手で」とか、否定から入る話し方をする人は、自分を常に否定しているので業務をお願いすることも難しいです。できるかわからない不安のせいで、走り出すのに最初から時間がかかってしまうためです。

コントリ編集部
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なるほど、さすが言葉のプロの視点です。 
どの企業でも、せっかく採用したのにすぐ辞めてしまったという声はよく聞きます。だからこそ最初の段階で見極める力がとても大切だと思うので、このお話は多くの方の参考になりますね。

まだまだ私たちも走っている途中の段階だと思います。

コントリ編集部
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女性管理職の登用など、社会の要請もあり女性をマネジメントする必要性を感じる経営者が増えています。女性が長く定着して活躍していくために、経営者側が理解しているといいと樋田社長が思うことはなんでしょうか。

男性が成果を求めるのに対して、女性は居心地の良さを重視するという傾向への理解は重要なのではないでしょうか。

管理職の男性だと、一般的には、とにかく数字で成果を出すのが仕事ですよね。もちろん出していかねばなりませんが、女性の場合は仕事をせかせかやることよりも、「安心」が鍵になってきます。居心地がいい場所で仲間がいるとか、頼れる先輩がいて自分が守られている空間である、というように安心感を覚えることで、女性は活躍して能力を発揮します。

安心感のない環境ではまず女性は活躍しない、というのがずっとやってみてわかったことです。

男性経営者の方は、私が女性だからやっていけていると思うかもしれませんが、そうではありません。他社の例を聞いてると、女性ばかりの組織は無理だとか、女性を採用する割合を減らしているといったことも耳にします。ライフステージが変わると働けなくなる人も多いので女性は即戦力にせず、とにかくいつでもすぐ動ける男性を管理職に選ぶ、というように考え方が偏っているケースも多いです。

コントリ編集部
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正直、これまではそういう考え方が主流でしたよね。今は徐々に女性も活躍する環境に変わってきています。

弊社にも、すごくいい女性の管理職が来てくれました。存在自体が安心そのもので、落ち着いてらっしゃる。そういう方の存在は、他の人が力を発揮するベースになってくれます。そんな出会いもあって、女性ばかりの組織でも活躍できるビジョンが見えてきました。

女性アナウンサーは職種の特性からプレイヤーが多い傾向があります。そういったアナウンサーの傾向も鑑み、マネージャー気質の他業種出身の方を探しました。

コントリ編集部
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なるほど。長く女性メインの組織づくりに向き合ってこられた豊かな見識をうかがえました。
最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

「伝える力で企業の発展に貢献する」というミッション・ビジョンを、さらに追求していくことです。今順番に作っていってるところで、研修事業から、司会のキャスティング、広報の代行と階段を昇って来ました。現状で完成形とするのではなく、ここからさらに複数の