ワタシ発、あなたへ。輝きと幸せを広げるチームを目指して|株式会社マルラニ
ビジネスの現場における男女格差は、現代社会の大きな課題のひとつです。男性のように女性が働くことが正解か?女性の役職者割合が「成果」か?様々な論点はあれど、実際にそこで働いているのは生身の人間である「あなた」や「仲間」です。
都内にオーガニックやナチュラルな商品を扱うセレクトSHOPと飲食店を展開する株式会社マルラニは、全ての人が輝いて働き生きられる場所を提供するべく、同社代表の高橋 真希氏の元に志を持つメンバーが集いました。人とどう繋がって、どう支え合って、魅力を引き出すのか。高橋氏の経営哲学を紐解けば、課題だと思っていた組織の悩みがチャンスの光に変わるはずです。
会社員から独立・開業へ。事業立ち上げを繋いだ縁
本日はよろしくお願いいたします。まずは、御社の事業の内容についておうかがいします。
2種類の店舗ビジネスを展開しています。
1つは地球環境やナチュラルさにこだわった商品を扱う小売店、『LAULE’A(ラウレア)』です。
私は、20代前半から肌荒れや頭皮に関する悩みがありました。薬局でシャンプーを買うときは成分表を確認していましたが、当時はまだ体に優しい商品が非常に少なかったです。多くの企業は低コストで大量生産しているため、無農薬の野菜を扱うような店でしか取り扱われていない商品を探して使っていました。
最近では体に優しい商品を扱う企業が増えてきましたが、その生産者やメーカーは大手というよりも小規模で志を持った方たちが多く、広告費用が潤沢ではありません。
最近はSNSで発信する企業も増えましたが、ネット注文だけでは使い心地や香りなどが分からないことが多いです。実店舗でテスターを試せると、安心して購入できますよね。そのため、私たちの店舗では、消費者目線で作られた商品を扱うようにしています。たとえば日本のメーカーでは、沖縄の池間島で作られているエシカルコスメなどを取り扱っています。まだ一部の人にしか知られていない商品情報でしたが、お店を開くときに必ず置きたいと思いました。
商品選びは、どのような基準で行っていますか。
スタッフと相談した上で、最終判断は私がします。お店の雰囲気や理念に合うものを選びます。
あるとき海外で話題になっている本を読んで、それまで自分が信用していた商品に疑問を持つようになりました。それから、消費者目線で作られている商品やメーカーに興味を持つようになりました。
品質の良いシンプルなものは、10年後に結果が現れます。現在店舗でお取り扱いしているメーカーの説明会では「10年前の肌に戻すことはできないが、今の段階で10年間の老化を止めることはできる」というコンセプトで商品づくりをされているという話を聞きました。少し高価でも、品質の良いものにはお金を使う価値があると考えています。
自分の体に直接使うものですから、なおさらですね。
もう1つは飲食店の事業ですね。ぜひ開業時からのエピソードをお聞かせください。
元々、証券会社で一般事務をしていました。両親が離婚し、シングルマザーの家庭で育ったので、ただ漠然と仕事をしているだけでは将来が明るくならないという感覚がありました。何か自分でやりたいと考えつつも、社会人になってすぐは右も左もわからず、悩みながらの2~3年を会社で過ごしました。
そんなあるとき、知り合った経営者の方から「会社員をやりながら、次のステップの準備をするんだ」と教わりました。そのアドバイスに従って、土日や平日の定時後に営業代行の仕事を受けるようになりました。最初は全く売上が立たなかったものの、少しずつ成果を上げていく中で、将来起業したい仲間も集まりました。
人数が増えるにつれて集まる場所が必要になり、お店を持つことを考えるようになりました。飲食店に決めた理由は、仲間内に料理ができる人がいたためです。仲間が集える場所を提供することを目的に、夜は貸し切りスペースとして使うなど、柔軟に運営してきました。
なるほど。初めから飲食業をやろうと思っていたのではなく、「チャレンジしたい」という仲間との出会いで方針が定まったのですね。立ち上げ後の様子はいかがでしたか。
コロナ禍で夜間の営業ができなくなった際、カレーをメインに据えて対応しました。友人である飲食コンサルタントのアドバイスを受け、メニューを改良し、カレーグランプリにも挑戦しました。初年度は入賞を逃しましたが、多くの応援をいただき、翌年に再挑戦しました。全力を尽くした結果、2年目にはさらに良い成績を収めることができました。
そうした場に出て強く感じたのは、応援の心強さです。応援してくださる方々がSNSで呼びかけてくれたり、直接「自分は行けないけど、ぜひ行ってあげて」と声をかけてくれたりしました。そうした呼びかけを受けて、「○○さんに勧められて来ました」と言ってくださるお客様が増えました。おかげさまで、カレーグランプリ当日は、終日ひっきりなしにお客様が訪れていました。
また、美味しいカレーを作るということはもちろんですが、戦略の重要性も強く感じました。美味しいカレー自体はどこにでもあります。特に、当社が競争しているエリアには400から500のカレー提供店があり、どこで差をつけるかが非常に重要です。料理の質だけでなく、マーケティングの差が結果に大きく影響します。
確かに、同業店が飽和している状態では、経営的な視点がないと繁盛させるのは難しいですね。
ありがたいことに、私は経営者からいろいろなことを教わる機会がありました。料理において腕があるから独立するというのも一つの開業の理由ではありますが、経営と料理を提供することは全く別物です。
今一緒に働いている仲間にも、起業を志している人が多いです。料理の専門的な技術だけではなく、応援してくれる人や売上を作る基盤が必要です。むしろその基盤を作ることこそが大事だと話しています。小さな規模でも生き残れる戦略を創る経験は、その後のキャリアの上にも必ず活きてくるはずです。
チームビルディングの要になる関係性
チームづくり・店舗づくりにおいて、どのようにメンバーを集めていますか。
紹介によってメンバーが増えてきました。今の店長も、友人の紹介で知り合いました。通常は求人広告を出すところですが、信頼できる友人からの紹介だったこともあり、ほとんど履歴書もなしに採用しました。
もちろん、誰でもいいわけではありません。協力体制が取れること、将来的に起業する前提でオーナー意識を持って取り組むことは全てのメンバーに求めています。最初は副業感覚でも、本業レベルで取り組む姿勢がないとうまくいきません。
私自身、経営者意識や当事者意識は、起業前の段階で徹底的に教わりました。「バイト感覚でやると一生バイトで終わる。経営者になりたいなら、何をやっていても経営者のつもりでやりなさい」と。全てを経営者の目線で見て、自分が全部お金を出すつもりで取り組むことで、考える力がつきます。実際には会社員はお金を出すリスクは取りませんが、意識だけなら持つことができます。
協働する皆さんも、同じような考えを共有できていますか。
そうだと感じています。仲間になってもらう時点で、新人だから…という壁を互いに作らず、一緒に足並みを揃える形で入ってほしいと伝えています。ただ、フリーランスのメンバーもいるので、仕事や時間の都合は考慮しながら進めています。その上で、自身の担当に関してはきっちり責任を持ってやってもらっています。
同じ意識でやれる人を見つけるためにも、常に発信し続け、ミーティングで意見交換をしています。価値観が合わない場合は離れてもらっても構わないというスタンスです。個々人の自由意思で参画できるプロジェクトだからこそ、やるならプロとしての意識を持ってやろうと伝えています。結果を出したい人ほど、そういうメッセージに共感してくれますし、実際に独立したメンバーもいます。
うまく組織と個人のバランスを取られているのですね。
お店もまだそれほど大きくないので、自分ができそうな範囲で挑戦できるという点も良い形で働いているかもしれません。規模が大きすぎると、自分の仕事の範囲を線引きしてしまいがちになりませんか?自分事として身近に感じられる取り組みがたくさんあることも、プロジェクトの力でメンバーの主体性を引き出す大事な要素になっているように思います。
どちらの店舗事業においても、一緒に働く人を大切にしておられることが伝わりました。志を持った人たちのリーダーになる上で、意識しておられることはありますか。
長い付き合いのお客様もそうなのですが、スタッフは私の人間性や何をしたいかを知ってくれていて、共鳴してくれる方が多いです。私も、そういった関わってくれる方に対して働きやすい状態を保つことを心がけています。
特に女性は上下関係では動かないことが多いです。命令されれば一応やるけれど、心から従うわけではないというか、対等でいる方が付き合いが長続きします。年齢が上でも、友達のような関係で学び合う方が、女性が頑張ろうと思うことが多いのではないでしょうか。
カレーグランプリのときも、私はリーダーだから指示出しをして…というような形でなく、メンバーと一丸となって、朝から晩まで全力で駆け抜けました。
トヨタの社長がおっしゃっていた「リーダーとボスの違い」を意識していますね。自分が率先してやらなければ、誰も動きません。拡大してきた現在はリーダーシップを委譲することもありますが、立ち上げ時は自分が率先してやっていました。
ありがとうございます。横の繋がりや信頼関係の構築については、どういう部分をサポートして見守るのが良いか、考えをお聞かせください。
人が集まると、いろいろな感情が出てきますし、取り組み方が違って意見が合わないこともあります。その時は仲裁に入ったり話し合いを促したりします。大前提、メンバーみんながこのコミュニティを好きでいてくれているので、荒らすようなことはしないと思っています。仮にそういう人がいたら、出て行ってもらいます。みんなが安心して仕事やプロジェクトに取り組める環境を作ることが私の役割ですし、ケースバイケースで対応を変えることもあります。
もちろんネガティブなことへの対応だけではありません。人の繋がりって、本当に面白いんです。男女の違いや年齢差、様々な人間関係があります。
そんな風にメンバーを見守ることも、やりがいになっておられるのですね。
そうですね。仲間が喜んでいる姿を見るのはとても嬉しいです。たとえば、新しく入ったメンバーがチームに貢献し、みんなからすごいね!ありがとう!と声をかけられている光景を見られるのは、自分のことのように嬉しいです。ひとりひとり、意外な才能を発揮することがあり、それがチームの力になるのです。
保育士から転職してきた女性社員が、チーム作りを通じてPMの仕事ができるようになり、転職後に手取りが40万円増えたことがありました。そんな変化に立ち会えると、意義のある仕事ができていると実感します。互いに良い点を見つけやすい環境を作っているので、結果、成長しやすい組織になっている手応えがあります。
女性の活躍を、社会全体の活性化へ繋げる
高橋さんが発信している記事の中で、ロールモデルになる女性がいなかったので自ら起業されたというエピソードを拝見しました。高橋さんが参考にしてきた方や具体的な人物はいますか。
起業の立ち上げ時期は一番お世話になった男性経営者がいらっしゃいます。仕事の厳密さ、成果への責任を教えてもらいました。今もなお爆速で成果を作られていて本当にすごいなと尊敬しています。今は、その方に加えてこれまでに出会った素晴らしい方々の要素を取り入れさせていただいています。
50代になっても輝いてお仕事をされているチャーミングな女性経営者。素晴らしいパートナーシップをお持ちの経営者のご夫婦。それぞれの素敵な要素を複合的に取り入れているイメージです。素晴らしい面を見つけ、自分にとって価値のあるものに組み上げていく方が良いと思っています。
それに、憧れている方であっても、完璧な人はいません。むしろ、その不完全な部分が親しみを感じるところでもあります。仕事はできるけれど、食べ方が少々わんぱくだとか、そういう一面を見ると親近感が湧きませんか?完璧すぎると、逆に距離ができてしまいます。
そういったことに気付ける高橋さんもまた、メンバーから見て憧れであり、親しみを感じる一人になっておられるのでしょうね。自らはどのようなロールモデルになることをイメージしてこられましたか。
仕事を頑張っていると、プライベートに問題が出てくるということはままあります。片方が激務で意思疎通がおろそかになって離婚してしまうなど…そういう家庭を見ると、仕事に打ち込むことにマイナスのイメージを抱く方もいるでしょう。しかし、仕事で頑張りながら幸せなパートナーシップを築ける人もいます。私は自分が知識不足だったり、精神的に未熟だったことで過去に離婚を経験しましたが、今は幸せなパートナーシップを持てています。幸せな経営者がたくさんいることを示して、明るい未来はあるのだと希望を届けたいと思っています。
また、仕事を頑張っているからこそ、仕事以外の悩みが生まれることも多いです。スタッフの仕事の相談を聞いていると、プライベートの相談に変わることもあります。あまり良いことではありませんが、それが仕事のモチベーションに影響している場合もあるんですね。プライベートと仕事はつながっていますから、両方に適切に関わり前進させていくことを大切にしています。
関わる人たちとの年齢差は年々広がってきたこともあり、メンバーとは対等であると同時に、子育てをしているような感覚があります。一緒に仕事をする上で出来ることが増えたり、売上や成果を作る喜びを分かち合えることがとても嬉しいです。
女性の自立、仕事とプライベート両方の充実などを意識しておられる、その根源や原動力はどこにありますか。
母親の影響が大きいのかなと思います。私の母はずっと仕事をしていて、家事をしている姿はほとんど見たことがありませんでした。私が学校から帰るともう出かける準備をしていて、食事の準備も自分でやっていました。母の働く姿を見て育ったので、自分も仕事を続けるイメージを持っていました。私が高校卒業後にすぐに社会に出た理由も、早く社会に出てお金を稼ぎたかったからですし、それが家族を養う手段だと思っていました。若い頃から自立意識が芽生えていたのは自覚しています。
今後のビジョンについて、ご自身の事業や活動を通して、どんな世界を作りたいですか。
大きな話ですが、世界が平和になることを望んでいます。そこで重要な存在が女性だと思っています。
家庭ではお母さんが太陽です。お母さんが笑顔でいることが家族全体の幸せです。
また、職場で女性が楽しそうに働いていると、社内が活気づきます。職場に安心感があれば、たいていの場合女性は明るく過ごせるので、女性がイキイキしていない職場ならばその環境に何か問題があるのでは?と原因を探ることができるとも思います。女性が幸せでいることは、組織や社会全体の指標の一つになりえると考えています。
また、女性が起業することを推奨していきたいですね。女性が会社やパートナーに依存せず、自分で生活や経済の基盤を築く。そして何かあった時には自分と家族を守れる力を持っている。自立ができているからこそパートナーとの関係も対等でいることができると思っています。
自分の幸せは自分で掴み取ろうというメッセージを今後も発信していきたいです。そうすることで、女性の起業はもっと一般的になると思います。
そうなることは、男性にとっても良いことですね。
そうです。女性が自立することは、男性にとっても良いことです。責任を全て男性に押し付けるのではなく、お互いに支え合うことが重要だからです。私のパートナーも経営者なので、家のことなどは協力しあって行っています。役割は決めずに、お互いにサポートし合うことが自然です。
個人の自由意思を否定することはしませんが、大局で見た場合、女性が働くことが家庭や社会全体に良い影響を与えると信じています。もちろん、性差による得意不得意は物理的に存在しますから、男性のサポートも借りながら、力を合わせて大きな成果を出せればベストですね。今までの「女性の働き方」は極端なケースが多いんです。「私は全然できないから…」となるか、「もう男なんていなくてもいい!一人でやれる!」となるかの両極端。そうではなくて、バランスを取るようなイメージをしてもらえばわかりやすいかと思います。
具体的には、どのように女性の活躍や幸せをサポートされていますか。
両極端になりがちな女性たちそれぞれにアプローチします。自信がなかったり自立していない女性には自立を促す一方で、いわゆる男勝りなタイプにはそのやり方では結局自分が損をしてしまうよ、というようなことを伝えることもあります。実は私にもそういう時期はあったのですが、歳を重ねていくうちに「やっぱり周りの力を借りた方がいいな」って思えるようになりました。女性は時々、自分がして欲しいことを文句を言うように伝えてしまうことがあります。
何かして欲しいとき、何かをお願いするとき、少し伝え方を変えるだけで相手への届き方は変わります。そうやって男性のサポートを上手に借りる方法も教えています。今の社会はまだ女性の活躍を十分にサポートできていないと感じます。
ただ私も経営者ですから、子育てをしながら働く人全員をサポートすることがどれだけ難しいのかも理解しています。しかしながら、自分の手の届く小さなコミュニティでなら、女性が輝く場を提供できると思っています。
ありがとうございます。今回お話しいただいた仕事とプライベートの両立や、女性の活躍できる人間関係の在り方などは、どのような業種、どのような世代の方にも共通する課題であり、成長の突破口であると感じました。ぜひ多くの方に、本メッセージを届けたいと思います。
コントリ編集部からひとこと
この度はインタビューさせていただきありがとうございました。今回は高橋社長が経営されている「Cafe& Dining jimbocho」で行いました。とても素敵な空間で高橋社長の想いに触れることができました。女性の活躍は今後の日本の競争力に大きく影響してくると私自身も感じます。高橋社長のような考え方の経営者がどんどん増え、日本をより良い方向に変えていけたら最高だと改めて思いました。
株式会社マルラニさんの今後の動向は要チェックですね!
本当にありがとうございました!
コントリ株式会社 代表 飯塚 昭博
ギャラリー
プロフィール
株式会社マルラニ
代表取締役社長
高橋 真希
神保町にて「Cafe& Dining jimbocho」を経営し、第11回神田カレーグランプリで優勝を果たす。また、環境に配慮した商品を扱うエシカルショップ「LAULE’A(ラウレア)」も展開し、持続可能なライフスタイルの提案に注力している。女性の自立や幸せな経営者を増やすことを目指し、東京や大阪を中心に「キャリアデザイン」をテーマとした講演活動を精力的に行う。さらに、ビジョナリーリーダーの育成にも力を入れ、次世代経営者のサポートに尽力している。
会社概要
設立 | 2016年2月 |
資本金 | 100万円 |
所在地 | 江東区福住1-17-11ML門前仲町5階 |
従業員数 | 3人 |
事業内容 | 経営コンサルティング事業 オーガニック雑貨販売業 飲食業 講演活動 |
HP | https://malulani.tokyo |