「串カツ」を世界へ―味にこだわり、外食の幸せを届ける|株式会社串カツ田中ホールディングス

串カツ田中ホールディングスの坂本壽男社長は、国内330店舗、さらには海外進出を視野に入れた「串カツ田中」の成長戦略を語る。全席禁煙の居酒屋や家族連れを意識したメニュー開発、カツサンドを通じた海外展開など、その発想は柔軟かつ大胆だ。

次なる目標は国内1,000店舗、そして海外でも愛される串カツを極めること。地域密着と新たな挑戦を軸に、おいしく楽しい食事を世界に広める挑戦が続く。

全国、そして世界に広がる「串カツ田中」

コントリ編集部
コントリ編集部

本日はよろしくお願いいたします。株式会社串カツ田中ホールディングスでは、多数の飲食事業を展開しておられます。事業について、詳しく教えてください。

メインは「串カツ田中」で、居酒屋業態です。数ある居酒屋業態の飲食店の中でも、弊社の特徴として、来店客の約30パーセントがファミリー層だというのがおもしろいところだと思っています。居酒屋にファミリーが来るのは珍しいかもしれませんが、全席禁煙にしたことで、家族連れが来やすくなりました。

また、「タレ焼肉と包み野菜の専門店 焼肉くるとん싸다」という韓国焼肉のお店を3店舗、「鳥と卵の専門店 鳥玉」という新鮮たまごにこだわったお店を関東・東北で3店舗展開しています。

京都の祇園では、「京都天ぷら 天のめし」というインバウンドをターゲットにした天ぷら店も運営しています。

また、アメリカのオレゴン州ポートランドにも3店舗構えており、現地では「カツサンド」を提供しています。海外展開については、串カツはまだ世界的な認知度が低いので、カツサンドという形で現地に受け入れられやすいメニューを選びました。

コントリ編集部
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串カツを直接海外に売り出すのではなく、より間口の広い形を模索されたのですね。

いきなり串カツを出しても、現地で受け入れられるかは難しいところです。今はインバウンド需要が増えているので、日本国内で串カツの認知度を上げて、いずれはアジアやアメリカにも進出したいと考えています。

コントリ編集部
コントリ編集部

インバウンドのメニューは開発されていますか。

メニューは基本的に全店同じです。特にインバウンド向けにアレンジしたものはまだありません。家族向けのメニューも多いので、たこ焼きなどは好評です。6人以上で来店すると無料になるサービスもあり、楽しんでいただいています。

ただ、適宜顧客ニーズに合わせて改善しています。大きなメニューの変更は年に2回ですが、季節ごとに少しずつ差し替えているので、3〜4ヶ月に1回は新メニューを味わっていただけます。

コントリ編集部
コントリ編集部

たこ焼き「無料」というサービスはインパクトがあります。企画の経緯を教えてください。

子どもが来店して、楽しんでもらえるような場所にしたいという思いがありました。子どものときに親と一緒に来た店で、やがて成長して自分でお酒を飲むようになり、ファミリー層として再び来てくれる。そのように2世代、3世代で循環していくことで、食文化として定着させたいという狙いです。子どもの頃に食べた味の記憶って、残るじゃないですか。そうして、自分が家族を持ったときにも来てくれる。そのような考えで生まれたサービスです。

コントリ編集部
コントリ編集部

海外に串カツを広めるにあたって、特に大事にしていることはありますか。

現地にいる日本人や駐在員の方をターゲットにするだけでは意味がないと思っています。その国のネイティブの人に食べてもらうために、土地に合わせた変化が必要です。アレンジを加えて、広く受け入れられるようにしたいですね。

既に海外で成功している飲食業態ですと、すし、ラーメンなどが挙げられますが、お酒を中心とした業態で海外に出ているところは少ないです。いくつか挑戦している企業もありますが、まだ成功したといえる状況ではない印象です。できれば、食事と一緒にお酒も楽しめる業態で展開していきたいですね。おもてなしとおいしさ、そして楽しさを大事にしたいです。そういった雰囲気が抜けないように、海外でも展開したいと思っています。

「串カツ」に込めた想い

コントリ編集部
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「串カツ田中」を作られた際、現在の味の鍵となる、メンバーの「お父さんのレシピ」があったとうかがいました。ぜひ詳しく教えてください。

会長の貫の時代のことですが、貫と、前副社長である田中は大阪でバーをやっていました。田中はそのバーでのアルバイト1号でした。その後、デザイナーズレストランを2店舗ほど手掛け、夢であった東京進出を叶えました。順調に経営していたのですが、2008年のリーマンショックで接待客が減り、経営が厳しくなりました。

そんな折、話していると、田中自身は、ずっと「串カツをやりたい」という夢があったとのこと。子どもの時にお父さんが作ってくれていた串カツがおいしくて、それを再現したかったのです。ただ、お父さんが若い頃に亡くなられてしまい、正確なレシピがわからなかった。いろいろ試作しても、なかなかおいしく作れなかったそうです。

そのような状況で経営が行き詰まり、会社を畳む覚悟で家の荷物を整理していたときに、偶然、小さな時から大切なものを閉まっていた箱の中からチラシの裏に書かれたお父さんのレシピが見つかったんです。

コントリ編集部
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それは本当に奇跡的ですね。

本当にそうですよね。そのレシピで串カツを作ってみたら、やはりおいしかった。残りの資金は300万円ほどしかありませんでしたが、「これでやってみよう」ということになり、世田谷で1号店を開きました。家の近所で、決して飲食店としての一等地ではありませんでしたが、それが行列を作るほどの人気になりました。

最初こそ、そこまでではなかったですが、徐々に評判が広がっていきました。関東には串カツ屋がほとんどなかったので、一気にヒットし、おかげで店舗も増えました。ただ、人気が出ると同時に模倣店も現れました。模倣されたことよりも、その模倣店の味が今ひとつなせいで「串カツはまずい」というイメージがついてしまうのが不安でした。そこで、フランチャイズ展開を始めることにしたのです。

フランチャイズ募集はSNSだけで行いましたが、当時はそれだけで十分な応募がありました。

コントリ編集部
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企業理念の「串カツを極め ひとりでも多くの笑顔を生むことにより社会貢献し、全従業員の物心両面の幸福を追求する」という言葉について、どのような思いが込められているのでしょう。

わたしたちは串カツ専門店。だからこそ、「串カツを極める」ていかなければなりません。

お店の清掃、開店準備、串カツの調理、ドリンク提供、接客、すべてに妥協しないことが「串カツを極める」ことに繋がります。創業当時から、串カツ田中の店舗はきれいに掃除され、清潔な明るい店舗で、最高の串カツとおもてなしを提供してきました。もう一度、原点回帰でやるべきことを徹底することが大切だと考えました。

また、「ひとりでも多く」の「ひとり」にはお客様、従業員、お取引様、関わる全ての人が入ります。串カツを極め、ひとりでも多くの人を笑顔にすることが、従業員にとっても物心両面の幸福に繋がります。

「串カツを極める」という言葉にすぐにたどり着けたわけではありません。半年くらいかけて何度も話し合いをしました。1泊2日の合宿を開いて、ホールディングス全体のミッションやビジョンも見直しました。様々な案がありましたが、最終的に、「串カツを極める」が一番しっくりきました。

コントリ編集部
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現在、国内での出店は全国展開まであと一歩とうかがいました。

あと2県、和歌山と鳥取です。鳥取はスターバックスが最後に出店したことでも知られていますが、鳥取砂丘など、観光地として魅力的な県です。和歌山とあわせて、出店のタイミングを見ているところです。

鳥取や和歌山のひとつ前に出したのが山梨県なのですが、あまり活気がないという前評判が嘘のように、実際に店舗を出してみたら非常に売り上げが好調です。そうやって地域に活気を与え、日本中を元気にしたいと思っています。

コントリ編集部
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ぜひ実現してほしいです。首都圏での展開はいかがでしょう。

現在、東京には103店舗があります。関東全体だとさらに多く、今は出店していない地域はほとんどないですね。全体で、1,000店舗を目標に掲げています。わたしたちは、串カツを日本を代表する食文化にしたいと考えています。そのためには、やはり家の近くに店舗がないと、文化としては根付かないと思うのです。1,000店舗あれば、どこに住んでいても、少し行けば「あの店がある」という規模になります。また、10万人に1店舗という計算でもあります。住宅街や駅前、ロードサイド、繁華街、商業施設など、さまざまな場所に出店できるように計画しています。そうした計画を踏まえて1,000店舗という目標を設定しています。

コントリ編集部
コントリ編集部

その1,000店舗の中には、海外店舗も含まれますか。

海外は別で考えています。海外でも1,000店舗を目指したいですね。展開エリアの優先順位はありますが、アジアやアメリカ、ヨーロッパも含めて広く展望しています。

先ほどお話ししたように、海外では現在はカツサンドから始めていますが、串カツを世界に広めたいという思いは強いです。文化として根付かせるためにも、まずはインバウンドを中心に、日本での認知度をしっかり上げてから、海外に広げていきたいと思っています。

全員でこだわる、味づくり・店づくり

コントリ編集部
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従業員の教育について、工夫している点はありますか。

アルバイトの教育は店長の裁量としている部分が大きいです。ただ、お客様に楽しんでいただくコンテンツとして「チンチロリンドリンク」や「こども本気じゃんけん」などがあり、従業員の個人の気質にかかわらず自然と盛り上がる仕組みができています。じゃんけんやサイコロを使う内容なので、明るい接客がしやすく、全員が陽気なキャラクターでなくても、オペレーションやサービス内容でカバーできるようになっています。

コントリ編集部
コントリ編集部

そういったサービスは本部発案ですか。それとも店舗からの提案でしょうか。

基本的には本部の営業部が考えていますが、店舗からのボトムアップでの提案も定期的に行われています。「チンチロ」も、もともとは会長の知り合いの店舗が発祥で、使わせてもらっているんです。今ではいろいろな居酒屋で取り入れられています。

コントリ編集部
コントリ編集部

店舗数の目標のほか、今後チャレンジしたいことを教えてください。

「天のめし」のようなインバウンド向けの高価格帯店舗も増やしたいと考えています。海外からの観光客にも受け入れられやすいですし、利益率が高いためです。

また、今はプロモーションにあまりお金をかけていないので、店舗数の増加に合わせて将来的にはテレビ広告なども検討したいですね。

さらに、セントラルキッチンの設立も考えています。現在は野菜の仕込みなどのほとんどを店舗で行っているので、工場である程度加工して、店舗スタッフの負担を減らしたいです。

コントリ編集部
コントリ編集部

店舗ごとに調理をしているとのことですが、店舗によって味が違ったりすることはありますか。

味のベースとなる油やソースは、オリジナルブレンドで全店で統一されており、味のブレがありません。

また、フランチャイズ店舗はスーパーバイザーが不定期で店舗を見回り、品質をチェックしています。私自身も、店舗を訪れることがあります。事前には知らせないのですが、「坂本 壽男」で予約するので、大体バレますね(笑)。

チェックや激励の目的とは関係なく、自宅近隣の店舗は家族で行くこともありますし、社員と一緒に行くこともあります。

コントリ編集部
コントリ編集部

外食産業は長時間労働や低賃金が問題視されています。考えをお聞かせください。

ビジネスモデルを少しずつ変えていく必要があると思っています。そのためには売上を上げることと、生産性の向上が不可欠です。

売上を伸ばすためには、まずインバウンド需要を取り込むことが鍵になります。現在、インバウンドの売上は全体の1パーセントしかありませんが、これを5パーセントまで伸ばせれば、売上が約10億円増えます。そのためにSNSやマーケティングを強化していきたいと思っています。

若年層の取り込みも課題です。串カツ田中の客層は、30~40代は多いのですが、20代が少ない。税込みで約3,000円という客単価が原因かもしれないので、もっと安くてたくさん食べられるようなメニューを開発中です。新しい商品で、若い世代にも来てもらいたいです。

コントリ編集部
コントリ編集部

確かに、20代はとにかく安い方が嬉しいという方も多いですね。

そうなんです。だからといって安売り競争にはしたくないので、今の価格は維持しつつも、面白い商品を追加して、若者にも楽しんでもらえるようにしたいです。

売上を増やすことで、従業員への還元ももっとできるようにしていきたいですね。

コントリ編集部
コントリ編集部

新メニュー開発の際、街の人や若者の意見を聞くことはありますか。

アンケート調査を実施しています。20代の若者の声は大事だと思っていますし、現場の声を聞いて反映させることが成功につながると思います。こちらがマーケティング論で考えるポイントと、若者が求めているものはずれていることが多いです。だからこそ、若者たちから直接意見を聞く機会を作りたいですね。

コントリ編集部
コントリ編集部

試食会などはどのように行っていますか。

テストキッチンがあり、そこで試食会を開いています。幹部陣が食べて意見を出す形です。私自身も試食をしますが、味覚については個人の感覚もありますし、いろいろな人の意見を聞いて決めています。

そうした改善の先に収益が実り、結果として従業員のやりがいや待遇UPに繋げていくことができます。長時間労働や低賃金といった外食産業の常識を覆していきたいと思っています。

コントリ編集部
コントリ編集部

最後に、今後のビジョンや1,000店舗を目指すにあたっての意気込みをお願いします。

そうですね。現在330店舗ほどありますが、今まで通りに進むのではなく、これからはもっと工夫していきたいです。新しい取り組みを試し、インバウンド需要や若年層の取り込み、さらには業務の効率化など、いろいろとチャレンジできることはあると思っています。もっと頭を使って、串カツ田中をさらに大きく成長させたいです。

その上で、お客様にとっても、従業員にとっても、会社にとっても良い形で、いわゆる「三方よし」を目指したいです。社会全体にとっても良い企業でありたいと思っています。

「串カツを極め ひとりでも多くの笑顔を生むことにより社会貢献し、全従業員の物心両面の幸福を追求する。」この理念をぶらさずに、成長を続け、日本を代表する食文化を作っていきたいです。

コントリ編集部
コントリ編集部

ありがとうございます。本メディアでは飲食業界の方へのインタビューは初めての機会でした。どの業界でも、「社会をより良く、明るくするため」に頑張っている企業は多いですが、人々の日々の生活に直結する飲食業は特にその思いが身近なものに感じました。

業界内での交流、業界を超えての交流の起点に本インタビューがなることを願います。

コントリ編集部からひとこと

串カツ田中ホールディングスの坂本壽男社長へのインタビューから、レストランチェーンの成功の秘訣が見えてきました。家族連れに配慮した全席禁煙の居酒屋としての展開、子ども向けサービスの充実、そして質の維持へのこだわりが地域密着型の成功につながっています。

特に印象的だったのは、田中さんのお父さんのレシピが偶然見つかったというストーリー。どんな偉大な事業も、時に運や縁に導かれることを実感させます。

国内1,000店舗と海外1,000店舗という壮大な目標は、単なる拡大ではなく、「串カツ文化」を定着させるという明確なビジョンに支えられています。「串カツを極め ひとりでも多くの笑顔を生むことで社会貢献し、全従業員の物心両目の幸福を追求する」という理念のもと、日本の外食文化の未来を明るく照らす好例といえるでしょう。

コントリ株式会社
代表取締役
飯塚 昭博

ギャラリー

プロフィール


株式会社串カツ田中ホールディングス
代表取締役社長
坂本 壽男

1976年4月2日生まれ、長崎県出身。慶應大学卒業後、日本酸素ホールディングス、EY新日本監査法人を経て、串カツ田中ホールディングスに入社。現在は代表取締役社長として、「串カツを極め ひとりでも多くの笑顔を生むことにより社会貢献し、全従業員の物心両面の幸福を追求する。」という企業理念のもと、国内330店舗を展開。10年かけて国内1,000店舗、さらには海外1,000店舗という壮大な目標を掲げる。

サウナ、登山、テニスを趣味とし、「欲がないのは良くない」を座右の銘に持つ。外食産業における常識を覆し、顧客・従業員・会社の「三方よし」の経営を実践。串カツを日本を代表する食文化に育て上げ、世界に広めることを使命としている。

会社概要

設立2002年3月20日
資本金306百万円(2023年11月末日現在)
所在地東京都 品川区東五反田 1-7-6 藤和東五反田ビル 5F
従業員数428名(2023年11月末日現在)
事業内容飲食店の経営
FC開発
システム開発
HPhttps://kushi-tanaka.co.jp/

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