
『明日この会社がなくなっても誰も困らない』その危機感が変えた18年間|必要とされ続ける経営への執念|株式会社ワンプルーフ
「明日うちの会社がなくなって困る人がいなかったら、やめた方がいいですよ」——。
株式会社ワンプルーフの平山和泉社長は、静かだが確信に満ちた声でそう語ります。ECソリューション事業で17年間、デロンギをはじめとする大手メーカーから絶大な信頼を寄せられる同社。従業員60名を超える成長企業の代表が辿り着いた経営哲学の根底には、創業時の壮絶な挫折体験がありました。必要としてくれる人がいるはずと思い、やりたかった事で起業した結果、大失敗を経て、自身ができる事、得意とする事で再起を図った女性起業家の実体験から、本当に価値ある事業とは何かを学びます。
目次
- 1 「おもちゃみたいに面白くて」|商売魂とテクノロジーへの純粋な愛
- 2 「始発で行って終電で帰る」|若き日に刻まれた『正しさ』への執着
- 3 「俺の自分史じゃなくて、商業出版だ」|夢を砕かれた日の衝撃
- 4 「もやししか食べてない」|挫折の中で見つけた本当の使命
- 5 「クライアントと同じチーム」|300社5万円から始まった信頼の積み重ね
- 6 「明日この会社がなくなって困る人がいますか?」|存在意義への根源的問い
- 7 「みんなの貴重な人生の時間を借りている」|フルリモートに込めた社員への愛情
- 8 「EC業界で困ったら」|業界全体への貢献という大きな夢
- 9 まとめ|『必要とされること』への純粋な執念が生んだ真の価値創造
- 10 プロフィール
- 11 ギャラリー
- 12 会社概要
「おもちゃみたいに面白くて」|商売魂とテクノロジーへの純粋な愛
福岡県の商売一家に生まれた平山社長。高校時代にパソコンと出会った瞬間のことを、今でも目を輝かせながら振り返ります。
「インターネットが生まれたばかりの頃で、最初はホームページを見るだけでした。でも掲示板というものができて、自分が何か書き込むと、画面の向こうで誰かが反応してくれるんです。パソコンをカチカチ操作するだけで、知らない人とやり取りできる。これはすごいなって、本当に面白くて仕方ありませんでした」
独学でプログラミングを覚え、ECサイトを自作していた高校生時代。「本当におもちゃみたいな感覚でした」と振り返る平山社長の表情からは、あの頃の純粋な興奮が今も色褪せていないことが伝わってきます。
「寝る間も惜しんでやってました。好きなことってそうなっちゃいますよね」
この時期に培われた『新しい技術に夢中になる』探究心。そして福岡の商売一家で育った平山社長は、「親戚はみんな商売をやってる家だった」と振り返ります。そうした環境で自然と商売への理解が身についていたことが、後の経営者としての基盤を形成していくことになります。
「始発で行って終電で帰る」|若き日に刻まれた『正しさ』への執着
大学時代、平山社長は生活費と起業資金を自力で稼ぐため、様々なアルバイトを経験します。そんな中で出会ったのが、株式会社フォーバルのアントレプレナー制度でした。
「3年間の契約制度で、毎年ミッションがあるんです。それをクリアできないと契約が切れてしまう。17人で始まったんですが、最終的に残ったのは2人だけでした」
この制度での3年間は、平山社長の経営者としての基礎を徹底的に鍛え上げました。特に1年目の営業では、夜11時でもピンポンを押して新規開拓を続ける日々。
「毎日朝一番の電車で出社して、終電で帰る生活でした。終電に間に合わないときは、渋谷のホテルに泊まって。そんな日々がずっと続いていました」
厳しい環境でしたが、平山社長はその経験を心から感謝していると語ります。
「今思えば、若いうちにあの厳しい経験をしたのが良かったんです。『仕事ってこういうもの』という基準ができたので、その後どんなに大変なことがあっても『これくらいなら大丈夫』って思えるようになりました」
このアントレプレナー制度では、1年目の営業、2年目の社長室業務、3年目のアライアンス業務と、毎年異なる部門を経験できました。特に社長室では、上場企業のIR(投資家向け広報)業務も担当。株主総会の準備から監査対応まで、『上場企業は公に正しくなければいけない』という厳格な姿勢を間近で学びました。この経験が、後の平山社長の経営哲学に深く影響を与えることになります。

「俺の自分史じゃなくて、商業出版だ」|夢を砕かれた日の衝撃
株式会社フォーバルのアントレプレナー制度卒業時、平山社長には確固たる夢がありました。それは「おじいちゃんおばあちゃんの生きた証を作る」自分史の出版事業でした。
「私がやりたかったことは、個人向けの出版事業だったんです。それについてのプレゼンをしました」
しかし、8人の役員の前での最終プレゼンで、当時社長だった大久保氏以外の7人は応援してくれたものの、大久保氏だけは厳しい評価を下しました。
「『ダメダメだ』って。めちゃくちゃ低い点数で、なんでこんな低いのかと思って」
大久保氏が指摘したのは、事業の三要素:社会性、独自性、経済性でした。
「『君がやろうとしていることは、講談社のような大手出版社がやった方がいい。君には出版の知識も経験もない。これは君がやるべき事業ではない』と厳しく指摘されました」
この瞬間の衝撃を、平山社長は表情を曇らせながら振り返ります。
「もう固まって。理解はできたんですけど、一生懸命考えた渾身のプレゼンだったので」
それでも大久保氏は「とりあえずやってみなきゃわからないだろうから頑張れよ」と背中を押してくれました。この厳しくも愛情深い言葉が、後の平山社長の人生を大きく変えることになります。
「もやししか食べてない」|挫折の中で見つけた本当の使命
2005年5月に起業した平山社長。当初は夢だった自分史の出版事業で勝負しましたが、現実は厳しいものでした。
「売り上げが全く立たないのに、私以外に三人の従業員の給料を稼がなきゃいけない状況でした」
この頃の生活は壮絶でした。貯金を食いつぶし、「もやししか食べてない」日々が続きます。
先輩経営者の方々がお食事に誘ってくださって。お金がないので「いつか恩返しします」と言うと、「君の後輩にしてあげればいい」と温かい言葉をかけてくださる方ばかりでした。
一方で、従業員を食べさせていくために、自分が得意としていたスキル、ECサイト構築、やサイトデザイン制作の依頼は、ありがたい事に依頼を頂いていました。大久保会長に自分史の提案をしたところ、「自分史ではなく、きちんとした商業出版をしたい」と言われ、最終的に『The決断』という本を商業出版で手がけることになりました。平山社長にとって大切な顧客になってくださったのです。
しかし自分史事業全体としては、営業をしてもなかなかオーダーがいただけない状況が続きます。その現実を前に、平山社長は人生最大の気づきを得ます。
「自分史の営業をしても、お客様からの注文がなかなかいただけませんでした。それは、お客様にとって自分史というサービスがそれほど必要ではなかったということなんです。需要がないものを提供していたんだなって気づきました」
「なんでこっち(EC)は必要とされるのに、私がやりたいこと(自分史)は必要とされないの?って。やりたいことと、必要とされることって違うんだなって」
このとき平山社長は、重要な決断を下します。
「もしも将来、また自分史の事業をやりたくなったときは、その時にきちんとお金を投資できる状況になってからにしよう。今は何より、一緒に働いてくれている仲間の生活を支えることが最優先だと思いました」
『やりたいこと』を一時的に諦めて『必要とされること』を選ぶ。この決断が、ワンプルーフの真の出発点となったのです。
「クライアントと同じチーム」|300社5万円から始まった信頼の積み重ね
事業をECサイト制作・運用にピボットした平山社長。しかし、道のりは決して平坦ではありませんでした。
タイミングよく、一緒に働きたいと言ってくれた現在取締役の仲村氏の入社によって、ECソリューション事業は勢いを増し、ここから本格的な成長期に入ります。
事業をピボットして5年程経った頃、「月5万円という低単価で300社のお客様を抱えていました。すると問題になったのが債権回収です。きちんと契約書を交わしていても、支払いをしてくれない企業さんが本当に多くて」
300社もの顧客を抱えることで生じたコミュニケーションコストの増大と社員の疲弊。
この時期に平山社長が最も重視したのが、社員の迷いを解決する指針作りでした。
「社員たちは、クライアントの要望と会社の利益の両方を考えなければならない立場にいます。どちらを優先すべきか迷ったときの判断基準として、8つの行動指針を作りました」
誠実、素直、チーム主義、スピード、仕組み化、チャレンジ、当事者意識、思考力、感謝——。これら8つの指針には、平山社長の深い思いが込められています。
「クライアント企業も全部チーム、みんなで一つのプロジェクトを成功に導いていきましょうという考え方です」
毎月、各グループで「今月意識する行動指針」を決めることで、単なる掛け声ではなく、日々の業務に活かされる生きた指針となっています。

「明日この会社がなくなって困る人がいますか?」|存在意義への根源的問い
現在、ワンプルーフは50社以上のクライアントを抱え、デロンギなど大手メーカーのEC部門を丸ごと受託する企業に成長しました。EC業界で『困ったらワンプルーフ』と言われる存在になった今でも、平山社長は創業時の危機感を忘れません。
「『明日うちの会社がなくなって困る人がいなかったら、やめた方がいいですよ』って。これが私の経営哲学の根底にあります」
この問いかけの背景には、創業1年目の辛い経験があります。
会社の理念「新しい価値を創造し人々の幸せに貢献する」も、この経験から生まれました。
「これを叶えるためにやってるんですよ。これを叶えるためにみんなの貴重な人生の時間を借りているから、みんなでこの理念を叶えようねって」
平山社長の言葉からは、社員一人ひとりの人生に対する深い責任感が伝わってきます。
「会社が存在する意義というのが、この理念なんです。ワンプルーフという会社があることで、誰かの役に立っているという存在意義があるということです」
「みんなの貴重な人生の時間を借りている」|フルリモートに込めた社員への愛情
現在70名の社員を抱えるワンプルーフは、コロナ禍を経てもECソリューション事業においては、フルリモートを続けています。この決断の背景には、平山社長の深い思いがありました。
「幹部陣や、特に成果を上げているハイパフォーマーのメンバーたちが、みんなフルリモートを希望しているんです」
「電車に乗ってる時間があるぐらいだったら、お客さんの仕事をしたいみたいな」
平山社長自身は「出社した方がマネジメントしやすい」と考えていましたが、社員の価値観を尊重する選択をしました。
そのために導入したのが、バーチャルオフィスです。画面越しに見せていただいたオフィス空間には、アバター姿の社員たちが自分の席に座り、まるで本当のオフィスのような雰囲気が再現されています。
「毎月、リモート環境でも生産性を保ち、社員が働きやすくて、やりがいも感じられるようにするにはどうすればいいか。そんな改善を今でも続けています」
バーチャル空間でも「肩ポン」機能で気軽に声をかけられるシステムや、雑談エリアの設置など、細やかな改善を重ねています。
「クライアント企業のために忙しくなることは良いことです。会社として社員に求めるのは、担当するKPIをしっかり達成して、クライアントに満足していただくこと。矢印はクライアントである事が重要だと考えています」
社員の働き方への深い理解と、お客様への価値提供という本質への集中。そこには「みんなの貴重な人生の時間を借りている」という平山社長の責任感が表れています。

「EC業界で困ったら」|業界全体への貢献という大きな夢
現在のワンプルーフは、EC業界のあらゆる悩みに対応できる総合力を誇ります。「問い合わせフォームに2000円ぐらいでセールスバナーを作ってもらいたいという相談から、2億円の上流工程のシステム設計をお願いしたいという相談まで」と平山社長が語るように、その対応範囲は非常に広範囲です。
しかし、自社だけではカバーしきれない領域もあります。そこで立ち上げたのが「EC WITH」というプラットフォームです。
「全国に約200人のEコマース専門家とのネットワークがありました。これまでは電話や個別連絡でやり取りをしていたのですが、規模が大きくなりすぎてアナログな対応では限界がありました。発注したい企業と、仕事を受けたい専門家、双方にニーズがあるので、これを公開プラットフォームにしようと決めました」
このプラットフォームには、平山社長の深い思いが込められています。
「個人で活動されているフリーランスの方たちが困っているのは、仕事をしたのに代金を支払ってもらえないという問題です。EC業界では、こうした支払いトラブルが本当に多いんです」
自社が創業時に300社の債権回収で苦労した経験から、フリーランスの方々が同じ思いをしないよう、前払いシステムを構築しました。
「ECビジネスを成長させるために必要な人材やノウハウを、すべて揃えている会社になりたいんです。どんな相談をいただいても、必ず何らかの解決策やアドバイスをお返しできる。そんな会社を目指しています」
平山社長の目標は、日本だけでなくアジア全体での展開です。
2025年4月には、アメリカのIT専門誌「APAC CIO Outlook」で「Top E-Commerce Business Development Solutions in Japan 2025」を受賞しました。ECビジネスの立ち上げから拡大、運営まで戦略から実行まで一貫して支援できる企業として、日本で唯一の受賞企業に選ばれたのです。
「戦略設計から店舗運営、広告運用、物流支援まで一気通貫でサポートする体制が評価されました。独自のデータ分析基盤や、ECモールから自社ECサイトまで幅広く対応できる技術力も含めて、『テック×現場』の両輪での支援が認められたんです」
個社の利益を超えて、業界全体の発展に貢献したいという想い。そこには「新しい価値を創造し人々の幸せに貢献する」という理念が貫かれています。
「マッキンゼーの調査によると、EC(電子商取引)市場はAI業界よりも成長が見込まれる産業として第1位に挙げられています。これからもEC業界はどんどん拡大していくでしょうし、企業からの支援ニーズもますます高まると思います。そうしたニーズにしっかりと応えられる価値を提供し続けていきたいですね」
まとめ|『必要とされること』への純粋な執念が生んだ真の価値創造
「明日この会社がなくなって困る人がいるか?」——平山和泉社長のこの問いかけは、単なる経営手法を超えた、経営者としての根源的な哲学です。
創業時の壮絶な挫折から学んだ「やりたいことと必要とされることの違い」。株式会社フォーバルでの厳しい修業時代に培われた「正しいやり方への執着」。その気づきを基に、18年間にわたって積み重ねてきた信頼と実績。社員一人ひとりの人生への深い責任感。そして業界全体への貢献意欲。
平山社長の歩んできた道のりは、『真に価値のあることとは何か』を問い続ける経営者の軌跡そのものです。
「やりたいこと」を一時的に諦める勇気を持ちながらも、「人々の幸せに貢献する」という根本的な想いは決して手放さない。その一見矛盾するような姿勢の中にこそ、持続可能な価値創造の秘訣があるのかもしれません。
読者の皆さまも、ぜひ一度自社に問いかけてみてください。「明日この会社がなくなって困る人はいるだろうか?」と。その答えの中に、真に価値ある事業への道筋が見えてくるはずです。
平山社長の温かくも厳しい経営哲学は、きっと多くの経営者にとって大きな示唆となることでしょう。そして何より、社員への深い愛情と業界全体への貢献意欲を持つ平山社長の人柄に、「一度お会いしてみたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
プロフィール

株式会社ワンプルーフ
代表取締役
平山 和泉 – Izumi Hirayama –
福岡県出身で親戚一同が商売人という環境で育つ。中学生でパソコンに触れ、高校時代の1998年に掲示板やオンラインショップを立ち上げ、2001年頃から本格的にインターネット販売を開始した。中央大学経済学部国際経済学科卒業後、株式会社フォーバルにアントレプレナー制度で入社し、新卒約300名中17名に選抜され3年間修行。2008年、学生時代から手掛けていたECコマース事業の本格展開を目的に株式会社ワンプルーフを創業。現在はECトータルソリューション事業を通じて累計2,000社以上を支援し、De’Longhi、Miele、UNDER ARMOURなど大手メーカーのEC支援を手がける。特定非営利活動法人元気な日本をつくる会理事も務め、『世界を変える80年代生まれの起業家』にも掲載された注目の経営者。
ギャラリー







会社概要
設立 | 2008年6月4日 |
資本金 | 10,000,000円 |
所在地 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7 パシフィックマークス新宿パークサイド5F TEL: 03-6383-4412 FAX: 03-6383-4413 |
従業員数 | 70人 |
事業内容 | インターネット関連事業 – ECフルフィルメントサービス・ブランドメーカーDtoC支援 – ECトータルソリューション・EC事業部委託・ECコンサルティング – ウェブサイト・モバイルサイト・ECサイトの制作・運営代行 – 管理運用型・成果報酬型SEO対策サービス – 通販EC事業者向けカスタマーサポート・受注代行 – コールセンター・テレマーケティング – 自治体向けふるさと納税サイト運用支援・ウェブマーケティング EC特化型HRソリューション事業 – EC運営業務プロ人材紹介業「EC STAFF LINK」 – EC特化型スキルマーケット「EC WITH」 出版事業: 出版社記号9904709 – 一般書籍出版業・書店との直取引による販売 – 季刊誌・ムック等プロモーション媒体制作 運営サイト EC特化型スキルマーケット EC WITH https://ec-with.jp/ ONEPROOF RECRUITING SITE https://one-proof.club/ 通販EC運営求人サイト ECjobjob https://ecjobjob.com/ 受注処理・カスタマーサポート・コールセンター支援 https://www.ecommerce-customersupport.com/ |
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