スクール卒業生と築くクリエイティブの未来!育て、共に働く新しい組織のカタチ|株式会社コペンフラップ

キャリアに悩む30代前後の女性たちに、新たな働き方を提案するデザインスクール『コペンカレッジ』。デザイン未経験者でも1年でプロを目指せるこのスクールは、ライフステージに合わせた柔軟な働き方をサポートしています。さらに、卒業生と共にクリエイティブ制作事業を展開し、成長を続ける同社。その背景には、スキルの習得だけでなく、共に働く「チーム」の力を大切にするビジネスモデルがありました。この成功の秘訣に迫ります。

人を育てて共に働くという新しいビジネスモデル

コントリ編集部
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まずは御社の事業内容について教えてください。

当社は、大きく分けて「デザインスクール事業」と「クリエイティブ制作事業」の2つの事業を展開しています。

デザインスクール事業では、デザイン未経験の30代前後の女性を対象とした『コペンカレッジ』を運営しています。この年代の女性は、結婚や出産といったライフステージの大きな変化を迎えることが多く、その際に従来の仕事や働き方に悩む方が少なくありません。「結婚や子育てを理由にキャリアと家庭のどちらかを選ばなければならない」という考え方ではなく、「仕事で自分の力を発揮しながら、家族との時間も大切にして、子どもの成長を見守りたい」というライフスタイルを実現できるようにサポートしたいと考えています。デザイナーという職業は在宅でも仕事ができるため、非常に相性が良く、未経験からでも1年程度で必要なスキルを習得できます。コペンカレッジは、そのスキルを身につけ、キャリアチェンジを実現するためのデザインスクールです。

クリエイティブ制作事業においては、デザインスクールの卒業生と、スクールで講師を務めるベテランデザイナーがチームを組んで仕事に取り組んでいます。企業のブランディングをはじめ、WEB、ロゴ、紙媒体、撮影、動画、ライティングまで、幅広いサービスを提供できる点が当社の強みです。多様なスキルを持つクリエイターが集まり、さらにブランディングの知識を共有しているからこそ、統一感のあるトータルブランディングが可能となっています。お客様の課題をヒアリングし、その解決に向けて最適なツールを提供するお手伝いをさせていただいております。

コントリ編集部
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デザインスクールとクリエイティブ制作事業の二本柱体制となった経緯を教えてください。

当社の歴史としては、まずスクール事業を立ち上げ、その後にクリエイティブ制作事業を開始しました。スクールを運営する中で、少しずつ卒業生が増え、そのメンバーとの繋がりが自然にコミュニティ化していきました。もともと私は個人事業主として一人で仕事を請け負っていましたが、仕事量が増えるにつれて、一人でこなすには限界が来ました。そんな時に「一緒にこの仕事をやってみない?」と卒業生とチームで仕事を受ける機会が増えていったのです。また、卒業生に実際の仕事を紹介し、スキルアップしてもらいたいという気持ちも強くありました。当初は「チームランス」という形で仕事を請け負っていましたが、法人のお客様が増えるにつれ、「個人事業主だと契約がしづらい」というお声をいただくことが多くなり、株式会社を設立するに至りました。

現在、クリエイティブ制作事業で一緒に仕事をしているクリエイターのほとんどがコペンカレッジの卒業生です。以前は、クリエイティブ制作の依頼があった場合、外部のクリエイターに委託することも多かったのですが、卒業生のスキルが向上したこともあり、現在では卒業生のみのチームで仕事を完結できるようになってきました。

コントリ編集部
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スクールの卒業生にはフリーランスとして活躍してもらう道もあると思いますが、なぜ会社を設立してまで一緒に仕事をしようと考えたのでしょうか?

スクール設立当初は、「フリーランスを目指そう」というメッセージを打ち出していました。卒業後も、一緒に働くのではなく、フリーランスとして自分のブランドを立ち上げ、独立するためのカリキュラムを提供していたのです。しかし、実際には卒業直後に独立しても、本人が望む収入、特に元会社員の方が同じ月収を目指す場合、現実は厳しいという状況がありました。

そこで、卒業生の現状を踏まえ、最初から独り立ちするのではなく、軌道に乗るまでの期間を誰かが伴走する仕組みを考案しました。この仕組みを実際に運用してみたところ、スキルアップが加速し、個人では受けられないような企業案件にも携わることで成長を促すことに成功しました。

こうした経験から、卒業後すぐに独立するのではなく、まずはチームで仕事をすることを前提としています。当社としても内部のメンバーが増えることで、仕事の量や幅が広がり、Win-Winの関係が築けていると考えています。

コントリ編集部
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駆け出しデザイナーに優しい仕組みですね。では、スクールの卒業生は誰でもクリエイティブ制作事業でお仕事できるのでしょうか?

クリエイティブ制作事業部で仕事を受けるには、まずデザインスキルをチェックするテストに合格する必要があります。スクール入学時には条件はありませんが、講座を受講した直後に制作事業部に入るのは、まだスキルが不足しているため、まずは卒業生向けのコミュニティである「ゼミ」で継続的に学んでもらいます。ゼミは、スクールの講座とは異なり、デザインスキルだけでなく、実際の案件にも触れられる学びの場です。週1回の講座が用意されているほか、クリエイティブ制作事業部のコミュニケーションツールであるSlackにも参加でき、「現在どのような案件が進行しているのか」「先輩デザイナーがどんなデザインを提出しているのか」「ディレクターからどのようなフィードバックを受けているのか」といったデザイン制作のプロセスをリアルタイムで学ぶことができます。

ゼミ生としての受講期間中は、案件を直接担当する機会は少ないものの、先輩とチームを組んで課題に取り組む機会があり、いわゆるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を実践している環境と言えます。この期間に実践的な学びを深めた後、4か月ごとに実施される事業部テストを受け、そのテストに合格すれば、晴れて制作事業部のメンバーとして活動することができるという流れです。

コントリ編集部
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なるほど。今度はその事業部テストの内容が気になりますが、どのようなテストなのでしょうか?

グラフィック事業部、WEB事業部、動画事業部ごとにテスト内容は異なりますが、基本的にはクライアントワークの模擬案件が課題となります。仮想のクライアントから提示された指示書に従ってデザインを制作し、提出されたサンプルデザインがそのままクライアントに提出できるクオリティであれば合格、クオリティに不足がある場合は引き続きゼミで学ぶことになります。テストの特徴としては、制作に時間制限が設けられており、事業部ごとに制作期間が異なりますが、指定された時間内にどこまで仕上げられるかが評価される点です。

また、テスト項目には含まれていませんが、人柄や当社の組織との適性も見ています。これらはスクール受講期間とゼミ生期間を合わせた約10ヶ月の間に自然と見えてくるもので、もし適性に疑問を感じた場合は、個人面談の際に正直にお伝えするようにしています。早めに伝えないと、後からお互いが苦しくなってしまいますからね。

コントリ編集部
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テストや見極めをクリアし、クリエイティブ制作事業部の仲間入りを果たした卒業生はどれくらいいらっしゃいますか?

現在、制作事業部全体のメンバーは35名です。さらに、ゼミ生として学んでいる13名ほどを加えた体制で、すべての案件に対応しています。今後も卒業生が増えていくことで、対応できる案件の規模もそれに伴って拡大していくと考えています。というよりも、すでに手一杯の状態なので、早く成長してくれるのを心待ちにしているところです。

スクールという背景が叶えるデザイン制作会社の新しい形

コントリ編集部
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ここからは御社のメンバーの働き方について、特徴などをお伺いしたいです。

先ほど当社のメンバーは総勢48名とお伝えしましたが、その大半が業務委託契約で働いています。理由としては、メンバーの多くが自由なライフスタイルで働きたいと希望しており、直接雇用のような制約がない、納期とクオリティさえ守れば仕事の進め方は問わないスタンスを望んでいるからです。皆さん、それぞれのライフスタイルに合わせて働いており、朝5時頃にキャンドルを灯して作業をする人もいれば、午前中はゆっくり過ごして、夜に集中して頑張る人もいます。また、子どもが保育園に通っている方は、15時までに仕事を終えて家族との時間を大切にするなど、まさに自分に合った働き方を実現しています。

休暇も同様に、納期さえ守ればいつ取っても問題ありません。そのため、Slackには「明日から家族旅行に行きます!」という連絡が頻繁に流れています。また、子どもの急な発熱など、女性には家庭事情で休まざるを得ないことが多いですが、その際も「いつでもどうぞ」と送り出せるような環境づくりを心掛け、チーム全体でフォローし合う良好なチームワークを築いています。

コントリ編集部
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女性クリエイターにとって理想の職場だと思いました。
一方、マネージャーの立場からは納期や進捗管理が難しいのでは?

稼働時間に関しては、確かにある程度足並みを揃えた方が管理面では楽かもしれません。しかし、私自身も自由に働きたいタイプなので、形式的な管理に対して疑問を抱いており、メンバーを信頼して、それぞれが好きな働き方を選べるようにしています。もちろん、クリエイティブ制作事業部に参加する際には、締切を守れるか、仕事に対する責任感があるかを慎重に見極めています。その結果、今のところこのスタンスでトラブルが発生したことはほとんどありません。

コントリ編集部
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信頼関係がなせる技なのですね 。
ところで、所属するメンバーは本当に全員女性なのでしょうか?

はい、現時点では全員が女性です。一般的な企業での働き方に息苦しさを感じ、弊社の理念に共感してくれた方が「女性」に多かったためです。この課題への解決策として、また共感力の高い女性同士のコミュニティの純粋な楽しさもあり、自然と女性が集まっているのだと思います。ただし、外注先や一時的なチームメンバーとして男性が参加することもありますし、取引先にも多くの男性がいらっしゃるため、男性をお断りしているわけではありません。実際、外部の関係者を招いた周年パーティーでは、スクールの現役生徒が驚くほど多くの男性が参加していました。当社の空気感や理念に共感していただければ、男性でも歓迎しています。

コントリ編集部
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御社の空気感とは、具体的にどのような雰囲気を指すのでしょうか?

取引先からは「女性だけでタフに案件をこなしているのはすごい」「とても安心できる」というお声を多くいただいています。これは、締め切り厳守やクライアントの期待を超えるクオリティを徹底して教育していることに加え、クライアントの未来のために全力で希望を叶えようとする、体育会系的な根性が弊社の特色の一つだからだと思います。また、社外の女性からは「女性だけの組織とは思えない安定感がある」「居心地がとても良い」という評価もいただいています。おそらく、最初から弊社の理念に共感した方が集まることで、一体感が生まれているのでしょう。そして、その理念が「家族を大切にする」という想いに基づいているため、温かく穏やかな雰囲気が作られているのだと思います。家族を大切にしたいという気持ちを持つ方々は穏やかで優しい方が多く、メンバー同士のコミュニケーションも大事にしているので、会社全体に家族のような温かさが溢れているのだと感じます。

コントリ編集部
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これまでのお話を聞いて、本当に女性が働きやすい雰囲気作りを徹底されているのが分かりました。理念を作っても浸透しないという課題はよく耳にしますが、御社はどのような工夫をして内側からの雰囲気作りに成功したのでしょうか?

実は、2023年に全社的なリブランディングを実施しました。新たに掲げた「温かな潤いがある人生を過ごそう」という理念についてですが、これは経営陣がトップダウンで伝えたものではなく、既に社内に存在していた雰囲気や想いを言葉に置き換えたもので、どちらかと言えばボトムアップに近いアプローチで作成しました。そのため、内部メンバーにお披露目した際も、多くの共感や納得の反応があり、資料を読んで感極まるメンバーもいたほどです。すでに浸透している想いを明文化した結果だと感じています。これが可能だったのは、経営陣とディレクター、さらにはクリエイターたちとの間で普段から意思疎通ができていたこと、そして何よりも、デザインスクールが掲げる理念と一致していたことが大きいと思います。当社に最初に関わった際に惹かれた価値観と共通していることが、この成功につながったのでしょう。

また、価値観の共有だけでなく、事前に信頼関係が構築されている点も重要です。スクールの講師と制作事業部を兼任する先輩が、後輩の得意不得意や個性を受講中に見極めており、適切な仕事を与えて育成を促すことに成功しています。一般企業の採用では、数回の面接や提出された書類のみで採用や配属を決めることが多いですが、それだけではわからない部分を、スクールという仕組みを通じて深く理解できていることが、当社の強みだと感じています。

コントリ編集部
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確かに効果的で面白い仕組みですね。 今後もこのやり方でメンバーを募っていく方針ですか?

現在、一緒に働いているメンバーは、雇用している社員2名を含め、基本的には全員スクールの卒業生です。今後も外部からの採用は考えておらず、大切に育てた生徒さんに引き続き声をかける流れができています。だからこそ、デザインスクールの集客や活性化は、今後も力を入れ続けるべき重要な課題だと認識しています。

スクールの集客に関して、これまではSNS広告を中心に行ってきましたが、それだけでは集客力が低下していると感じています。考えられる原因の一つは、競合との差別化が難しくなっていること、また、広告自体の精度も以前より落ちていると感じています。そのため、今後はSEOに力を入れる方針です。現在、ノウハウを蓄積している段階ですが、将来的にはこのスキルをスクール集客だけでなく、制作事業部の案件獲得にも活用できる強みにしたいと考えています。

コントリ編集部
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ありがとうございます。まさに仕掛け中ということで、その効果が現れてスクール、ひいては会社全体の活性化に繋がるのを楽しみにしています。

温かい文化を広げて社会に潤いを与えたい

コントリ編集部
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多くの女性から支持を受ける御社の理念について、より詳しくお話をお聞きしたいです。

創業当初に掲げていたメッセージは「家事も育児も子育ても全部大切」でしたが、昨年1年がかりで会社のリブランディングを行い、現在は「温かな潤いがある人生を過ごそう」を理念に掲げています。これは、コペンフラップのメンバーが望む働き方や組織の在り方を表現しています。

例えば「温かな」とは、過去に企業案件のコンペを開催した際、メンバーの発表を見て、スクールの同期が感極まって涙する場面があったりする、そのアットホームさを指しています。案件のクライアント様も、仲間への思いやりや仕事に対して泣けるほど真剣に取り組む姿に感動されていました。デザインスクールもクリエイティブ制作事業も、そんな「温かさ」を感じられるコミュニティであり続けたいと考えています。

次に「潤い」についてですが、デザインの仕事を「仕様書通りに納品する」だけのドライなものとして捉えるのではなく、相手を思いやり、気を利かせ、先回りした対応をする――少しお節介なほどに相手に対して熱量を持って接することを意味しています。この「潤い」はクライアント様だけでなく、チームメンバーにも向けられており、関わる人すべてに気遣いや思いやりを持つことで、自然体で心地よくいられる環境を作り、結果的に高いパフォーマンスを引き出せると考えています。また、「潤い」には「お客様のために汗をかく」というニュアンスも込めています。当社には、最後まで全力で走り切る人や、無理難題にも真剣に向き合ってやり通す根性を持つ女性が多いです。見た目はにこやかで優しそうなメンバーが多いですが、いざ仕事となると体育会系のガッツや、相手に共感して涙を流すような熱さを持っています。

以前、クライアント様が素晴らしい賞を受賞した際、グループチャットがお祝いのメッセージで溢れたことがありました。また、大規模案件に全員で取り組み、最後にクライアント様と共に涙を流した経験もあります。こういった空気感や働き方に共感していただけるクライアント様と、これからも一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

コントリ編集部
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御社がクライアント様を大切にされているのが伝わりました。
そんなお客様と積み重ねた過去の案件で、特に大変だったとか印象的なものはありますか?

そうですね、数年前に沖縄に新しくオープンするラグジュアリーホテルのブランディングを任せて頂いた案件はとても規模が大きかったので、チームの一体感を特に強く感じました。オープン前のティザーサイト(サービス開始前の告知サイト)を制作し、続いてWEBサイト、更にはホテル館内にある様々なレストランロゴやリーフレットに館内サインやアメニティグッズまで、とにかく色々なものを制作した一大プロジェクトでした。大変だったのは、終盤に差しかかってからも修正指示が止まらず時間的にも作業量的にも限界を超えたことでしたが、それらを全て対応して完成品を納品した時はかなり達成感がありました。

こちらのアメニティデザインも社内コンペを行い、約20名の卒業生が応募してくれました。20人が趣向を凝らしたデザイン案はとても見応えがありましたし、デザイナーにとっても印象的なコンペとなったので、この機会を設けられたことを嬉しく思っています。あと、オープン間近になってから1ヶ月近くディレクターに現地滞在してもらったりもしました。家庭を持つ女性メンバーが多いので、「現地へのデザイナー常駐」という要望を受けた時は頭を抱えたのですが、ラグジュアリーホテルの部屋に滞在できるという条件で行ってくれるメンバーがおり、そのディレクターが現地スタッフからの細々とした要望を一身に受けて頑張ってくれました。こちらが過去に携わったお仕事の中でかなり達成感を感じたものですね。ただこういった大きな案件以外にも、日々お仕事をしていく中で大変なことはあり、時々チームメンバーと一緒に「ほんと頑張ってるよね私たち」と励まし合うこともあります。

コントリ編集部
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ここまでのお話にもありましたが、改めて、クリエイターの育成やチームビルディングの際の心掛けを教えてください

そうですね、やりたいことや希望する働き方は一人一人異なるため、枠組みやルールで縛るのではなく、個人の意思を尊重しつつ、全体のバランスを取ることを心掛けています。これは、私自身が個別指導塾で講師をしていた経験が影響しているのかもしれません。塾では、生徒の能力や志望校、効果的な勉強法がそれぞれ異なる中で指導していました。その経験が、会社でも活きていると感じます。

当社では、クリエイティブ制作事業部のメンバーに対して4ヶ月に1回、定期面談を実施しています。各事業部のマネージャーとクリエイターが、直近4ヶ月間で注力したこと、その成果や課題について話し合い、特に「今後どうなりたいか」という点を毎回必ず聞くようにしています。その希望に沿って、今後の担当案件や仕事の進め方を一緒に考えるのです。恐らく、業務委託先に対してここまで細やかな対応をしている企業はあまりないと思いますが、私たちには欠かせない取り組みです。

コントリ編集部
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仲間を大切にしている御社ならではですね。
面談の他に、メンバー同士の距離の縮め方のコツがあれば教えてください。

はい、この点は意識的に取り組んでいます。コロナ禍以前は、デザインスクールを東京でのみ対面開催していましたが、2020年に完全オンライン化したことで、生徒さんや事業部のメンバーが全国に広がりました。住んでいる場所という制約が完全に外れたという意味では、コロナは当社にとって追い風となり、取引先もオンライン会議やリモートワークが当たり前になったことで、全国の仲間とよりスムーズに仕事ができるようになりました。対面の機会が減ったことでコミュニケーション不足が懸念されましたが、交流イベントを開催するなどして補っています。オンライン形式を採用し、どこからでも参加できるようにしたり、仕事や子育てで忙しい方のために昼と夜の2回開催するなど、様々な立場の方が参加しやすいように工夫しています。

また、コロナが落ち着いてからは「直接会って話したい」という声が強まり、昨年から他の経営メンバーと共に全国を回っています。全都道府県を訪れるのは難しいかもしれませんが、各地方都市には定期的に足を運びたいと思っています。さらに、地方メンバーが増えたら、各地域にコミュニティリーダーを配置し、その地域のメンバーが自発的に交流や勉強ができるコミュニティを作りたいと考えています。

コントリ編集部
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「自発的」がポイントですね。 それを促すためか、経営者とメンバーとの距離感が近くて意見を言いやすい雰囲気を感じます。

もしかしたら、私が社長だと思われていないのかもしれません(笑)。もともと三姉妹の末っ子で、のんびりしていると言いますか、特に人の前に立つタイプではありませんでした。しかし、なぜか責任ある立場を任されやすく、「やれ」と言われればやるというスタンスで来ました。今もカリスマ性で人を引っ張るタイプのリーダーではなく、どちらかと言えば、仲間の意見や希望を聞いて最適解を見つける「まとめ役」としてのリーダーです。お母さんみたいと言われることもありますが、私はなるべく皆に好きなことを自由にやってもらいつつ、トラブルがあった際には最後に責任を取ることが役目だと思っています。もちろん、人に迷惑をかけたり、周囲に悪影響を与えることにははっきりと「NO」と言いますが、それ以外のことについては、積極的にやりたいことをやってほしいと思っています。仮に上手くいかなかったとしても、真剣に取り組んだ経験から学ぶことは多いので、まずは挑戦してみることが大切です。

距離感について言えば、クリエイターの皆さんは私を敬ってくれていますが、経営メンバーと呼んでいる仲間たちは立場を慮ることなく、はっきりと意見を言い、時にはダメ出しもしてくれます。耳が痛い時もありますが、そうした仲間が身近にいてくれることは非常に心強いです。

コントリ編集部
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コロナ禍でのオンライン化対応も然り、新しい取り組みへのスピード感やチャレンジ精神を感じます。
これは御社の風土なのでしょうか?

クリエイターという職業柄、右脳タイプが多く、臨機応変に対応したり、波に乗るのが得意なメンバーが多いです。業界的にも、過去に固執せず「とりあえずやってみよう」という姿勢が通じやすい影響もあると思います。特にコロナ禍でのオンラインスクールへの切り替えについては、私の右腕である取締役が迅速に対応してくれたため、実は私はほとんど関わっていません。気がつけばオンライン授業のノウハウが完成されており、講師やクリエイターも柔軟に対応してくれたおかげで、企業としての危機をあっさりと乗り越え、さらに全国展開まで果たすことができました。これからも様々な変化が起こるとは思いますが、ピンチに強く、柔軟に対応できる企業体質と人材が揃っていると自負しています。

また、当社は大きな会社ではないからこそ、意思決定や対応のスピード感には自信があります。私は比較的決断が早いタイプで、過去に固執せず、何か改善が必要と感じたらすぐに舵を切ることができるタイプです。そのため、就活時から大企業にはあまり惹かれませんでした(笑)。大企業は稟議やしがらみが多すぎて、やりたいことがすぐにできないイメージが強かったのです(もちろん、社会的インパクトの大きな仕事ができる点は魅力的ですが)。私は、規模は小さくても自分の裁量が大きく、面白いアイデアを思いついたらすぐに実行できる環境で働きたいと考えていました。結果として、自分が代表となって会社を設立することになりましたが、今後もスピード感を持った経営やチャレンジ精神を大切にしていきたいと思っています。

コントリ編集部
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先進的な働き方が羨ましいです。皆さんが生き生きと働かれている感じがしますが、逆に躓いてしまったメンバーはどのようにフォローしてますか?

困っていそうなメンバーには、個別に面談時間を設けて、原因を聞き出し解決するよう心掛けています。面談は全てZoomで行いますが、流れとしては、まず仕事について話し合います。ここ数ヶ月間で携わった案件の振り返りや、本人が楽しかったこと、逆に失敗したことや課題についても触れ、反省点や対策を一緒に考えます。その後、プライベートについても話を聞くという二段構えの形式です。例えば「子供が幼稚園に入るから今後はこういうふうに働きたい」とか、「母の看病があるのでしばらく稼働できなくなる」など、そういった話題も率直に話してもらいます。

特に女性は、その時々の家庭状況によって希望する働き方が変わることが多く、勉強したいことや進みたい方向もタイミング次第で変わるのは当然と考えています。そのため、面談の際には、現在の状況や今後どうしたいかについて、毎回全員からヒアリングしています。

コントリ編集部
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一人一人のメンバーが望む働き方を叶えようとする御社の姿勢は、クリエイターにとって本当に有難い存在ですね。

そうですね。私たち自身でもかなり手厚いフォローをしていると感じています。さらに、面談で上がった話題は、面談を担当するマネージャーから他の事業部のマネージャーや経営メンバーにも共有され、会社をより良くする意見があれば、全体に反映されることもあります。例えば、案件が立て込んでいるメンバーや落ち込んでいるメンバーの状況を共有し合い、仕事の集中を避けたり、相談に乗ったりといった対応を取っています。

こうした環境を心地よく感じているメンバーからは、「コペンと出会えて本当によかった」や「あの時あのスクールを選んで間違いなかった」という嬉しい言葉をもらうことがあります。また、面談には数字的なゴールを設けておらず、コミュニケーションの場として割り切っている点が、女性にとってやりやすいのかもしれません。何気ないお喋りの中で、その人の本音が自然と出てくることもあり、そうした真意を掴んで全体のバランスを取りながら、できる限り早く反映するように心掛けています。

仕事を通じて感動を生み出し続けたい

コントリ編集部
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最後に、御社の今後のビジョンをお伺いしたいです

デザインスクール事業については、組織の構造上、メンバーが最初に入る入り口となるため、集客力を上げて生徒を増やしていきたいと考えています。また、先ほどもお話ししましたが、各地域でチームを作り、その地域ごとにメンバーが集まれるような楽しいコミュニティを作っていきたいです。クリエイティブ制作事業の方では、スキルの習得に時間がかかる分野なので、根気強く育成していきたいと考えています。同時に、受注量を左右するディレクターの数を増やすことも重要ですので、適性を見極めながらどんどん育てていきたいです。

仕事面では、従来はWEBサイトやチラシの制作など、各事業部単体で完結する案件が多かったのですが、最近では事業部を横断するようなプロジェクト案件が増えてきました。例えば、ブランディングから始まり、その提案に沿ってWEBサイトやパンフレット、ムービーを制作するなど、各事業部が連携して進める仕事です。こういった規模の大きい案件は、他のチームメンバーと交流を持ちながら仕事ができるため、クリエイターの成長に繋がると考えています。特に、幅広いデザインの制作を一括で手がけるブランディング案件は今後も積極的に取りたいと考えており、その中でも、競争が激化している採用分野、特に中小企業様をサポートするためのサービスメニューの開発を強化する予定です。中小企業の多くは、費用やマンパワーに限りがあるため、そうした企業を支援できるような提案を目指しています。

また、案件の中身に関わらず、一度ご縁をいただいた取引先の皆様には、「コペンフラップに頼んだことで予想を上回る成果物が返ってくる」という感動を味わっていただきたいと思っています。まだ感動を与えられる仕事をできるメンバーは限られていますが、今後もっと多くのメンバーがそうした成果を出せるように育てていきたいと考えています。

コントリ編集部
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感動という言葉が印象的ですが、堀之内社長にとって感動を与えられた仕事はどのような内容でしたか?

お客様から「ここまでやってくれるとは思わなかった」とか、「予想以上の出来栄えです」といった言葉を引き出せることが、私たちの目指す仕事の一つだと思います。つい最近、私が対応した案件でも、納期が非常にタイトで、お客様自身もどんなデザインが出てくるか不安な中、「もうここにしか頼めない」という思いで初めてご依頼いただいた方がいました。きっと大きな不安を抱えていたと思いますが、急ぎの中でもただデザインを提出するのではなく、その意図や見せ方のバリエーションを丁寧に盛り込んだ資料をお出ししたところ、提案書に非常に喜んでいただき、「初めての依頼とは思えないほど、こちらの意図を汲んでくれた」とお褒めの言葉をいただきました。さらに、納品前から次の依頼もお願いしたいのでスケジュールを確保してほしいとまで言っていただき、このように期待を上回るクオリティを提供することで、感動がリピートに繋がるのだと確信しました。

また、私自身も非常に可愛い商材を扱う仕事だったため、とても楽しかったとお伝えすると、「こんなにタイトで大変な制作だったのに、楽しいと言ってくれるなんて」と驚かれつつも、喜んでいただきました。お互いが気持ちよく仕事をする心掛けも、こうしたプロジェクトの成功には欠かせない要素だと思います。

コントリ編集部
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堀之内社長は感動を生み出すノウハウをお持ちのようですね。それらをどのようにメンバーへ伝えているのでしょうか?

内部のメンバーには、初期段階から「ディレクター研修」と呼んでいる研修を行っており、その中で、一人一人の個性に合わせたフィードバックを心掛けています。タイプ別診断の話や、「気が利く」とはどういうことかといったことも伝えていますが、やはり座学だけでは不十分だと感じており、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)での実践的な学びが最も効果的だと考えています。また、ディレクターには、その素質があると見込んだ人に声をかけており、現時点でも何人かは「感動」に近いレベルまで到達しています。こうした私の信念やイズムを、今後も徐々に浸透させていきたいと思っています。

コントリ編集部
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ありがとうございます。先ほどのお話から、デザインのクオリティもさることながら、何気ないやり取りにも気を配っていらっしゃるのが伝わりました。

そうした部分はやはり大切だと感じています。取引先からも、チームメンバーの人柄をお褒めいただくことが多く、「誰に頼んでも気持ちよく仕事ができる」「明るくにこやかに接してくれる」「納期も守り、仕事もきちんとしている」というお声をいただきます。また、そのおかげで、これまで自分たちから営業に出向いて新規案件を獲得したことはほとんどなく、すべて紹介でお仕事をいただいています。これは積み重ねによるものなので、とても誇りに思っていますが、今後は自分たちの強み(例えば女性デザイナーが多く、オシャレなデザインが得意であることなど)をもっと強く打ち出していく予定です。

これまでは、フルオーダーでどんな要望にも対応してきましたが、今後は自社製品と言えるような強みを活かしたデザインを提案していくことで、経営の効率化やデザイナーたちが働きやすい環境の向上も目指しています。理想としては、マネージャーが現場に入らずとも仕事が円滑に回る状態を作ることです。

コントリ編集部
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もし仕組化が成功して今のお仕事が手離れしたら、堀之内社長ご自身はどんな仕事をしたいですか?

「何でも良い」と言われたら、やはり人に教える仕事が一番やりたいことです。スクールでデザインを教える部分は、すでに内部のメンバーが回せるようになっているので、例えばマネージャー研修やディレクター研修など、より高度な教育現場を担当するのも良いかもしれません。また、今日お話しする中で改めて、コペンフラップの内部の仕組みや世界観が非常に素晴らしいものだと再確認できたので、これを広く世に広める仕事にも挑戦してみたいです。さらに、ブランディングも教えることと同じくらい好きな分野なので、手が空いた時には引き続き取り組んでいきたいと考えています。

コントリ編集部
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今回のインタビューを通して、堀之内社長の情熱と信念が強く伝わりました。スクールでの学びを活かしながら、クリエイターとして成長し、さらに仲間と共に働くというスタイルは、まさにこれからの働き方の一つのモデルとも言えるでしょう。お客様に感動を与える仕事を目指し、社員一人ひとりの個性を尊重する姿勢が、強いチーム作りと顧客満足度の向上に繋がっているのだと感じました。これからも、コペンフラップのさらなる活躍が楽しみです。

コントリ編集部からひとこと

「一人一人の希望に合わせた働き方を叶えたい」と、そのための工夫や努力を怠らない堀之内社長。なぜそこまで社長自らが尽くすのかという質問に、「私自身が自由に働くのが好きなんです」と笑顔で答えられていました。好きだけでは仕事にならないという意見もありますが、好きだからこそ頑張れる人や組織はあるのだと改めて思い知らされました。

3人姉妹の末っ子なので元々前に出るタイプではなく「今も社長と思われていないんです」と朗らかにおっしゃっていましたが、誰よりも会社や仲間のために動いている姿を想像できました。お客様に感動を与えられることが信頼を置けるディレクターの条件だと教えて頂きましたが、堀之内社長の仕事や仲間への姿勢に心を動かされるのはお客様だけではないはず。そんな温かな空気を纏うコペンフラップと素敵な組織を率いる堀之内社長の今後の活躍に心から期待しています。

インタビュアー 山﨑 千明

ギャラリー

プロフィール

株式会社コペンフラップ
代表取締役
堀之内 千恵

長崎県長崎市生まれ、東京都品川区在住。九州大学文学部を卒業後、化粧品通販の株式会社JIMOSに入社。コールセンター局、アシスタントマネージャーを経て企画マーケティング事業部へ。会報誌制作の編集ディレクターとして勤務した後、今後のキャリアを考えデザイナーに転職することを決意。26歳の時に専門学校日本デザイナー学院に入学。卒業した後は株式会社サングラッドにて電鉄・航空系のグラフィックデザインに携わったのち28歳でフリーランスデザイナーに。33歳で女性向けデザインスクール「CopenCollege」を運営する一般社団法人コペンカレッジ、クリエイティブ制作会社 株式会社コペンフラップを設立。

会社概要

設立2017年7月
所在地 東京都品川区東品川5-9-6
従業員数2人
事業内容クリエイタースクール事業「CopenCollege(コペンカレッジ)」運営
クリエイティブ制作事業(グラフィック・WEB・ライティング・撮影・ムービー・PRなど)
HPhttps://copen-flap.jp