「聴く」ことの可能性は無限大!ホストが作り上げる新しいコミュニケーションの形 | 株式会社Lively
複雑化する現代社会では、人々が抱える悩みや不安は多岐にわたります。さらに、日々進むデジタル化により、コミュニケーションが希薄化していると感じることも少なくありません。このような世の中で「聴く」ということの可能性を追求し、多くの人の人生を良い方向に導くサービスを展開している会社が神奈川県藤沢市にあります。それが、今回スポットを当てさせていただいた株式会社Livelyの岡えり社長です。
本記事では、岡社長のサービスへの想い、そして、そのサービスを支えるホストへの想いを語っていただきました。
株式会社Livelyの事業について
まずは、御社の事業について教えていただけますでしょうか。
LivelyTalk(ライブリートーク)という多種多様な人に話を聴いてもらうプラットフォームの企画・開発・運営とアクティブリスニングという積極的に傾聴するための研修を企業様や自治体様向けに提供しています。
「聴く」ということにフォーカスした事業展開をされているのですね。
ライブリートークのサービスの特徴について教えていただけますでしょうか。
ライブリートークはオンラインプラットフォームです。聴き手となる「ホスト」が100名以上登録しています。リリースして半年でトーク数が1,000回を越えました。ホストの選定には特に注力し、その質を保つよう努力しています。
このプラットフォームの特徴は、カウンセリングやコーチングとは異なり、特定の目的を設定せずに、気軽に会話を楽しむことができるということです。価格設定については、より多くの人が手軽に利用できるよう、1分あたり50円からとしています。
実際にお話をされる時にはホスト1人が何人くらいのお客様を担当されるのでしょうか。
ライブリートークは少人数制を採用しておりまして、ホスト1人に対して最大3人までとしています。
質の高いホストによる少人数制のサービスということでお客様の満足度も高そうですね!
アクティブリスニングの研修というのはどのようなものなのでしょうか。
私たちは「話を聴く」ということの本質について考える時期がありました。それは、スナックのママとの雑談のようなものでありながら、一方でカウンセリングやコーチングとは異なるものでした。この独特なコミュニケーションスタイルをどう表現すればいいのかと考えた時、「アクティブリスニング」という言葉が浮かびました。ただし、この言葉は一般には馴染みが薄いと感じていたため、積極的には使っていませんでした。
しかし、ある企業さんに私たちの取り組みを説明したところ、非常に興味を持っていただけました。上司と部下のマネージメントや営業活動においても有効だと認識され、2023年10月には研修の依頼を受けました。実際に研修を実施し、参加者からのご好評をいただいたことで、アクティブリスニング研修に対するニーズがあると確信しました。
事業を始めたきっかけについて
事業を始めたきっかけについて教えていただけますでしょうか。
元々は、3人の子どもを育てながら作業療法士として働いていましたが、子育てとの両立が難しく、専業主婦に転向しました。それでも内心では、「やはり働きたい」という気持ちが残っていました。仕事をしていないと、社会から取り残されているような感覚に陥り、また、子どもたちが成長した後に社会に復帰した際に、稼ぐ力を失っているのではないかという不安も抱えていました。そのような不安を解消するため、どうしても再び働きたいと思っていました。
周りの方が働いていたりすると置いてかれてしまったような感覚になりますよね。
当時、お子さんはおいくつくらいだったのでしょうか。
一番上の子が小学生、下の子が0歳と2歳でした。下の子2人を預けて仕事をしようと考えていたのですが、預け先を見つけなければならないのと、融通がきく仕事もが見つかりませんでした。「こんなに働き方の選択肢って少ないんだ・・・」と絶望しましたね。それでも働きたいという気持ちは変わりませんでした。
「働きたい」という相当強い想いがあったのですね。
働きたかった理由は経済的な理由でしょうか。
当時は、単にお金を稼ぎたいというよりも、「お金をもらえる価値のあることをしたい」という想いが強かったです。主婦としては給料が発生しないため、その反動か、何か有意義なことをしたくて仕方ありませんでした。その中で出会ったのが、「オンラインで話を聴く」という仕事でした。実際に始めてみると、お客様から大変喜ばれ、自分にも働く選択肢ができたことに、大きな充実感を感じました。働く場所がなく絶望していた私が、こんなにも前向きに変われるとは思ってもみませんでした。まさに「人生の広がり」を実感した瞬間でした。
絶望の状況から抜け出すことができたのも「話を聴く」という仕事と出会えたからなのですね。
そうなんです。同じように悩んでいるママさんや介護をされている方、病気などで働く選択肢が限られてしまっている人は世の中にたくさんいると思っています。そして、その中には話を聴くのが得意な人が必ずいます。そのような方のために新しい働く選択肢を作りたいと思い事業にすることにしました。
ご自身で経験された悩みをより多くの方に解決してもらいたいという想いが事業化する原動力となったのですね。
世の中には話を聞いて欲しいという人はたくさんいらっしゃいますし、実際に話を聴くということをやってみた結果、お客さんが喜んでくださって元気になるのを見てきました。これは、お客様にとっても、話を聴く私たちにとっても良いサービスだなと思ってライブリートークを立ち上げました。
これまで多くの方とお話しし、喜ばれてきたと思いますが、具体的な事例をお聞かせいただけますでしょうか。
40代の会社員の方についての事例ですが、その方は心を病んでおられました。表向きは明るい方で、ぱっと見た感じでは病んでいるなどと思えないような感じでした。前職の会社で上司に裏切られ、結果として退職せざるを得なくなってしまいました。その出来事がきっかけで、他人を信じることができなくなり、人間関係に対して否定的な感情を抱くようになりました。ストレスの影響で、髪の毛が抜けるなどの身体的な症状も現れていました。精神科を受診したものの、医師はあまり話を聞いてくれず、薬の処方のみが行われたため、その薬を飲むことにも抵抗を感じている状態でした。
とても辛い状況ですね。。。
家族との関係も良くなかったため、相談することさえ難しい状況でした。それでも、働かなければならないという現実があり、同じ業界での転職を決意されたばかりでした。その方はある程度の年齢であり、転職先では管理職としての立場を期待されていました。しかし、チームでの仕事が求められる中、過去の経験から再び裏切られるのではないかという恐れがあり、メンバーとの良好な関係を築くことができずに悩んでいました。その時、「とにかく誰かと話したい!」という強い願望があり、偶然プラットフォーム上で私を見つけていただきました。
私はその時、ただただ彼の話を聞きました。3ヶ月後、彼から「もう一度、人を信じてみようと思います。人は本当に素晴らしいですね。繋がりは大切だし、こんなに真摯に話を聞いてくれる人がいることを知って、自分の人生を諦めることはないと感じました。また、人間関係を築いていこうと思います」という言葉をいただいた時、本当に感動しました。
それでは感動ですね!!
5年が経過した今でも、「異動になりました」「上司にしたい人ナンバーワンに選ばれました!」など、嬉しい報告をいただいています。その際に、「自分が落ち込んでいた時に、もう一度人を信じてみようと思ったのはあなたのおかげです」という言葉をいただき、本当に嬉しかったですね。
そんなドラマがあったのですね。
そう考えると「聴く」というお仕事はとても素敵な仕事ですね!
そうなんです。人の人生を良い方向に変えることができ、しかも自分自身もハッピーになる。
聴くだけで人がこんなにも変われるのだということを教えていただきました。
事業を始めてぶつかった壁
事業を始めてからぶつかった「壁」についてのエピソードを教えていただけますでしょうか。
ITベンチャーを立ち上げ、経営することは私にとって初めての経験で、本当に全てが分からない状況でした。メールの使い方から、「スタートアップ」「インターン」といった業界用語に至るまで、最初は全く理解できませんでした。ITサービスを立ち上げる過程で、エンジニアにシステムの制作を依頼する際も、「仕様?要件?それって何?」といった感じでした。初期の頃は、エンジニアから「何を言っているのか分かりません」とよく言われていました(笑)。
未経験からのスタートだと用語を覚えるところからですよね。
大変なご苦労をされたと思います。
その当時は、本当に全ての専門用語が理解できない状態でした。経営に関しても理解が乏しく、事業計画書というものも理解できていませんでした。ずっと話を聴く仕事をしてきたため、インプットは得意分野でしたが、アウトプットは本当に苦手でした。会議で「社長、お願いします」と促されても、「・・・」という感じで、うまく言葉を発することができませんでした。
そのような状況の中、最初にどの部分から改善していかれたのでしょうか。
自分の考えをアウトプットするということをやりましたね。
共同創業者に対して、自分の考えを言葉にして表現し、それを伝える練習を徹底的に行いました。
共同創業者の成瀬さんは本当に心強い存在ですね。
その成瀬さんとはどのようにして出会われたのでしょうか?
成瀬との出会いはTwitterでした。その時、私は「何か始めたい」という思いが強く、聴き手として活動している最中でした。私だけでなく、周りのママ友たちも収入を得ることができていたため、何かできることはないかと考えていました。ただ、経営未経験であるため、何も知らない状態で始めるのは怖いと感じており、経営について学びたいと思っていました。
経営について学ぶ方法を探しているときに、成瀬のオンラインサロンをTwitterで見つけました。彼自身が経営者であること、そして考え方にも深く共感しましたし、「世界を一つの家族にする」という彼の会社の理念にも魅力を感じました。過去のコンテンツを徹底的にチェックし、最終的にオンラインサロンに参加しました。サロンに参加した後、私のやりたいことを伝えたところ、成瀬も共感していました。というのも、彼自身も子育てをしていたり、彼のオンラインサロンでも働きたくても働く選択肢が少ないという現実にぶつかっている人も多く、その課題意識への理解は早かったです。
自分が大切にしている想いに共感してくれる方がいるということは本当に嬉しいことですよね。
その後、成瀬さんから経営についていろいろと学ばれたということですね。
結果的には経営を学べませんでした(笑)
私自身は本気で経営を学びたかったので、「給料はいらないので御社で経営を学ばせてもらっていいですか?」というオファーをさせていただきました。ただ、彼自身もコンサル業をやっていたので、ずっと忙しく、なかなか経営を学ぶことはできませんでした。そんな時に神奈川の起業支援施設の「HATSU 鎌倉」というベンチャー支援プログラムのメンターをやるから、そこに入ってみたらどうかという提案をいただき、早速そのプログラムに参加してみました。
経営は学べませんでしたが、学びの場を与えてくれたということですね(笑)
ライブリートークのホストの選定基準について
ライブリートークのサービスにおいて重要な役割をになっている「ホスト」の選定基準について教えていただけますでしょうか。
ホストの選考プロセスでは、まず1時間の説明会を開催します。その後、参加者にエントリーシートの記入を依頼します。エントリーシートでは、「説明会の感想」「共感した点」「ホストになろうと思った理由」「ホストとしてどのような人にサービスを提供したいか」などを記述していただきます。
エントリーシートで1次選考を通過した方には、サービスを体験していただきます。その結果、サービスに好感を持っていただいた方が次のステップに参加できるような仕組みにしています。
自分が働くサービスが良いと思っていることは大事ですよね!
そうですね。ライブリーはまだ新しいサービスなので、会社の考え方に共感していただいたり、サービス内容を良いと思っていただけているというポイントがとても大事だと考えています。
サービスを体験したあとはどのように選考が進んでいくのでしょうか。
オンラインで3人1組のロープレをそれぞれ5分ずつしていただきます。その中で、どのような姿勢なのか、どのように質問を投げかけるのか、というような部分を見させていただいてます。9項目のマッチング基準をクリアされた方をホスト候補者としています。
思った以上に厳格な採用プロセスですね!
ちなみに、合格率というのはどれくらいなのでしょうか。
合格率は2.8%です。
2.8%!!
かなり狭き門ですね!
ライブリートークにおける「ホスト」はとても重要な存在なので、しっかりした採用プロセスで選考を行っています。
ちなみに、現在は何名くらいのホストが活躍されているのでしょうか。
現在は114人(2023年12月時点)のホストに活躍いただいています。
ということは、今までかなりの数の面接をやられてきたのですね!!
そうですね。現在もめちゃくちゃ面接していますね(笑)
ホストの面談では、週に2回、3人ずつの面談を2,3週間分くらい募集すると、10分くらいで面談日程が埋まってしまいます。
それは凄い!!
そのような採用プロセスは岡さんが考えられたのでしょうか。
採用プロセスについては、成瀬が考えました。
彼は元々、採用コンサルの仕事もやっていたので、その時の経験なども活かして採用プロセスを作り上げていきました。
これだけ素晴らしい採用システムであれば、ホストの質はしっかりと担保されそうですね。
ホストの質はとても重要だと考えています。どんなホストに当たっても感動していただけるようにしています。初めてご利用いただく方にとっては初回の印象が非常に重要ですからね。
ホスト同士のコミュニケーションも積極的に行われていると聞いておりますが、どのような仕組みにされているのかを教えていただけますでしょうか。
slack(スラック)を活用して、コミュニティ運営を積極的に行っています。最初の頃は、ホストに合格してすぐにスラックに入っていただいていたのですが、いきなりそのような環境に投げ込まれて何をして良いのかわからないですよね。スラックというもの自体がわからない人もいます。それ以降は、最初にスラックオリエンテーションをやるように変更しました。その中で新人ホスト4,5人でデビューまでのフロー、コミュニティの心構え、留意点などを話します。ここからがスタートラインですよ!とモチベーションを上げることを目的にしています。
そのオリエンテーションで集まったメンバーが同期となります。そこで仲良くなってもらって、進捗を確認したり、ロープレをしたりもしています。このような前段階を設けることでその後の全体のコミュニティーの中に入りやすくしています。
素晴らしい仕組みですね。誰が入っているか分からないグループに1人で投げ込まれたらなかなか発言などもできませんが、同期がいると心強いですよね。
コミュニティ運営は岡さんがやられているのでしょうか。
コミュニティの運営は、ホストの方々に担当していただいています。その中から、コミュニティマネージャーを選出し、3ヶ月ごとのローテーションで運営をお願いしています。コミュニティマネージャーの主な役割は、新人のホストがスラックのコミュニティに参加した際のメッセージや質問への対応です。また、運営側の指示が必要な場面では、メンションをして通知してもらうというルールを設けています。
コミュニティーマネージャー制は良いアイデアですね!
参加するだけでなく、運営にも関わることで、よりやりがいを感じられそうですね。ちなみに、ホストの質を向上させるような研修なども行っているのでしょうか。
ホストが自発的に、勉強会や懇親会などを定期的に行ってくれています。ロープレ道場というチャンネルがあるのですが、そこでは、アイスブレイクの練習や「今日は深掘りやってみます」などといったようにテーマを決めて、ホスト同志のスキルをあげるためのロープレ会を常にやっています。
ホスト同士で勝手に成長していく仕組みができているのですね!
そうですね。変な人が入ってきた時のロープレなどもしていますよ(笑)
「聴くコミュニケーションにチャンスをつくり、孤独を減らす」という理念に共感してくれているメンバーなので、そのような社会を作るために私たちは集まっているんだ!という気持ちを常に持って活動し、仲間をサポートし合っています。ホスト同士は、ライバルでもあり、仲間でもあるという形でコミュニティー作りをしています。
今後のビジョンについて
最後になりますが、今後のビジョンについて教えていただけますでしょうか。
何かあったら病む前に話を聴いてもらおうと気軽に思ってもらう社会を作りたいと思っています。カウンセリングの利用率は、欧米だと52%だけれども、日本は6%。これからもわかるように、日本はお金を払って人に話を聴いてもらうということが当たり前なカルチャーではないので、それを当たり前にしていきたいです。
そのために、ホストとして月に5万円稼ぐ人を1万人作ることを目指しています。これを実現できれば、「聴く」という仕事がこの日本で当たり前なものになっていると思います。そのような社会を目指して頑張っていきたいと思います。
熱いメッセージありがとうございました!
「聴く」という仕事が社会にどんどん浸透していくよう、コントリとしてもしっかりと応援していきたいと思います!!
コントリ編集部からひとこと
今回は、株式会社Livelyの岡社長に創業から今後のビジョンまで色々とお話をうかがいしました。岡社長とは、コントリでも関わらせていただいているグラフィックファシリテーターのりえさんからのご紹介でした。やはり素敵な方からのご紹介は素敵な方に辿り着きます。
「聴く」ことの可能性を存分に感じさせていただいた今回のインタビュー。多くの方に届いて欲しいなと思います。
ギャラリー
岡 えり様 プロフィール
沖縄県出身、神奈川県在住。大学卒業後に作業療法士として働くが、子育てとの両立がこんなになり専業主婦に。それでも「働きたい」という強い想いを持ち続けた末に「話を聴く」という仕事に出会う。2020年には、株式会社Livelyを設立し、話を聴いてもらうオンラインのプラットフォーム「ライブリートーク」をリリース。現在は多くのユーザーに支持されている。
特技はヤギのモノマネ。座右の銘は「笑う門には福来る」。
【会社概要】株式会社Lively
設立 | 2020年10月9日 |
資本金 | 500万円 |
所在地 | 神奈川県藤沢市藤沢3 |
従業員数 | 8人 |
事業内容 | LivelyTalk(ライブリートーク)の企画・開発・提供 アクティブリスニングサービスの提供 アクティブリスニングスキル教育 |
URL | https://about.lively-talk.com |