日本のフィットネス参加率3%の真実―リバウンド率0%を実現する革命的経営者の挑戦

「技術では、同期約20名の中でも1位2位を争うぐらいのレベルだったんです。でも、1番信頼を築けていた自信のあったお客様から全額返金申請を受けました」——。

銀座でビール腹・美尻・腰痛改善に特化したパーソナルジムを経営し、ベトナムのホーチミンでトータルウェルネスサロンも展開する株式会社MUSCLE・BODY・MAKE代表取締役の吉成大樹氏。RIZAP時代には個人として2度、店舗としても一度、全国1位の実績を収めた彼が語る挫折からの逆転劇には、現代の経営者が直面する「技術力だけでは勝てない」という本質的な課題への答えが込められています。

フィットネス業界一筋13年、約700名の健康づくりに携わってきた吉成氏が見つけた真のリーダーシップとは何か。そして、日本のフィットネス参加率わずか3%という現実に立ち向かう革新的な取り組みとは——。感謝を軸とした経営哲学と、社会課題解決への熱い想いに迫ります。

元ホストから学んだ教訓―技術至上主義からの脱却

大阪出身で「全く面白いことが言えない」と笑いながら自己紹介する吉成氏ですが、その表情には13年間のフィットネス業界での経験で培われた自信が見て取れます。

子供の頃から運動が好きで、小中高では野球、大学ではレガッタに取り組んだ吉成氏。大学時代は独学で筋力トレーニングや運動パフォーマンス向上について研究を重ね、「運動の仕事でご飯を食べていきたい」という高校卒業時からの夢を追い続けてきました。

社会人としてのスタートは兵庫県を中心に展開する大型フィットネスクラブ。1年ほど経った頃、まだCMが出始めたばかりのRIZAPを発見します。

「RIZAPのホームページの採用ページで、トレーナーの皆さんが『お客様の変わっていく姿、人生が変わっていく姿を傍で支えられる』と口を揃えて語っていて、泣けるぐらいに感動したんです」

吉成氏は当時を振り返り、目を輝かせながら話します。

しかし、RIZAP入社後の現実は厳しいものでした。研修では同期20名の中でも1位2位を争うレベルの技術力を身につけ、自信を持って店舗に配属されたものの、お客様を担当し始めてから2ヶ月ほど経った時、予想外の事態が起こります。

「1番信頼を築けていた自信のあったお客様から全額返金申請を受けました。『取れていた』と思っていたコミュニケーションが『取れていなかった』と痛感した瞬間でした」

さらに衝撃的だったのは、同期の存在でした。

「研修時にはギリギリ研修クリアぐらいの技術レベルだった元ホストの同期が、入社半年で全国3位の売上になっていたんです」

この時、吉成氏は重要な気づきを得ます。

「この仕事で1番必要なのは、コミュニケーション。お客様の心理を最大限理解し、お客様の心を掴むこと。これが何よりもお客様の体の結果にも繋がるんだということでした」

この気づきから、吉成氏は意識を大きく変えました。スタッフも含め、1人でも多くの方と少しでも多く話すことを実践し始めたのです。

「十人十色の様々な人のタイプ、心情を理解できるようになり、入社2年目の上期で全国3位、下期に全国1位の売上を獲得しました。それまでの人生で、人に自信を持って語れる成功体験が無かった私にとって最大の自信になりました」

素直さと負けず嫌いな性格が相まって、技術至上主義からコミュニケーション重視への転換を成功させた吉成氏。しかし、さらなる試練が待っていました。

スタッフマネジメントの学び―信頼関係構築の実践論

全国1位の売上を達成した直後、吉成氏は管理職に昇進し、最大25名のスタッフを統括することになります。

「個人としては比較的高い実績を収められたんですが、マネージャーとしてはなかなか最初はうまくいかなかったんです」

吉成氏は表情を少し曇らせながら振り返ります。

「スタッフのことを見ているようで見ていない。結局スタッフ1人1人のことを好きになれていなかった。スタッフのことに、お客様と同じぐらいに興味を持てていなかったんです」

2店舗を渡り歩いても成果が出ず、「次がラストチャンス」と言われて配属された店舗で、ようやく転機が訪れます。

「『ONE「一つになるということ」』という本との出会いがありました。小手先のコミュニケーションを学ぶだけじゃ何もならない。目の前の人1人1人のことをいかに大切に思うか、家族や恋人と同じくらい愛せるかが大事だと学んだんです」

この学びを実践に移した結果、状況は劇的に変化しました。

「スタッフが『吉成さんのために』という想いを持って動いてくれるようになり、みるみるうちに店舗としての売上が伸び、単月では全国1位を3度、通年の売上でも1年目で全国6位にまで登り詰めました」

具体的にどのようなコミュニケーションを取ったのかという質問に、吉成氏は明確に答えます。

「承認、褒めること。シンプルに1人1人のことを好きになることと、褒めて承認するということを、変な上辺だけじゃなくて心底からやっていくことです」

さらに重要だったのは、リーダーとしての姿勢でした。

「基本的には『好きなようにやっていい。何かあったら全部責任は取るから』というスタンスでした。押さえつけられるのは誰しも嫌ですし、特にこういう仕事の人は職人気質の人間が多いので」

今でも意識していることについて、吉成氏は力強い口調で語ります。

「どうしても悪いところに目が行きがちですが、とにかくできるだけいいところを見るようにする。見そうになっても、こっちに戻すということを意識しています。それが結果お客様にも還元されるんです」

この経験から得られたのが、現在の経営の軸となっている考え方です。

「感謝、謙虚さ、誠実さです。対企業であろうが対個人であろうが対スタッフであろうが、目の前の人のことに対する敬意や感謝を必ずしっかり常に持ちながらやるということです」

3%の現実―日本のフィットネス業界が直面する共通課題

RIZAP時代の成功を経て、なぜ独立を決意したのか。吉成氏の表情が真剣になります。

「RIZAP時代から感じていたのは、せっかく頑張って痩せても、また元に戻ってしまうお客様が多いということでした。それと同時に、これだけジムが増えているのに、運動を始める人の数自体が増えていないという現実もありました」

ここで吉成氏が明かすのは、衝撃的なデータです。

「運動する施設に通っている方の割合が、日本では約3%なんです。100人中3人だけ。この10年15年、これだけパーソナルジムやヨガ・ピラティススタジオが増えたにも関わらず、その割合が10年、15年前とほとんど変わってないんです」

なぜこのような状況が続いているのでしょうか。吉成氏は業界の構造的な問題を指摘します。

「すでに運動に関心の高い方が、いろんなジムやスタジオを転々としているだけで、本当に運動が必要な方々には届いていない。新しく運動を始める人が増えていないんです」

この問題の根本的な解決には、従来とは全く異なるアプローチが必要だと考えた吉成氏。特にリバウンド防止について、独自の見解を示します。

「食事制限をずっと続けるのは現実的ではありません。でも運動が習慣になっていれば、多少食事が乱れても体型を維持できるんです」

つまり、一時的な結果ではなく、運動習慣の定着こそが根本的な解決策だというのが吉成氏の結論でした。

「この業界の課題を解決するには、今までにない革新的なサービスが必要だと思い、自分で挑戦してみることにしました」

「ビール腹専門」という戦略的ポジショニング

独立後、吉成氏が打ち出したのは「ビール腹専門パーソナルトレーニング」という一見ユニークなコンセプトでした。しかし、その背景には深い戦略的思考がありました。

「弊社が掲げているビジョンは、端的に言うと日本の労働人口の低下を防ぐことです」

吉成氏は少し前のめりになりながら、熱のこもった口調で続けます。

「日本は今、少子高齢化で働く人がどんどん減っています。このままだと経済が弱くなってしまう。戦後から頑張って築き上げてきた豊かな日本が、私たちの子どもや孫の世代では今ほど豊かではなくなってしまうかもしれません」

この社会課題に対して、フィットネスの力で貢献したいという想いから、ターゲットを明確に設定しました。

「会社や組織のトップが元気じゃないと、働く皆さんもモチベーションが上がりません。まずは経営者の方々に健康でいてもらうことが大切だと思ったんです」

経営者をターゲットにした理由について、吉成氏は実体験に基づいて説明します。

「経営者の方は接待や会食、外食の機会が本当に多いんです。お忙しい中でどうしてもお腹周りが気になってくる。でも人前に立つお仕事ですから、見た目も大切ですし、何より健康でなければ会社を引っ張り続けることはできませんよね」

サービスの特徴として強調するのは、現実との向き合い方です。

「無理な食事制限や禁酒は続きません。お仕事に必要な会食もそのまま楽しんでいただいて、週に1回だけの運動で確実に結果を出す。しかもリバウンドしない仕組みを作る。これがうちの特徴です」

このコンセプトは独立前から明確に決めていたといい、3年間はブレずに継続してきました。

「忙しい経営者の方でも無理なく続けられて、確実に健康を維持できる方法を追求しています」

「美女Run」が示す顧客体験革命

さらに吉成氏が取り組んでいるのが、運動継続のための革新的なサービスです。

「うちでしかやってないサービスなんですが、『美女Run』といって、美女と一緒に走るシンプルなサービスがあります」

このサービスに込められた思いについて、吉成氏は楽しそうに説明します。

「運動が苦手とか嫌いという方もいらっしゃるので、今までなかったような革新的なサービスを通じて、運動が楽しいなと感じてもらいたい。第1目標を達成して一安心したとしても、運動習慣が途切れずにできることが、リバウンド対策につながると考えています」

この発想の根底にあるのは、シンプルながら本質的な考え方です。

「楽しくなければ何事も続かない。特に運動の場合は」

スタッフに対しても同様の考え方を適用しています。

「本当にちょっとした仕掛けですが、スタッフのやる気が上がるような仕組みを作っています。自分たち自身が楽しめてないと、人を楽しませることはできないと思うんです」

お客様が楽しんでいるかどうかの判断基準について聞くと、吉成氏は具体的に答えます。

「筋力トレーニングはある程度つらい場面もありますが、そんな中でも笑顔が出ているというのが、お客様自身が楽しまれているかどうかを判断する材料ですね」

そのために重視しているのが、個別対応です。

「その方によって好きな種目、嫌がる種目があります。性格も、ずっとやりっぱなしが良い人もいれば、コミュニケーションを取りながらの方が良い方もいます。まずはその人のタイプをしっかり見極めて、50分の中でどう組み立てるかを考えています」

ベトナム進出に隠された労働力獲得の戦略

吉成氏の視野は国内にとどまりません。半年ほど前からベトナムのホーチミンでトータルウェルネスサロンを展開していますが、これも単なる海外展開ではありません。

「労働人口の低下を防ぐだけでは足りない部分があると思うんです。減るのは防げたとしても、今度は増やすとなると別のアプローチが必要です」

吉成氏が描く戦略は壮大です。

「ベトナムで育てた人材を日本に持ってくることで、働き手が日本でも増える。今伸びている、人口が増えている国の労働者に日本のクオリティをしっかり浸透させて、それを逆に日本に持ってくる」

ベトナムでの事業についても、Win-Winの関係を重視しています。

「ベトナムでは、健康や美容の分野で日本ほど質の高いサービスがまだ少ないんです。私たちのサービスでベトナムの方々により良い技術やサービスを提供できれば、ベトナムの健康美容業界のレベルアップにもつながります。結果的に、お互いにとって良いことだと思います」

これらの取り組みの根底にある想いについて、吉成氏は力強く語ります。

「日本に生まれた以上、この国をもっと良い国にしたいんです。私にできることは運動や健康の分野なので、この仕事を通じて働く人を元気にして、日本経済を活性化させたい。そうやって活力のある社会づくりに貢献したいと思っています」

一家に1人トレーナー時代の到来

吉成氏の最終的なビジョンは、日本社会の根本的な変革です。

「まず自分が生きている間に、リバウンド率を0%にできるようなビジネスモデルを作り上げて、業界全体のレベルを底上げしたいんです」

そして、より長期的な目標として掲げるのは、日本のフィットネス参加率の抜本的改善です。

「一家に1人、一社に1人、パーソナルトレーナーが付く。日本国民全員が当たり前のように運動する世の中を作りたい。最終的には日本のフィットネス参加率を世界一にするのが目標です」

現在3%の参加率を、どこまで引き上げることを目指しているのでしょうか。

「スウェーデンなど北欧の国では約20%を超えています。まずはそのレベルまで持っていきたいですね」

これが実現すれば、市場規模は約7倍になる計算です。

「それだけ多くの方が運動するようになれば、日本全体がもっと健康になって、経済も活性化します。少子高齢化で働く人が減っている今、一人ひとりが長く元気で働き続けられることが、この国の未来にとって本当に大切だと思うんです」

この壮大なビジョンの実現に向けて、吉成氏は着実に歩み続けています。

「同じ想いを持った人たちを一人でも多く増やして、次の世代にもこの想いを継承していく。そうやって日本を世界一健康な国にしたいんです」

まとめ:感謝こそが最強の経営戦略

インタビューの最後に、吉成氏が改めて強調したのは、原点となる想いでした。

「今まで人や場所とのご縁だけに恵まれてここまでやって来れている中で、溢れ出てくる感謝の気持ち。支えてくれている全ての人、関わる全ての人、目の前に起こっている物事への感謝を忘れず、誠実に貪欲に徹底的にやるべきことをやり続ける。当たり前のことを当たり前にやり続けることで、コツコツ信用の芽を育てる」

そして、力強い宣言で締めくくります。

「せっかく日本国民として生まれたからには、日本をシンプルにもっとよくするということが一番の自分の中の使命感です。それを達成するために、自分ができることを精一杯やり切る。結果、業界としてのNo.1を絶対取ると、ここに宣言したいと思います」

コントリからのメッセージ

技術力で勝てると信じていた若きトレーナーが、元ホストの同期から学んだ「人間力の重要性」。25名のスタッフを束ねる中で体得した「感謝ベースのマネジメント」。そして、業界の3%という現実と向き合い、社会課題解決に挑む経営者としての使命感——。

吉成大樹氏の歩みは、現代の経営者が直面する多くの課題に対する示唆に富んでいます。技術やスキルだけでは勝てない時代において、真に大切なのは目の前の人を大切に思う心と、それを行動で示す誠実さなのかもしれません。

「感謝、謙虚さ、誠実さ」を軸とした経営哲学は、決して特別なものではありません。しかし、それを愚直に、一貫して実践し続ける姿勢こそが、人の心を動かし、組織を成長させ、そして社会を変える力となることを、吉成氏は自身の体験を通じて証明しています。

日本のフィットネス参加率を世界一にするという壮大なビジョンに向かって歩み続ける吉成氏。その挑戦は、私たち経営者一人ひとりが「自分にできることは何か」を問い続ける重要性を教えてくれます。

プロフィール

株式会社MUSCLE・BODY・MAKE
代表取締役
Japan Vietnam Fitness Pioneer Co.,Ltd

CEO
吉成 大樹

株式会社MUSCLE・BODY・MAKEの代表取締役として、業界初の「ビール腹解消・美尻専門」パーソナルジムを展開する吉成大樹氏。フィットネス業界13年のキャリアを持ち、前職のRIZAP時代には約450名の顧客を担当し、個人・店舗ともに全国1位の実績を収めた。「週1回のトレーニング」「禁酒不要・過度な食事制限なし」という独自のノンストレスメソッドにより、累計700名の会員と株式会社NTTデータなど大手企業との契約を獲得。2024年12月にはベトナムのホーチミンで現地初の日系パーソナルジムをメインとしたトータルウェルネスサロンを出店するなど、国際展開も開始している。

ギャラリー

会社概要

設立2022年1月11日
資本金1,000,000円
所在地東京都港区芝2 -3 -11 ガラ・シティ芝公園 802
従業員数2人
事業内容ビール腹/美尻専門パーソナルトレーニング
スペースレンタル(ジム/ワーキングスペース)
美女Run
法人様向け出張運動指導・健康セミナー
パーソナルトレーナーの教育・フィットネスクラブのコンサルティング
HPhttps://muscle-body-make.fun/

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