
18年ぶりの現場復帰が教えてくれた、働く喜びと経営の本質|株式会社ウェブジェネレーションズ
円山の登山道で、51歳の経営者は人生最大の決断をしました。「助けてください」——
18年間の起業人生で初めて、他者に救いを求めた瞬間でした。月収500万円の成功から破産、そして再び立ち上がるまでの物語。そこには、お金を追うビジネスから、人を大切にする経営への価値観の転換がありました。株式会社ウェブジェネレーションズ代表取締役、北﨑圭一氏に話を聞きました。
円山登山が変えた人生 ― 「働こう」と決めた日
「2023年5月27日です」
円山で朝倉氏と初めて登山をした日を、北﨑氏は今でも正確に覚えています。この日の出来事が、その後の人生を大きく変えることになったからです。
当時、北﨑氏は経営難のピークにいました。共同経営で始めた物販の会社は行き詰まり、役員報酬は1円も取れない状態が続いていました。
「起業して18年ぐらい経っていました。ずっとビジネスをやってきたという変なプライドがあって、『絶対に雇われて働くなんてしない』と思っていました」
北﨑氏は苦笑いを浮かべながら振り返ります。
しかし、2023年の4月、5月頃には、そのプライドを捨てざるを得ない状況に追い込まれていました。自分の労働力をお金に変えよう——起業してから18年間で初めて、そう思った瞬間でした。
「それまで『働く』っていう意識が全くなかったんです。本当に困って、究極まで困った結果、『これはもうシステムエンジニアとして働かないとダメだ』と思いました」
実は、円山登山に参加したのは偶然でした。家庭倫理の会で100日連続参加という修行のような実践を終えた直後、朝倉氏が「明日、円山登山に行きます」と全体へ声をかけたのです。
「朝倉さんは倫理の世界では尊敬される方なので、近寄りがたい存在でした。雲の上の人のような、敷居が高い印象がありました」
それでも、IT企業の創業者である朝倉氏と話せるかもしれないという思いが、北﨑氏の背中を押しました。
登山の最中、北﨑氏は意を決して相談を始めました。物販がうまくいかないこと、共同経営者との関係がギクシャクしていること、プログラミング教室も検討したが時間がかかりそうなこと——。
朝倉氏は穏やかに答えました。
「私も以前、プログラミング教室をやろうとしたことがあるんですが、失敗しました。あれは難しいですよ」
「共同経営も、実は私も昔、失敗したことがあります。共同経営はうまくいかないことが多いですよ」
この言葉が、北﨑氏の決断を後押ししました。山を登っている最中に、「これはもう共同経営はやめよう」と心を決めたのです。
実は、娘からも以前、こんな問いかけを受けていました。
「パパ、今の仕事やっていて幸せなの?」
高校生の娘は、父親の様子をよく観察していました。共同経営者との電話の様子を見て、幸せそうには見えなかったのでしょう。
「今の仕事に誇りを持ってる?」
この問いに、北﨑氏は答えられませんでした。稼げればいい、売れればどんなものでもいい——そんな価値観で走り続けてきた18年間。誇りなど、持ちようがありませんでした。
娘の言葉が、どこかで引っかかっていました。そして、円山での朝倉氏との会話が、決定的な転機となりました。
月収500万円の成功と転落 ― お金を追い続けた18年
北﨑氏の起業は、2005年に遡ります。パナソニック系のシステムエンジニアリング会社で6年間、SEとして働いていた北﨑氏は、副業で始めたアフィリエイトの面白さに魅了されていました。
「自分の腕一本でお金が稼げるんだという、その喜びが楽しくて」
当時、副業でも月に30万円ほど稼いでいました。そこに、会社からの早期退職募集の話が舞い込みます。
「その瞬間、『これは辞めるべきだ』と思いました。本業でやったら、絶対に稼げるという確信がありました」
北﨑氏の直感は当たりました。独立1年目で月収100万円を超え、2期目、3期目には月収300万円に。最終的には月収500万円まで到達しました。
「ノリノリになっちゃいますよね。海外旅行に行ったり、毎年家族旅行でグアムに行ったりディズニーランドいったり、不動産を買ったり。移動はすべてタクシーみたいな笑」
しかし、2010年を過ぎた頃から、徐々に売上が落ち始めます。2012年には月収100万円程度まで下がっていました。
「当時は『これはまずい』と思いました。今思えば月100万円でも十分なんですけどね」
そこで北﨑氏が選んだのが、物販への転換でした。輸入ビジネスのセミナーを受け、海外の展示会に行って面白い商品を見つけ、独占販売権を取得して国内に輸入する——。
「売れるものなら、何でもよかったんです」
マスク、アパレル、デジタルサイネージ、電動スケートボード、翻訳イヤホン、スマートフォン関係のガジェット系——。コロナになればマスクを大量に輸入し、その時々で売れそうなものに手を出していきました。
「宝探しみたいで楽しかったです。それはそれで面白かったんですけどね」
しかし、物販ビジネスは思った以上に難しいものでした。2019年、北﨑氏は破産を経験します。
不思議なことに、この時の北﨑氏には絶望感はありませんでした。
「全然絶望はしなかったです。こういうとちょっと、あれですけど…破産すれば借金が免除される。それはすごいことだと思いました。気持ちが楽になりました。」
むしろ、ゼロからやり直せるという希望の方が大きかったと言います。3人の仲間と共同経営で、再び物販に挑戦することを決めました。
しかし、この共同経営も2023年前半には行き詰まります。売上は伸びず、関係性もギクシャクし、責められる日々。プライドを捨てて「働く」ことを選択せざるを得ない状況に追い込まれたのです。
振り返れば、この18年間、北﨑氏は一貫して「お金」だけを追いかけていました。
「どうやったらお金が稼げるか、いかにして利益を出すか」
そこには、「どうやって働くか」という視点が、すっぽりと抜け落ちていました。仕事に誇りを持つこと、働く喜びを感じること——そんな当たり前のことを、北﨑氏は18年間、忘れていたのです。

18年ぶりの現場復帰 ― 「天職」との再会
2023年7月、北﨑氏は5年間休眠状態だった株式会社ウェブジェネレーションズを再始動させました。朝倉氏の会社、SOC株式会社から業務委託で「1人分の仕事」を受注したのです。
久しぶりにコードを書き始めた北﨑氏は、驚きの感情に包まれました。
「楽しくて仕方がありませんでした。現場で働いているという状況そのものが」
しかも、触ったことのない言語でした。それでも、試行錯誤しながらコーディングしていく作業が、たまらなく楽しかったのです。
北﨑氏が特に大好きだったのは、バグ解析——不具合の原因を突き止めて直す作業でした。
「難しいバグだと、原因を突き止めるのに1週間かかることもあります。でも、それがわかったときの喜びは何とも言えません」
そして、朝倉氏の会社で働いているという事実そのものが、北﨑氏に大きな喜びを与えていました。
「朝倉さんの会社で働けているということが、本当に幸せでした」
18年ぶりの現場復帰で、北﨑氏は決定的な気づきを得ました。
「働くって、こんなに楽しかったんだと思いました。そのとき初めて、これが自分の天職だったんだと気づいたんです」
お金を稼ぐために仕事をするのではない。仕事そのものに喜びを感じる。働くこと自体が幸せである——。18年間忘れていた、仕事の本質的な価値に、北﨑氏は再び出会ったのです。
この体験が、北﨑氏の新たな経営理念を形作っていきます。
朝倉氏は、北﨑氏にこんなことを教えてくれました。
「最初は1人で仕事を受けて始めた人が、徐々に人を増やしていって、10年後には100人になっている会社が札幌にあります」
「そういうやり方があるんだ」と思った瞬間、北﨑氏の頭の中で何かがはじけました。
「それなら自分にもできそうだと思いました。100人の会社ができると、まだ何も始めていないのに確信したんです」
この直感力は、高校、大学時代の麻雀やパチプロ経験で培われたものかもしれません。妻と2人で月60万円を稼いでいた頃、「攻略するのが好き」だった北﨑氏。半分の確信があれば、勝負に出る——そのギャンブラー気質は、ビジネスでも健在でした。
ただし、今回は決定的に違うものがありました。それは、「働く喜び」という明確な理念です。
2年で21人、無借金経営 ― 「ハッピーなエンジニア」を増やす
2023年7月のスタートから約2年。北﨑氏の会社は、現在21人の体制まで成長しています。しかも、破産から5年という信用情報の制約があるため、完全な無借金経営です。
「よく回せたなと思います。最初の頃は特に大変でしたが、本当によくやったと自分でも思います」
借金ができない中で、人を増やしていくには相当な勇気が必要だったはずです。
「勇気はいりますよね。でも、ネジが外れているのかもしれませんが、ギャンブラー気質なんです。ここぞというときには勝負に出る」
しかし、今回の勝負には、明確な理念がありました。それが、「ハッピーなエンジニアを増やす」という使命です。
「自分も、エンジニアとしてたった6年間働いた経験に救われました。人生に迷って本当に困ったとき、その経験があったから何とかなったんです」
「同じような思いを、一人でも多くのエンジニアの方に感じてもらいたいんです」
この理念は、具体的な経営方針にも表れています。
株式会社ウェブジェネレーションズでは、契約単価の65%を社員に還元しています。業界では珍しい高い還元率であり、しかも契約単価まで開示するという透明性です。
「正直で誠実であることが、事業を行う上で一番大切だと考えています。働く従業員全員が、物心共に豊かになってほしい。だから、必然的にこういう形になりました」
「還元率が高い分、経営は厳しくなります。でも、創意工夫で必ず乗り越えられると信じています」
そして、最も重視しているのが、社員が「喜んで仕事しているか」という点です。2ヶ月に1回、常駐先で働いているエンジニア全員と対面で面談を行っています。
「一番大切なのは、喜んで仕事をしているかどうかです。楽しく働けているか、ストレスを抱えていないか」
「困っていることを早くキャッチすることが大切です。我慢している人もいるかもしれませんから」
この背景には、倫理法人会での学びがあります。
北﨑氏は、家庭倫理の会で100日連続実践を行い、その後も倫理法人会で学び続けています。そこで得た「木の根っこ」の考え方が、経営の軸となっているのです。
「ノウハウや方法論をいくら学んでも、木の根っこの部分がしっかりしていないと、最終的には枯れてしまいます」
北﨑氏は、過去の自分が根っこの部分をおろそかにしていたことを痛感しています。
「大切なのは、土台の部分、心の部分です。つまり『あり方』ですね。『やり方』より先に、これを学んでおいた方がいいと思います」
そして、経営者自身が変わることで、社員も変わると信じています。
「経営者が暗ければ、社員もみんな暗くなってしまいます。だから今、一生懸命実践しているんです。徳を積むために」
採用においても、北﨑氏の直感力が発揮されています。
「採用は割と直感ですね。見た瞬間が8割。残りの2割は、10秒程度の会話で判断しています」
スキルシートや職務経歴書を見て「仕事が取れる」という思考が働くと、かえって失敗することが多いと言います。
「直感で『ちょっと違うな』と思っても、スキルシートを見て『これなら仕事が取れそうだ』と欲が出てしまうことがあります。そういうときに採用すると、だいたい失敗しますね」
純粋な直感を信じた方が、うまくいく——。これも、お金ではなく人を見るという、北﨑氏の価値観転換の表れです。

これから ― 3年で100人、働く喜びを全国へ
「3年以内に社員100人。札幌の都市部にオフィスを移転し、さらに日本全国へ展開する。多くのITエンジニアを育成することで社会貢献する」
北﨑氏の目は、未来を見据えています。
この壮大なビジョンの根底にあるのは、自身の体験から生まれた確信です。手に職をつけることで人生が変わる。そして、喜んで働くことで、人は幸せになれる——。
「一人でも多くの人に、システムエンジニアとして働くことの喜びを広めたいと思っています」
北﨑氏が目指す経営者像は、明確です。それは、師匠である朝倉氏であり、そして父親の姿でもあります。
北﨑氏の父親は、学習塾を経営していました。30人ほどの講師を雇用しながらも、お金の計算は全く苦手で、経理は母親に任せきり。それでも、最後まで現役で塾講師を続けていました。
「父は本当に、お金の計算が全くできませんでした。それよりも、リーダーとして皆を引っ張っていくことに全力でした」
朝倉氏も父親も、共通するものがあります。
「二人とも、まっすぐなんです。お金儲けに走らず、世のため人のために働いている」
北﨑氏自身、過去を振り返って「戻りたくない」と言い切ります。
「今が一番いいので、過去には戻りたくありません。過去の自分には何も言いません。好きなようにやってほしい。どうせ失敗するでしょうが、その経験が必要なんです」
破産も、経営難も、すべては今の自分を作るために必要だった——そう確信しているからこその言葉です。
若手経営者に対しては、こんなメッセージを送ります。
「人は痛みに遭わないと変わりません。順調な人に何を言っても聞いてくれない。でも、伝え続けることが大事です」
そして、最も大切なこととして、「根っこ」の重要性を説きます。
「大切なのは、心の部分、つまり『あり方』です。『やり方』より先に、これを学んでおいた方がいいと思います」
倫理法人会での学びは、今も続いています。「妻の言うことを100%聞く」という実践も継続中です。
「家庭は円満になっています。年々、仲良くなっていますね」
穏やかに微笑む北﨑氏の表情には、確かな幸せが滲んでいます。
「経営者が明朗でいられるかどうか。徳を積めば、それが社員にも波及するはずです。会社を変えるのは、経営者自身からです」
3年で100人という目標は、決して絵空事ではありません。2年で21人という実績が、それを物語っています。そして何より、「ハッピーなエンジニアから良いシステムが生まれる」という哲学が、この会社を支えています。
北﨑氏の歩みは、まだ始まったばかりです。
コントリからのメッセージ
破産、経営難という二度の危機を経験しながらも、北﨑圭一氏は「今が一番幸せ」と言い切ります。その言葉には、何の迷いもありません。
お金を追い続けた18年間から、働く喜びを大切にする経営へ——この価値観の転換は、円山の登山道で「助けてください」と言えた瞬間に始まりました。プライドを捨て、18年ぶりにエンジニアとして現場に戻ったとき、北﨑氏は「天職」と再会しました。
「ハッピーなエンジニアから良いシステムが生まれる」という理念は、単なる美辞麗句ではありません。自身が経験した働く喜び、そしてエンジニアとしてのスキルに救われた実体験から生まれた、揺るぎない信念です。
契約単価の65%還元、2ヶ月に1回の全社員との対面面談、「喜んで仕事しているか」を最重視する姿勢——これらすべてが、この理念の実践です。
経営者が変われば、会社が変わる。北﨑氏が倫理法人会で学んだ「根っこ」の大切さは、今、21人の組織に確実に浸透しつつあります。
多くの経営者が直面する「お金か、理念か」という葛藤。北﨑氏の答えは明確です。理念を大切にすることが、結果的に持続可能な経営につながる。人を大切にすることが、最高の経営戦略である——。
3年で100人という目標に向かって、北﨑氏の挑戦は続きます。札幌から全国へ、ハッピーなエンジニアを増やす旅は、まだ始まったばかりです。
プロフィール

株式会社ウェブジェネレーションズ
代表取締役
北﨑圭一(きたざき・けいいち)
1974年3月1日生まれ、札幌市出身。北海道大学大学院修了(原子工学専攻)。1999年、松下システムエンジニアリングに入社。6年間のSE経験を経て、2005年に独立。アフィリエイトビジネスで月収500万円を達成するも、その後物販事業に転換。2019年に破産、2023年に経営難を経験。同年7月、株式会社ウェブジェネレーションズを再始動。「ハッピーなエンジニアから良いシステムが生まれる」という理念のもと、2年で21人体制に成長させる。趣味は登山、マラソン、バイオリン、スープカレー食べ歩き。座右の銘は「諸行無常」。
ギャラリー











会社概要
| 設立 | 2006年6月 |
| 資本金 | 50万円 |
| 所在地 | 札幌市西区発寒11条4丁目14-6 |
| 従業員数 | 23人 |
| 事業内容 | ・システムエンジニアリングサービス ・ウェブサイト制作 ・DX支援 ・生成AI事業 |
| HP | https://web-generations.co.jp/ |
御社の想いも、
このように語りませんか?
経営に対する熱い想いがある
この事業で成し遂げたいことがある
自分の経営哲学を言葉にしたい
そんな経営者の方を、コントリは探しています。
インタビュー・記事制作・公開、すべて無料。
条件は「熱い想い」があることだけです。
経営者インタビューに応募する
御社の「想い」を聞かせてください。
- インタビュー・記事制作・公開すべて無料
- 3営業日以内に審査結果をご連絡
- 売上規模・業種・知名度は不問
※無理な営業は一切いたしません
発信を自社で続けられる
仕組みを作りたい方へ
発信を「外注」から「内製化」へ

