より身近に、どこまでも真摯に。現代社会を守る法律のプロたち|増井総合法律事務所
弁護士と聞いてまず浮かぶ、ドラマのように法廷に立つ姿。そんなありがちなイメージだけではなく、社会や組織のあらゆる場所に法律の知識を洗練させたプロたちが携わっています。増井総合法律事務所は2021年の設立から、企業法務と個人の法律相談の両輪を支えられる集団として事業拡大中の、若くエネルギーに溢れた法律事務所です。弁護士の仕事とはそもそもどのようなものなのか、なぜ企業がコストをかけて弁護士に依頼をするのか。同事務所代表・増井邦繁様に、現代社会に求められる法律家の役割を紐解いていただきました。
法律事務所の仕事を知る
本日はよろしくお願いいたします。
まず、御社の事業内容について教えてください。
法律事務所として、都内で企業や個人の方からの法律に関するご相談をいただいています。他の事務所と比べた特徴としては、企業のお客様と個人のお客様の比率が5:5になることを目指して運営しています。実はそういった事務所は多くはなく、企業法務に振り切ったり、個人のお客様対応に軸足を置いたり、どちらかに集中しておられることが多いんです。
手前味噌になりますが、企業法務をしっかりやれるけれども、個人のお客様も取り扱える幅広い対応力という点で、数少ない事業所であると思っております。
企業・個人両方に対応しているところが少ないのは、何か理由があるのでしょうか。
技術的な部分もありますが、大きな理由として「企業のお客様を獲得する」難しさが挙げられます。我々弁護士の中でも、その層のお客様にご縁をいただくのはそうそう簡単なことではありません。
個人のお客様相手の仕事というのは、どうしても人が生きている限り不測の事故などは起こってしまいますので一定量発生します。しかし、企業様相手の仕事は企業の数も限られており、経験値が偏りやすいため、企業法務についても安定して実績のある事務所が少なくなりがちなんです。
企業法務については、どのような形で仕事の依頼があるのでしょう。営業なども行われますか。
もちろん営業もしております。とはいえ個人のお客様の案件に比べれば絶対数が限られているため、新規開拓だけでは難しい面もあります。そこで、私もそうですが、元々企業法務を取り扱っている事務所出身の弁護士に来ていただくなど、採用・若手の教育も含めて体制を作ることで、企業法務に対しても実力のある事務所として企業に検討していただけるよう努めているところです。
中でも、特に力を入れておられる分野はありますか。
労働法などの人事労務の分野に力を入れています。人事労務をしっかり取り扱える法律事務所も、これまたあまり多くはありません。最大手と呼ばれるような事務所なら当然取り扱いはあるのですが、弁護士報酬がかなり高くなるため、 ある程度普通の金額で頼めるというコスト感も含めて、企業法務を依頼できる事務所というのは限られていると思います。
安心して自社の法務を任せられる弁護士事務所を見つけることが決して簡単ではないからこそ、紹介による安心感や実績が重視されますね。
そうですね。口コミでもうまく広めていただいているなと、ありがたく思っています。2021年の年末に立ち上げて2年と3、4か月ぐらいの若い事務所ですが、企業案件もしっかりやっている点を評価していただけている手応えがあります。上場企業も何件も開拓できていることで、そこからの評判で繋がって紹介していただくパターンも多いです。
もちろん飛び込みでのお問い合わせもありますが、ご紹介数は多いですし、信頼を築いて次の方へ繋げていただけるという形は理想的だと思います。
先ほど、弁護士報酬が一般的には高くて依頼が難しい、というお話がありました。増井さんの事務所がリーズナブルに高いクオリティのサービスを提供できているのには、どういった工夫があるのでしょうか。
表現が難しい部分ではあるのですが、実は日本の弁護士報酬自体は、世界的に見ると非常に安いんです。東南アジアにも及んでいないのが現状です。それ自体は非常に悔しい思いではありますので、ゆくゆく弁護士の仕事の価値をもっとあげていきたいのですが、それは今回は一旦置いておきまして…。
とはいえ、依頼する側からすると、日本の多くの弁護士事務所の依頼額は高く感じられますので、コストダウンにはかなり腐心しております。まだまだ知名度をあげて、信頼を得て、ご縁を広げていく段階ですから、まずは安心してお任せいただける事務所でありたいと考え、メンバーにも理解してもらった上で、現在はコストをかなり抑えています。
事務所の他の弁護士さんも、志を同じくしてくださっているのですね。
今年から弁護士7人体制になりました。まだこれからの小さな事務所ですが、ゆくゆくは所属弁護士数3桁台の事務所にしたいなと思っています。そのためにも、金額が足かせになって頼んですらもらえないという展開は避けたいですからね。
ただ、事務所全体として大手同等のクオリティを出し続けることは、規模も異なりますし、今はまだ課題ではあります。
しかし、大手に準じたクオリティを出しうる事務所の中でうちぐらいの金額の弁護士事務所を見つけるのは、今の日本ではもうほぼ不可能に近いと言って頂けることもありますし、そのような事務所を当面の目標にしています。案件にもよりますが、他の大規模事務所で頼む場合と比べて3分の1ぐらいのフィーをターゲットにすることもあります。
下げすぎではないですか(笑)
ですが、困っている方からすると本当にありがたいと思います。そこからご縁が繋がれば、同じ費用がかかるなら増井さんのところにお願いしたい、というファンがきっと増えますね。
そうなると嬉しいですね。私たちのことを活用してもらいたいですし、ご縁で繋がっていく部分が大きいので、次の案件に結びつけるためにも、こちらもできる限りの努力をしていきたいです。
弁護士事務所として大切にしているもの
現在所属しておられる弁護士の皆さんの想いなど、若い世代とこれまでとで違いを感じることはありますか。
採用の時にコスト感や志の話はしていますので、企業法務も個人のお客様の取り扱いもしたいという意思を同じくする弁護士が集まってくれているかなと思っています。メンバーの年齢構成も若く、そんな私たちは今後AIを初めとする様々なツールが出てくる中で、これからの業務がどうなるか読めないと考えています。特に私よりも若い世代の方は、選択肢を絞るのが怖いという思いがあるみたいですね。私自身経営者として、若手の弁護士の方にはあまり道を絞らずに、ある程度なんでもできるような人になってほしいなと思っており、そこの希望や手応えは一致していると感じています。
多様な分野に対応するためには、事務所に入ってから実践で学ぶことも多いのでは。
教育は事務所としてとても重要だと考えています。
私が元々所属してた弁護士事務所が、ほんとにいい事務所だったんです。独立した人たちも、皆そう思ってるはずです。いい部分はたくさんあるのですが、そのひとつが教育体制がすごくしっかりしていたことです。仕組みとして以上に、上から下に、自分たちが教わったことを後輩にも伝えていくというマインドが共有できている組織でした。私自身、先輩方からたくさんのことを教わって、成長できたなと実感しています。
私はそんな優秀な人間ではありませんが、受け継いだものを自分の後輩たちにもまた引き継いでいってあげたいという思いは強く感じています。
では、現在の教育システムは前職時代のやり方をある程度ベースにしておられるんですね。
そうですね。とはいえ、大袈裟な仕組みの話ではなく、とにかく細部まで妥協しないというのが肝要だと伝えています。それは企業のニーズにも合致しています。私たちは極論、「物書き」なんです。法廷に出て喋ることもありますが、あくまで原則は「書面」で、その「書面」を書くことにお金を払ってご依頼いただいています。どうしても見えにくいスキルなのだと思っています。
たとえばSEの方などは、普通の方では使えないプログラム言語で新しいものを作られる分、価値が見えやすいと思うのですが、私たちが扱うのは結局日本語なので、一見するとなんだか自分たちでもできそうに見える部分はあると思うんです。しかし、そこのクオリティをあげて、いかに法的意味のあるものを作るかというのが私たちの仕事です。そこを妥協するのは絶対ダメだということは日々伝えています。
妥協する/しないという姿勢は、お客様にも伝わるんですね。
はい。特に企業の方々にはすぐ伝わりますね。シンプルな話ですけど、数字の半角と全角が入り混じっているとか、文頭のインデントがずれているとか、太字にする/しないの基準だとか。書かれている内容が大事というのは当たり前ですが、見た目の印象も判断材料になります。特に金融機関などでは、見た目がダメだと一気に信頼を失うことだってあります。
シビアにも思えますが、確かに細部が精緻にできていないのに、法律の中身のことは大丈夫だと主張されても説得力に欠けますし、不安に感じる企業の方も少なくなさそうですね。
中身がまともなら見た目はいいでしょと言えるのは、本当に中身が伴っている人だけでしょうね。大手の大御所の先生など、優秀な方がたくさんいらっしゃる中で、私のレベルでもまだ全然中身なんて伴っていないと私個人としては思っています。私より若い弁護士たちならなおさらです。ですから、まずは見た目から整えて減点ポイントを極限まで削る。最低限そこはしっかりせねばと思いますし、細部に妥協せず取り組む経験やマインドがあることで、結果中身も付随して成長していくと思っています。
現代社会の企業における弁護士のニーズとは
事業スタートの経緯をうかがいたいのですが、そもそも、弁護士を目指されたのはいつ頃なのでしょう。
中学生ぐらいには、もうなんとなく将来は弁護士かなと思っていました。今でも変わっていないのですが、政治家と弁護士になろうと思っていて、どちらからなろうかなと考えて弁護士から始めることにしました。親族の薦めとかでもないですし、これという大きな理由はないのですが、自分の中では迷いなくその想いがあって、今のところそうなっているという感じでしょうか。
その当時の想いをずっと貫いておられるのがすごいことですよ。
就職活動の時は、さすがにもうちょっとそれらしい理由を話しましたけどね(笑)。正直そんなたいそうな理由があって思い描いていたわけではないです。 理系に行くか文系に行くかを考えたとき、文系に行くなら弁護士かなあというぐらいのイメージのまま生きてきました。
とはいえ、弁護士はなろうと思って全員がなれる職業ではないですよ。
司法試験って向き不向きが大きい試験だと私は思っているんです。皆さんがイメージするように、本当に途方もない物量がある試験ではあります。ですので、それをやること自体は非常に難しいと思います。2~3年はしっかり朝から晩まで勉強しないといけません。それをやり切れる人が少ないんです。
朝起きたらまず図書館に行き、そこから深夜までとにかく本を読み続ける作業を 2~3年ずっとやることにどの程度のストレスを感じるかという適性の領域で、それを乗り越えられれば、試験自体のハードルは決して高くないと思います。
マラソンが得意な人、というのがイメージに近いかもしれません。ゆっくりでもいいから最後まで走る継続力が求められて、逆にやればできてしまう一夜漬けが強いタイプは向いていないように思います。「できないけどやり続けられる人」が取りやすい資格になっていると個人的に感じます。
なるほど、わかりやすいですし、イメージが変わりました。
技術でごまかしていい点数を取るのが得意なタイプの人だと、ちょっと難しいと思いますね。本当にひたすらボリュームがあって、勉強してもしてもまだあるのかという感じなんです。私はたまたま、それがあまり苦じゃありませんでした。弁護士になってからもずっと勉強しないといけない職業なので、本を読んで調べるとか、学ぶことが嫌いじゃないタイプの方が向いてるのかな。
そうして弁護士になられて、2021年に現在の事務所を設立されたのですよね。
今は選択肢が増えていて、自分の事務所を持つことが正解というわけではなくなっています。どうするのが良いかは人それぞれですが、私はいつかは自分の事務所でやりたいなという想いを持っていたので、あとはタイミングを探っていました。
2019年から21年まで留学していたので、そこから戻って準備も整ったということもありましたし、一旦抜けていたことで前職の事務所にも比較的迷惑をかけにくいタイミングだったこともあり、立ち上げを決めました。
自身の事務所を構え、お客様に大きな価値を提供できたと思えた事例やエピソードを教えてください。
守秘義務や守るべきルールが多いので、あまり具体的なことはお話しできないことをご容赦ください。その上で、力になれたなと感じる分野があります。
1つは、企業の法務業務を私たちが担うことで、本来の経営に力を入れていただける環境を提供できたことです。
たくさんの企業の方と触れて感じるのが、特に中小企業などで最も皆さんが苦労されてるのが、人事労務系だということです。新しく雇用した従業員の中に対応が難しい方がいたり、最近多いところですと、パワハラだと言われたり。
本当はどの企業も売り上げを伸ばしてお客様を増やすことに注力したいですよね。しかし、経営者の多くは人事労務や採用活動にも、かなりの時間を割いておられます。そこにさらに従業員のトラブル対応が加わるのは大きな心労になってしまうのです。そこに我々が入ることで、ご満足いただけたことは結構多いのではと思っています。
そういったご依頼は件数としても多いのですか。
そうですね、おそらく弁護士費用を払いやすい分野なのだと思います。たとえば、お金を回収するという目的のために、またお金を払って弁護士を雇うとなると、抵抗がある方もおられます。しかし、従業員のトラブルや退職・解雇に関わる部分だと、対応を引き延ばす程にコストが毎月毎月かかる上に、それがいつ終わるかもわかりません。うまく雇用状況を整理できないと、数十万単位・数百万円単位の損失が発生してしまいます。それなら、弁護士に数十万円払ってうまく収まるのであれば依頼しようと、ビジネスとしてのジャッジがしやすいのでしょう。
実際の費用対効果もお客様にある程度は開示・ご提案されるのでしょうか。
はい、ご説明します。我々としても、なんでもかんでも是が非でも案件を受けるというスタンスではありません。お手伝いしても成果が出にくい内容のものは、無理に請け負っても結局満足を感じていただきにくいと考えています。
一方で、「これは絶対に弁護士を使った方がいい」というものも我々目線ではありますから、そういった場合は頑張って説明させていただきます。「これはもう弁護士をつけないとどうにもならないので、極論うちじゃ無くても良いのでなんとかつけてください」と押すことだってあります。
なるほど。お客様目線のご提案ですね。
そういう「もう弁護士とやるしかない」という意味でも、人に関わる部分はよく話題にのぼります。人事労務系は揉め出したら決着するまで終われないんです。引き延ばしてもコストがかかる上に、周囲への悪影響もありますから、弁護士への依頼コストをかけてでも対応してもらうしかない部分だと思います。
最近、どこの会社も人材難で、中小企業は特に悩みが多いですし、上場されている大手からも必要とされやすい分野です。
従業員トラブルや解雇となると非常にセンシティブですものね。
日系企業は、終身雇用の時代からいまだに人事で大きく踏み込むことを不得手とする会社が多いです。事なかれ主義でやっていると、現代ではいい人はやめていってしまいます。扱いの難しい人ほど流動性を持たせられずに残ってしまい、あちらこちらでその人を起点に不和が生まれるということも多くなります。それは会社にとってもその人にとってももったいないことだと思っているので、我々も法的に対応できる部分は頑張らせていただいております。
弁護士を入れるという選択肢自体がない会社も多いのではないですか。我慢してやりすごすしかない、という意識になっているなど。
そうですね、まだそこに弁護士を使うということは浸透していません。弁護士の数が少なかった頃は、弁護士をつける=裁判のイメージで、年齢層が高い経営者の方は今でもその感覚が残っています。
ですが実はそんなことはありません。東京の企業案件で、裁判って弁護士業務のうち数%ぐらいなのではないかという感覚もあります。弁護士の専門分野にもよりますが、事前の予防や事故対応など、裁判以外のことがむしろメインなんです。
当事務所では、顧問弁護士のサービスを月5万円から提供しています。月5万でしっかりした人を自社の法務部門のような形でをつくるという感覚で考えていただけると、人事コストとしてはそう高くもありません。特に小さな会社にとっては重要な役割として認識していただきやすいです。ただそれが外部のサービスという印象のままだと、必須の部署と同等には感じにくいでしょうから、まずは1回ご依頼いただけるよう活用方法などをお伝えします。費用対効果がイメージできると採用されることが多いですね。
自由な働き方の中に通す「妥協しない」という芯
従業員の方が生き生きと活躍できるように、御社で工夫されていることを教えてください。
個々の自主性を尊重するように心がけています。弁護士とひとくくりにしても色々な人間がいるので、たとえば何時から働くかとか、どこで働くかとか、そういうものも含めて、個人に任せています。前職の事務所もその傾向が強かったんです。これも前の事務所から私に与えてもらっていた意識ですので、下の子たちに引き継いであげたいなという思いもあります。
その意識や考え方について、もう少しお聞かせいただけますか。
私は、弁護士である以上はお客様を取れる人間にならないといけないと思っています。集客への意識というのは3~4年目ぐらいから芽生えてきますが、やり方はそれぞれなので、そうなるともう自主性に任せるほうが良いですよね。
私も含めた全体の傾向として、得意なことと不得意なことが偏っていて、たとえば飲み会などであちこちに行って人の繋がりを増やして、という形の営業は得意ではない人が多いです。たまに得意な方もいらっしゃいますが、弁護士の中でそういうことがすごく得意と言っても、世の中全体で見たときの「コミュニケーション能力がすごい人」には勝てないような、顕著な性質差があると思っています。
勢いのあるコミュニケーションで営業することは苦手な人でも、自分の趣味をひたすら突き詰めるなどで、その分野でお客様がつくことも意外とあるんです。
ひとくちに営業と言っても、本人がストレスの少ないやり方の方が効率も良くなりますね。
本当にいい意味で、いろんなお客様の取り方がある職業なので、自分がやりやすいように、それぞれがやったらいいのかなと思います。ひたすら人と会わずに勉強をし続けて、弁護士の中でも「あの人は知識豊富だよね」となると、それだけでお客様がついたり、ここの分野はもうあの先生を引っ張ってこないとと同業者から声がかかったりすることもあります。趣味のマラソンだけやっていて、その知り合いからの仕事だけで回している人もいます。最近では、成功されている事務所の弁護士さんでも、web集客だけに力を入れて、ひたすらそこ経由で仕事を取る人もいます。
事務所としては、従業員のやりたいことや特性を活かしつつ、色を出していきたいです。
自主性に任せる部分と、組織としての方向性を示す部分が相反することはありませんか?組織としての統制という意味ではどのようなことに意識を向けておられますか。
事務所としては、冒頭申し上げた、企業法務も個人のお客様もしっかりと半々ぐらいで見ていける、両方やれる弁護士になりましょうという部分が根底にあります。 そのために手を抜かず、妥協せずにやる。そこが守られていれば、その上でどう動くかは個人の意思を尊重したいです。
働く場所もお任せしているとのこと。勉強会など、集まって行う業務や会はありますか。
週例会みたいな形で、進捗状況の確認や最低限の顔を見てのコミュニケーションの機会は週1で持っています。あとは若手の方はできれば事務所に来てもらう方がOJTができて良いですね。電話対応など、先輩のやり方がすごく参考になると思います。お客様も色々おられて、問い合わせの時点では私たちは相手を選べませんから、トラブルにならないよう、こういう人ならどう対応するのか、どう伝えるのか、どれぐらいのトーンにするのかということが学べる機会です。
その他、事務所内で教育面で意識しておられることはありますか。
先ほども触れましたが、「いずれはお客様を取れる弁護士にならないといけない」というのは、入所前からも話しています。
インハウス(企業内弁護士)という制度ができて企業の中に入る弁護士もここ7年程で一気に増えました。そういう選択も含め、お客様を取る弁護士を目指すのか、自分では集客を扱わず、決められた業務内でやるという方針でいくのか、4~5年くらいでは自身の適性や志向を見極めてほしいですね。
その上で弁護士事務所に残る場合、やはりお客様を自分の力で取れる必要があります。それは外からお客様を見つけてくるという意味だけではありません。事務所に来る依頼を事務所から「この人に」と頼まれるスキルがないとやっていけなくなります。
案外期間がないんですよ。3年目ぐらいになってくると、ある程度しっかりしてこないと、事務所の中にも外にもお客様がいない状態になってしまいかねません。
なるほど。だからこそ、妥協せずにやるということに繋がってきますね。
お客様の急ぎの相談に対して、事案に応じたスピード調整はできるべきだと思います。ただ逆に、時間をかけていいから細かくやってくれと言われたときに、妥協癖がついていると良くないです。緩めるのは簡単でも、しっかりできるように維持することはそんなに簡単ではありません。
最後の質問です。今後のビジョンを教えてください。
2021年末から池袋でやってきましたが、2023年は埼玉の方にも支店を出せましたし、今後も可能な限り拠点を拡大していきたいと思っています。企業のお客様だけなら、必ずしもそんなに拠点がある必要はないのですが、中小企業のお客様にとっては、ちょっとした資料を持っていけるところが近くにある方が安心感があると思います。また、個人のお客様にとっても窓口が多い方が絶対にアプローチしやすいですしね。個人のお客様は「池袋 弁護士事務所」などでまず検索されます。個人向けの業務も今後さらに増やしていきたいという意味でも支店を増やすことは重要です。
弁護士事務所はたくさんありますが、しっかりと企業法務もやれる弁護士を育てて拡大できれば、業界の中で狙えるポジションは残っていると考えています。
拠点を増やすために、どのような準備や実績が必要なのでしょうか。
弁護士事務所には、1拠点に最低1人は弁護士がいないといけないというルールがあるんです。ですから、さあ福岡に出すぞ!と決めてポンと出せるわけではなく、そこで働いてくれる弁護士とセットで初めて事務所を出せるんです。人材育成も並行しつつ、毎年何拠点かずつは増やしていきたいですね。
そうなるとやはり重要なのは「人」になるかと思います。これからの拡大に向けて、こんな人が来てくれたらいいなというイメージがあれば教えてください。
幸いにも今すごく人には恵まれていて、落ち着いた素敵な方が集まってくれています。希望というと大げさですが、事務所の雰囲気に合う方なら嬉しいですね。また、事務所が目指しているものは理解していただきたく思います。 とにかく手広くやってやるという形ではなく、1件1件手を抜かずにやるという意識は必ず共有したい点です。企業法務と一般民事を両方学ぶ気持ちも持っていてほしいですね。
新しい拠点にということであれば、東京から離れたところでやるのは大変な部分もあると思うので、この拠点は自分に任せろ!みたいな、マネジメントに前向きな方がいてくれると頼もしいですし、ありがたいなというのは正直あります。
ビジョンや風土が明確なので、共鳴してくれる方がきっと見つかるように思います。
いろいろ思いつくままに挙げたものの、一番大事なのは、真面目にやるというところです。それさえあれば大丈夫です。私たちの職業は売る商品が自らの時間なので、仕事ぶりに強く個性が出ます。商品が私たちの時間であり続ける限りは、その時間の持ち主であるメンバーが信頼に足るかどうかが要になってきます。
仕組みさえ作ってしまえば回せるようなビジネスとも異なります。とにかく真面目に、相手に嘘がないように向き合うことが一番です。
ありがとうございました。世間的には中々イメージしづらい弁護士の世界ですが、法律や文書というフォーマルの中に、熱い血の通った現場だということがお話しの中からひしひしと伝わってきました。今後の発展を心より応援しております。
コントリ編集部からひとこと
この度は、貴重なお話を伺う機会をいただき、心より感謝申し上げます。増井さんの経歴を初めて拝見した際、私が最初に感じたのは「別世界の人だ」という印象でした。しかし、実際にお会いしてみると、驚くほど謙虚な方であることに気づきました。また、インタビューで話を伺う中で、その一貫した「お客様視点」に深く感銘を受けました。このような思考が、増井さんの雰囲気を形作り、お客様に真摯に向き合う姿勢がお客様からの高い評価を受け、事業の成長に繋がっていると感じました。 増井さんとお会いし、私の中での弁護士像が変わりました。弁護士は、決して敷居が高い存在ではなく、上手に活用すれば人生を豊かにできるとさえ思います。 今回のインタビューで、そうした大切な気づきを得られたことを大変貴重に思います。増井総合法律事務所のさらなる発展を心から応援しています。
ギャラリー
プロフィール
増井総合法律事務所
代表弁護士(マネージング・パートナー)
増井 邦繁
大阪府出身、東京都在住。
2010年に京都大学を卒業後、大阪大学法科大学院を経て2013年に東京大学法科大学院を卒業。2014年12月から長島・大野・常松法律事務所に入所。同事務所で勤務する中で、弁護士として依頼者のために何をしてあげられるかを考え続けることの大切さを学ぶ。2019年にアメリカに渡り、University of California, Irvine, School of Lawを卒業後に2021年に ニューヨーク州司法試験合格。Smith, Gambrell & Russell, LLP(Atlanta)での勤務を経て2021年12月に増井総合法律事務所を立ち上げる。
趣味はスポーツ観戦、テニス、ゴルフ、映画、家庭菜園、マラソン、囲碁。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」
【会社概要】増井総合法律事務所
設立 | 2021年12月 |
所在地 | 東京都豊島区東池袋1-18-1 Hareza Tower 20階 |
従業員数 | |
事業内容 | 各種法律相談、M&A、人事労務、法規制対応、紛争解決のリーガルサービス |
HP | https://masui-law.com |