無限大の可能性を信じて:父から受け継いだ、食と健康の物語|株式会社MUGENDAI

「健康が当たり前の社会にしたい」——。

株式会社MUGENDAIの代表取締役、鬼頭あずさ氏は、この言葉を1日に5回は口にするといいます。中卒、波瀾万丈の人生を経て、0歳の子を抱えて起業。麹と発酵を軸に、日本の伝統的な食文化を次世代に繋ぎながら、健康が「当たり前」になる社会を目指しています。

「健康が当たり前の社会」への挑戦

「やっぱり『健康が当たり前の社会にしていきたい』っていうのが、もう本当に一番のベースです。多分1日5回ぐらい言ってるんですよ、口癖のように」

鬼頭氏は10代、20代、30代と、驚くほど多くの友人・知人を病気で亡くしてきました。

「20代でがんで亡くなった友人が何人もいました。本来なら祖父母を見送る年齢なのに、同世代の友人を次々と失って。若くして子供を亡くすご両親の姿を見るのは、本当につらかった」

決定的だったのが、結婚してすぐに夫が生活習慣病になったことでした。

「主人は、インスタント食品や清涼飲料水中心の食生活。私とは全く違う食環境でした。それが原因で、まだ30代なのに生活習慣病になってしまった。これは明らかに早すぎますよね」

この経験から、鬼頭氏は食生活が100%原因だと確信しました。

「今、健康って特別なことになりすぎていると思うんです。でも本当は、もっと身近で当たり前のものであるはず。私には6歳と4歳の子供がいます。この子たちが、病気を不安に思わずに育っていける社会にしたいんです」

会社名「MUGNDAI」(無限大)に込められた家族の物語

「MUGENDAI」という会社名には、深い家族の物語が込められています。

鬼頭氏の実家は、料理人の父が43年間営む居酒屋「こんどる」。店を改装したとき、「こんどるⅡ」と名付けました。しかし、鬼頭氏が中学2年生のとき、火事で店が全焼。家族で立て直しを決意し、「こんどるⅢ」として再スタートを切りました。

その15年後、今度は立ち退きに遭遇。当時、57歳の父は再び大きな決断を迫られます。

「父が『もう一度!これが最後だ』と決意して、『こんどる♾️』という店名にしました。その父の姿を見て、私も力になりたいと思ったんです」

鬼頭氏が始めたのが、父の秘伝の焼き鳥のタレの商品化でした。

「毎日のように食べて育った、思い出の味です。父が現役を退いても、この味だけは残したいとずっと思っていました」

2025年8月8日、末広がりの日に、父母と共に株式会社MUGENDAIを設立。

「現在73歳の父が、生涯現役で店に立ち続けられる環境を作りたい。それが私の目標です。料理のことで分からないことがあると、いつも父に相談します。父は私にとって師匠のような存在なんです」

中卒・波瀾万丈の人生が教えてくれたこと

鬼頭氏は、中学校を卒業した後、定時制高校を半年で退学しています。

「小学校高学年では生徒会長をしていました。でも私、本当に興味が持てないことは続けられないタイプなんです」

両親は夜、家にいないことが多く、中学時代は居場所を外に求め、不登校になる時期もありました。

実家の居酒屋も不景気の影響を受け、家計は決して楽ではなく、定時制高校に進学後は、ファミリーマートでアルバイトをしながら学費を自分で支払っていました。

しかし、定時制高校は「本気で学び直したい人たち」が集まる場所。

「中途半端な気持ちで入学した私は、受け入れられなかった」

入学から半年で担任から退学届を渡され、そこから、とにかく働く日々が始まります。

飲食業・接客業・土木作業・内装業と様々な職業を経験します。

18歳のとき、ネイルと出会い資格を取得。20歳のときには先輩2人と共同経営でネイルサロンをオープンさせますが、4年後、借金を抱えて廃業。

「ネイルが好きなだけでは、ビジネスとして成功できないと気づきました。経営の知識も経験もない状態で始めてしまい、結局、借金だけが残りました」

しかし、鬼頭氏はこの経験を後悔していません。

「私は中卒です。でも今、こうして充実した人生を送れています。学歴は本当に関係ないんだと実感していますね」

ただ、一つだけ、やり直せるなら間違いなくチームプレイのスポーツをやっていたと思います。

一人で頑張るより、役割を持って支え合うこと。
今の仕事やチーム作りにつながる感覚は、きっとスポーツから学べたんじゃないかな、と感じています。

麹がつなぐ「食」と「健康」——事業に込めた想い

鬼頭氏が麹と発酵に着目したのは、夫の生活習慣病がきっかけでした。食事改善に取り組む中で、麹調味料の力を実感。最初は500円の料理教室から始めました。

「家族の体調が良くなっていく様子を見た周りの人たちが、興味を持ってくれて『教えてほしい』と言われるようになったんです」

しかし、起業1年目は忙しくて体重がかなり落ち、熱ばかり出していたといいます。

「無理してでも、食事の時間をしっかり取るようになりました。私たちの体は食べ物で作られています。サプリメントではなく、日々の食事を大切にすることで、仕事のパフォーマンスも上がると実感しました」

現在、株式会社MUGENDAIは、「発酵Lifeschool 鬼糀会」という料理教室の運営、麹調味料の製造販売、そして養成講座で全国に先生を育てる事業を展開しています。

「『健康が当たり前の社会にしていきたい』——これは私たちの世代が本気で取り組むべき課題だと思っています」

特に鬼頭氏が強調するのは、「サプリメントを頼る前にできることがある」という点です。

「私たち日本人が昔から大切にしてきた発酵・麹、季節の手仕事。これらの伝統的な知恵を、現代の忙しい生活にも取り入れやすい形で提供したいんです」

「背景を伝える」経営哲学——応援されるブランドづくり

鬼頭氏が経営で最も大切にしているのは、「商品の背景を伝えること」です。

「スーパーで野菜を選ぶとき、多くの人は見た目と値段で判断しますよね。でも私は、その野菜がどんな農家さんによって、どう作られたのか——その背景まで伝えたいんです」

例えば、にんにく醤油麹には、伝統的な手作業で麹を作る麹屋さん、無農薬で手間暇をかけてニンニクを作る農家さんの想いが込められています。

「今の社会は、私たち消費者の選択によって作られています。背景を知って商品を選ぶ人が増えれば、それが社会を変える力になります。ニーズがあれば、良い生産者も必ず増えていきます」

この想いを込めた商品作りは、加熱処理をせず冷蔵販売、瓶容器を使用するなど「売りにくい」選択です。しかし、鬼頭氏は確信しています。

「本当に大事にしていかなきゃいけないものが、こういうところにあると思っています。消費者の選択が、社会を変える力になるんです」

0歳児ママ起業家のリアル——「両立」ではなく「真ん中」を選ぶ

鬼頭氏が起業したのは、下の子が0歳のときでした。

「初めての子育てで余裕がなく、保育園の送り迎えで子供を怒鳴ってばかりいました。夜、子供の寝顔を見ては反省する毎日。『これじゃダメだ』と思い、自由な働き方を選ぶために起業を決意したんです」

鬼頭氏の答えは明快でした。

「私は『両立なんてありえない』と考えています。仕事と子育て、どちらも完璧になんて無理です。だから、真ん中でいいんです。両方が中途半端でも、それでいいと思っています」

そして、家族や友人を「チーム」として捉えています。

「1人では起業も事業拡大も不可能です。だから、周りの人を巻き込むしかない。例えば、東京出張のときは、近所の友人に家の鍵を渡して子供の送迎を頼みます。『家で待っていて。夫が18時に帰ってくるから』って。もう、みんなチームなんです」

では、どうすればそのような協力関係を築けるのでしょうか。

「人に助けてほしいなら、まず自分から相手に何かを与えること。そして、自分の弱い部分やできないことを隠さず見せること。自分の信念も語り続ける。助けてもらったら、それ以上に返す。このキャッチボールができれば、素晴らしいチームができます」

「自己開示」が変えたチーム作り——苦手を克服した方法

実は、鬼頭氏はもともとチーム作りが大の苦手でした。

「『1人でやった方が早い』とずっと思っていました。でも約1年半前、壁にぶつかったんです。『これ以上は1人では無理だ。事業を広げるにはチームが必要だ』と」

そこで鬼頭氏は、チーム作りが上手い人を観察し始めました。

「チーム作りが上手い経営者を徹底的に観察して、共通点を見つけたんです。それは『自己開示』でした。みんな自分をオープンにしている。だから人を巻き込む力が強いんだと気づきました」

具体的には、「自分でやった方が早い」と思うことも、あえて人に任せるようにしました。

「できないことは素直に『できません、お願いします』と伝えるようにしました。すると、自然と周りが助けてくれるようになったんです」

現在、養成講座の先生たちと「商品開発部」を立ち上げ、有志のメンバーで新商品の開発を進めています。

「少しずつチームができてきました。大切なのは、『助けを求めること』と『先に与えること』。この2つを意識したことが、成功の秘訣でした」

去年は「自己開示の年」だったと振り返る鬼頭氏。弱さを見せること、助けを求めることの大切さを身をもって学んだといいます。

エピローグ——これから実現したい未来

最後に、これから実現したいことを尋ねました。

「病気になってから治療するのではなく、病気にならないための予防が大切です。一度崩れた健康を取り戻すには、とても時間がかかりますから」

鬼頭氏が目指すのは、「健康の選択に迷わない社会」です。

「誰も特別な努力をしなくても、自然と健康でいられる。そんな社会を作りたいんです。健康は特別なことじゃなく、当たり前のことにしたい」

具体的には、2025年夏に名古屋で店舗をオープン予定。さらに2027年に向けて、キッチンスタジオ3店舗の展開を計画しています。

「梅干し作りや味噌作りといった、日本の伝統的な手仕事。これを気軽に学べる場所は、まだ大手が参入していません。だからこそ、私たちにチャンスがあると思っています」

また、以前販売していた「ママの味方」シリーズの再始動も考えています。

「忙しいお母さんのために、湯煎するだけで食べられる、野菜たっぷりで無添加の商品を作りたい。食べるだけで体が喜ぶレトルト食品。これからはそこに力を入れていきます」

「小さな一歩かもしれません。でも、この一歩を積み重ねていくことが大事だと思っています。日本経済を動かすくらいの気持ちで、やっていきたいですね」

コントリからのメッセージ

中卒、ネイルサロン廃業、そして0歳児を抱えての起業——鬼頭あずさ氏の人生は、決して平坦ではありませんでした。しかし、その一つひとつの経験が、今の事業への深い想いとなって結実しています。

「健康が当たり前の社会にしたい」という言葉を1日5回口にする鬼頭氏。その背景には、多くの友人を病気で失った経験、夫の生活習慣病、そして子供たちに不安のない未来を残したいという強い想いがあります。

父親が57歳で「最後だ」と決意して名付けた「こんどる♾️」。その名前を受け継ぎ、鬼頭氏は株式会社MUGENDAIを設立しました。父から娘へ、想いを繋ぐ食と健康の物語です。

「両立なんてありえない」「真ん中でいい」——完璧を目指さず、弱さも見せながら、周りを巻き込んでチームを作っていく。鬼頭氏のリーダーシップは、多くの女性経営者、子育て中の起業家にとって、大きな勇気となるはずです。

「商品の背景を伝えたい」という想い。安さや便利さだけで選ばれるのではなく、生産者の顔が見え、想いが込められた商品を届けたい。それは短期的には「売りにくい」選択かもしれません。しかし、長期的には、応援され、選ばれ続けるブランドを作ることにつながります。

私たち一人ひとりの選択が、社会を作っている——。鬼頭氏の言葉は、消費者としての私たちにも、大きな問いを投げかけています。

鬼頭あずさ氏の無限大の可能性を、これからも応援していきたいと思います。

プロフィール

株式会社MUGENDAI
代表取締役
鬼頭あずさ(きとう・あずさ)

中学卒業後、様々な職業を経験。20歳でネイルサロンを共同経営するも4年で廃業。その後、夫の生活習慣病をきっかけに麹と発酵に着目し、2025年8月8日に株式会社MUGENDAIを設立。「発酵Lifeschool鬼糀会」の運営、麹調味料の製造販売、養成講座で全国に先生を育てる事業を展開。43年間居酒屋「こんどる」を営む料理人の父から、秘伝の焼き鳥のタレを受け継ぎ商品化。「健康が当たり前の社会」の実現を目指す。2児の母。

ギャラリー

会社概要

設立2025年8月8日
事業内容「発酵Lifeschool鬼糀会」の運営、麹調味料の製造販売
HP鬼麹オフィシャルサイト:https://onikoji.com/
鬼麹master講座:https://onikoji.com/master-course


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