願望を先に、予定を後に——経営判断が鈍らないための朝の順番

経営をしていると、判断の連続で一日が終わります。

大きな決断もあれば、細かな選択も無数にある。そのひとつひとつに、実は「自分が本当は何を求めているのか」という軸が効いてくる。軸がぶれていると、正しそうな判断を積み重ねているつもりでも、気づけば望んでいない場所に流れ着いてしまう。

僕は毎朝、その軸を確認する時間を持っています。予定を組む前に、まず自分の願望を言葉にする。今日はその「順番」の話を、経営者として少し掘り下げてみたいと思います。

なぜ「予定より願望が先」なのか

多くの人は、朝いちばんにその日のタスクを確認します。

朝の順番:願望を先に置く
STEP 1
願望を言葉にする
今日いちばん進めたい「重要だが急ぎでない一手」を先に決める
STEP 2
予定を組む
その一手を先に予定へ入れてから、残りの用件を並べる
順番が逆だと、緊急の予定で一日が埋まり、願望は後回しになる

メールを開き、カレンダーを見て、今日こなすべきことを頭に入れる。効率的なようでいて、これだと一日が「処理」で埋まってしまうんですよね。緊急のものから順にさばいていくと、本当に大事なことほど後回しになる。

僕が実践しているのは、その逆の順番です。まず願望を書き出し、そのあとに予定を組む。

アチーブメント式の一日プランニングというやり方で、これを毎朝続けています。ポイントは、重要だけれど緊急ではない仕事——いわゆる第二象限のものを、ひとつだけ先に予定へ入れてしまうこと。

緊急なものは、放っておいても手をつけます。締切が背中を押してくれるから。でも、緊急じゃないけど大事なこと、たとえば新しい価値づくりの種まきのような仕事は、意識して先に場所を確保しないと、永遠に「いつか」のままで終わる。

経営の質は、この第二象限に毎日どれだけ手をつけられたかで決まっていくんじゃないかと思っています。

価値を先に、対価は後に

コントリを経営する中で、僕がずっと大事にしている順番がもうひとつあります。

価値を先に、対価は後に
価値を差し出す
信頼が積み上がる
対価は後からついてくる
順序を違えないことが、長期の信頼を選ぶということ

「価値持ち先、金持ち後」。

先に相手へ価値を差し出す。対価は、その後からついてくる。この順番を崩さないようにしています。

経営者と向き合っていると、逆になっている場面をよく見かけます。まず対価を確保してから動こうとする。気持ちはわかります。事業には資金が要るし、無償で価値だけ配り続けたら会社は続かない。

でも、最初の一歩で「まず差し出す」を選べるかどうかが、結局その後の信頼の厚みを決めるように思うんです。コントリが経営者インタビューを無料で続けているのも、突き詰めればこの考え方に行き着きます。先に価値のある場を差し出す。そこから生まれた信頼が、めぐりめぐって事業を支えてくれる。

仕事そのものが自己実現であって、お金はその結果としてついてくる。この感覚を持てているかどうかで、日々の判断はずいぶん変わってきます。

数字の面でも、その実感はあります。うちの毎月の固定的な収入は、目標にしていた水準まであと少しのところまで積み上がってきました。ただ、それを目標に据えて追いかけた結果というより、価値を先に差し出し続けたことの副産物という感覚のほうが近い。順番を守っていると、数字は勝手に後ろからついてきてくれる。逆に数字を先頭に置くと、なぜか遠ざかっていく。経営をしていると、この不思議な逆説を何度も味わいます。

「もう遅い」という判断の落とし穴

経営判断でいちばん厄介なのは、外の状況ではなく、自分の中の思い込みだったりします。

朝もやの山道。進み続ける道の途中
朝もやの山道。進み続ける道の途中

具体的な話をします。うちで進めていたある制作が、12日ほど止まっていました。

止まった理由は些細なものです。他の優先案件に押されて、じりじり後回しになっていった。厄介なのはここから先で、日数が積み上がるほど「今さら動かしても…」という気持ちが芽生えてくる。これがまさに、自分で自分に貼るレッテルなんですよね。

「もう遅い」は事実の判断じゃない。ただの感情の問題です。

12日止まっていたものが、13日目に動かせない理由なんてどこにもない。冷静に見れば当たり前なのに、忙しさの中にいると、この当たり前が見えなくなる。

今日は午前の時間がちょうど空きました。だから、その止まっていた一手をここで前に進めると決めました。経営において、止まったものを「損切り」と「再始動」のどちらで扱うかは、状況を事実として見た上での判断であるべきで、単なる先延ばしの言い訳にしてはいけない。そう自分に言い聞かせています。

必要とされる会社であり続けるために

では、その日々の判断は、最終的に何を目指しているのか。

海辺の灯台。必要とされて光をともし続ける
海辺の灯台。必要とされて光をともし続ける

僕の答えは、はっきりしています。周りから必要とされる人、必要とされる会社であり続けること。

必要とされるというのは、こちらが望んで手に入るものではありません。相手にとっての価値を、地道に積み上げた結果として、後から与えられるもの。ここでもやはり、順番は「価値が先」なんです。

コントリでいえば、経営者の想いを預かり、それが世の中にきちんと届くところまで伴走する。伝えた「つもり」で終わらせず、届いた「実感」があるまでやりきる。その積み重ねでしか、必要とされる存在にはなれないと思っています。

どんな価値を生み出したいのか。この問いを自分に向け続けているかぎり、会社は成長の方向を見失わない。成功は、その成長の果実として、後からついてくる。狙って掴むものではなく、育てた先に実るもの。そう捉えると、目先の数字に一喜一憂せずにすみます。

自分の舵は、自分で握る

もうひとつ、経営者として一番忘れたくない感覚を書いておきたいと思います。

自分の会社の舵は、自分で握っている。市場環境も、競合も、たしかに影響は大きい。でも、どの方向に舵を切るかを決めているのは、いつだって自分です。

そして、その自分自身を、小さく見積もらないこと。「うちの規模では無理だ」「自分にはここが限界だ」と、勝手に天井を決めた瞬間に、可能性はそこで止まる。中小企業には、まだ言葉になっていない魅力や可能性が本当にたくさん眠っている。僕は経営者インタビューを重ねる中で、それを何度も目の当たりにしてきました。

すべての出発点は、燃えるような願望。

朝、ノートに書いたその一行を本物にするために、今日また一歩を進める。止まっていたものを、動かすところから。

コントリは、経営者のその願望が「形」になり、必要な人にきちんと「届く」その先まで、一緒に伴走していきたいと思っています。

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