「もうだめだ」は、やる前にやってくる

正直なところから始めます。

いま、コントリは月の売上フロアーに届いていません。ここだけは割らない、と決めている最低ラインを、下回っている。経営者として、いちばん書きたくない現実です。

でも、隠しても何も始まらない。だから、この緊張感の真ん中で書いています。

赤信号の朝に

朝、数字を開くたびに、赤信号が点滅している。その光を見ると、頭より先に気持ちのほうが縮こまる。

夜明け前の静かな空と木立のシルエット

同じような朝を過ごしている経営者は、きっと少なくないと思うんです。売上、資金繰り、採用、次の一手。どれも「まだ答えの出ていない」まま、朝がくる。

面白いのは、しんどさのピークが、たいてい「一日が始まる前」にあること。まだ何も動いていない朝の時間に、心はもう疲れきっている。実際に電話をかけているときより、かける前のほうがずっと重い。

この順番、よく考えると変ですよね。まだ起きていないことに、先に負けている

経営をしていると、この「先回りの敗北」に何度も出くわします。まだ交渉していない相手に、断られた気になる。まだ世に出していない企画が、もう失敗したように見えてくる。頭の回転が速い人ほど、この罠にはまりやすいのかもしれません。悪い結末を、誰よりも精巧にシミュレーションできてしまうから。

諦めは、事実じゃなく想像だった

先日、学びの場で聞いた言葉が、ずっと頭に残っています。

敗北が来る「順番」

やる前 想像の敗北 「どうせ無理だ」と心が重くなる。まだ何も起きていないのに、先に負けている。
やってみる 一手を打つ 想像の外へ出て、事実の世界で実際に動く。
やった後 事実で判定 結果が返ってくる。良ければ続ける。だめなら直す。ここで初めて「事実」が分かる。

敗北は「やった後」ではなく、いつも「やる前」にやってくる。

諦めは、やってみた結果として来るんじゃない。やる前の、想像として来る。

これは経営の現場で、痛いほど当たっていると思う。

「どうせ提案しても通らない」「この規模じゃ無理だ」「今さら発信しても遅い」——こうした声のほとんどは、事実じゃなくて予測です。しかも、たいてい試す前の予測。まだ一度も打席に立っていないのに、三振した気になっている。

事実と想像は、切り分けたほうがいい。事実は「まだ届いていない」だけで、そこには「もう無理だ」なんて情報は含まれていない。「無理だ」を足しているのは、いつも自分の頭のほうなんですよね。

コントリが経営者インタビューでお会いしてきた方々にも、共通点があります。うまくいっている人ほど、この切り分けが速い。落ち込んでいないわけじゃない。ただ、想像の暗さと、事実の輪郭を、ちゃんと分けている。

僕自身、この切り分けがいちばん苦手でした。数字が悪いと、その数字に「もう無理だ」という物語まで一緒に貼りつけてしまう。でも、数字は数字でしかない。物語をそっとはがして、事実だけを机の上に置いてみる。次の一手は、そこからしか生まれないんだと思います。

答えはもう、世の中にある

もう一つ、朝の暗さの中で忘れがちなことがあります。

水面に並ぶ飛び石と対岸へ続く道

うまくいっている事例は、すでにこの世に存在している、ということ。

自分と同じ業種で、同じくらいの規模で、もっと厳しい状況から立て直した会社は、探せばいくらでもある。特別な魔法があったわけじゃない。多くは、地道な一手を、諦めずに続けただけです。

答えの「型」は、もう世の中に出そろっている。ゼロから発明する必要なんてない。にもかかわらず、その事例を横目で見ながら、自分だけ先に白旗をあげてしまう——これが、いちばんもったいない負け方だと思うんです。

もちろん、他社の成功をそのまま真似れば勝てる、という単純な話ではありません。ただ、「誰かにできたことは、原理的には自分にもできる」という事実は、想像の暗さを跳ね返す力になる。ゼロか百かで絶望する前に、うまくいっている一例を、ちゃんと見にいく。それだけで、朝の景色は少し変わります。

だからコントリは、経営者の実践を記事にして残すことにこだわっています。うまくいった人の生々しい一手が、誰かの「まだやれる」につながる。出会いの質が高い発信は、読んだ人の背中を、そっと押してくれる。世の中にある答えを、必要な人にちゃんと届く形にする。それが、僕らのやっていることの本質だと思っています。

ど真ん中を、やり尽くす

では、動くとして、何から動くのか。

苦しいときこそ、引き算で「ど真ん中」に絞る

手を広げる
新ツール調査 資料の作り直し 会議を増やす あれもこれも 保険をかける
数字にひびかない
一点に絞る
ど真ん中 経営者の想いを、
必要な人に伝わる形で届ける
幹を太くする

枝葉を増やすより、幹を太く。逃げ場をなくして初めて、やり尽くすエネルギーが生まれる。

ここで多くの人が——僕自身も含めて——やりがちなのが、「動いている感」で自分をごまかすことです。新しいツールを調べる。資料をきれいに作り直す。会議を増やす。忙しくはなる。でも、肝心の数字には、ひびかない。

苦しいときほど、手を広げたくなる。あれもこれもと保険をかけたくなる。けれど、フロアーを割っている朝にやるべきなのは、間口を広げることじゃなくて、ど真ん中を一点に絞ることだと思うんです。

売上に直接ひびく一本は何か。いちばん喜んでくれるお客さまは誰か。自分たちの本当の強みは、どこにあるのか。そこだけを残して、あとは潔く脇へどける。

コントリにとってのど真ん中は、突き詰めれば一つです。経営者の想いを、必要な人に伝わる形で届けること。新しいことに手を出したくなるたびに、そこへ立ち返るようにしています。発信設計も、インタビューも、結局はその一点を太くするためにある。枝葉を増やすより、幹を太くする。苦しいときほど、そこに集中したい。

やることを減らすのは、勇気がいります。減らした分だけ、逃げ場がなくなるから。でも、逃げ場をなくして初めて、その一点をやり尽くすエネルギーが生まれる。継続できる人は、たくさんのことを続けている人じゃなくて、ど真ん中を、しつこく続けている人なんですよね。

やるんだ。まず、やるんだ。

結局のところ、答えはとてもシンプルでした。

やるんだ。まず、やるんだ。

想像の中で勝ち負けを決めるのをやめて、事実の世界で一手を打つ。打てば、結果が返ってくる。うまくいけば続ければいいし、だめなら直せばいい。どちらに転んでも、想像の中でうずくまっているよりは、確実に前へ進む。

赤信号は、まだ点滅しています。今月どうなるかも、正直わからない。

それでも僕は、今日の一件に取りかかりました。やる前から諦めていた自分を、一つ追い越せた気がしています。

もし同じ朝を過ごしている経営者がいたら、伝えたい。その「もうだめだ」は、まだ来てもいない未来の話。動き出した瞬間に、想像は、ただの想像に戻ります。想いを持って始めた仕事なら、そこから先は、やり尽くした人にしか見えない景色があると思うんです。

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