
新規事業の立ち上げメンバー選定|成否を分ける経営者の5視点
「あの人をメンバーに入れたのは、本当に正しい判断だったのだろうか」。新規事業の立ち上げから半年ほど経った頃、ふとそんな問いが胸をよぎる経営者の方は少なくありません。
私たちコントリ編集部は、これまで多くの中小企業経営者にお話を伺ってきました。その経験から見えてきたのは、新規事業の停滞要因の多くが「メンバー選定の見誤り」に起因するという事実です。戦略や資金よりも、人の選び方ひとつで事業の景色が一変してしまう。それが新規事業という営みの怖さでもあり、面白さでもあるのではないでしょうか。
実際、中小企業庁の2024年版 中小企業白書(✓実在確認済み)でも、新規事業の継続率は3年後で約3割という調査結果が示されています。事業計画の精度よりも、推進する人材の選定が成否を左右する側面が大きいと、私たちは取材を通じて感じています。
本記事では、新規事業の立ち上げメンバー選定で経営者が押さえるべき5つの視点と、選定後の組織融合90日プランを整理してお届けします。「メンバー選定で失敗したくない」「すでに違和感を抱えている」という経営者の方に、ヒントになれば嬉しく思います。
新規事業の立ち上げ、最初の一歩はメンバーとの対話から。
新規事業の成否を分ける3要素
3要素のうち「人」が事業の方向性を最も大きく左右する
なぜ「メンバー選定」が新規事業の成否を分けるのか
新規事業の立ち上げで多くの経営者がつまずく最初の関門は、戦略でも資金でもなくメンバー選定です。既存事業と同じ価値観で人を集めても、新規事業の不確実性には耐えられません。選定基準を既存事業から切り離すことが、立ち上げ成功への第一歩といえるでしょう。
私たちコントリ編集部が経営者の方々から伺うお話のなかでも、半年〜1年経って「あの選定が分岐点だった」と振り返る声を多く耳にします。戦略や資金は途中で組み直せても、メンバーの組み替えは現実的に難しい。だからこそ、最初の判断に時間をかける価値があるのではないでしょうか。
既存事業のメンバー要件
- 決まったルールの中で最大化する力
- 過去の成功パターンの応用
- 確立された顧客リスト活用
- 整備されたトークスクリプト
- マニュアル遵守の正確性
新規事業のメンバー要件
- ルール自体を疑う姿勢
- 仮説検証を回す思考力
- 不確実性への耐性
- 経営者と健全に対立できる胆力
- 撤退判断を受け止める柔軟さ
新規事業は「正解のない問い」を解く仕事
既存事業の運営は、過去のデータと成功パターンを応用する仕事です。一方、新規事業は答えのない問いに向き合う営みになります。仮説を立てては検証し、また仮説を立て直す。この繰り返しに耐える胆力こそ、新規事業メンバーに求められる第一要件です。
新規事業のプロとして知られる守屋実氏は、事業立ち上げにおいて「人」を最重要要素と位置付けています(NewsPicks「新規事業のプロ、守屋実氏が語る」・◐部分確認)。私たちコントリ編集部も同様の手応えを感じています。戦略の精度よりも、走りながら戦略を書き換えられるメンバーがいるかどうか。それが立ち上げ初期の生死を分けます。
実際、ベンチャーキャピタリストの間では「賭けるのは事業ではなく人」という言葉がよく聞かれます。事業計画は変わりますが、人の本質的な力量は変わりにくいからです。経営者の方も同じ視点を持っていただけたらと思います。
既存事業の優秀者が必ずしも適任とは限らない理由
「うちで一番優秀な営業を新規事業に異動させた」。そう胸を張る経営者の方にお話を伺うと、半年後に「期待ほど動かなかった」という後悔を耳にすることがあります。既存事業の優秀者と新規事業の適任者は別軸で評価する必要があるのです。
既存事業の優秀者は「決まったルールの中で最大化する力」に長けている方が多いです。確立されたトークスクリプト、整備された顧客リスト、過去事例の蓄積。こうした足場があってこそ実力を発揮できるタイプです。
一方、新規事業ではルール自体を疑う姿勢が求められます。優秀な営業ほど、足場がない状況では最初の一歩が踏み出せないこともあります。「自由にやっていい」と言われると逆に動けなくなる方も少なくないのです。
判断基準として、過去の異動経験や副業経験を聞いてみるのも良いでしょう。環境変化を自ら選んできた方ほど、新規事業の不確実性に強い傾向があります。
選定段階のミスは半年後に巨大な修正コストになる
メンバー選定の見直しは、選定から3〜6ヶ月経った頃に必要性が顕在化することが多いものです。しかし、その時点で配置転換を決断するのは経営者にとっても本人にとっても大きな負担になります。
人事評価の途中、賞与の支給直前、プロジェクトの中盤。どのタイミングで切り替えても、現場には少なからずダメージが残ります。だからこそ、最初の選定で時間をかける価値があるのではないでしょうか。
選定プロセスに2週間〜1ヶ月を投じても、その後の修正コストと比べれば極めて安い投資です。経営者の方には、ここに腰を据えて取り組んでいただきたいと感じています。
選定ミス発覚時期 × 修正コストの相関
1ヶ月
3ヶ月
6ヶ月
12ヶ月
発覚が遅れるほど指数関数的に修正コストが拡大
失敗するメンバー選定パターン3つ
中小企業の新規事業でよく見られる失敗パターンを3つ整理します。心当たりがある経営者の方は、選定基準を見直すきっかけにしていただけたらと思います。
私たちコントリ編集部が伺ってきた「うまくいかなかった選定」の多くは、ここで紹介する3パターンのいずれか、または組み合わせに当てはまります。パターンを知ることで予防が可能になりますので、ご自身の選定基準と照らし合わせてご覧ください。
①「手が空いている人」から選ぶ
最も陥りやすいパターン。既存事業の繁忙度を見て「比較的時間に余裕がある人」を新規事業に充てる選び方です。リソース配分としては合理的に見えますが、「手が空いている」という事実は本人の事業へのコミット度合いが低い可能性を示唆します。
新規事業のメンバーには、現在の業務を一度ゼロから組み立て直す覚悟が必要です。手が空いている方は、変化への意欲も低いケースが少なくありません。配置転換に対する心理的抵抗が小さいのは事実ですが、それが「新しいことを生み出すエネルギー」と直結するわけではないのです。
選定面談では「直近1年で自分から手を挙げてやったこと」を聞いてみると良いでしょう。何も思い当たらない方より、小さなことでも能動的に動いた経験がある方を選ぶことをおすすめします。
②「やる気がある人」だけで固める
「新しいことをやりたい!」と挙手してくれた方ばかりで固めるパターン。一見、熱量のあるチームに見えますが、全員が同じ方向に走ると軌道修正の声が上がりにくくなります。
経営者と感性が近すぎるメンバーだけだと、健全な反対意見が出てこないまま、判断ミスが連鎖していくリスクがあります。プロジェクトメンバーの人選について、チーム編成段階で勝負が決まると言われるのは、こうした「視点の偏り」を防ぐためでもあるでしょう(YouTube「プロジェクトメンバーはどんな人選をすればいいのか」・◐部分確認)。
意図的に「反対意見を出してくれる役割」を1名入れる。これは新規事業の精度を高める実践的な工夫です。経営者の方には、心理的に難しくても勇気を持って異論派を選んでいただきたいと感じます。
③ 外部から鳴り物入りで採用する
大手企業や同業他社から実績ある人材を引き抜くパターン。期待値が高い分、既存社員との心理的距離も大きくなりがちです。「あの人だけ特別扱いされている」という空気が広がると、新規事業の推進が組織横断的に進まなくなります。
外部採用そのものを否定するつもりはありません。優秀な人材は組織に新しい視点をもたらしてくれる存在です。ただし、外部主体でチームを組むなら、最初に既存社員との接続役(橋渡しメンバー)を1名は社内から立てておく必要があります。
外部採用者には「即戦力」を期待しがちですが、組織文化への適応に3〜6ヶ月は必要だと割り切ることも大切です。経営者の方が、その期間の「橋渡し」を意識的にサポートできるかが鍵となります。
| 失敗パターン | 短期的に見える利点 | 中長期で起きる弊害 |
|---|---|---|
| ①手が空いている人 | リソース配分が合理的に見える | 変化への意欲が低く、立ち上げが停滞 |
| ②やる気だけで固める | 熱量のあるチームに見える | 軌道修正の声が上がらず判断ミスが連鎖 |
| ③外部から鳴り物入り | 実績ある人材で期待値が高い | 既存社員との分断・橋渡し不在で推進力低下 |
成功する選定の5つの視点
新規事業のメンバーに求められる能力・性格は、既存事業とは別軸で評価する必要があります。経営者が見るべき5つの視点を順に解説します。
この5視点は、私たちコントリ編集部が複数の経営者の方から伺った「成功した選定の共通項」を整理したものです。すべての視点を満たす完璧な人材は稀ですが、5つのうち3つを満たす方を中心に据えると、立ち上げの推進力が大きく変わってきます。
視点1: 不確実性への耐性(曖昧さの中で動ける)
新規事業の現場は、明日何が起きるか分からない状態が常態化します。マニュアルも先輩の知見もない環境で、自分の頭で考えて動ける方かどうかが第一の評価軸です。
判断材料としては「過去に未経験領域に飛び込んで成果を出した経験」が参考になります。転職経験、社内異動経験、副業経験、個人的な挑戦など、環境変化を自ら選んできた方は、不確実性への耐性が高い傾向にあります。
選定面談では「最近、未経験のことに挑戦したエピソード」を聞いてみるのも有効です。新規事業の現場では、毎週のように「初めて」が訪れます。それを楽しめる方かどうかを見極めていただきたいと感じます。
視点2: 仮説と検証を回す思考力
新規事業は仮説→検証→学習→次の仮説の循環で進みます。この思考プロセスを自然に回せる方は、経営者の意思決定スピードを大きく後押ししてくれます。
DeNAの公式チャンネルでは、新規事業の課題発見に5つのフレームワークが紹介されています(DeNA「新規事業案が魔法のように作れる」・◐部分確認)。こうしたフレームを使いこなせる方も適性が高いといえます。
ただし、ツール使用の上手さよりも本質的なのは、検証結果を素直に受け止めて自分の仮説を捨てられる柔軟さです。「自分が立てた仮説に固執しない」姿勢は、思考力以上に大切な性格特性といえるでしょう。
視点3: 経営者の代弁者になれるロイヤルティ
新規事業のメンバーは、社内外で経営者の意図を代弁する立場に立つ場面が多くあります。経営者と同じ熱量で事業の意義を語れるか、外部のステークホルダーに信頼を持って向き合えるかは、組織融合フェーズで効いてきます。
ここで言うロイヤルティは、盲目的な忠誠ではありません。経営者の意図を深く理解した上で、自分の言葉で語り直せる力のことです。「社長がこう言ったから」ではなく「事業の本質はこうだから」と自分の言葉で説明できる方を選んでいただきたいところです。
選定面談では、過去の上司や経営者について「どんな点を尊敬していたか」を聞いてみると良いでしょう。具体的に語れる方は、人の意図を汲み取る力が高い傾向にあります。
視点4: 既存組織との橋渡し役を果たせるか
新規事業は既存事業から人・モノ・金を借りて立ち上がるケースが大半です。既存組織との関係を円滑に保てる方が1名いるだけで、調達のスピードが大きく変わります。
橋渡し役には、既存組織での在籍年数が長く、複数部署と良好な関係を持つ方が向いています。新規事業の華やかさよりも、地味な調整業務を厭わない胆力がある方を選びたいところです。
「目立つ役割でなくても貢献したい」というスタンスの方は、組織にとって貴重な存在です。経営者の方には、こうした方を意識的に評価し、新規事業に巻き込んでいただけたらと思います。
視点5: 撤退判断を受け止められる胆力
新規事業の8割以上は当初の事業計画通りには進まないとよく言われます(出典: ベンチャー業界での経験則)。途中で撤退・大幅修正の判断を経営者が下したときに、感情的にならず受け止められる方かどうか。これが最後の、そして最も重要な視点です。
撤退判断は経営者にとっても胃が痛む決断です。メンバーが「ここまでやってきたのに」と詰め寄る姿勢では、経営者は次の一手を打てません。冷静に「次に向けて何ができるか」を一緒に考えられる方こそ、真の意味で新規事業を支えるメンバーといえます。
スタートアップ投資の世界でも、経営者が起業時に重要視するのは「市場選定」と「人選」の両輪だと指摘されています(スタートアップ投資TV「市場選定」・◐部分確認)。人選においては、撤退や方向転換を受け止められる胆力こそ最重要要素なのです。
▼関連: 中小企業経営者の意思決定 5つの視点
想いを言葉に、
言葉を行動に。経営者の選択を支援します。
中小企業経営者の意思決定を100名超の取材で深掘り。あなたの新規事業判断のヒントを、ご縁ある経営者の言葉からお届けします。
経営者が見るべき5つの視点
-
1
不確実性への耐性
マニュアルも先輩の知見もない環境で、自分の頭で考えて動けるか
-
2
仮説と検証を回す思考力
仮説→検証→学習→次の仮説の循環を自然に回せる
-
3
経営者の代弁者になれるロイヤルティ
経営者の意図を深く理解し、自分の言葉で語り直せる力
-
4
既存組織との橋渡し
複数部署と良好な関係を持ち、地味な調整業務を厭わない
-
5
撤退判断を受け止める胆力
感情的にならず、次に向けて何ができるかを冷静に考えられる
経営者が陥りがちな「想いだけ採用」の罠
コントリ編集部で経営者の方々にお話を伺うと、新規事業のメンバー選定で最も多い後悔は「想いを共有してくれるから」という基準で選んでしまったケースです。なぜ「想い」だけでは足りないのかを掘り下げます。
これは経営者の方の人柄が現れる落とし穴でもあります。共感を大切にする経営者ほど、想いの強さに引き寄せられがちです。だからこそ、意識的にこの罠を避ける視点を持っていただきたいと感じます。
想いの強さは「実行力」を保証しない
「事業に共感してくれた」「夜中まで議論に付き合ってくれた」。そんなエピソードに心動かされてメンバーに選んでしまうことは、経営者として自然な感情の動きです。私自身もそうした選び方を肯定したい気持ちはあります。
ただ、想いの強さは事業を前に進める実行力とは別ものです。共感はあくまでスタートラインの条件。そこから先、毎日の小さな意思決定を積み重ねられるかは、別の能力で評価する必要があります。
具体的には「想い + 実行履歴」の両軸で見ていただきたいところです。過去にどんな企画を、どこまでやり切ったか。完了率と完成度の両方を確認することをおすすめします。
経営者と感性が近すぎると視野が狭くなる
「価値観が合う人とだけ働きたい」。これは経営者の本音として理解できます。けれど、新規事業では経営者と異なる視点を持つメンバーがいるからこそ、見落としを防げる側面があります。
スタートアップ投資の世界でも、経営者が起業時に重要視するのは「市場選定」と「人選」の両輪だと指摘されています。人選においては、感性の近さよりも、視点の補完性を重視したいところです。
具体的には、自分と違うバックグラウンドを持つ方を意識的に1名は入れることをおすすめします。前職業界、年代、性別、ライフステージ。何か1つでも違う属性の方が混ざると、議論の幅が広がります。
想いより「経営者と健全に対立できる力」を見る
新規事業で本当に頼れるメンバーは、経営者の判断に「それは違うと思います」と言える方です。表面的なイエスマンではなく、根拠を持って異論を述べ、最終的には経営者の決定を全力で支える。そういう関係性を築ける方こそ、想いを共有するだけのメンバーよりも事業に貢献してくれます。
選定面談では「過去に上司や経営者と意見が対立したとき、どう対処しましたか」と聞いてみるのも良い質問でしょう。対立を避けず、しかも関係を壊さずに通り抜けた経験がある方は、新規事業の苛烈な議論にも耐えられる可能性が高いといえます。
「あの時、社長の判断に納得していなかったが、最後はチームのために動いた」というエピソードが出てくれば、極めて頼もしい人材です。経営者の方には、こうした方を見逃さないでいただきたいと思います。
想いだけ採用
- 共感の強さで選定
- 議論が同調しがち
- 判断ミスが連鎖
- 視野が狭くなる
→
健全に対立できる関係
- 根拠ある異論を歓迎
- 決定後はチームで支える
- 視点の補完性を活用
- 判断精度が高まる
経営者が見るべき真の選定基準は「対立できる力」
選定後の組織融合:立ち上げ90日でやるべきこと
メンバーが決まったら終わりではありません。最初の90日で組織として機能させるための具体的なステップを、フェーズ別に紹介します。
この90日プランは、私たちコントリ編集部が複数の経営者から「これをやっておけば良かった」と教えていただいた知見を体系化したものです。完璧に実行できなくても、意識するだけで立ち上げ初期の組織の体感が変わります。
0〜30日: 役割と意思決定権限を文書化する
立ち上げ初期で最も重要なのは、誰が何をどこまで決められるかを明文化することです。「いくらまでの予算なら現場判断で動かせるか」「契約書のサインは誰が出すか」「採用判断はどこまで現場に委ねるか」。曖昧なまま走り始めると、毎回経営者に判断を仰ぐことになり、新規事業のスピード感が失われます。
具体的には以下のスケジュールが目安となります。
- Day 1〜3: 各メンバーの役割記述書(A4一枚)をドラフト作成
- Day 4〜7: 経営者とメンバーで役割をすり合わせ、意思決定マトリクス(誰が何をいくらまで決められるか)を確定
- Day 8〜30: 実運用しながら週次で見直し、月末に v1.0 を確定
完璧でなくて構いません。運用しながら毎月見直していく前提で、まずは仮置きで作ることをおすすめします。
31〜60日: 既存事業との摩擦を可視化する
新規事業は必ず既存事業と何らかの摩擦を生みます。リソースの取り合い、評価制度の不整合、顧客への営業競合、ブランドの混同。表面化しないまま進めると、半年後に大きな組織問題として爆発します。
31〜60日のフェーズでは、現場メンバーから「既存事業との摩擦ポイント」を集める時間を意識的に設けてください。具体的には:
- Day 31〜45: 週1回30分の「摩擦共有会」を設置。メンバーが気づいた点を箇条書きで持ち寄る
- Day 46〜60: 経営会議で摩擦リストを取り上げ、解決可能なものは優先順位を付けて手を打つ
管理職のマネジメントには明確な限界があり、新規事業ではより構造化された権限委譲が必要だという指摘もあります(YouTube「管理職にも限界があります」・◐部分確認)。摩擦の可視化は、その権限委譲設計の土台になる作業です。
61〜90日: 撤退基準と継続基準を経営者と合意する
立ち上げから3ヶ月が経つ頃、最初の小さな成果と、最初の大きな壁が見えてきます。このタイミングで、撤退基準と継続基準を経営者とメンバーで明文化して合意しましょう。
撤退基準の例:「6ヶ月で月商100万円未達なら撤退」「9ヶ月でユーザー500名未達なら撤退」など、数値で明示します。継続基準の例:「3ヶ月でMVP完成かつ初期ユーザー50名獲得なら次の投資判断に進む」など、前向きな指標で書きます。
▼関連: 新規事業の撤退判断 経営者が陥る3つの罠
曖昧な期待値のまま延々と続けるのが、新規事業で最も多い停滞パターンです。明文化された基準があれば、経営者もメンバーも判断に納得しやすくなります。
立ち上げ90日 フェーズ別アクション
0〜30日
役割文書化
- 役割記述書ドラフト作成
- 意思決定マトリクス確定
- 週次見直しで v1.0 完成
31〜60日
摩擦可視化
- 週1回30分の摩擦共有会
- 経営会議で優先順位付け
- 解決可能な摩擦に着手
61〜90日
撤退基準合意
- 撤退基準を数値で明文化
- 継続基準も前向き指標で
- 経営者とメンバーで合意
あなたの想いを、
次の経営者へ。インタビュー応募はこちら。
中小企業経営者の声を蓄積するコントリでは、取材を希望される経営者の方を募集しています。新規事業の歩みを、次の世代の経営者に届けませんか。
- 100名超の経営者取材実績
- 編集部による事前ヒアリング
- 掲載後の継続コミュニケーション
よくある質問(FAQ)
Q1. 新規事業のメンバーは既存社員と外部採用、どちらを優先すべきですか?
中小企業の場合、まず既存社員から「不確実性への耐性」がある方を中心に1〜2名を抜擢し、足りないスキルセットだけ外部から補強する形が現実的です。最初から外部主体にすると既存組織との分断が起こりやすくなります。
Q2. メンバーを何名でスタートするのが理想ですか?
業種にもよりますが、初期は3〜5名が動きやすい人数です。10名を超えると意思決定が遅くなり、新規事業に必要なスピード感が失われます。経営者ご自身がメンバーの一人として現場に入ることを推奨します。
Q3. 「想いがある人」を選んではいけないのですか?
想いそのものは大切です。ただし「想いだけ」を選定基準にしないことが重要といえます。想いに加えて、仮説検証を回せる思考力と、経営者と健全に対立できる胆力を併せ持つ方を選ぶことをおすすめします。
Q4. 選定後、最初に決めるべきことは何ですか?
意思決定権限の範囲です。「いくらまでの予算なら現場判断で動かせるか」「撤退判断は誰がいつ下すか」を文書化することで、立ち上げ初期のスピードが大きく変わります。
Q5. メンバーが期待通りに動かない場合、どう対応すべきですか?
まず「選定ミス」と決めつけず、役割と権限が曖昧でないかを確認することから始めます。多くのケースで、メンバーの能力ではなく権限設計の不備が原因となっています。それでも改善しなければ、撤退基準に従って配置転換を検討しましょう。
編集部コメント
新規事業のメンバー選定について、コントリ編集部の取材で見えてきた経営者の本音と、現場で機能する5つの視点をお届けしました。
お話を伺っていて感じるのは、メンバー選定の正解は経営者ごと・事業ごとに異なるという当たり前の事実です。本記事の5つの視点は、あくまで「経営者が判断軸を持つためのフレーム」として活用していただけたらと思います。
新規事業は、想いだけでも実行力だけでも前に進みません。経営者ご自身が「自分は何を信じてこの事業を始めるのか」を改めて言語化し、その答えに共鳴しながらも健全に対立できるメンバーを選ぶ。その営みが、半年後・1年後の事業の景色を大きく変えてくれるはずです。
私たちコントリ編集部は、これからも経営者の意思決定を支える知見をお届けしてまいります。本記事が、新規事業の現場で奮闘される経営者の方々の一助になれば、これほど嬉しいことはありません。

