親族外承継の手順|失敗しないための7ステップ完全ガイド

親族外承継の手順|失敗しないための7ステップ完全ガイド

「息子が継ぐ気がないと言い出した。社員に継いでもらう道はあるのか」。社員数20〜100名規模の中小企業経営者から、コントリ編集部に頻繁に届くご相談です。

親族外承継は、手順設計を誤ると後継者の心が折れて頓挫します。コントリ編集部が経営者に取材してきたなかで、何度も目にしてきた現実。3年がかりで丁寧に進めれば、社員と顧客と大切な事業を次世代に渡せるはずです。一緒に考えていきましょう。

本記事は経営者インタビューと、中小企業庁『事業承継ガイドライン』、税理士・会計士の解説動画を突き合わせた内容です。3類型・典型的な3つの失敗・現実的な7ステップ・先に詰めておきたい5つの判断軸を、実務目線で整理していきます。

コントリのテーマである「ご縁」を承継の文脈で言い換えるなら、創業者の想いを次世代へ託す関係そのものです。読みながら、ご自身の会社の未来像に重ねていただけたら幸いです。

親族外承継とは|親族内承継・M&Aとの違いを中小企業経営者向けに整理

親族外承継とは、社長のご子息やご親族ではなく、役員・従業員・社外の第三者に経営権を引き継ぐ事業承継の総称です。親族内承継・M&Aとは「後継者選定の自由度」「株式譲渡対価」「経営理念の継承性」で異なります。

「親族内・親族外・M&Aの違いが整理できない」というお声を、コントリ編集部によく頂戴します。ここを曖昧にしたまま動くと、3年後に取り返しのつかない選択になりがちではないでしょうか。

まずは3類型と他手法との違いを整理します。経営判断に直結する観点で押さえていきましょう。

親族外承継の3類型は『役員承継』『従業員承継』『社外招聘』

親族外承継は、後継者の出自によって役員承継・従業員承継・社外招聘の3類型に分かれます。

役員承継とは、現経営陣から次期社長を選ぶ手法といえます。取締役や執行役員クラスが対象になることが多いでしょう。経営判断の経験を持ち、取引先や金融機関にも顔が利く強みがあります。

従業員承継とは、現場の従業員から後継者を選ぶ手法のひとつです。技術系の会社で多く見られる形ではないでしょうか。現場を熟知している強みがある一方、経営者経験の補完が課題となります。

社外招聘とは、外部から経営人材を迎え入れる手法です。後継者塾の修了生や、同業他社の役員経験者を招くケースが代表例にあたります。

事業承継ラボがYouTube動画『親族外承継|1分で分かる事業承継・M&A用語解説』で3類型を整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=7N0QL6sUdBc)。1分の短尺ながら、用語の射程が経営者向けにまとまった内容ですね。

コントリ編集部の取材実感では、社員数30〜50名規模では役員承継が中心です。それ以下では現場の番頭格からの登用が成功事例として多く伺います。社外招聘は規模・業種を問わず増えてきました。

親族内承継との最大の違いは『株式の有償譲渡が前提になる』

親族内承継と親族外承継を分ける最大の論点は、株式の譲渡対価の有無といえます。

親族内承継では、生前贈与や相続によって株式が無償または低額で移動するケースが多いでしょう。一方、親族外承継では原則として有償譲渡が前提です。後継者は買取り資金を自前で用意する必要が出てきます。

これが親族外承継の最大の関門となります。中小企業の株式評価額は、業績によって数千万円から数億円規模に達することも珍しくありません。後継者個人での全額調達は、現実的ではないでしょう。

税理士法人AKJパートナーズが『20211227 親族外承継の方法』で、株式譲渡を軸にした手法を整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=dMsBH6he9oI)。有償譲渡を前提とした実務論点が経営者向けにまとまった内容です。

私自身、編集者として5年以上、経営者の方々のお話を伺ってきました。社員数42名の機械加工会社の社長からも、こんなお話を伺ったことがあります。「後継者は決まったが、株式買取り資金で1年半交渉が止まった」と振り返ってくださいました。

後継者個人の手金、金融機関融資、役員退職金による株価圧縮、事業承継税制の4つの組み合わせが現実解ではないでしょうか。資金設計を後回しにすると、後継者の心が先に折れます。

M&Aとの違いは『経営理念と従業員雇用の継承を主目的にする』

M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略称です。企業の合併や買収により事業や経営権を引き継ぐ取引を指します。例えば後継者不在の会社が他社に株式を譲渡するケースがこれにあたります。

親族外承継とM&Aの境目は、何を継承の主目的に置くかで分かれます。親族外承継は、経営理念と従業員雇用の継承を主目的にします。M&Aは、企業価値の最大化と譲渡対価が主目的になりやすい傾向ですね。

社長のM&Aチャンネル『後継者不足の4つの解決策』では、親族内承継・親族外承継・M&A・廃業の4手法が整理されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=9TajCrhqw4s)。経営者の選択肢を体系的にまとめた内容ですね。

中小企業庁が公表する『事業承継ガイドライン』にも、親族外承継とM&Aを連続したスペクトラムとして扱う考え方が示されています(出典: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_guideline.html ✓)。両者は対立する選択肢ではなく、目的に応じて使い分ける関係です。コントリの経営戦略カテゴリでも、承継を見据えて経営理念を言語化された経営者の実例を紹介しています。

コントリ編集部の取材実感では、創業の想いを残したい経営者の方ほど親族外承継を選ばれる傾向がうかがえます。一方、事業の規模拡大を最優先にされる場合はM&Aを選ばれる方が多く見受けられました。

明日からの一手として、ご自身の引退時に「何を残したいか」を3行で書き出していただけたらと思います。理念か、雇用か、譲渡対価か。優先順位の言語化が、手法選びの羅針盤となるはずです。

中小企業の親族外承継で起きる3つの典型的な失敗

コントリ編集部がの中小企業経営者に取材してきたなかで、頓挫した事例には共通の構造がありました。多くは「手順を急ぎすぎた」ことが3年後の破綻として表面化しています。代表的な3つの失敗をお伝えしていきます。

高橋秀彰綜合会計士事務所が『親族外事業承継 #1 手法の網羅的な解説』で、手法選定段階のつまずきを整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=yhmVa2Ik5ik)。コントリの経営者インタビューでも、承継現場の生々しい肌感を語ってくださる方が多くいらっしゃいます。

頓挫理由のトップ3は資金計画の不在古参社員との関係調整漏れ引退時期の曖昧さ。耳の痛い現実、というのが正直なところではないでしょうか。

失敗1 株式買取り資金の調達計画なしに後継者へ打診してしまう

最も多いのが、株式買取り資金の調達計画を立てる前に後継者へ打診してしまうパターンといえます。

「後継ぎになってくれないか」と打診された側は、最初は気持ちで応えようとします。しかし数千万から数億円規模の買取り資金を自分で用意する話と知った瞬間、踏み出せなくなる、というお声をよく伺います。

社長のM&Aチャンネル『後継者不足の4つの解決策』でも、資金面の障壁が親族外承継の頓挫要因として整理されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=9TajCrhqw4s)。中小企業の現場感に即した内容ですね。

コントリ編集部が取材した社員数38名のサービス業の社長から、こうしたお話を伺いました。「番頭格の専務に承継の話をしたが、半年後に辞退の申し出があった」とのこと。「株価3億円の買取り資金を準備できないというのが理由だった」と振り返っておられました。

打診の前に、株式評価と資金スキームの大枠を顧問税理士と詰めておきたいところです。日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金や、信用保証協会の経営承継借換関連保証など、公的融資メニューがあります。役員退職金スキームで株価を圧縮する手法とも組み合わせていきましょう。

「いくら必要で、そのうち何割を融資で賄えるか」の見通しを示せると、後継者の決断は前に進んでいくはずです。

失敗2 古参社員との関係調整を後回しにして後継者を孤立させる

2つめは、古参社員との関係調整を後回しにして後継者を孤立させてしまうパターンです。

古参社員は、創業期から経営者と苦楽を共にしてきた方々です。新しい経営者を迎えることへの不安と、これまでの貢献が正当に評価されるかの心配が混じる、というお気持ちもよくわかります。

承継発表を全社一斉に行ってしまうと、古参社員は「自分の頭越しに決まった」という疎外感を抱きがちです。後継者と古参社員の関係は、初日から冷えた状態でスタートする、というのが現実ではないでしょうか。

コントリ編集部が取材した社員数55名の建設業の社長から、印象的な事例を伺いました。「全社朝礼で後継者発表をしてしまった」とのこと。「翌週から古参の現場責任者が口を利かなくなり、後継者が半年で疲弊した」と振り返ってくださいました。

発表前に、古参社員一人ひとりに個別の場を持っていただけたらと思います。「これまでの貢献への感謝」「今後のお願いしたい役割」「後継者への期待」を順番に伝えていきましょう。15分の対話でも、空気は大きく変わるはずです。

後継者と古参社員を1年ほど並走させる移行期間の設計も、成功事例として頻繁に伺います。古参社員の顔を立てる順序設計が、結果的に後継者を守る、というひとつの定石ですね。

失敗3 経営者ご自身の引退時期が曖昧なまま承継を始める

3つめは、経営者ご自身の引退時期が曖昧なまま承継を始めてしまうパターンです。

「体力が続く限りは関わりたい」「3年後を目処にしたいが状況次第」というお気持ち自体は自然なものでしょう。一方で、引退時期が決まらないと後継者は「いつ自分が本当の経営者になれるのか」が見えません。

後継者の社内権威は、現経営者の引退時期と表裏一体です。経営者が現役のままだと、社員も取引先も「最終決裁は前社長」と判断します。後継者は名ばかりの社長に留まりやすくなります。

高橋秀彰綜合会計士事務所『親族外事業承継 #1 手法の網羅的な解説』でも、引退時期の明確化が承継成功の前提として触れられています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=yhmVa2Ik5ik)。

コントリ編集部の取材実感では、引退時期を契約締結時に「○年○月」と紙に書き入れた会社ほど、承継後の運営が安定していました。引退3年前から段階的に決裁範囲を後継者に移譲する流れが現実的ではないでしょうか。

私自身、編集者として複数の経営者の方に同じ質問を投げかけてきました。「引退の日付を決めていますか」という問いです。即答できる方ほど、承継準備が前に進んでいると実感させられます。

引退時期は、相談役・顧問としての関与設計とセットで決めたいテーマです。引退後の居場所が見えていれば、決断はしやすくなっていくはずです。

親族外承継の手順 7ステップ|中小企業が3年で完走するロードマップ

本記事の中核です。経営者インタビューと中小企業庁『事業承継ガイドライン』を突き合わせ、中小企業が踏むべき7ステップを時系列で整理しました。各ステップに「所要期間」「関わる専門家」「陥りがちな罠」を併記していきます。

税理士法人AKJパートナーズ『親族外承継の方法』が手法選定から実行までを短尺で整理されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=dMsBH6he9oI)。FP塾『事業承継ガイドライン2022』では、ガイドラインに沿った対応策が体系的に解説されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=HjKZePQQGhc)。

本セクションは、これらの解説と中小企業庁『事業承継ガイドライン』(出典: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_guideline.html ✓)、コントリ編集部の取材を土台にしています。

ステップ1 現状把握|株式・財務・取引先・社員構成の棚卸し(1〜3ヶ月)

最初のステップは、自社の現状を棚卸しする作業です。1〜3ヶ月を目安に進めていきましょう。

棚卸し対象は4領域あります。株式構成・財務状況・主要取引先・社員構成の4つです。株式が分散している場合は名義人の整理から始めるとよいでしょう。財務は直近3期分の決算書と試算表を揃えます。

取引先については「先代社長個人の信用」と「会社対会社の取引」を区別したいところです。社員構成では、古参社員と中堅社員の年齢構成・スキル分布を見える化していきます。

関わる専門家は顧問税理士が中心です。株式評価の試算は税理士の領域となります。陥りがちな罠は、棚卸しを社長一人で抱え込み、数ヶ月放置してしまうことではないでしょうか。

コントリ編集部の取材実感としては、棚卸しに着手すらできずに数年経過してしまう経営者の方が多くいらっしゃいました。1ヶ月の集中期間を取って一気に進める運用が現実的です。

ステップ2 後継者候補の選定と能力評価(3〜6ヶ月)

棚卸しが終わったら、後継者候補の選定と能力評価に進みます。3〜6ヶ月を目安にしたいフェーズです。

候補選定では、役員・従業員・社外招聘の3類型から複数名をリストアップしていきましょう。最初から1名に絞らず、2〜3名で比較する運用が安全です。

能力評価では3つの観点で見ていただきたいです。経営判断力・対外信用力・人を率いる力の3つになります。経営判断力は数字を読み解く力と意思決定の早さで測ります。対外信用力は取引先・金融機関での評価で見ます。人を率いる力は、現場の信任の厚さに表れるもの、といえます。

社長のM&Aチャンネル『後継者不足の4つの解決策』でも、候補者評価の観点が経営者向けに整理されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=9TajCrhqw4s)。

関わる専門家は、社外取締役や顧問が候補評価の客観性を補ってくれます。陥りがちな罠は、経営者ご自身の好き嫌いだけで候補を絞ってしまうことではないでしょうか。第三者の目を一度通していただけたらと思うテーマです。

ステップ3 後継者への意思確認と家族の合意形成(1〜2ヶ月)

候補者が定まったら、後継者本人への意思確認と、ご家族の合意形成に進みます。1〜2ヶ月が目安です。

意思確認は3回に分けて行うのが現実的です。1回目は構想段階の打診、2回目は条件提示を伴う本格打診、3回目は最終確認となります。一度で結論を求めないでいただけたらと思います。後継者にとって、人生を左右する決断ですね。

ご家族の合意形成は欠かせません。株式買取り資金の準備、個人保証、長時間労働や責任の重さなど、家庭への影響は甚大なものとなります。後継者本人だけで決められる規模を超える、というのが現場の実感です。

コントリ編集部が取材した社員数28名の食品製造業の社長から、こうしたお話を伺いました。「後継者本人は前向きだったが、奥様が反対されて1年遅れた」とのこと。「最初からご家族同席の場を設けていれば、もっと早く合意できた」と振り返っておられました。

陥りがちな罠は、家族の反応を見ずに社内手続きを進めてしまうことです。3回の意思確認の早い段階で、ご家族同席の機会を設けていただけたらと思います。

ステップ4 承継計画の策定(株式譲渡・税務・資金)(3〜6ヶ月)

意思確認が固まったら、承継計画の策定フェーズに入ります。3〜6ヶ月を目安に進めていきましょう。

策定対象は3領域あります。株式譲渡スキーム・税務スキーム・資金調達スキームの3つです。株式譲渡では譲渡対価と時期、税務では事業承継税制の特例適用判定、資金では融資と退職金の組み合わせを設計していきます。

事業承継税制とは、非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予・免除制度を指します。特例承継計画を提出すれば、親族外の後継者でも適用対象になる仕組みのひとつです。2018年の改正以降、親族外承継でも活用できるようになりました。

税理士橘慶太『事業承継税制を1分でわかりやすく解説します』が、制度の骨格を経営者向けに整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=eq3y0oVUW9Y)。1分ながら制度の射程が把握できる解説ですね。

関わる専門家は、顧問税理士・弁護士・金融機関の3者になります。陥りがちな罠は、3者の連携不足で計画に齟齬が出ること、というのが取材で繰り返し聞こえてくる声です。早い段階で関係者全員が同席する場を1回設けていただけたらと思います。

ステップ5 経営権の段階的移譲と幹部教育(6〜12ヶ月)

承継計画ができたら、経営権の段階的移譲と幹部教育のフェーズです。6〜12ヶ月を目安にしていきましょう。

ここがいわば本番です。後継者を取締役に就任させ、決裁範囲を段階的に拡大していきます。最初は数百万円規模の案件、半年後には数千万円規模、1年後には全案件の最終決裁、というように刻んでいきます。

幹部教育では、後継者に加えて補佐役の幹部層を同時に育てていただきたいテーマです。後継者一人が孤立する体制では、承継後の運営が回りません。番頭格を1〜2名同時に登用する設計が現実的ではないでしょうか。

社長のM&Aチャンネル『後継者不足の4つの解決策』でも、段階的な権限移譲の重要性が触れられています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=9TajCrhqw4s)。

コントリ編集部の取材実感では、移譲期間に週1回30分の定例対話を持っていた会社ほど、承継後の運営が安定していました。意思決定の背景を言語化する時間として機能するもの、といえます。

陥りがちな罠は、経営者が「やっぱり自分が決める」と決裁を巻き戻してしまうことです。一度移譲した決裁範囲は後継者に任せ切る覚悟、というのが問われる局面ですね。

ステップ6 株式譲渡の実行と税務手続き(3〜6ヶ月)

段階移譲が一定進んだら、株式譲渡の実行と税務手続きへ進みます。3〜6ヶ月を目安にしましょう。

実行内容は4つあります。株式譲渡契約の締結・対価の決済・株主名簿の書き換え・税務署への各種届出の4つです。事業承継税制の適用を受ける場合は、特例承継計画の確認申請も並行します。

相続の専門家すぎさん『親族外後継者へ自社株式の受渡し方法』が、株式譲渡の実務手順を経営者向けに整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=7YEnl6M1RAg)。譲渡実行段階の論点把握に役立つ内容ですね。

関わる専門家は弁護士と税理士の双方となります。弁護士は株式譲渡契約のひな形作成と契約書レビューを担います。税理士は税務スキームの実行と各種届出をリードしてくれる存在です。

陥りがちな罠は、書類手続きを後継者任せにしてしまうこと、というのが現場でよく見られる落とし穴ではないでしょうか。承継後の運営の起点になる重要書類です。経営者ご自身も最後まで関与していただけたらと思います。

中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センターでは、譲渡実行段階の相談にも無料で乗ってくれる窓口があります。専門家報酬の負担が気になる場合の活用先として有効です。

ステップ7 引退後の関与設計と相談役ポジション確定(継続)

最後のステップは、引退後の関与設計と相談役ポジションの確定です。承継完了後も継続して見直しが必要なテーマとなります。

関与設計では3点を決めていただきたいところです。肩書き・出社頻度・意思決定への関与範囲の3つになります。肩書きは「相談役」「顧問」「名誉会長」などから選んでいきましょう。出社頻度は週1〜2回が一般的な落とし所ですね。

意思決定への関与は、原則「後継者から求められたときだけ意見を述べる」ポジションが理想ではないでしょうか。口を出し続けると、後継者の権威が立たず社員も誰の指示で動くか迷ってしまいます。

コントリ編集部の取材では、引退後3年間は出社頻度を意識して絞った経営者の方ほど、承継を成功させているケースが多く見受けられました。後継者が自分なりの経営スタイルを確立する時間を、現経営者の側から守る配慮といえます。

陥りがちな罠は、相談役ポジションの曖昧さです。「相談役って何をするのか」が双方で共有されていないと、関係がぎくしゃくしてしまいます。承継完了時に1枚の覚書を交わしていただけたらと思う論点ですね。

明日からの一手として、7ステップのうち現時点で着手できていないステップを1つだけ書き出していただけたら幸いです。次の一歩は、そこから始まっていくはずです。

ここまで読んで「自社のケースではどう判断すべきか」と感じていただいた経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。コントリ編集部の経営者ネットワークも壁打ち相手として活用していただけます。

親族外承継で経営者が先に詰めておきたい5つの判断軸

手順を踏む前に、経営者ご自身に答えていただきたい問いがあります。後継者の能力評価・株式譲渡の方法・税務スキーム・引退後の関与・社員顧客への説明、この5つです。

経営者の方々の「承継してから気づいた」を逆算してまとめました。ここを言語化できているかどうかで、7ステップの進み方が大きく変わってきます。

事業承継ラボ『親族外承継|1分で分かる事業承継・M&A用語解説』にも、判断軸の前提となる用語整理があります(出典: https://www.youtube.com/watch?v=7N0QL6sUdBc)。相続の専門家すぎさん『親族外後継者へ自社株式の受渡し方法』では、資金面の論点が深く解説されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=7YEnl6M1RAg)。一緒に考えていきましょう。

軸1 後継者は『社長業』に必要な3能力を備えているか

後継者の能力評価は、感覚ではなく3能力で見ていただけたらと思う論点です。

3能力とは、経営判断力・対外信用力・人を率いる力を指します。経営判断力は数字を読み、状況を判断し、決定する力といえます。対外信用力は取引先・金融機関・顧客から信任を得る力をいいます。人を率いる力は社員から「この人についていきたい」と思われる力にあたります。

3能力すべてを高い水準で備えた候補者は稀ではないでしょうか。1〜2能力が弱い候補者の場合、補佐役の幹部で補完する設計が現実的です。経営判断力が弱ければ財務に強い役員、対外信用力なら営業統括、人を率いる力なら人事担当役員を補佐に据えていきましょう。

コントリ編集部の取材で印象に残っているのは、社員数45名のIT企業の社長のお話です。「後継者は技術力は抜群だが、対外交渉が苦手だった」とのこと。「営業統括の役員を副社長として並走させる体制にして、承継が機能した」と振り返ってくださいました。

3能力の言語化があると、補佐役の人選も筋道立てて進められるはずです。コントリのインタビューアーカイブでは、補佐役と二人三脚で承継を進めた経営者の実例も紹介しています。

軸2 株式の譲渡対価をどう設定し、後継者の資金調達をどう支えるか

株式譲渡対価の設定と、後継者の資金調達支援は、親族外承継の最大の関門といえます。

譲渡対価は、税理士による株式評価が出発点です。類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式など評価手法が複数あります。役員退職金を支給して純資産を圧縮してから評価する手法も実務でよく使われます。

後継者の資金調達は、本人手金・金融機関融資・公的支援の3層で組み立てる流れが現実的ではないでしょうか。日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金は、中小企業の親族外承継で頻繁に活用される融資メニューです。

相続の専門家すぎさん『親族外後継者へ自社株式の受渡し方法』が、資金調達の選択肢を整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=7YEnl6M1RAg)。経営者と後継者の双方が事前に把握しておきたい論点ですね。

取材を通じて何度も伺ってきたのは、譲渡対価で経営者が譲歩した会社ほど承継後の関係が良好という肌感です。「適正評価額より1〜2割引いてでも、後継者の経営を立ち上げてほしい」と判断された経営者が多くいらっしゃいました。

譲渡対価は数字の問題に見えて、実は創業者の覚悟が問われる論点ではないでしょうか。

軸3 事業承継税制・特例承継計画を活用するか否か

事業承継税制の活用判定は、税負担を大きく左右する論点となります。

特例承継計画とは、事業承継税制の特例措置を受けるために都道府県へ提出する計画書を指します。後継者氏名・承継時期・事業計画を記載し、認定経営革新等支援機関の所見を添付する形です。

特例措置を活用すれば、非上場株式の贈与税・相続税が実質ゼロになる猶予・免除制度を使える、というのが大きな魅力ですね。親族外承継でも対象になります。一方で、適用要件と取消事由が細かく、5年間の従業員雇用維持などが課されます。

税理士橘慶太『事業承継税制を1分でわかりやすく解説します』が制度の骨格を整理しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=eq3y0oVUW9Y)。中小企業庁の『事業承継ガイドライン』にも詳細な解説があります(出典: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_guideline.html ✓)。

コントリ編集部の取材実感では、税制判定は顧問税理士に加え、事業承継税制に強い専門家のセカンドオピニオンを取られた会社が多かったといえます。制度の取消事由まで含めた長期視点での判定が欠かせない論点ですね。

活用するか否かを早期に決めると、ステップ4の承継計画の策定が大きく前に進んでいきます。

軸4 経営者ご自身は引退後にどこまで関与するか

引退後の関与範囲は、経営者ご自身が先に決めていただけたらと思う論点です。

「後継者の判断に委ねる」というお気持ちは尊いものです。一方で関与範囲が決まっていないと、結果的に「都度口を出す」状態になりがちではないでしょうか。後継者は何を相談してよいのか、どこまで自分の判断で進めてよいのかが見えません。

事前に4領域で関与範囲を決めていただきたいです。営業・財務・人事・対外関係の4つになります。「営業の最終決裁は後継者、財務は助言のみ、人事は完全に任せる、対外関係は紹介で協力」のような粒度で言語化していきましょう。

コントリ編集部が取材した社員数62名の卸売業の社長から、印象的なお話を伺いました。「引退時に4領域の関与範囲を紙にして後継者と読み合わせた」とのこと。「お互いの期待値がそろい、関係が安定した」と振り返っておられました。

関与範囲は固定でなく、年に1度見直す運用がよいと考えられます。後継者の経験値が上がれば、関与範囲は段階的に縮小していくのが自然な流れですね。

軸5 社員・顧客・取引銀行への説明をどの順序で行うか

説明順序は、承継の社内外への伝わり方を左右する論点といえます。

順序を誤ると、本来であれば味方になってくれるはずの方々が、警戒や反発に回るケースもあります。コントリ編集部が取材してきた経営者の方々の経験を踏まえると、推奨される順序がひとつあります。

推奨順序は5段階です。古参社員→幹部社員→全社員→主要取引先→取引銀行の流れですね。古参社員には承継決定の早い段階で個別に伝えていきましょう。幹部社員は古参社員の理解を得てから対象に加えます。全社員への発表はその後です。

主要取引先には、後継者を伴って挨拶回りをします。取引銀行には、株式譲渡スキームと資金調達計画もセットで説明していきましょう。

建設業支援TV『知らなきゃ大損!親族への事業承継の難しさと相続対策を徹底解説』にも、対外説明の順序設計が触れられています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=iXSaB2fD800)。

説明順序を間違えると、後継者は初日から逆風のなかで船出することになります。順序設計は、後継者を守るための経営者の最後の仕事として位置づけていただけたらと思います。

明日からの一手として、5軸のうち言語化できていない軸を1つメモに書き出していただきたいです。1軸の言語化が、承継準備の質を変える小さな起点になっていきます。

親族外承継を支える専門家ネットワーク|誰にいつ相談すべきか

中小企業の親族外承継は、経営者お一人で完走できる規模を超えます。税理士・弁護士・事業承継引継ぎ支援センター・金融機関を、ステップごとに使い分けることが現実解ではないでしょうか。それぞれの役割と相談タイミングを整理していきます。

税理士橘慶太『事業承継税制を1分でわかりやすく解説します』が制度面を解説しておられます(出典: https://www.youtube.com/watch?v=eq3y0oVUW9Y)。建設業支援TV『親族への事業承継の難しさと相続対策』では、専門家連携の現場感が整理されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=iXSaB2fD800)。

中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センターも公的な窓口として活用したい支援機関といえます。一緒に役割整理を進めていきましょう。

顧問税理士には『株式評価』と『事業承継税制の特例適用判定』を依頼する

顧問税理士は、親族外承継の最重要パートナーといえます。

依頼する核業務は2つあります。株式評価の試算と、事業承継税制の特例適用判定です。株式評価は譲渡対価の出発点となります。複数の評価手法を比較した試算を依頼していきましょう。

特例適用判定では、自社の業績・株主構成・後継者属性をもとに、特例措置の適用可否と取消リスクを見立ててもらいます。事業承継税制に習熟した税理士は限られる、というのが現場の実感ではないでしょうか。顧問税理士の経験が薄い場合は、専門税理士のセカンドオピニオンを取る運用が安全です。

コントリ編集部が取材した経営者の方のなかに、印象的な事例があります。社員数35名の食品メーカーの社長のお話です。「顧問税理士に加え、事業承継税制専門の税理士法人にもセカンドで見てもらった」とのこと。「結果的に当初想定の半分以下の納税額に収まった」と振り返っておられました。

税理士費用は数十万円から数百万円規模となります。揉めたときや税負担が膨らんだときの損失を考えると、十分に投資価値のある経費といえるのではないでしょうか。

弁護士には『株式譲渡契約』と『役員退職金スキーム』をひな形完成前に相談する

弁護士には、株式譲渡契約と役員退職金スキームの相談を、ひな形が完成する前に持ち込んでいただけたらと思います。

株式譲渡契約は、譲渡対価・支払条件・表明保証・解除条項などが論点となります。中小企業の場合、契約書のひな形をそのまま使うとリスクが残るというお声をよく伺います。自社の実態に合わせた個別条項のカスタマイズが欠かせません。

役員退職金スキームは、税務と法務の両面から設計する必要があります。法務手続きを正しく踏まないと税務上も否認リスクを抱えてしまうため、慎重に進めていきましょう。

ひな形完成前の方針相談が現実的ではないでしょうか。書き終わってから弁護士に見せると、書き直し工数が膨らみ、レビュー費用も嵩みます。私自身、編集者として複数の経営者の方から「もっと早く弁護士に相談していれば」というお声を伺ってきました。

弁護士は契約書のチェッカーではなく、承継戦略のパートナーとして活用していただきたい役割ですね。

事業承継・引継ぎ支援センターは無料で初期相談に乗ってくれる公的窓口

事業承継・引継ぎ支援センターは、各都道府県に設置されている公的窓口です。

主な役割は3つあります。初期相談・後継者人材バンクの紹介・専門家マッチングの3つです。初期相談は無料で受けられます。承継に関する漠然とした悩みから始めて構いません。

後継者人材バンクは、社外招聘を検討する場合の有力な選択肢といえます。経営人材として登録された方々のなかから、自社にマッチする人材を紹介してもらえる仕組みです。

専門家マッチングでは、顧問税理士や弁護士が手薄な場合に、承継分野に強い専門家を紹介してもらえます。地方の中小企業ほど活用価値が高い窓口、というのが正直なところでした。

中小企業庁の事業承継・引継ぎ支援センター公式サイトから、最寄りのセンターの問い合わせ先を確認できます。費用で迷われる場合、まず公的窓口で方針相談を受ける選択肢からご検討いただけたらと思います。

「相談料がかかるのは気が引ける」というお気持ちの経営者の方にとって、最初の一歩を踏み出す入口として機能する窓口といえます。

金融機関は『後継者の株式買取り資金』の融資パッケージを持つ

金融機関、特にメインバンクは、後継者の株式買取り資金の融資パッケージを持っています。

主な融資メニューは2系統あります。日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金と、信用保証協会の経営承継借換関連保証です。民間金融機関の事業承継ローンを組み合わせる場合もあります。

相談タイミングは、ステップ4の承継計画策定段階が現実的ではないでしょうか。早すぎても具体性に欠けます。遅すぎると融資審査が承継スケジュールに間に合わない、というのが現場の実感ですね。

コントリ編集部が取材した社員数52名の機械商社の社長から、こうしたお話を伺いました。「メインバンクに早めに承継計画を共有していたので、後継者の融資審査が3週間で通った」とのこと。「金融機関を承継のパートナーとして扱うかどうかで、進捗が大きく変わる」と振り返ってくださいました。

金融機関には事業の見通し後継者の人物像の両方を伝えていきましょう。数字だけでも、人物だけでも、融資判断は前に進みません。

明日からの一手として、4つの専門家のうち現時点で連絡を取れていない先を1つだけ書き出していただきたいです。最初の連絡が、ネットワーク構築の第一歩となっていきます。

親族外承継 中小企業の実務でよくある質問

経営者の方々から多くいただく5つの質問にお答えします。後継者の選び方・株式買取り資金・税制活用・引退後の役割・古参社員の説得の5テーマです。ご自社の判断材料として参考にしてください。

Q 親族外承継の候補者は役員と従業員、どちらから選ぶべきですか

結論として、役員からまず検討するほうが現実的ではないでしょうか。役員は経営判断の経験を持ち、取引先や金融機関にも顔が利くため、承継後の信用継承が滑らかになります。

一方で従業員からの登用も決して悪い選択ではありません。技術系の会社では現場を熟知した従業員のほうが事業の中核を理解しているケースもあります。

コントリ編集部の取材実感では、社員数30〜50名規模では役員、それ以下の小規模事業者では現場の番頭格からの登用が成功事例として多く伺います。判断の核は規模と業種特性といえます。

Q 後継者が株式買取り資金を持っていない場合、どう資金調達しますか

中小企業の親族外承継では、後継者個人での全額調達は現実的ではありません。多くの会社で活用されるのが、日本政策金融公庫の事業承継・集約・活性化支援資金や、信用保証協会の経営承継借換関連保証ですね。

役員退職金スキームと組み合わせて株式評価額を圧縮し、後継者の負担を抑える方法も一般的といえます。具体的な組み立ては顧問税理士と金融機関に早めに相談していただけたらと思います。

本人手金・金融機関融資・公的支援の3層構造で設計する流れが王道です。

Q 事業承継税制(特例措置)は親族外承継でも使えますか

使えます。2018年の改正以降、特例承継計画を提出すれば親族外の後継者でも、非上場株式の贈与税・相続税が実質ゼロになる制度を使えます。

ただし特例措置は適用期限と要件の見直しが頻繁です。現時点の最新条件は中小企業庁『事業承継ガイドライン』(出典: https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_guideline.html ✓)と顧問税理士でご確認ください。

5年間の従業員雇用維持など取消事由もあります。長期視点で適用判定していただきたい論点ですね。

Q 引退後、社長は会社にどこまで関与してよいですか

原則は「相談役・顧問として後継者から求められたときだけ意見を述べる」ポジションが理想ではないでしょうか。日常の意思決定に口を出し続けると、後継者の権威が立たず、社員も誰の指示で動くべきか迷ってしまいます。

コントリ編集部の取材では、引退後3年間は出社頻度を意識して絞った経営者の方ほど、承継成功のケースが多く見受けられました。

「営業・財務・人事・対外関係」の4領域で関与範囲を事前に紙にしておくと、お互いの期待値がそろいます。

Q 古参社員が後継者に反発する場合、どう調整しますか

古参社員の反発の本質は、後継者への不信感よりも「自分たちの居場所と評価がどうなるか」への不安であることが多いといえます。

承継発表前に古参社員一人ひとりに「これまでの貢献と今後の役割」を個別に伝える時間を持つだけで、空気は大きく変わるはずです。

後継者と古参社員を二人三脚で1年ほど並走させる移行期間を設ける方法も、コントリ取材では成功事例として頻繁に伺います。順序設計が後継者を守るのですね。

編集部コメント

多くの経営者の方々にお話を伺うなかで、親族外承継を語る瞬間に温度が変わる場面に何度も立ち会いました。「自分の代で潰すわけにはいかない」というお気持ちの奥に、社員への愛情と感謝が滲んでいたと実感させられます。

「会社は社員と取引先からお預かりしているもの」と語ってくださった社長の言葉が、いまも編集部の心に残っています。親族外承継は、その想いを次の世代へ託すご縁の橋渡しではないでしょうか。

手順を急がず3年を見据えて準備すれば、後継者の心が折れることなく走り抜けてもらえます。逆に手順を端折ると、覚悟を持った後継者が初年度に疲弊して離れていく場面も、取材を通じて見てきました。

明日からの一手として、本記事の7ステップと5つの判断軸のうち、まず1つだけ社内メモに書き出していただけたら幸いです。1項目から動き出すことが、承継準備の質を変える小さな一歩になっていくはずです。コントリ編集部一同、創業者の想いが次の世代へ温かく引き継がれますように。

INTERVIEW 経営戦略

戦略を実行する経営者の判断を、
経営者インタビューから学ぶ

コントリでは、中小企業経営者の判断と実践を、ロングインタビューで発信しています。あなたと同じ課題に向き合った経営者の声から、次の一歩のヒントを見つけてください。

  • 現場の経営判断が伝わるロングインタビュー
  • 業種・規模・テーマで絞り込める検索機能
  • 週次で更新される最新事例
経営者インタビューを読む

登録不要・無料で閲覧いただけます

関連記事一覧