中小企業のリファラル採用仕組み化|「頼んで終わり」にしない5ステップ

「紹介制度を設けたのに、誰も紹介してこない」。社員数20〜80名規模の経営者から、コントリ編集部がよく伺うご相談です。

リファラル採用とは、自社の社員に知人や友人の紹介を依頼する採用手法のことです。採用費を抑えながらカルチャーフィットした人材に出会いやすいという特性から、中小企業でも近年活用が広がっています。ところが「インセンティブを設定してアナウンスした」ところで手が止まり、半年後には誰も動いていない会社が多いのが実態です。

仕組み化されていないリファラル採用は、社員の善意にだけ頼る採用チャネルになりがちです。継続して機能させるには、「誰に・いつ・どう紹介依頼をするか」という設計が必要です。候補者を受け入れる選考フローの整備と、四半期ごとに制度を見直すレビューのルーティンも欠かせません。

本記事は、経営者の方への取材で見えてきた失敗パターンと、中小企業が実践できる5ステップを整理しました。インセンティブ設計の落とし穴から継続運用の工夫まで、コントリ編集部の取材知見をもとにご説明します。ご自社の採用課題解決のヒントとしてお役に立てたら幸いです。

INTERVIEW

採用で「紹介が途切れない仕組み」を作りたい。その一歩を、経営者インタビューから。

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リファラル採用とは|中小企業で「頼んで終わり」になる構造と仕組み化の違い

リファラル採用とは、自社の社員が持つ人脈から候補者を紹介してもらう採用手法のことです。求人媒体を介さず採用コストを抑えられ、入社後のミスマッチが起きにくいという特性があります。

中小企業にとっては、採用予算が限られるなかで質の高い人材と出会える手段として、近年あらためて注目が集まっています。紹介する社員がある程度の人物像を把握したうえで推薦するため、カルチャーフィットの確率も高まります。

ただ、リファラル採用は「制度として設計されているかどうか」で機能量が大きく変わります。社員に「いい人いたら紹介して」と伝えるだけの口コミ採用では、紹介が来るかどうかは社員の気分次第です。一方、仕組み化されたリファラル採用は違います。誰が・いつ・どんな人を紹介すべきかが明確になっているため、継続的な採用チャネルとして機能します。

この違いを整理することが、リファラル採用の仕組み化への第一歩。

リファラル採用と「口コミ採用」の違いは制度として設計されているかどうか

リファラル採用と口コミ採用を分ける本質は、制度として設計されているかどうかの一点に集約されます。

口コミ採用とは、社員の自発的な紹介にだけ依存する状態です。紹介が来れば採用プロセスを進めますが、来なければそれまでという受け身の採用チャネルです。エンジニア採用チャンネルのYouTube動画『エンジニアのリファラル採用!! 失敗しないための始め方』では、「制度設計なしの口コミ採用は安定しない」と解説されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=uxx2mUtN3Wo)。

リファラル採用の仕組み化とは、こうした受け身の状態から脱するための設計です。「誰を紹介してほしいか」の基準を明文化し、「いつ・どう依頼するか」のシナリオを作り、「紹介が来たらどう対応するか」のフローを整える。この3点が揃って初めて、リファラル採用は採用チャネルとして機能し始めます。

中小企業では特に、社員全員が経営者と近い距離にいるため、誰に紹介を依頼するかが明確になりやすいという利点があります。制度設計さえ整えれば、大企業より機動的に動ける点は、中小企業の採用における強みのひとつです。

中小企業でリファラル採用が「頼んでも紹介が来ない」まま終わる3つの理由

経営者の方への取材を重ねてきたなかで、「制度を作ったのに紹介が来ない」ケースには共通の3つの理由が見えてきました。

ひとつ目は、「紹介してほしい人物像」が社員に伝わっていないことです。募集要項に書かれたスキル要件を社員に見せても、「この人に声をかけよう」とは結びつきにくいです。社員が自分の言葉で紹介できるレベルまで、求める人材像を具体化する必要があります。

ふたつ目は、紹介依頼を「全体への告知」だけで終わらせていることです。朝礼や社内チャットで「紹介お願いします」と発信しても、個人への具体的な依頼がなければ行動に結びつきません。経営者の方への取材では、「1対1で直接頼まれてから初めて本気で考えた」という声が繰り返し聞かれます。

3つ目は、候補者が来た後の対応が整っていないことです。紹介者は候補者と個人的な関係があるため、候補者への対応が粗いと紹介者自身の信頼を傷つけてしまいます。「せっかく紹介したのに、選考の連絡が来ない」という状態が続けば、次の紹介は期待できません。

仕組み化されたリファラル採用が採用コスト削減と定着率向上につながる構造

リファラル採用の仕組み化がうまく機能している会社では、採用コストの削減と定着率向上の両立が実現しています。

採用コストの観点では、求人媒体への掲載費や人材紹介会社への手数料が不要、またはゼロベースになります。人材紹介会社への報酬は採用者年収の30〜35%が相場とされます。リファラル採用での社内インセンティブはその数分の一で設計できることがほとんどです。

定着率の観点では、紹介者が「自分が推薦した人」として入社後も気にかける関係性が生まれます。成瀬拓也のなるなるカレッジのYouTube動画『リファラル採用とは?お金や制度よりも大切なリファラル採用の運用方法』でも、「紹介した側の社員が新入社員のオンボーディングを自然に手伝う構造ができる」と語られています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=IUt-UQjZg-w)。

厚生労働省の令和5年版 労働経済の分析でも、縁故・紹介経路での採用は求人広告経由に比べて早期離職率が低い傾向が示されています。採用単価と定着率の両面から、中小企業にとってのリターンは大きいと言えます。

中小企業がリファラル採用の仕組み化に失敗する3つのパターン

経営者の方への取材を重ねてきたなかで、リファラル採用の仕組み化が途中で止まった事例には共通する構造がありました。多くは「インセンティブを設定して告知した」ところで止まり、半年後には制度が誰からも意識されなくなっています。

チームビルディングラボのYouTube動画『リファラル採用ミスマッチをなくした成功事例5選』では、「制度設計の失敗は採用ミスマッチより先に、紹介者との信頼毀損というリスクを生む」と指摘されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=QvP10-8qMY8)。3つの典型パターンを把握しておくと、設計段階での見落としを防げます。

パターン1 インセンティブだけ設定して紹介依頼のプロセスを設計しない

最も多く見られるのが、報酬制度だけ整えてプロセス設計を後回しにするパターンです。「採用成立で○万円」という制度を設けてアナウンスしても、それだけでは不十分です。具体的に「誰に・いつ・どう声をかけるか」が決まっていなければ、社員は動きません。

経営者の方への取材では、「制度を作った直後の1ヶ月は少し紹介が来たが、その後ぴたりと止まった」という声を何度も伺いました。制度への新鮮さが薄れると、社員は日常業務のなかでリファラル採用を優先しなくなります。制度は存在しても、行動のトリガーが設計されていない状態です。

対処のポイントは、「紹介依頼のシナリオを先に決める」ことです。たとえば「毎月最終週に、マネージャーが部下3名に個別で声をかける」というルールを事前に設計しておくことで、インセンティブの告知と行動の設計が同時に機能します。

パターン2 候補者の選考プロセスが整備されておらず紹介者の信頼を損なう

2つ目は、候補者が来た後の対応フローが整備されていないパターンです。求人媒体経由の応募者と同じ対応しかしていない会社では、紹介者との関係性を活かせないまま選考を進めてしまいます。

「友人を紹介したのに、1週間連絡が来なかった」「面接後に落ちた理由を何も教えてもらえなかった」という体験が重なると、紹介者のモチベーションは確実に下がります。次の紹介を積極的に行う気持ちが薄れていくのです。チームビルディングラボのYouTube動画でも、「候補者への丁寧な対応が次の紹介につながる最大のドライバー」と言われています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=QvP10-8qMY8)。

特に中小企業では、紹介者と候補者が長年の友人関係である場合が多いです。候補者への対応の粗さが、紹介者の職場内の立場にまで影響しかねません。選考プロセスの整備は、紹介者への信頼の担保と同義と捉えていただけたらと思います。

パターン3 紹介が来たときだけ対応して制度の継続的な運用が止まる

3つ目は、「紹介が来たら対応する」という受け身の姿勢が続き、制度が自然消滅するパターンです。仕組みとして定期的に動かさない限り、リファラル採用は「たまに誰かが思い出して動く」ものになってしまいます。

私自身、編集者として多くの経営者の方々のお話を伺ってきました。「制度を作ってよかったと思えたのは、定期レビューを入れてからだ」と振り返られた社長のお言葉が、印象に残っています。四半期ごとに振り返りミーティングを設けたところ、社員のリファラル意識が持続するようになったとのことでした。「誰が・どの候補者を・いつ紹介したか」を定期確認することが鍵でした。

継続的な運用には、「制度が動いていることを定期的に見える化する」設計が必要です。紹介が来た事実をチームで共有し、成功事例を積み上げていく取り組みが、制度の持続力を高める鍵。

人事評価制度の形骸化対策と同様、採用制度も「設計して終わり」では機能しません。定期的なPDCAを仕組みの一部に組み込む発想が、リファラル採用でも共通して重要です。

中小企業のリファラル採用仕組み化 5ステップ

リファラル採用の仕組み化は、5つのステップを順番に設計することで、誰でも再現できる採用チャネルを作ることができます。経営者の方々との対話と、リファラル採用の実務家の発信を突き合わせて、中小企業が現実的に踏める5ステップを時系列で整理しました。各ステップに「所要期間」「担当の役割」「陥りやすい落とし穴」を添えています。

ふろぐんチャンネルのYouTube動画『3分でわかる!リファラル採用』では、「リファラル採用の本質は採用文化の醸成にある」と解説されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=P6icXBLBFMU)。5ステップは一度に全部進めようとせず、ステップ1から順を追って定着させていくことが、遠回りのようで最も確実な道です。

ステップ1 募集基準の明文化|社員が紹介したい人物像を自分の言葉で説明できる状態にする(1〜2週間)

最初の一手は、「どんな人に来てほしいか」を社員が自分の言葉で説明できる状態に整えることです。

求人票に書かれたスキル要件や業務内容を社員に共有するだけでは不十分です。社員が自分の友人に声をかける場面を想像してみてください。「うちの会社はこういう人を探しているよ」と自然に話せる具体性が必要です。職種・経験年数・スキルに加え、「こんな働き方をしている人」「こんな価値観を持っている人」という人物像の言葉が揃うと、社員は紹介のイメージを持てます。

実務的には、人事・経営者で「紹介してほしい人物像をひとことで言うと?」というブレインストーミングを30分行い、3〜5文の人物紹介文を作ることから始められます。これを社内に共有するだけで、翌週から社員のリファラルへの意識が変わることがあります。

陥りやすい落とし穴は、ポジション名や要件の羅列に留まることです。「営業経験3年以上のMicrosoftOffice使える方」より「前職で新規開拓を担当していて、数字にしっかり向き合える方。チームの雰囲気が合えばとにかく力になりたいというタイプ」の方が、社員は紹介のイメージをつかみやすいです。

ステップ2 紹介依頼タイミングの設計|誰に・いつ・どう頼むかのシナリオを決める(1ヶ月)

ステップ1で人物像が固まったら、次は「誰が・いつ・どの社員に・どう依頼するか」のシナリオを事前に決めます。

全体への告知だけでは行動に結びつかないことは先述しました。1対1での依頼が最初の紹介につながるため、依頼の担当者とタイミングを設計する必要があります。「毎月第1月曜日にマネージャーが自分のチームの社員3名に個別メッセージで依頼する」というルールを決めるだけで、リファラル採用が定期的に動き始めます。

依頼のメッセージは、「今月こういうポジションで採用を急いでいて、○○さんの知人でこんな方がいたら紹介してもらえないか相談させてほしい」という具体的な文体で行うことがポイントです。「いい人がいたら紹介お願い」という漠然とした依頼と、応答率が明確に変わります。

陥りやすい落とし穴は、依頼を「お願い」として伝えるだけで終わることです。断りやすいお願いではなく、「一緒に採用を考えたい」という協力依頼として伝えると、社員のリファラルへの参加意識が変わります。

ステップ3 インセンティブ設計|金銭報酬以外の動機づけを組み合わせて内発的モチベーションを活かす(2週間)

多くの会社が最初に手をつけるインセンティブ設計ですが、報酬額の設定より先に「誰のために紹介するか」という動機の設計が大切です。

成瀬拓也のなるなるカレッジのYouTube動画では、「リファラル採用でモチベーションになるのはお金より、友人のキャリアに貢献できるという充実感」と語られています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=IUt-UQjZg-w)。金銭インセンティブは行動のきっかけになりますが、紹介の動機を維持する力は別のところに宿ります。

金銭インセンティブの設計としては、採用成立時に3〜10万円の範囲が中小企業での実務的な目安です。ただし支払うタイミングを「入社3ヶ月後」などに設定することで、定着を前提とした設計にできます。非金銭的な動機づけも組み合わせることが大切です。「採用できた場合は全社にアナウンスして紹介者を称える」「紹介した候補者の選考状況を逐一報告する」といった取り組みが、制度の継続力を高めます。

陥りやすい落とし穴は、インセンティブ額だけを大きくして採用への動機を歪めることです。報酬目的の不適切な紹介が増えると、かえって採用の質が下がります。

ステップ4 候補者対応フローの整備|紹介者の顔を潰さない選考プロセスを作る(1ヶ月)

候補者が来た後の対応フローを整備しておくことは、リファラル採用の仕組み化において特に重要なステップです。紹介者と候補者は個人的な関係があるため、対応の良し悪しが紹介者の信頼に直結します。

具体的に設計すべき対応フローは4点です。①応募受領から5営業日以内の返答、②選考通過・見送りの結果を紹介者に事前に伝える、③不採用の場合は丁寧な理由説明と感謝を紹介者に行う、④採用が決まった場合は紹介者を明示した全社アナウンス。この4点が揃うと、紹介者の「次も紹介しよう」という気持ちにつながります。

エンジニア採用チャンネルのYouTube動画では、「候補者への対応スピードが、紹介者のリファラルへの再参加意欲を決める」という点が強調されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=uxx2mUtN3Wo)。一般の採用と同じ対応スピードで動くのでは、リファラル採用の特性を活かせません。

陥りやすい落とし穴は、候補者への連絡を人事一人に任せきりにして対応が遅れることです。対応の担当者と期日を明確に定めておくと、スピードを保てます。

ステップ5 継続運用の仕組み|四半期レビューと制度更新ルーティンを定着させる(継続)

5つのステップの最後は、制度を継続的に動かすためのレビュー体制の設計です。

四半期に1回、「誰が・どの候補者を・いつ紹介したか」を振り返るミーティングを設けます。紹介が来なかった月は「なぜ来なかったか」を分析し、「社員が人物像をイメージしにくかったのか」「依頼のタイミングが設計通りに動いたか」「インセンティブの条件が機能していたか」を確認します。

さらに、半年に1回は制度そのものを見直す機会を設けます。採用したポジションが変わったり、インセンティブ額が実態に合わなくなったりすることは当然起こります。制度の更新を仕組みの一部として設計することで、リファラル採用が時代遅れのまま放置されることを防げます。

採用後の定着率を高めるには、人事評価制度の形骸化対策と合わせて人事サイクル全体を設計することもおすすめです。採用から評価・定着まで一貫した仕組みを整えることで、組織として再現性のある人材マネジメントが実現します。

SERVICE 採用力を仕組みで高める

リファラル採用は、
制度づくりより先に、経営者の言語化から始まる。

コントリは、経営者インタビューを重ねてきた知見をもとに、中小企業の採用・組織課題に向き合います。リファラル採用の仕組みを社内に根づかせるための第一歩を、一緒に考えさせてください。

インセンティブ設計|「お金だけ」設計が失敗する理由と中小企業に合った報酬の組み立て方

リファラル採用で最初に手をつけがちなのが報酬の設定ですが、金銭インセンティブを中心に据えた設計は中長期的に機能しにくい傾向があります。

コントリ編集部が経営者の方々との対話から見えてきた、社員が「紹介したい」と感じる動機の構造と、中小企業に合った報酬設計の考え方をお伝えします。

成瀬拓也のなるなるカレッジのYouTube動画『リファラル採用とは?お金や制度よりも大切なリファラル採用の運用方法』は、タイトルが示す通り「お金より先に運用文化が大事」という視点を丁寧に説明しています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=IUt-UQjZg-w)。インセンティブ設計の前に読んでおきたい視点です。

金銭インセンティブだけでは「良い人を紹介したい」という動機は生まれない理由

金銭インセンティブは行動の初発に機能しますが、「良い友人を紹介してあげたい」という心からの動機とは異なる動きを生みます。

報酬目的で紹介が増えた場合、候補者の質が下がるリスクがあります。「とりあえず知り合いを紹介する」という行動は、採用ミスマッチにつながりやすいです。また、「友人を報酬の手段に使う」ことへの心理的抵抗が強い社員ほど、金銭インセンティブは機能しません。価値観の合った、本当に一緒に働いてほしい人を紹介したいと思っている社員こそ、良い候補者を連れてきます。

経営者の方への取材を重ねてきたなかで、「採用が決まった社員を全社でお祝いした日、翌週に2件紹介が来た」という事例を伺いました。報酬を知らせる通知より、「あなたの職場はいい場所だ」と社員が感じる体験の方が、次の紹介に結びつきやすいのです。

社員が紹介したいと思う3つの内発的動機をどう制度設計に組み込むか

社員がリファラル採用に積極的に動く内発的動機は、大きく3つに整理できます。

ひとつ目は「友人のキャリアに貢献できる」という充実感です。単なる口コミではなく、自分が友人のキャリアパスを開く行動として捉えられると、紹介への主体性が生まれます。これを活かすには、「候補者が入社後も成長できる環境か」を社員が信じられるような社内コミュニケーションが先に必要です。

ふたつ目は「自分の職場を自慢できる」という誇りです。社員が「ここで働いていることを友人に話せる」と感じている組織では、自然に紹介が生まれます。採用力は、職場の満足度とほぼ比例します。リファラル採用が来ない会社は、まず社員の職場満足度を確認することが先決です。

3つ目は「採用に関わることへの貢献感」です。採用に自分が貢献しているという感覚は、中小企業の社員にとって大きなモチベーションになります。採用成立時に「○○さんの紹介から採用できた」と全社アナウンスすることは、貢献感を制度で担保する方法です。

中小企業に合った報酬額の目安と支払いタイミングの実務設計

金銭インセンティブを設定する場合の実務的な目安をお伝えします。

採用成立時の謝礼金は、一般的に3万円〜10万円の範囲が中小企業での多い設定です。ポジションのグレードや採用難易度によって変動させることも可能です。人材紹介会社の手数料が年収の30〜35%とされることと比べれば、10万円以下の設定でも採用コストとしては大幅に安くなります。

支払いタイミングは「入社3ヶ月後」または「試用期間終了後」に設定することで、定着を前提とした制度設計にできます。入社直後に全額支払うと、早期退職した場合に制度の目的と乖離が生じるため、注意が必要です。

また法務面では、採用成立の謝礼金は職業安定法上の有料職業紹介にあたる可能性があるため、「就業規則に定める社員貢献への報奨金」として設計・明記することが必要です。社労士や弁護士に事前確認しておくことをおすすめします。

リファラル採用を継続させる運用の工夫|仕組みが「絵に描いた餅」にならない3つの条件

制度を作っただけでは、リファラル採用は長続きしません。経営者の方への取材を重ねてきたなかで、制度が定着した会社と形骸化した会社の差は「運用の設計」にありました。

ブランドジャーナルのYouTube動画では、「採用を仕組み化するとは、社員全員が採用担当者の感覚を持つことだ」という言葉が紹介されています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=htOzEEK2Lb8)。その視点をもとに、継続運用の3つの条件を整理します。

これらは特別な仕組みを導入しなくても実践できる工夫です。小さな運用習慣の積み重ねが、リファラル採用を採用チャネルとして定着させていきます。

紹介状況を全社で見える化して「会社として動いている感」を持続させる

リファラル採用が動いている感覚を全社で共有することが、継続のための第一条件です。

具体的には、月に1回程度「今月の紹介状況」を社内チャットやミーティングで共有します。「今月は○名の候補者を紹介いただき、うち○名が選考中です」という簡単な数字の共有でも、「会社として動いている」という感覚が生まれます。紹介した社員の名前を出す場合は本人に確認してから行うのがマナーです。

紹介が来なかった月も「今月は0件でした。来月は○○さんと△△さんに声をかける予定です」と記録することで、沈黙の期間を設けないことが大切です。リファラル採用は見えなくなった瞬間に忘れられます。

紹介者へのフィードバックを選考プロセス全体で継続して信頼を守る

紹介した社員(紹介者)へのフィードバックを、選考の節目ごとに行うことが継続運用の2つ目の条件です。

候補者を紹介した社員は、自分が推薦した人がどう扱われているかを気にしています。面接の結果を何週間も伝えない、最終的に不採用になっても理由の説明がない、という対応が続くと、「紹介してよかった」という感覚が薄れ、次の紹介に消極的になります。

サンキャリアチャンネルのYouTube対談では、「リファラル採用の失敗は選考対応の粗さから起きる」という現場の声が語られています(出典: https://www.youtube.com/watch?v=YP-2tQ8bVdU)。選考の1次・2次・最終という節目で、紹介者に「現在の状況と次のステップ」を短くでも伝えることが、信頼の維持につながります。

不採用の場合は特に重要です。「○○さんのご紹介、本当にありがとうございました。今回は○○の点でご縁がなかったのですが、ご配慮に心から感謝しています」という丁寧なフィードバックが、次の紹介への橋渡しになります。

四半期ごとのレビューで「なぜ紹介が来なかったか」を分析して制度を改善する

四半期に1回、リファラル採用の振り返りミーティングを設けることが、制度を生き続けさせる3つ目の条件です。

振り返る項目は5点。①この3ヶ月で何件の紹介があったか、②紹介者は何名いたか、③候補者の質(スキル・カルチャーフィット)はどうだったか、④採用成立した場合の入社後の状況はどうか、⑤来なかった場合はどのステップが機能しなかったか。

レビューで「紹介が来なかった原因」を分析するときは、「社員が人物像をイメージできていたか」「依頼のタイミングが設計通りに動いたか」「候補者対応フローが機能していたか」の3つの観点で診断します。原因が特定できれば、次の四半期に向けた制度の改善点が明確になります。

制度は作ったままにするのではなく、使いながら育てるものです。そのためのレビューを仕組みの一部として設計することが、リファラル採用を長く機能させる鍵。

リファラル採用の仕組み化 中小企業の実務でよくある質問

経営者の方々からよくいただく5つの質問にお答えします。社員への周知方法・小規模での始め方・紹介が来ない時の対処・他の採用手法との使い分け・法的注意点、この5テーマです。

リファラル採用の仕組み化を進める経営者の方から、「どこから始めればよいか」「うまくいかない原因は何か」という相談が増えています。コントリ編集部が経営者の方への取材を重ねてきたなかでよく見えてくる疑問に、現場に沿った言葉でお伝えします。中小企業の50人の壁対策も採用課題と密接に関連していますので、採用の仕組み化と並行してご参照ください。

Q 社員への制度周知はどのタイミングでどう行えばよいですか

制度の説明よりも「こんな人に来てほしい」という採用基準の共有から始めることをおすすめします。

全社ミーティングや月次の朝礼で「今こういう人を探している」と具体的に伝えることが、制度の文書を配布するより社員の記憶に残ります。その後、制度の詳細(報酬・選考フロー・紹介の申込方法)を1枚のシートにまとめてチャットでシェアするのが実務的な流れです。

周知のタイミングとしては、採用ポジションが生まれたタイミングと、新年度などの節目を合わせるのが自然です。「今年もリファラル採用に協力お願いします」という告知だけでなく、「この部署で○月までに1名採用したい」という具体性を加えると、社員が動くイメージをつかみやすくなります。

Q 社員10名以下の小規模でもリファラル採用の仕組み化は有効ですか

有効です。むしろ小規模だからこそリファラルが機能しやすい側面があります。

社員全員が経営者の考えを理解しやすく、紹介者・候補者・経営者の距離が近いため、信頼関係に基づいた採用が実現しやすいです。制度設計はシンプルで構いません。「紹介したい人物像の明文化」と「紹介時の連絡先(経営者直通)」だけでも仕組みとして機能します。

小規模の場合は特に、採用基準を口頭で共有しやすいため、社員ひとりひとりに「どんな人を探しているか」を経営者が直接伝える機会を設けるだけでも、十分なスタートになります。

Q リファラル採用の制度を作ったのに紹介が来ない場合はどうすればよいですか

まず「社員が紹介したい人物像をイメージできているか」を確認してください。

募集基準が曖昧なまま制度だけ整えても、社員は誰を紹介すればよいかわかりません。次に「紹介してほしい」という依頼を経営者や人事が個別に社員へ伝えているかを確認します。多くの場合、全体への告知だけでは行動に結びつかず、1対1の依頼が最初の紹介につながります。

それでも紹介が来ない場合は、社員の職場満足度に目を向けることも大切です。「ここで働いていることを友人に話せない」と感じている社員が多い場合、リファラル採用の前に職場環境の改善が必要になってきます。採用力は職場の魅力と比例する、というのはリファラル採用の本質でもあります。

Q 求人広告や人材紹介と並行して運用する場合の使い分けのポイントは

急いで人数を確保したいポジションは求人広告や人材紹介を活用し、リファラルは「カルチャーフィットが特に重要なポジション」や「長期的に一緒に働いてほしいコアメンバー候補」に絞って活用するのが効果的です。

リファラルで採用した人材は定着率が高い傾向があるため、会社の核となるポジションの採用チャネルとして位置づけると、採用チャネル全体の設計がしやすくなります。人材紹介で確保した短期人材と、リファラルで迎えた長期人材を組み合わせるという考え方も、経営者の方への取材で見えてきた実践的な発想のひとつです。

Q リファラル採用で採用した場合に法的に注意すべき点はありますか

紹介した社員への謝礼金(インセンティブ)は、有料職業紹介事業の許可なく「紹介報酬」として支払うと、職業安定法違反になるリスクがあります。

実務的には「採用成立への貢献に対する報奨金」として就業規則に定め、給与明細に明記する形で支払うことが適切です。「職業安定法上の職業紹介に該当しない、社内の表彰・報奨制度」として設計するのが一般的なアプローチとなります。

制度設計の段階で社労士や弁護士に確認しておくと安心です。特に報酬額が高額になる場合や、社外の知人・友人の紹介に限らず取引先やOBからの紹介も対象とする場合は、法的な整理を先に行うことをおすすめします。

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リファラル採用は、「社員の善意に頼る採用」から「継続して機能する採用チャネル」へと変えることができます。そのためには制度の宣言だけでなく、誰が・いつ・どう動くかのプロセス設計と、紹介者を大切にする選考フロー、そして定期的な見直しが欠かせません。

コントリ編集部が経営者の方々のお話を伺ってきたなかで、採用がうまくいっている会社には共通して「採用は全員で取り組むもの」という文化がありました。リファラル採用の仕組み化は、そうした文化を育てる最初の一手。コントリが大切にする「ご縁と経営者の言語化」という視点から見れば、リファラル採用とは経営者が自社の言葉で人材像を語り、人と人のご縁を意図的にデザインする営みでもあります。本記事が、ご自社の採用の仕組み作りに少しでもお役に立てたら幸いです。

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