
事業承継における税理士の役割|後継者が税負担を抑えて会社を継ぐ3つの判断軸
事業承継を考え始めた経営者の多くが、最初に相談する相手として思い浮かべるのが税理士です。
結論から言うと、事業承継における税理士の役割は「税額計算」だけでは終わりません。自社株評価・事業承継税制の要件管理・後継者の資金繰りまで、承継の前後をまたぐ数字の全体を支える仕事です。
本記事では、税理士が担う3つの領域、相談すべきタイミング、顧問税理士との役割分担、報酬相場、選定の判断軸、税理士では解決できない領域までを、経営者が意思決定に使える粒度で整理します。中小企業の承継支援に携わる税理士は数多くいますが、どの相手に、何を、どの順で頼むか——その判断軸をお持ち帰りいただけたら嬉しく思います。
事業承継で税理士が担う役割とは|税額計算だけでは終わらない3つの領域
事業承継における税理士の仕事は、相続税・贈与税の試算、自社株評価、事業承継税制の要件管理という3つの領域をまたぎます。承継前の対策から承継後の長期管理までが仕事の射程であり、承継のゴールが「代表交代」ではなく「次世代の経営体制の安定」であるためです。
税理士に何を頼めるかを整理すると、頼る相手と頼らない領域の線引きが見えてきます。
- 業務
- 株価算定・税額試算
- 頻度
- 承継3〜5年前から随時
- 成果物
- 株価評価書・税額試算表
- 業務
- 特例承継計画作成・適用申請・年次管理
- 頻度
- 適用後5年は年次、以降は3年ごと
- 成果物
- 認定申請書・継続届出書
- 業務
- 株式買取資金の調達設計・個人保証の整理
- 頻度
- 承継前後の集中期+以降の月次顧問
- 成果物
- 資金調達計画・財務シミュレーション
自社株評価と相続税・贈与税の試算
事業承継の論点の中心にあるのが自社株の評価です。非上場株式の評価は、原則として類似業種比準方式・純資産価額方式・両者の併用方式のいずれかで算定されます。評価方式は会社規模(大会社・中会社・小会社)で決まり、同じ会社でも評価額には数倍の差が出ます。
税理士は決算書と株主構成をもとに現状の評価額を算出し、承継時にかかる相続税・贈与税を試算します。試算そのものは数値計算ですが、評価額を下げる余地があるかどうかを見立てられるかで、その後の打ち手の数が変わってきます。
事業承継税制の適用要件を満たす書類設計
事業承継税制とは、非上場株式を後継者が引き継いだときに、相続税・贈与税の納税猶予を受けられる制度です。特例措置では猶予割合が100%になるため、適用できれば税負担を実質ゼロにできます。
一方で適用後は雇用維持要件、代表者要件、取消事由の継続管理が長期に及びます。要件を外すと猶予税額が利子税とともに一括で課されるため、適用の判断と年次管理の両方を税理士が設計する流れです。制度の活用判断は、適用後5年の年次報告と、以降3年ごとの継続届出まで引き受けられる相手に頼むのが安全です。
後継者の資金繰りと会社の財務体質の両立
承継時に見落とされがちなのが、後継者個人の資金繰りです。株式を買い取る場合の資金調達、役員借入金の処理、個人保証の付け替え——これらは経営者の相続財産と会社の財務の両方に跨る論点です。
税理士は、会社の決算書と経営者の個人資産を同時に見られる数少ない専門家です。承継後に後継者が借入返済で消耗しないよう、株式移転のスキームと資金調達計画をセットで組める相手がいると、承継後の経営が軽くなる構造です。
事業承継・M&Aの現場で税理士がどう関わるかを、M&A仲介会社の実務者が自身のチャンネルで整理しています(M&Aコンサル経験者による士業の役割分担解説)。相談の入り口が税理士である案件が多い一方、株価算定と組織再編は専門性の濃淡で結果が変わるという指摘は、コントリ編集部が経営者インタビューで繰り返し伺ってきた声とも重なります。
税理士に相談するタイミング|承継5年前の判断で税負担が大きく変わる
事業承継の相談は、代表交代の直前では遅すぎる場面が少なくありません。株価を下げる対策、特例事業承継税制の計画提出期限、後継者の経営参加実績——相談時期で選べる手段が変わるためです。
承継の構想段階から税理士を関与させることで、取れる打ち手が広がります。
| 相談時期 | 選べる主な打ち手 | 限界 |
|---|---|---|
| 承継5年以上前 | 株価対策(役員退職金・不動産購入・組織再編)/特例承継計画の提出/後継者の役員就任 | 特になし。打ち手の自由度は最大 |
| 承継2〜4年前 | 贈与税の暦年課税・相続時精算課税の選択/事業承継税制の贈与申請/後継者の経営参加実績づくり | 株価の大幅な引き下げは間に合わない場面も |
| 承継1年前 | 相続時精算課税の活用/遺言書の整備/金融機関への事前相談 | 株価対策はほぼ打てない。承継税制の贈与も次年度扱いになる |
| 承継直前・相続発生後 | 相続税の申告(10か月以内)/事業承継税制の相続申請(相続発生から8か月以内) | 対策はほぼ事後処理。節税の余地は限定的 |
株価対策を打てるのは承継3〜5年前まで
類似業種比準方式を使う会社では、株価は直近3期の利益・配当・簿価純資産から計算されます。利益を圧縮する対策(役員退職金の支払い、設備投資による減価償却費の計上など)は、効果が株価に反映されるまでに最低3年を要します。
承継前の利益を無理に落とす必要はありませんが、「いつ渡すか」から逆算して、どの年度から対策を仕込むかを設計できるのが、経験のある税理士の価値です。
特例事業承継税制の特例承継計画は提出期限に注意
事業承継税制の特例措置は、特例承継計画を所定期限までに都道府県知事に提出することが前提です。この提出期限は過去に延長が繰り返されてきた経緯があり、特例措置そのものの適用期限(贈与・相続の実行期限)とあわせて、現時点では令和9年度税制改正の動向を含めて最新情報の確認が欠かせません。
計画書の提出自体は税理士が代行することが多く、提出していないと特例措置は使えません。顧問税理士に承継の意向を伝えていない場合、提出されていない可能性があるため、まずは状況確認から始めるのが現実的です。
事業承継税制の仕組みと期限は、税理士系YouTubeチャンネルでも詳しく解説されています(新事業承継税制の特例措置の解説/贈与税・相続税をゼロにできる仕組みと納税猶予)。制度の全体像は上記で押さえ、自社に適用できるかの判断は税理士に委ねる、という使い分けが現実的です。
代表交代の直前にできる手当ては限られる
承継の相談が代表交代の直前になると、取れる手は相続時精算課税の活用、遺言書の整備、金融機関への事前相談に絞られます。株価は固まり、承継税制の贈与申請は次年度に回り、節税の余地は限定的です。
直前相談の経営者の多くが、「もっと早く相談すべきだった」と口を揃えます。承継の時期がまだ決まっていなくても、構想段階で税理士に声をかけておくと、打ち手の自由度を保てます。
顧問税理士では足りないと感じたら|事業承継専門の税理士に相談すべき判断軸
長年の顧問税理士に承継を相談したら「うちでは難しい」と言われた——経営者インタビューで繰り返し伺ってきた声です。月次顧問の延長で扱える領域と、事業承継専門の知見が必要な領域は、求められる経験値が別物です。
顧問を替える必要はありません。段階ごとに専門家を加える発想で考えると、関係を壊さずに承継を進められます。
顧問税理士が得意なのは「毎月の数字を整える」こと
顧問税理士の中心業務は、月次試算表の作成、年次決算、税務申告、節税アドバイスです。会社の数字を日常的に見ているからこそ、資金繰りや消費税対応で相談しやすい相手です。
一方、株価の引き下げ対策や事業承継税制の適用判断は、年に何件扱うかで提案の質が変わる領域です。顧問税理士が月に数件も扱うタイプの業務ではないため、「できなくはないが、専門の相手ほどには対応しきれない」という回答になりやすいのが実情です。
株価評価・組織再編は年間数件扱う税理士でないと勘所が鈍る
自社株の評価方式の選択、持株会社化、株式交換・株式移転——このあたりの組織再編は、顧問税理士の中では「数年に一度扱うかどうか」の業務です。制度の改正頻度も高く、常に最新実務を追えていないと、過去の経験で判断してしまって最適解を逃すリスクが残ります。
事業承継・M&Aの支援を年間10件以上扱っている税理士であれば、他社事例から逆算した提案が出てきます。相談の初回で「御社の規模なら、まず類似業種比準か純資産方式かの判定から入りましょう」と筋道が出てくるかが、経験値を測るひとつの目安です。
顧問を替えずに専門税理士を併走させる選択肢
顧問税理士との関係を壊さずに承継を進める実務的な方法が、専門税理士の併走です。承継の局面だけスポットで依頼し、承継完了後は顧問税理士に戻します。
承継税制の適用後は年次報告が続きますが、年次報告は顧問税理士に引き継ぐ運用も可能です。初期の設計を専門税理士が、継続管理を顧問税理士が担当する分業は、コストと継続性のバランスを取りやすい選択肢です。
税理士業界内でも事業承継の経験値には差があるという指摘が、業界関係者の口から出ることがあります(税理士事務所の事業承継問題)。会計士・税理士が自分たちの事務所の承継にも手を焼く現実が語られており、承継支援の経験値は看板よりも実案件数で測るほうが実態に近いと言えます。
事業承継税制と税理士の関わり方|特例措置の要件管理は税理士の仕事になる
事業承継税制の特例措置は、相続税・贈与税の納税猶予を100%受けられる強力な制度です。一方で適用後は雇用維持要件、代表者要件、取消事由の管理が長期に及びます。要件を外すと猶予税額が利子税とともに一括で課されるため、適用後の管理こそ税理士の継続的な関与が欠かせません。
特例措置と一般措置で異なる要件のポイント
事業承継税制には特例措置と一般措置があり、猶予の範囲と対象株式数は別です。特例措置は全株式が対象で、相続税・贈与税ともに猶予割合は100%です。一般措置は発行済株式の3分の2が上限で、相続税の猶予割合は80%にとどまります。
特例措置を使うには特例承継計画の提出が前提ですが、計画さえ出せば必ず特例が適用されるわけではありません。承継後の雇用維持要件(特例では未達でも報告書提出で猶予継続)や代表者要件を満たし続ける前提での猶予です。
適用後5年間は年次報告、以後も3年ごとの継続届出が必要
事業承継税制の適用後は、都道府県知事への年次報告(最初の5年間)と、税務署への継続届出(6年目以降は3年ごと)が続きます。これを失念すると猶予が取り消される局面があるため、顧問税理士との継続契約で管理するのが現実的です。
承継税制を使う経営者の中には、「適用後の管理を甘く見ていた」という声が多くあります。制度のメリットだけでなく、長期の管理負荷も含めて適用判断するのが安全です。
要件を外した際に猶予が取り消される具体的な局面
猶予が取り消される主な局面は、以下の3つです。
- 後継者が5年以内に代表を退任する
- 会社が解散・倒産・事業停止になる
- 一定期間内に猶予対象株式を譲渡する
承継税制のデメリットについては、同じサイトの別記事「事業承継税制のデメリット|中小企業が知るべき5つの落とし穴と回避策」でも触れています。制度を使うべきか迷っている段階の方は、適用判断の前に併せて確認してみてください。
税理士報酬の相場|事業承継支援にかかる費用の目安と内訳
事業承継の税理士費用は、月額顧問とは別建てになるのが一般的です。株価評価・税制適用申請・組織再編といった個別業務ごとに見積もりが出るため、全体像を掴みにくい領域でもあります。
費用レンジと報酬が決まる構造を知っておけば、見積もりの比較判断がしやすくなります。
株価評価の報酬は会社規模と評価方式で決まる
非上場株式の評価は、評価方式・会社規模・関係会社の有無で工数が大きく変わります。相場感としては、小規模会社で20万円から50万円程度、中規模で50万円から150万円程度、持株会社や関係会社が複雑に絡む構造では200万円以上という水準です。
金額そのものより、どの前提で見積もられているかの確認が重要です。類似業種比準方式のみでの試算か、純資産価額方式も併算するか、評価引き下げ提案まで含めるかで、工数は数倍の差が出ます。
事業承継税制の申請支援は申請時と年次管理で費用が分かれる
事業承継税制の申請支援は、特例承継計画の作成・提出、認定申請、税務署提出書類の作成までを含めて、30万円から100万円程度が目安です。承継対象の会社数や後継者数で変動します。
申請後は年次報告・継続届出の管理料として、年10万円から30万円程度の継続契約が一般的です。顧問税理士と承継支援税理士で分担する場合、継続管理を顧問側に戻すことでコストを抑える選択肢もあります。
成功報酬型と時間制の違い、どちらを選ぶべきか
M&Aや組織再編を伴う承継では、成功報酬型の費用体系も見かけます。レーマン方式(譲渡額に応じた段階料率)が中心ですが、同じ業務でもファームによって料率が違います。
一般的な承継の設計・申請支援であれば、時間制または固定報酬型のほうが総額の予測を立てやすい傾向にあります。成功報酬型は、M&Aのように譲渡の有無・譲渡額が結果として大きく動く案件で選択される費用体系です。
税理士を選ぶ3つの判断軸|実績・提案力・多職種連携
事業承継の税理士選びで経営者が後悔するパターンには共通点が見えます。「紹介されたから」「料金が安かったから」で決めると、承継の途中で手当てしきれない論点に当たって頓挫します。
選定段階で確認すべき3つの軸を押さえておけば、ミスマッチの確率を下げられます。
過去3年の事業承継支援は年間で何件ほどですか。自社と近い業種・規模の案件はありましたか。
「多数対応しています」など曖昧な回答。具体件数が出てこない。
年間案件数と直近の近い業種事例を具体的に説明できる。
現状の決算書を見てもらった上で、株価の見込みと取れそうな対策を1つ挙げてもらえますか。
質問に答えるだけで具体提案が出ない。「個別に判断します」で止まる。
「御社の規模なら類似業種比準方式で、〇〇の対策が候補です」と筋道が出てくる。
遺留分・組織再編・融資の局面で、どの専門家と組んで動かれますか。紹介できる方はいますか。
「他の専門家は自分で探してください」。連携実績が語れない。
顧問先の紹介経験を具体的に話せる。連携先を自前で持っている。
判断軸1:承継支援の実績件数と業種の近さ
初回面談で、過去3年の事業承継支援実績件数と、自社と近い業種・規模の案件があったかを尋ねます。「数十件は対応しています」といった曖昧な回答ではなく、年間の目安件数と、直近の具体例が出てくるかを確認します。
守秘義務に配慮しつつも、「〇〇業の年商〇億円規模の会社で、〇〇の対策を使った」程度までは話せるのが通常です。業種の近さは、売上の計上タイミング、在庫評価の癖、業界特有の資産構成を理解してもらえるかに直結します。
判断軸2:株価対策の提案を自分から出してくれるか
初回面談から2回目にかけて、「現状の株価はこのくらいで、こういう対策を打つと〇%程度の引き下げが見込めます」といった具体提案が出てくるかが分かれ目です。質問に答えるだけで提案が出てこない相手は、承継の設計を主導してもらえない相手である可能性が高いと言えます。
税理士によって得意領域は分かれます。株価算定が得意な税理士、組織再編が得意な税理士、M&Aを含む第三者承継が得意な税理士——自社の承継方針に合った相手を選ぶ発想が必要です。
判断軸3:弁護士・司法書士・金融機関との連携体制があるか
事業承継は税理士単独では完結しません。遺留分対策・種類株の設計で弁護士が、登記変更・組織再編で司法書士が、融資・保証解除で金融機関が関わります。
連携先の専門家を自前で持っているか、または必要に応じて紹介できるネットワークがあるかを初回面談で確認します。「他の専門家は自分で探してもらうことになります」という回答の場合、承継の実務負荷が経営者側に重くのしかかる構図です。
税理士では解決できない領域|M&A・弁護士業務との役割分担
事業承継の相談先として税理士は中心的な存在ですが、全ての論点を税理士だけで扱えるわけではありません。M&Aによる第三者承継、株式の遺留分対策、組織再編の法務設計などは、それぞれ別の専門家の領域です。
税理士が苦手とする領域を把握しておけば、必要な専門家を主体的に揃えられます。
M&A仲介・FA業務は税理士の独占業務ではない
M&Aによる第三者承継を検討する場合、M&A仲介会社・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)・M&Aに強い税理士、いずれにも相談できます。税理士は税務の視点からの助言が得意ですが、譲渡先の発掘や交渉代行は税理士の独占業務ではなく、各領域の経験値が物を言う世界です。
税理士に相談するなら、M&A実行支援の実績件数を確認します。実績が少ない場合、仲介会社・FAと組み合わせて進めるのが現実的です。親族内承継を狙いながらM&Aも並走させる場合、両方の支援に慣れた税理士を軸に据えると、承継方針の切替が機動的に進みます。
遺留分侵害や種類株の設計は弁護士の領域
後継者に自社株を集中させる場合、他の相続人の遺留分(最低限相続できる取り分)を侵害する局面が出てきます。遺留分の侵害額請求に備える対策、遺留分に関する民法特例の活用、株式に議決権制限を付ける種類株の設計——これらは弁護士の領域です。
税理士は税額計算と評価は担えますが、権利関係の設計は守備範囲ではありません。「種類株を使えますか」という相談に即答できる税理士は、弁護士との連携実績があることが多く、連携体制の目安として使えます。
登記変更・組織再編の実行は司法書士との連携が必須
承継に伴う役員変更、株式移転、株式交換、組織再編の登記は司法書士が担います。税理士が設計した組織再編を、司法書士が登記で実行する形です。
司法書士との連携経験がない税理士に組織再編を任せると、登記実行の段階で手戻りが発生します。連携先を自前で持っているか、顧問先の紹介経験が豊富かが、スムーズな実行の分かれ目です。
よくある質問
顧問税理士に頼むか専門税理士に頼むか迷ったら
まず顧問税理士に承継の意向を伝え、どこまで対応可能かを聞いてみてください。「ここまでは対応できる、ここから先は専門の先生を」と線引きしてくれる顧問であれば、専門税理士をスポットで加える併走型が組みやすい相手です。
線引きが曖昧なまま進めると、承継の途中で止まるリスクが残ります。顧問を替えずに専門税理士を併走させる運用は、関係を壊さずに専門性を補える現実的な選択肢です。
親族内承継と第三者承継(M&A)で、税理士に頼む内容は変わりますか
はい、変わります。親族内承継では株価対策・贈与税/相続税・事業承継税制が中心です。第三者承継では株式譲渡所得税、譲渡価額の妥当性検証、デューデリジェンスへの財務情報開示支援が中心になります。
承継方針が定まる前に税理士を関与させ、両方の選択肢を比較できる体制を作ると判断が揺れにくくなります。親族内で後継者候補がいても、途中で第三者承継に切り替わる例は少なくありません。両パターンに対応できる税理士を選んでおくと、方針転換のたびに専門家を探し直す手間が省ける構造です。
事業承継の相談から完了まで、どのくらいの期間を見ておけばいいですか
株価を下げる対策から始める場合は、3〜5年を見ておくのが一般的です。特例事業承継税制を使う場合は、特例承継計画の提出から贈与実行までで最短1年、相続による適用では相続発生後8か月以内に申告が必要です。
承継の実行時期が決まっていなくても、構想段階で税理士に相談しておくと取れる打ち手が広がります。「まだ早いかな」と感じる時期こそが、相談のベストタイミングです。
税理士の変更を検討していますが、顧問を替えると承継が遅れますか
直近の決算期を跨がないタイミングで切り替えれば、承継スケジュールへの影響は限定的です。切替時に必要なのは、過去3〜5期分の決算書・税務申告書・固定資産台帳・株主名簿の引き継ぎと、進行中の論点(繰越欠損金・特別償却・税額控除など)の情報共有です。
ただし承継税制の年次報告が進行中の場合、切替タイミングによっては報告漏れのリスクが残ります。承継税制適用中の切替は、新旧の税理士で引き継ぎ内容を文書化し、双方合意のうえで実施するのが安全です。
事業承継の相談だけで費用はかかりますか
初回面談は無料とするファーム・税理士が多数派です。2回目以降、現状診断や試算に入る段階で見積もりが出るのが一般的です。
無料面談だからといって提案の質が落ちるわけではなく、初回面談で税理士の経験値・提案姿勢・自社との相性を見極められます。相見積もりは2〜3人の税理士に依頼するのが現実的な範囲で、見積額だけでなく、提案内容の具体性で比較してください。
編集部コメント
経営者インタビューを続けるなかで印象に残ったのは、承継を終えた経営者ほど「もっと早く税理士に相談しておけば、取れる選択肢がもっと多かった」と口にする頻度の高さでした。
事業承継は税理士の技術で解決する領域と、経営者の意思で決める領域が折り重なった仕事です。株価を下げるタイミング、承継税制を使うかどうか、顧問を替えるかどうか——いずれも最後に決めるのは経営者です。税理士はその判断を支える存在であって、判断を代替する存在ではないからこそ、「どの税理士と組むか」が承継の質を左右します。
承継の構想を持ち始めた段階で、まずは今の顧問税理士に意向を伝えてみてください。そこから見えてくる「頼める範囲」と「頼めない範囲」が、専門家をどう加えるかの判断軸になります。

