
経営者インタビュー118社を数えたら、30県がゼロだった|所在地・設立年・従業員数の全分布
コントリは経営者インタビューメディアとして、これまで118社の記事を公開してきました。1社ずつ取材してきたので、全体がどうなっているかは考えたことがありませんでした。そこで、掲載記事の会社概要欄から所在地・設立年・従業員数を機械的に抜き出し、118社分をすべて数えてみました。
結果は、正直に言えば反省材料でした。掲載企業がある都道府県は17。47都道府県のうち30県には、まだ1社も取材できていません。東京都だけで58%を占めています。
一方で、数えてみて初めて見えたこともありました。従業員数の上位3社のうち2社が地方の企業で、しかも設立から6年前後の会社だったことです。集計結果を、母数と限界を明示したうえで全部公開します。
要点(先に結論)
(30県はゼロ)
(102社中59社)
(社齢およそ10年)
(平均は81人)
集計の方法と、項目ごとの母数
コントリの記事には末尾に「会社概要」の表があり、設立・所在地・従業員数などが載っています。この表を機械的に読み取りました。ただし、すべての記事に全項目が入っているわけではありません。個人で活動されている方の記事には会社概要がなく、法人でも従業員数を空欄にしている記事があります。
項目別の集計対象社数
| 項目 | 集計できた社数 | 記載なし | 備考 |
|---|---|---|---|
| 設立年 | 104社 | 14社 | 和暦表記は西暦に換算 |
| 所在地(都道府県) | 102社 | 16社 | 市区名のみの記載は都道府県を補完 |
| 従業員数 | 82社 | 36社 | 最も記載率が低い項目 |
母数が118に満たないのは、記載のない企業を推測で埋めていないからです。従業員数は118社中82社(70%)にしか記載がなく、この項目の数字が最も不確かです。
所在地:17都道府県、30県はゼロ
最も偏りが大きかったのが所在地です。所在地が判明した102社の内訳は次のとおりです。
各2社は大阪府・北海道・茨城県・埼玉県・滋賀県・群馬県、各1社は兵庫県・山形県・岡山県・愛媛県・高知県・山口県です。
まだ1社も取材できていない30県
青森、岩手、宮城、秋田、福島、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、京都、奈良、和歌山、鳥取、島根、広島、徳島、香川、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。東北6県のうち5県、九州7県すべてがゼロです。
関東1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)だけで74社、判明分の73%を占めます。コントリは原則として経営者のもとへ訪問して取材する方針をとっているため、移動距離がそのまま掲載企業の分布になっている、というのが実態です。
設立年:中央値は2016年、3社に2社が2011年以降
設立年が判明した104社の分布です。中央値は2016年、社齢にすると、およそ10年の企業が真ん中に来ます。
2011年以降に設立された企業が70社で、全体の67%を占めます。創業から日が浅い会社の経営者ほど、自社を語る機会を求めているのかもしれません。取材応募のきっかけを考えるうえで、この偏りは覚えておく必要があります。
最古は1951年、最新は2025年
最も古いのは北星鉛筆株式会社(1951年設立・東京都)です。1950年代設立が3社、1960年代が2社あり、いずれも製造業でした。ツツミ産業株式会社(1965年・神奈川県)、植木鋼材株式会社(1962年・栃木県)が続きます。
最新は2025年設立の4社です。NPO法人JOY GIFTのように、活動歴は長いが法人化が最近という団体も含まれています。設立年は「法人の設立年」であり、事業の開始年とは限りません。この点は後述する集計の限界にも関わります。
従業員数:中央値21人、平均81人
従業員数が判明した82社の分布です。
10人以下が28社(34%)、100人以下が70社(85%)。従業員1人、つまり実質的に経営者一人という会社も3社あります。コントリが会っているのは、圧倒的に小さな会社の経営者です。
平均81人と中央値21人が、4倍離れている理由
この2つの数字の差は、集計の性質を示しています。平均を押し上げているのは上位3社です。
| 企業 | 従業員数 | 所在地 | 設立 |
|---|---|---|---|
| 株式会社土屋 | 2,646名 | 岡山県 | 2020年 |
| 株式会社串カツ田中ホールディングス | 428名 | 東京都 | 2002年 |
| 株式会社弘栄ドリームワークス | 400名(グループ) | 山形県 | 2019年 |
最大の株式会社土屋1社を除くと、平均は81人から49人に下がります。「平均◯人の会社」という表現が、実態から離れやすいことがよくわかる数字です。この記事でも、以降は中央値で読んでいきます。
そしてこの表には、もう一つ見落とせない事実があります。上位3社のうち2社が、東京以外の企業です。しかも土屋(岡山県)は2020年設立、弘栄ドリームワークス(山形県)は2019年設立と、どちらも設立から6年前後しか経っていません。
掛け合わせて見えた、2つの意外な傾向
3つの項目を単独で見るだけでは終わらせず、掛け合わせて集計しました。ここで直感と食い違う結果が2つ出ています。
古い会社ほど大きい、とは限らなかった
設立年と従業員数の両方が判明した78社を、設立年代別に集計しました。
| 設立年代 | 社数 | 従業員数の中央値 | 最大 |
|---|---|---|---|
| 2021年以降 | 16社 | 6人 | 265人 |
| 2011〜2020年 | 32社 | 18人 | 2,646人 |
| 2001〜2010年 | 15社 | 50人 | 428人 |
| 2000年以前 | 15社 | 33人 | 200人 |
2021年以降から2001〜2010年まではきれいに増えていきますが、最も古い「2000年以前」で中央値が50人から33人へ下がります。単純に年数を重ねるほど大きくなるわけではない、ということです。
この層に何が含まれているかを見ると、理由が見えてきます。北星鉛筆(28名)、植木鋼材(33名)、ツツミ産業(60名)、加藤軽金属工業(97名)——いずれも100人以下の規模で長く続いてきた製造業です。規模の拡大を目的にしてこなかった会社が、この層に集まっています。掲載記事を読み返しても、これらの企業が語っているのは成長率ではなく、技術の継承や社風でした。
東京の会社のほうが、新しくて小さい
もう一つが、東京とそれ以外の比較です。
| 区分 | 社数 | 設立年の中央値 | 従業員数の中央値 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 59社 | 2017年 | 16人 |
| 東京以外 | 43社 | 2015年 | 23人 |
差は大きくありませんが、方向ははっきりしています。コントリが取材した範囲では、東京の会社のほうが新しく、そして小さい。従業員数の上位3社のうち2社が地方だったこととも整合します。
これは東京と地方の企業一般の話ではなく、あくまで「コントリの取材に応じてくれた企業」の話です。それでも、取材網を広げれば、いま見えているのとは違う経営者に会える可能性が高いという示唆にはなります。30県がゼロであることの意味は、この数字と合わせて読むと重くなります。
この集計の限界
数字を出す以上、どこまで信用できるかも書いておきます。
- 母集団が偏っています。 118社は無作為抽出ではなく、コントリの取材に応じた企業です。日本企業全体の縮図ではありません
- 数字は掲載企業の自己申告です。 会社概要欄に各社が記載した内容をそのまま集計しており、第三者による検証は行っていません
- 時点がそろっていません。 記事の公開時期は2023年から2026年にまたがっており、従業員数は取材時点の数字です
- 一部にグループ連結の数値が混じっています。 「グループ従業員数」と明記された記載も、そのまま従業員数として集計しました
- 設立年は法人設立の年です。 創業年や事業開始年とは一致しない場合があります
- 所在地は本社所在地です。 事業拠点の広がりは反映していません
これらを踏まえたうえで、この記事の数字が確実に語っているのは「日本の中小企業がどうなっているか」ではなく、「コントリが誰に会えていて、誰に会えていないか」です。
まとめ:数えて分かった、自分たちの空白
- 掲載企業がある都道府県は17。30県はゼロ。 東北6県のうち5県、九州7県すべてで、まだ1社も取材できていません
- 東京都が58%、関東1都3県で73%。 訪問取材という方針が、そのまま分布になっています
- 設立年の中央値は2016年。 2011年以降の設立が67%を占めます
- 従業員数の中央値は21人、100人以下が85%。 平均81人という数字は、最大手1社に引っ張られたものです
- 古いほど大きいとは限らない。 2000年以前設立の層は、規模より継続を選んできた製造業が中心でした
- 東京の会社のほうが新しくて小さい。 従業員数の上位3社のうち2社は地方の企業です
118社を1社ずつ取材しているときには、こうした形は見えていませんでした。数えて初めて、自分たちがどこに行けていないかが数字になりました。30県という空白は、これから埋めるべき宿題です。
関連する横断記事
同じ118社の記録を別の角度から集計した記事があります。経営者118人に聞いた起業のきっかけ、業界の不合理から起業した9人、社会課題を事業にした8人、経営者11人が「任せる」に変わった日、事業承継14社の記録、経営危機から再起した8人。全インタビューは経営者インタビュー一覧からご覧いただけます。
よくある質問(FAQ)
この数字は日本の中小企業の実態を表していますか
表していません。118社はコントリの取材に応じた企業であり、無作為抽出ではありません。所在地が17都道府県に偏り、東京都だけで58%を占めている時点で、日本企業全体の縮図とは言えません。日本企業全体の統計をお探しの場合は、中小企業庁や総務省の公的統計をご参照ください。
なぜ母数が118社ではなく104社や82社なのですか
記事の会社概要欄に記載がない項目を、推測で埋めていないためです。設立年は104社、所在地は102社、従業員数は82社にしか記載がありませんでした。記載のない企業を平均値などで補完すると、集計結果が実際より整って見えてしまいます。そのため、項目ごとに母数を変えて公開しています。
従業員数は平均と中央値のどちらを見るべきですか
中央値です。この82社では平均81人・中央値21人と4倍近い差があり、最大の1社(2,646名)を除くだけで平均は49人まで下がります。少数の大きな企業が平均を押し上げる構造では、平均値は「典型的な1社」を表しません。企業規模のように分布が偏る数値では、一般に中央値のほうが実態に近くなります。
30県がゼロなのはなぜですか
コントリは原則として経営者のもとへ訪問して取材しているため、移動できる範囲が掲載企業の分布に直結しています。関東1都3県で73%という数字がそれを示しています。これは応募がないからではなく、取材網を広げてこなかった結果です。地方からの応募もお受けしており、その場合は交通費・宿泊費の実費のみご負担いただく形で伺っています。
設立年が新しい企業が多いのはなぜですか
設立年が判明した104社のうち67%が2011年以降の設立でした。理由は本記事のデータからは特定できません。創業から日が浅い企業ほど自社を知ってもらう必要があり、取材に応じる動機が強いという可能性は考えられますが、これは仮説であり、この集計では検証できていません。
集計の元データは確認できますか
すべて公開記事から抜き出した数字です。各記事の末尾にある「会社概要」欄に、設立・所在地・従業員数が記載されています。経営者インタビュー一覧から個別記事をご確認いただけます。本記事の集計は編集部が機械的に抽出したもので、あらためて各社に照会を行ったものではありません。


