コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

freeeのビジネスモデル|13年目の黒字化を支えた設計

freeeのビジネスモデル|13年目の黒字化を支えた設計

会計ソフトの「freee」は知っていても、どうやって稼いでいる会社なのかまでは、意外と語られていません。しかも、長く赤字が続いた会社として記憶している方もいるのではないでしょうか。

freeeのビジネスモデルは、会計・人事労務などのクラウドソフトを月額・年額で提供するサブスク型です。顧客は中小企業と個人事業主です。2026年6月期の売上高は424億4,100万円でした。継続収入を年換算したARRは435億9,500万円です(同社決算短信、2026年8月)。創業から13年目の2025年6月期に、初めて通期の営業黒字に転じています。

本記事は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートを土台に、数字をfreeeの決算短信で確かめ直しました。サブスクの収益構造、顧客の迎え方、事業の広げ方、黒字化の中身を順に見ていきます。最後に、中小企業が持ち帰れる4つの問いにまとめました。自社の投資判断を見直す材料になれば嬉しく思います。

freeeのビジネスモデルとは|決算の数字で見る全体像

freee(フリー株式会社)は、中小企業や個人事業主向けに、クラウド会計・人事労務などのソフトを提供する会社です。2026年6月期の売上高は424億4,100万円で、前期から27.6%増えました(同社決算短信、2026年8月13日)。利益はまだ小さい一方で、売上は毎年2〜3割の伸びを続けています。

freeeの2026年6月期 主要数字
売上高424億4,100万円前期比 +27.6%
ARR(年間の継続収入)435億9,500万円前年同期比 +21.8%
有料課金ユーザー企業数69万4,586件前年同期比 +14.0%
営業利益10億9,100万円前期比 +78.9%

出典:フリー株式会社 2026年6月期決算短信(2026年8月13日)

元Google社員が2012年に創業|ミッションは「スモールビジネスを、世界の主役に。」

freeeは2012年7月、佐々木大輔氏が創業しました。佐々木氏は博報堂や投資ファンドを経て、Googleに在籍しました。アジア太平洋地域の中小企業向けマーケティングを統括していた人物です(同社公式サイト)。

freeeが見ている市場には、まだ伸びしろがあります。同社の推計では、スモールビジネス向けのクラウド会計と人事労務の市場規模(TAM)は合計で約1.6兆円です。TAMとは、自社の商品が行き渡った場合に見込める最大の市場規模のことです。財務関連ソフトへの支出のうち、クラウドが占める比率は48.4%にとどまるといいます(同社2025年6月期決算短信)。

ミッションは「スモールビジネスを、世界の主役に。」です。スモールビジネスとは、同社の定義で個人事業主と従業員1,000名以下の法人を指します(同社決算短信)。顧客を最初から中小企業に絞っている点が、このあと見ていく戦略すべての前提にあります。

2019年12月には東証マザーズ(現グロース市場)に上場しました。赤字のまま上場し、その後も投資を続けたことが、freeeの経営を読み解くうえで大切な視点になります。

売上高424億円・ARR436億円|2026年6月期の業績

2026年6月期は、売上高424億4,100万円(前期比27.6%増)でした。営業利益は10億9,100万円(同78.9%増)です(同社決算短信、2026年8月13日)。当期純利益は10億7,700万円で、前期より21.4%減っています。

売上とは別に、freeeが最も大切にしている数字がARRです。ARRとは、Annual Recurring Revenueの略です。毎月決まって入る収入を12倍した「1年分の継続収入」のことです。例えば、月1万円の契約が100社あれば、ARRは1,200万円になります。

2026年6月期末のARRは435億9,500万円で、前年同期から21.8%伸びました。有料で使っている企業は69万4,586件、1社あたりの平均単価は62,772円です。2027年6月期は、売上高522億1,000万円(23.0%増)を見込んでいます。

目指すのは「統合型経営プラットフォーム」

freeeは自社の目標を、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」と表現しています(同社決算短信)。会計、人事労務、販売、契約、決済といったバックオフィスの業務を、1つのつながった仕組みで回せる状態のことです。

背景にあるのは、中小企業のバックオフィスがソフトごとにバラバラになりやすいという課題でした。請求書を作るソフト、給与を計算するソフト、帳簿をつけるソフトが別々だと、同じ数字を何度も入力することになります。データが1か所にまとまれば、入力の手間が減り、経営者はリアルタイムに数字を見られます。

この「つながり」を広げるほど、顧客は他社に乗り換えにくくなります。統合型を目指す姿勢そのものが、後で見る低い解約率につながっています。

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サブスクで積み上がる収益構造|ARR・顧客数・単価

freeeの収益の中心は、月額・年額で利用料を受け取るサブスクリプションです。ARRは2021年6月期末の112億6,800万円から、2026年6月期末には435億9,500万円へ伸びました。約3.9倍です(各期の決算短信)。顧客数と1社あたりの単価の両方が伸びている点に、このモデルの強さがあります。

freeeのARR(年間の継続収入)の推移
単位:億円(各期末)
2021年6月期112.7
2022年6月期150.6
2023年6月期205.8
2024年6月期260.9
2025年6月期343.9
2026年6月期436.0

出典:フリー株式会社 2025年6月期決算短信(2025年8月13日)、2026年6月期決算短信(2026年8月13日)。各期の開示値。2026年6月期の前年同期比+21.8%は同社開示の比較ベース

ARRとは|毎月の継続収入を1年分に換算した指標

サブスク型の会社では、売上高よりもARRが重視されます。売上高は「その年に計上された金額」ですが、ARRは「今の契約がこのまま続けば1年でいくら入るか」を示すからです。

freeeの場合、ARRは各期末月の月次継続収入(MRR)を12倍して算出しています(同社決算短信の注記)。顧客が解約しない限り、翌年もほぼ同じ収入が見込めます。新規顧客を獲得するたびに、その上に収入が積み上がっていく構造です。

中小企業のサブスク導入の考え方は、中小企業のサブスク導入事例でも整理しています。

有料課金ユーザー企業数は5年で2倍以上に

freeeを有料で使う企業は、2021年6月期末に29万3,296件でした。2026年6月期末には69万4,586件へ増えています(同社決算短信)。5年で2.4倍の増加です。

2026年6月期末の内訳は、個人事業主が約42万件(前年同期比12.2%増)でした。法人は27万4,629件(同16.8%増)です(同社2026年6月期決算説明)。法人の伸びが個人事業主を上回っている点は、単価の高い顧客層へ重心が移りつつあることを示しています。

主な指標を1つの表に並べると、次のとおりです。

指標2021年6月期末2026年6月期末出典
ARR112億6,800万円435億9,500万円同社決算短信(2025年8月・2026年8月)
有料課金ユーザー企業数29万3,296件69万4,586件同社決算短信(2025年8月・2026年8月)
ARPU(1社あたり平均単価)38,419円62,772円同社決算短信(2025年8月・2026年8月)
月次解約率(12カ月平均)—全体1.0%・法人0.5%同社2026年6月期決算説明(2026年8月)

数字はいずれも各期の決算短信で開示された値です。なお、2026年6月期の前年同期比(ARR+21.8%など)は、同社が示した比較ベースの数字です。前期の開示値からの単純計算とは一致しません。

平均単価と解約率|法人の月次解約率は0.5%

1社あたりの平均単価(ARPU)は、38,419円から62,772円へ上がりました(2021年6月期末→2026年6月期末、同社決算短信)。ARPUとは、ARRを有料課金ユーザー企業数で割った数字です。例えば、会計ソフトだけを使っていた会社が人事労務ソフトも契約すると、その会社のARPUが上がります。

もう1つの大切な数字が解約率です。2026年6月期の月次解約率(12カ月平均)は全体で1.0%、法人では0.5%でした(同社2026年6月期決算説明)。個人事業主でも、年契約の比率が約70%まで上がり、解約率の改善が続いているといいます。

顧客数・単価・解約率の3つがそろって改善していることが、サブスクの収益を安定させています。解約率の考え方は顧客LTVの計算方法でも詳しく解説しました。

顧客をどこから迎えるか|freee開業と会計事務所チャネル

freeeには、顧客を迎える入口が2つあります。開業手続きを無料で支援する「freee開業」と、税理士・会計事務所と組む「認定アドバイザー制度」です。前者は開業の瞬間に顧客と出会う仕組みで、後者は顧客をよく知る専門家に紹介と定着を担ってもらう仕組みです。会計事務所経由の顧客は、法人が単独で使う場合より解約率が40%低い水準にあります(同社2026年6月期決算説明)。

freeeが顧客を迎える2つの入口
入口A freee開業(開業手続きの無料支援)
開業届などの書類を無料で作成
freee会計で帳簿づけ・確定申告
法人化・採用に合わせて人事労務などへ拡大
入口B 認定アドバイザー(税理士・会計事務所)
会計事務所が顧問先にfreeeを導入
導入と活用を専門家が支援
解約率は法人単独利用より40%低い

出典:freee公式サイト、フリー株式会社 2026年6月期決算説明(2026年8月、ログミーFinance)

freee開業|開業の瞬間に出会う無料の入口

freee開業は、個人事業主が開業届や青色申告承認申請書などの書類を、無料で作れるサービスです(freee公式サイト)。質問に答えていくだけで、必要な項目がそろう設計になっています。

開業したばかりの人は、まだ会計ソフトを決めていません。その時期に無料で手続きを手伝い、そのまま帳簿づけや確定申告の相談先になる。会計ソフトを選ぶ「前」に出会っておくことが、この入口の狙いです。

私たちコントリ編集部が研究ノートを整理するなかで注目したのは、この入口が無料である意味でした。顧客を獲得するための費用を、広告ではなく「役に立つ無料サービス」に使っているとも読めます。事業が軌道に乗れば、法人化や従業員の採用に合わせて、人事労務などのソフトへと契約が広がっていきます。

認定アドバイザー制度|税理士を競合ではなくパートナーに

もう1つの入口が、会計事務所です。freeeは2013年11月に「認定アドバイザー制度」を始めました(同社プレスリリース)。税理士・公認会計士・社会保険労務士などの士業が、顧問先のfreee導入や活用を支援する制度です。

認定の条件は3つです。制度への加入、freeeの個人認定資格の取得(1種類以上)、3件以上の顧問先へのfreee導入です(freee士業向けサイト)。制度開始から約4年後の2017年11月には、認定アドバイザー数が5,000を突破しました(同社プレスリリース)。

クラウド会計が広がると、記帳を請け負う会計事務所の仕事が減るという見方もあります。freeeは会計事務所を競合として扱わず、顧客を連れてきて、使い続けてもらう支援まで担うパートナーとして制度化しました。2025年6月期の決算短信でも、「会計事務所経由での新規顧客獲得の推進」が主な取り組みとして挙げられています。

会計事務所経由の顧客は解約率が40%低い

この制度の効果が、解約率の数字に表れています。同社は2026年6月期の決算説明で、会計事務所経由のユーザーの解約率に触れました。法人が単独で使う場合と比べて、40%低い水準だといいます(ログミーFinance、2026年8月)。

理由として挙げられたのは、会計事務所のパートナーが導入や活用を一部支援していることです。操作に迷ったとき、すぐに相談できる専門家がいる。それだけで、ソフトを使い続けられる会社は増えます。

私たちが決算資料を読み直して気づいたのは、この仕組みの本当の価値が「獲得」より「定着」にあることでした。サブスクの利益は、顧客が長く使うほど大きくなります。信頼されている専門家の近くに自社の商品を置くことが、結果として解約を減らしているのです。

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会計から人事労務・販売・AIへ|広げ方の順番

freeeは2013年のクラウド会計から始まり、人事労務、販売管理、電子契約、カードなどへと領域を広げてきました。バラバラのソフトを並べるのではなく、同じデータでつながる仕組みを目指している点が特徴です。2026年6月には「freee AIアシスタント」を発表しました。自然言語で業務を任せられる仕組みです(同社プレスリリース、2026年6月16日)。

freeeの事業拡大の歩み
2012年7月創業
2013年クラウド会計ソフトの提供開始
2013年11月認定アドバイザー制度を開始
2019年12月東証マザーズに上場(現グロース市場)
2021年電子契約「NINJA SIGN」の運営会社を子会社化(現freeeサイン)
2022年6月税理士向け税務クラウド「A-SaaS」のMikatusを子会社化
2025年6月期創業以来初の通期営業黒字(営業利益6億1,000万円)
2026年6月freee AIアシスタントの提供開始を発表

出典:フリー株式会社 公式サイト・プレスリリース・決算短信

会計→人事労務→販売|既存顧客へのクロスセル

freeeの広げ方には、はっきりした順番があります。まず会計ソフトで顧客と出会い、次に人事労務、さらに販売管理や請求書へと広げていく流れです。クロスセルとは、すでに取引のある顧客に、関連する別の商品も使ってもらうことを指します。例えば、会計ソフトの顧客が従業員を雇ったときに、給与計算のソフトを案内するイメージです。

2025年6月期の決算短信でも、「既存の顧客基盤を活用したクロスセル販売の促進」が主な取り組みとして明記されています。新しい顧客を探すより、今の顧客に2つめ、3つめの商品を使ってもらうほうが、獲得の費用はかかりません。ARPUの上昇は、このクロスセルが進んでいることの表れと言えます。

M&Aで補う機能|電子契約・税務・連結会計

自社で開発するだけでなく、買収で機能を補ってきたこともfreeeの特徴です。2021年には、電子契約サービス「NINJA SIGN」の運営会社を子会社化しました(現在の社名はfreeeサイン)。2022年6月には、税理士向け税務クラウド「A-SaaS」のMikatusを完全子会社にしています(いずれも同社プレスリリース)。

2025年6月期には、連結会計ソフト「結/YUI」や予約サービス「freee予約」も取得しました(同社決算短信)。会計事務所向けの税務ソフトを取り込んだことは、先に見た認定アドバイザー制度とも噛み合っています。買収先を選ぶ基準が「既存の顧客と入口を強くするかどうか」に置かれていることがうかがえます。

「Done for You」|AIに業務を任せる体験へ

2026年6月16日、freeeは2つの新サービスを発表しました。「freee AIアシスタント」と「freee カスタムオーダー」です(同社プレスリリース)。AIアシスタントは、自然言語で指示するだけで、業務をAIに任せられる仕組みです。

同社はこの変化を、「AIにいかに任せ切れるか(Done for You)」という体験への転換と表現しています。これまでのソフトは、人が使いやすいことを目指してきました。これからは、人が操作しなくても業務が終わることを目指す、という方向です。

2026年6月期の決算説明では、製造業や卸売業での活用例も紹介されました。受注データの加工といった特殊な業務を、アシスタントが完結できるといいます。業界ごとに違う商習慣に合わせられるかどうかが、今後の単価と定着を左右していきそうです。

13年目の通期黒字化を3つの数字で読み解く

freeeは2025年6月期に、創業13年目で初の通期営業黒字を達成しました。営業利益は6億1,000万円です(同社決算短信、2025年8月13日)。その前年の2024年6月期は、営業損失83億8,600万円という大きな赤字でした。赤字の中身は、顧客獲得と開発への投資でした。ARRが積み上がった段階で投資の効率を高め、利益に転じた構図です。

赤字から黒字へ freeeの3期の業績(単位:億円)
項目2024年6月期2025年6月期2026年6月期
売上高254.3332.7424.4
調整後営業利益▲75.618.926.6
営業利益▲83.96.110.9
期末ARR260.9343.9436.0

▲は損失。2025年6月期が創業以来初の通期営業黒字。出典:フリー株式会社 2025年6月期決算短信(2025年8月13日)、2026年6月期決算短信(2026年8月13日)

赤字の正体は、顧客獲得と開発への投資

サブスク型の会社は、顧客を獲得した年に広告費や営業費がまとめて出ていきます。一方で、その顧客からの収入は、何年にもわたって少しずつ入る仕組みです。成長が速いほど、先に出ていく費用が大きくなり、会計上は赤字が膨らみやすい構造です。

freeeの2024年6月期は、売上高254億3,000万円に対して営業損失83億8,600万円でした(同社決算短信)。それでも同じ期のARRは260億8,700万円に達しています。決算短信を並べて私たちが気づいたのは、赤字の期にもARRが毎年約55億円ずつ増えていたことでした。2023年6月期と2024年6月期です。

利益が出ていない期にも、翌年以降の収入の土台は増え続けていた。赤字は、その土台を広げるための費用だったと読めます。

四半期黒字から通期黒字へ|2024年7〜9月期が転換点

転換点になったのは、2024年7〜9月期(2025年6月期第1四半期)です。この四半期の調整後営業利益は4億8,000万円でした。創業以来初めての四半期黒字です(週刊BCN+、2024年12月)。前年同期は19億1,500万円の赤字でした。

黒字化の要因として同社が挙げたのは、売上の成長に加え、営業生産性の改善やコストの抑制です。2025年6月期の決算短信には、営業活動でのAI活用による生産性向上も記されています。2026年6月期の決算説明では、広告宣伝費の売上高に対する比率が下がったことにも触れていました。

投資をやめたのではなく、同じ投資でより多くの顧客を獲得できる状態をつくってから、利益に転じた。この順番が、freeeの黒字化の特徴です。2027年6月期は、調整後営業利益率11%を目指すとしています(同社2026年6月期決算説明)。

「調整後営業利益」と「営業利益」の違い

「営業利益」と「調整後営業利益」の違い
営業利益会計基準どおりに計算した本業の利益
2025年6月期6億1,000万円
2026年6月期10億9,100万円
調整後営業利益営業利益+株式報酬費用+M&Aで生じた無形資産の償却費+その他一時費用
2025年6月期18億8,500万円
2026年6月期26億6,300万円

出典:フリー株式会社 2025年6月期決算短信(2025年8月13日)、2026年6月期決算短信(2026年8月13日)、2026年6月期決算説明

freeeの決算を読むときは、2種類の利益を見分ける必要があります。営業利益は、会計基準どおりに計算した本業の利益です。調整後営業利益は、会社独自の指標です。営業利益に、株式報酬費用やM&Aで生じた無形資産の償却費などを足し戻します(同社決算短信の注記)。

2025年6月期は、調整後営業利益が18億8,500万円、営業利益が6億1,000万円でした。どちらも黒字ですが、金額には約3倍の差があります。2026年6月期も、調整後26億6,300万円に対し、営業利益は10億9,100万円です。

ニュースで「黒字化」と聞いたときは、どちらの利益の話かを確かめると誤解が減ります。自社の数字を社員や金融機関に説明する場面でも、同じ考え方が役に立ちます。

競合との違い|弥生・マネーフォワードとの位置関係

個人事業主向けのクラウド会計ソフト市場は、上位3社で94.8%を占めています(MM総研、2026年3月末時点)。弥生・freee・マネーフォワードの3社です。freeeのシェアは25.1%で、弥生の54.0%に次ぐ2位です。freeeの持ち味は、簿記の知識がなくても使える設計です。さらに、個人事業主から中堅企業へと顧客層を広げています。

クラウド会計ソフト3社の比較
項目freeeマネーフォワード弥生
出自クラウドで誕生(2013年)クラウドで誕生パソコン用ソフトから出発した老舗
入力の考え方質問に答える形で進める。簿記の知識がなくても使いやすい従来の帳簿の形に近い従来の会計の作法に沿う
個人事業主向けシェア(2026年3月末)25.1%15.7%54.0%

出典:MM総研「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2026年3月末)」(2026年4月21日発表)、各社公式サイト

個人事業主向けシェア|弥生54.0%・freee25.1%

MM総研の調査では、個人事業主のクラウド会計ソフト利用率は38.4%でした(2026年3月末時点、同年4月21日発表)。前年から0.1ポイントの伸びにとどまり、利用の広がりは落ち着きつつあります。

事業者別のシェアは、弥生が54.0%、freeeが25.1%、マネーフォワードが15.7%です。同じ調査の2025年3月末時点では、freeeは24.0%でした。この1年でわずかにシェアを伸ばしています。

事業者シェア(2026年3月末)シェア(2025年3月末)出典
弥生54.0%55.4%MM総研(2025年4月・2026年4月発表)
freee25.1%24.0%MM総研(2025年4月・2026年4月発表)
マネーフォワード15.7%14.3%MM総研(2025年4月・2026年4月発表)

簿記の知識がなくても使える、という設計思想

弥生は、パソコンにインストールして使う会計ソフトから出発し、長年の利用者を抱える老舗です。freeeとマネーフォワードは、最初からクラウドで生まれたソフトです。

freeeの特徴は、簿記の知識がなくても、質問に答える形で入力を進められる設計にあります。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳の候補を示してくれます。経理担当者を置けず、社長自身が帳簿をつけている小さな会社ほど、この設計の恩恵を受けやすいと言えます。

一方で、簿記に慣れた経理担当者からは、従来の帳簿の形に近いソフトを好む声もあります。どのソフトが優れているかではなく、誰が入力するのかによって向き不向きが分かれると捉えるのが自然です。

個人事業主から中堅企業へ|顧客層を上に広げる動き

freeeはここ数年、個人事業主や小規模企業に加えて、中堅企業向けの上位プランにも力を入れています。2026年6月期の法人MidセグメントのARRは167億7,200万円です。前年同期比27.2%増でした(同社決算説明)。

法人全体のARPUは12万6,600円で、全体平均の約2倍です。規模の大きい顧客ほど、会計・人事労務・販売を組み合わせて使うため、単価が上がります。小さな会社の入口で顧客をつかみ、成長に合わせて上位プランへ移ってもらう。その流れを、顧客層の広がりとして描いていることが分かります。

中小企業が持ち帰れる4つの問い

「上場企業の話は、うちには関係ない」と感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。それでもfreeeの経営判断には、規模を問わず自社に置き換えられる論点があります。赤字を「投資」と呼べるだけの物差しを持っているか、顧客を連れてきてくれる相手は誰か、といった問いです。研究ノートの整理から見えた4つの問いにまとめます。

freeeから中小企業が持ち帰れる4つの問い

コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートとfreeeの決算資料をもとに作成

いまは投資の時期か、回収の時期か

freeeは、黒字化の前年まで大きな赤字を出しながら投資を続けました。そして四半期黒字をきっかけに、利益を出す段階へと移りました。投資の時期と回収の時期を、意図して分けていることが特徴です。

中小企業でも、新しい事業や設備、人材への投資で、一時的に利益が減る時期はあります。問題は、それが「いつまでの投資なのか」を決めないまま続くことです。

まずは今取り組んでいる投資を1つ選び、「何か月で、どの数字がいくらになったら回収に入るか」を紙に書いてみてください。終わりの条件が見えると、社員や金融機関にも説明しやすくなります。

判断に使う物差しを決めているか

freeeが赤字でも投資を続けられたのは、ARRや解約率、単価といった物差しを決算のたびに示してきたからです。利益が出ていなくても、継続収入が積み上がっていることを数字で説明できました。

中小企業では、ARRのような指標がなじまないこともあるでしょう。それでも、定期契約の顧客数、リピート率、粗利率など、自社の事業に合った数字は見つかるはずです。「この数字が伸びている限り、投資を続ける」という物差しを1つ決めるだけで、判断の迷いは減ります。

ストック型の収益を育てる手順は、中小企業のストック型ビジネス構築で詳しく扱っています。

顧客を連れてきてくれる専門家は誰か

freeeは、会計事務所を競合ではなく、顧客を連れてきて定着まで支えるパートナーにしました。結果として、会計事務所経由の顧客は解約率が低くなっています。

自社の顧客が、商品を選ぶ前に相談している相手は誰でしょうか。住宅なら設計士、飲食店向けの商品なら税理士や食品卸、製造業なら商社が当てはまるでしょう。その相手と情報を交換し、紹介し合える関係をつくる。それは、広告より長く効く顧客の入口です。

専門家とのご縁は、1回の紹介で終わらせないことが肝心です。定期的に近況を伝え合う関係にしておくと、紹介が続きやすくなります。自社の強みを、専門家が顧客に説明できる言葉で渡しておくことも大切です。

無料や低価格の入口から、次の商品へつながっているか

freee開業は無料です。それでも、開業した人がそのまま会計ソフトの顧客になり、法人化や採用に合わせて人事労務へと広がっていきます。入口の商品で利益を出すことより、次の商品へつながる道筋を先に設計しています。

無料相談、お試しプラン、点検サービスなど、入口になる商品を持っている中小企業は多いはずです。その入口のあとに、顧客に何を案内するかは決まっているでしょうか。入口の顧客リストを見直し、次に案内する商品を1つ決めるところから始められます。

無料で集めて広げる仕組みは、メルカリのビジネスモデルにも通じるものがあります。他の収益の型と比べたい方は、ビジネスモデル一覧もご覧ください。

まとめ|freeeの仕組みを一言でいうと

freeeのビジネスモデルは、中小企業向けのクラウドソフトを月額・年額で提供するサブスク型です。会計から人事労務・販売へと広げ、単価を高めています。freee開業と会計事務所という2つの入口で顧客を迎え、ARRは435億9,500万円に達しました(2026年6月期末)。13年目の黒字化は、赤字の期にも積み上がっていた継続収入が、投資の効率化とともに利益へ転じた結果です。

自社に置き換えるなら、まず今の投資に「回収に入る条件」を1つ書き出すところからです。

編集部コメント

決算短信を並べて印象に残ったのは、赤字の大きさより、その間もARRと顧客数を毎期開示してきた姿勢でした。利益が出ていない時期に、何が積み上がっているのかを数字で示し続ける。その積み重ねが、投資を続ける根拠にもなっていたと私たちは捉えています。会計事務所をパートナーとして迎えた判断にも、顧客のそばにいる専門家への敬意が表れています。

自社の投資に「回収に入る条件」を書き出すところから、始めてみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q1. freeeのビジネスモデルを一言でいうと何ですか?

A. クラウド会計・人事労務などのソフトを、月額・年額の利用料で提供するサブスク型のビジネスです。顧客は中小企業や個人事業主です。会計から人事労務、販売管理などへ領域を広げ、1社に複数のサービスを使ってもらうことで単価を高めています。

Q2. freeeは黒字ですか?

A. 2025年6月期に、創業から13年目で初めて通期の営業黒字(営業利益6億1,000万円)を達成しました。2026年6月期の営業利益は10億9,100万円です(同社決算短信)。

Q3. ARRとは何ですか?

A. Annual Recurring Revenueの略で、毎月継続して入ってくる収入(MRR)を12倍した指標です。freeeの2026年6月期末のARRは435億9,500万円でした(同社決算短信)。

Q4. freee認定アドバイザーとは何ですか?

A. 税理士や社会保険労務士などの士業がfreeeと組み、顧問先のfreee導入や活用を支援する制度です。2013年11月に始まり、2017年11月に認定アドバイザー数が5,000を突破しました(同社プレスリリース)。

Q5. freeeと弥生、マネーフォワードのシェアはどのくらいですか?

A. MM総研の調査(2026年3月末時点)によると、個人事業主向けのシェアは弥生54.0%、freee25.1%です。マネーフォワードは15.7%でした。上位3社で94.8%を占めています。

Q6. 中小企業がfreeeから学べることは何ですか?

A. 投資の時期と回収の時期を意識して分けること、判断に使う数字の物差しを先に決めることが参考になります。顧客を連れてきてくれる専門家と組むこと、無料や低価格の入口から次の商品へつなぐ設計も学べます。

参考資料

本記事の土台は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノート(2026年8月調査)です。2026年9月時点で確認できたfreeeの決算短信、決算説明、公式発表、調査会社の資料と照合しました。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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