コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

メルカリのビジネスモデル 強みと成功要因をわかりやすく

メルカリのビジネスモデル|強みと成功要因・収益構造

倉庫の隅で出番を待つ在庫や、使われなくなった設備。「本当はもっと価値があるはずなのに」と感じる資産が、御社にも眠っていないでしょうか。

メルカリのビジネスモデルとは、出品無料・成約時だけ手数料10%のマーケットプレイスです。売り手が集まるほど品ぞろえが増え、品ぞろえが買い手を呼ぶ。この好循環に、安心して取引できる仕組みと、売上金を使えるメルペイが重なっています。2026年6月期の連結売上収益は2,292億円で、過去最高でした(同社決算短信)。

本記事は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートを材料に、2026年9月時点の公式発表と照合してまとめたものです。収益構造、不安を消す仕組み、フィンテック、米国事業を順に見ていきます。そのうえで、急成長した新規事業からの撤退と、AIへの賭け直しまでたどります。

最後に、中小企業が自社に置き換えるための4つの問いを用意しました。自社の眠れる価値を見直す手がかりになれば幸いです。

メルカリのビジネスモデルとは|出品無料・成約時10%の両面市場

メルカリのビジネスモデルは、売りたい個人と買いたい個人をスマホ上で結ぶ「両面市場」です。在庫を持たず、取引が成立したときに販売価格の10%を受け取ります。

両面市場とは、性質の違う2つの利用者グループを同じ場に集め、その出会いを価値にするモデルのことです。出前サービスもこの形です。フリマの手数料に、決済のメルペイと米国事業が加わった3事業体制が、いまの同社の姿です。

メルカリのビジネスモデル|出品無料・成約時10%の両面市場
売り手

売りたい個人

出品は無料。写真と価格を入れて出品

↔
場の運営

メルカリ

取引の場と安心の仕組みを提供

手数料10%

取引が成立したときだけ受け取る

↔
買い手

買いたい個人

豊富な品ぞろえから探して購入

お金の循環:売上金 → メルペイ残高 → 店舗・ネットでの買い物や支払いに利用

出典:メルカリ公式ヘルプ「メルカリの手数料」(2026年9月確認)

2013年、スマホ専用のフリマアプリとして誕生

メルカリは2013年2月、山田進太郎氏が「株式会社コウゾウ」として設立した会社です。同年7月にフリマアプリ「メルカリ」の提供を始めました。山田氏は以前にも会社を立ち上げ、米国のゲーム会社ジンガへ売却した経験を持つ起業家です。

当時の個人間取引は、パソコンで使うネットオークションが中心でした。メルカリは、写真を撮って値段を付ければ数分で出品できる体験を、スマホ一台で実現します。「捨てるしかなかったもの」を「売れるもの」に変えたことが、すべての出発点でした。

その後、2018年6月に東証マザーズへ上場し、2022年6月には東証プライム市場へ移っています。株式会社への設立から、およそ13年での現在地です。

数字で見るメルカリの現在地|2026年6月期

2026年6月期の業績は、主要3事業すべてが増収増益でした。数字の推移を並べると、成長の角度が変わった年だとわかります。

決算期売上収益営業利益出典
2024年6月期1,874億円(+9.0%)175億円同社決算資料(irbank集計)
2025年6月期1,926億円(+2.8%)278億円(+59.2%)同社決算資料(irbank集計)
2026年6月期2,292億円(+19.0%)439億円(+57.7%)同社決算短信 2026年8月

2026年6月期は、当期利益も354億円と過去最高でした。国内フリマの月間利用者数(MAU)は2,400万人を超えています。MAUとは、1か月に1回以上サービスを使った人の数のことです(advertimes 2026年8月)。

一方で、同社は配当を出していません。2026年8月には上場後初めて、上限100億円の自社株買いを発表しました(日本経済新聞 2026年8月)。稼いだお金を、まず成長への投資に回す。資本の使い方にも、会社の姿勢が表れています。

3つの事業|Marketplace・Fintech・US

メルカリの事業は、大きく3つに分かれます。国内フリマの「Marketplace」、メルペイなどの「Fintech」、そして米国の「US」です。

advertimes(2026年8月)によると、2026年6月期のコア営業利益は次のとおりです。Marketplaceが429億円、Fintechが91億円、USが20億円でした。コア営業利益とは、一時的な損益を除いた本業のもうけを示す、同社独自の指標です。

利益の大半はいまも国内フリマが稼いでいます。ただし、フィンテックが2本目の柱として育ってきた点は見逃せません。この3事業の関係を、次の章から一つずつほどいていきます。

2026年6月期 セグメント別コア営業利益
Marketplace(国内フリマ)429億円
Fintech(メルペイ等)91億円
US(米国)20億円

国内フリマの流通総額(GMV)は1兆2,856億円、月間利用者数は2,400万人超

出典:advertimes(2026年8月6日)メルカリ2026年6月期決算報道

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メルカリの収益構造|取引が成立したときだけ稼ぐ仕組み

メルカリの主な収益は、商品が売れたときに出品者から受け取る販売手数料10%です。出品は無料で、売れて初めて手数料が発生します(メルカリ公式ヘルプ)。

売り手にとって「出すだけなら損はない」設計が、膨大な出品を生んできました。出品の多さは買い手を呼び、買い手の多さがまた出品を呼びます。

ここでは、手数料の仕組みと、その裏で回る好循環を順に見ていきます。手数料が競合より高いのに選ばれる理由にも触れます。自社の料金設計を考えるうえでも、ヒントの多い章です。

収益の柱は販売手数料10%

例えば3,000円の服が売れると、300円が販売手数料です。出品者の手元には、送料を引いた残りが売上金として入ります。売上金を銀行口座へ移すときは、一律200円の振込手数料がかかります(メルカリ公式ヘルプ)。

この仕組みの要点は、メルカリが在庫を持たないことです。仕入れも保管もしないため、売れ残りの損を抱えません。取引の数が増えるほど、手数料が積み上がっていく。場を用意し、取引が生まれるたびに少しずつ受け取る。これがマーケットプレイスの基本形です。

2026年6月期の国内フリマの流通総額(GMV)は1兆2,856億円でした(LIMO 2026年8月)。GMVとは、アプリ上で売買された商品の金額を合計したものです。手数料はこの流通の上に乗っています。

売り手と買い手が互いを呼ぶネットワーク効果

ネットワーク効果とは、利用者が増えるほどサービスの価値が高まる現象のことです。例えば、電話は持っている人が多いほど便利になります。

メルカリでは、出品が増えるほど品ぞろえが厚くなり、買い手が集まります。買い手が多い場所では売れやすいため、さらに出品が集まる。この循環が一度回り出すと、後から来た競合は追いつきにくくなります。同じ両面市場の型は、「無料配達の仕組みから学ぶビジネスモデル」でも取り上げました。

ネットワーク効果|利用者が利用者を呼ぶ好循環
STEP 1

出品者が増える

出品無料なので、売り手が気軽に参加する

STEP 2

品ぞろえが厚くなる

探している品が見つかりやすくなる

STEP 3

買い手が集まる

品ぞろえを求めて購入者が増える

STEP 4

売れやすくなる

買い手が多いので、出品がすぐ売れる → STEP1へ戻る

一度回り出すと、利用者の多さそのものが参入障壁になる

メルカリの公表情報をもとにコントリ編集部が整理

循環の起点は、「出品無料」という入り口の低さでした。売り手の心理的なハードルを下げたことが、買い手の側の魅力を生んでいます。供給側の一歩を軽くすることが、需要を連れてくる。この順番に、メルカリの設計思想が表れています。

手数料が高くても選ばれる理由|Yahoo!フリマ・ラクマとの比較

販売手数料だけを比べると、メルカリは主要3社のなかで高めです。それでも国内のフリマでは、利用がメルカリに集まっています。

主要フリマアプリの手数料を、公表情報で並べました。

主要フリマアプリの販売手数料比較
サービス販売手数料特徴出典
メルカリ一律10%売上金をメルペイで使える独自の経済圏メルカリ公式ヘルプ
Yahoo!フリマ一律5%(2026年5月19日から)PayPay経済圏と連携LINEヤフー公表(2026年)
ラクマ4.5〜10%の変動制販売実績に応じて料率が下がる。楽天経済圏ラクマ公式ガイド(2026年)

2026年9月時点の各社公表情報をもとにコントリ編集部が整理。料率は変更される場合があります

手数料が高くても選ばれる理由は、主に2つと考えられます。1つは、先に利用者を集めたことによるネットワーク効果です。もう1つは、次の章で見る「安心して取引できる仕組み」への信頼でしょう。

売り手から見れば、手数料が5%安くても、売れるまでの時間が長ければ得になりません。買い手から見れば、探している品が見つかる場所が一番便利です。価格ではなく「売れる速さ」と「見つかる確率」で選ばれている。値下げ競争に悩む経営者の方にとって、示唆の多い構図ではないでしょうか。

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メルカリの強み|知らない人との取引の不安を消す仕組み

メルカリの強みの核は、見知らぬ個人どうしの取引から「不安」を取り除く仕組みです。手数料の安さではなく、安心で選ばれています。

匿名配送、代金の一時預かり、評価制度、そしてAIによる不正検知。どれも、利用者が最初の一歩をためらう理由を一つずつ消すための工夫です。

お客様の不安をどう扱うかは、業種を問わず経営者の方が向き合うテーマではないでしょうか。4つの仕組みを順にほどいていきます。どの仕組みも、お客様が口にしない不安から逆算して作られている点に注目してください。

匿名配送と代金の一時預かり

個人間の取引には、「相手に住所を知られたくない」「お金を払ったのに届かないのでは」という不安がつきまといます。メルカリはこの2つを、仕組みで解消しました。

匿名配送とは、出品者と購入者が互いの住所や氏名を知らせずに発送できる仕組みのことです。例えば、コンビニで発送手続きをすれば、相手に自宅住所を伝えずに済みます。

代金の一時預かりは、エスクローと呼ばれる考え方に近いものです。購入者が払った代金をメルカリがいったん預かります。購入者が商品を受け取って評価したあとに、出品者へ売上金が入る流れです。「払ったのに届かない」「送ったのに払われない」を、構造的に起こしにくくした。この安心が、ネット取引に慣れていない層まで利用を広げました。

評価制度が信頼の目印になる

取引が終わると、出品者と購入者はお互いを評価し、コメントを残します。評価の積み重ねは、そのアカウントがどれだけ信頼できるかを示す目印です。

初めて取引する相手でも、過去の評価を見れば判断材料が手に入ります。良い評価を保ちたいという気持ちが、丁寧な梱包や迅速な発送にもつながります。一人ひとりの行動が、場全体の信頼を底上げしていく仕組みです。

評価制度の良さは、メルカリが一件ずつ取引を見張らなくても、信頼が積み上がる点にあります。利用者自身が互いを見ている状態をつくることで、運営の手間も抑えられる。信頼の管理を、利用者の手に一部ゆだねた設計と言えます。お客様の声を集めて次のお客様に見せる工夫は、店舗の口コミ掲示や施工事例の公開にも通じるものです。

AIによる不正検知と監視体制

利用者が増えれば、不正を働こうとする人も入り込みます。2025年5月21日、メルカリは安心・安全の強化策を発表しました。柱は「不正利用者の徹底排除」と「お客さまの徹底保護」の2つです(同社リリース)。

柱の一つが、AIによる不正監視の強化です。不審な行動のパターンを学習させ、不正のリスクをスコア化して、悪質なアカウントを早く見つけ出します。偽ブランド品に対応する「メルカリ鑑定センター」も、2025年9月開始として打ち出されました。取引トラブル時の補償を手厚くする制度は、同年7月開始と発表されています。

利用者2,000万人を超える場を守るには、人手だけでは足りません。信頼を保つコストを、技術で下げ続けている。安心は一度作って終わりではなく、更新し続けるものだと気づかされます。

メルカリの強み|不安を消す4つの仕組み
不安1:住所

匿名配送

住所・氏名を相手に知らせずに発送できる

不安2:代金

代金の一時預かり

購入者の受け取り評価のあとに売上金が入る

不安3:相手

評価制度

取引ごとの相互評価が信頼の目印になる

不安4:不正

AI不正検知・鑑定センター

リスクをスコア化。偽ブランド品にも対応(2025年発表)

出典:メルカリ公式ヘルプ、同社リリース(2025年5月21日)

メルペイとフィンテック|売上金がアプリの中で回り続ける経済圏

メルペイは、フリマで得た売上金をそのまま買い物や支払いに使えるサービスです。2026年6月期、Fintech事業のコア営業利益は91億円まで伸びました。

売る、使う、増やすという流れがアプリの中で完結し、利用者がメルカリに戻ってくる理由になっています。数字の出典はadvertimes(2026年8月)の決算報道です。

フリマの「おまけ」だった決済が、どのように利益の柱へ育ったのか。その道筋を3つの段階で整理しました。本業の資産を別の事業に生かす発想として、中小企業にも応用の余地があります。

売上金をそのまま使えるメルペイ

フリマで商品が売れても、銀行へ振り込むと200円の手数料がかかります。メルペイを使えば、売上金を出金せずに、街の店やネットの支払いへそのまま回せます。

利用者にとっては、手間と手数料が省けて便利です。メルカリにとっては、お金が自社の経済圏にとどまり、次の購入や決済につながります。本業で生まれたお金の流れを、自社の別サービスへ還流させる設計。ここに、メルカリの事業の奥行きがあります。

経済圏とは、1つの会社のサービス群の中で、お金や利用者が行き来する範囲のことです。例えば、楽天やPayPayも、ポイントや決済を軸に自社の経済圏を広げてきました。メルカリの場合は、フリマの売上金という「すでに利用者の手元にあるお金」が入り口です。新たにお金を入金してもらう必要がない点が、他社との大きな違いと言えるでしょう。楽天の経済圏で、ポイントと金融がどう利益を支えているかは、楽天グループのビジネスモデルで解説しています。

メルカードと後払い|与信事業への広がり

メルペイは、決済だけにとどまりません。代金をあとでまとめて払える「メルペイのあと払い」や、2022年に始めたクレジットカード「メルカード」を展開しています。メルカードの発行枚数は、2024年12月に400万枚を超えました(ペイメントナビ 2024年12月)。

与信とは、利用者の支払い能力を見きわめ、お金を立て替えたり貸したりすることです。メルカリはフリマでの取引の記録を、与信の判断材料の一つにしています。売り買いの履歴という本業のデータが、金融の事業を支える構図です。

Fintechが利益のもう一つの柱に

2026年6月期のFintechのコア営業利益91億円は、Marketplaceの429億円に次ぐ規模です。フリマの手数料だけに頼らない収益源が、着実に育ってきました。

1つの事業に利益を頼っていると、その市場が伸び悩んだときに打つ手が限られます。国内フリマは成熟期に入ったとも言われるなか、2本目の柱の存在は経営の安定につながります。しかも、その柱は本業の利用者とデータの上に立っています。ゼロから新市場を開くより、手持ちの資産を生かすほうが勝ち筋は太くなる。そんな順番が見えてきます。

メルカリ経済圏|お金とデータがアプリ内で循環
STEP 1

売る

フリマで出品し、商品が売れる

STEP 2

売上金

出金せずにメルペイ残高として持つ

STEP 3

使う

店舗・ネットで決済、メルカードやあと払いで支払い

STEP 4

買う

フリマで別の商品を購入 → STEP1へ戻る

Fintechのコア営業利益 91億円(2026年6月期)

出典:advertimes(2026年8月6日)メルカリ2026年6月期決算報道

とはいえ、与信の事業には貸し倒れのリスクも伴います。成長が速いぶん、債権の管理が問われる領域です。フリマで培った「信頼を数字で見る」力が、ここでも試されていると言えます。

米国事業と越境取引|長い赤字から黒字化へ

メルカリの米国事業は、2025年6月期に初めて通期で黒字化しました。2026年6月期もコア営業利益20億円を確保しています。

2014年の進出から、長く赤字が続いた挑戦でした。国内では、日本の出品物を海外の買い手に届ける越境取引が、新しい成長の柱になりつつあります。

事業者に場を開くメルカリShopsも含め、国内フリマの外へ広がる動きを見ていきます。成熟した市場の中で、次の買い手をどこに探すか。その問いへの同社なりの答えと言えます。赤字の10年をどう越えたのかも、あわせて確かめます。

2014年からの米国挑戦と初の通期黒字

米国事業は、上場時の調達資金の主な投資先でもありました。2025年6月期、米国事業のコア営業利益は9億円でした。参入から10年余りで、初めての通期黒字です(日本経済新聞 2025年7月)。

ただし、黒字化の過程では規模を絞る判断もありました。同じ期の米国の月間利用者数は前年から減っており、中国発の低価格ECとの競争が重荷になったと報じられています。2026年6月期は黒字を保ちながら、流通総額を11%伸ばしました(advertimes 2026年8月)。

赤字の挑戦をやめずに、収益の形を作り直して続けた。ここに、同社の粘り強さが表れています。

国内フリマの外へ|米国事業と越境取引
米国事業

初の通期黒字

9億円

コア営業利益(2025年6月期)。2026年6月期は20億円

越境取引

流通総額(GMV)

1,122億円

2026年6月期。国内フリマ全体の約9%

米国GMV

前年比の伸び

+11%

2026年6月期。黒字を保ちながら成長

出典:日本経済新聞(2025年7月)、LIMO・advertimes(2026年8月)

越境取引GMV1,122億円|日本の出品物を世界へ

越境取引とは、国境を越えて海外の買い手へ商品を売ることです。メルカリでは、日本の出品者が出した商品を、海外の利用者が購入できる仕組みを整えてきました。

2026年6月期の越境取引の流通総額は1,122億円でした。国内フリマ全体の約9%にあたる規模です(LIMO 2026年8月)。

出品者から見れば、同じ出品で海外の買い手にも届くため、売れる確率が上がります。場の外に新しい買い手を連れてくることで、国内の成熟を超えにいく。成熟市場で戦う中小企業にとっても、参考になる打ち手ではないでしょうか。

メルカリShopsで事業者にも門戸を開く

メルカリは個人だけでなく、事業者にも場を開いています。「メルカリShops」は、スマホでネットショップを開ける仕組みです。2021年10月に本格提供が始まりました(同社リリース)。

農家や個人商店が、フリマと同じ手順で商品を出せる点が特徴です。すでに集まっている買い手に、事業者の商品を届けられます。

ネットショップを一から作り、集客まで自前で担うのは、小さな事業者には重い負担でした。その負担を、既存の買い手の多さで肩代わりする形です。一度築いた場を、別の顧客層へ開いていく。自社の資産を多面的に活かす好例と言えます。

メルカリハロの撤退とAIネイティブ化|やめる判断と賭ける判断

メルカリは、スキマバイト事業「メルカリ ハロ」を2025年12月に終えました。登録者が1,200万人を超えるなか、1年9カ月での撤退です。

同じ時期に、全社を挙げてAIを前提にした会社へ変わる方針を打ち出しています。やめる判断と、賭け直す判断。2つの決断が同時に進んだ点に、この章の読みどころがあります。

新規事業に取り組む経営者の方にとっても、判断の順番を考える材料になるはずです。始める勇気と同じくらい、やめる勇気が問われる局面でした。2つの判断を、時系列で順に追います。

急成長したメルカリ ハロを1年9カ月で終えた理由

メルカリ ハロは、短時間だけ働きたい人と、人手が欲しい店や企業をつなぐサービスでした。2024年3月に始まり、2025年6月には登録者が1,200万人を超えていました。

それでも同社は2025年10月14日、サービスの終了を発表します。終了日は同年12月18日でした(同社リリース)。理由は「市場環境の変化やサービスの利用状況などから総合的に判断した」と説明されています。

報道では、求人を出す企業側の拠点数の差が指摘されました。メルカリ ハロの約15万(2025年1月末)に対し、先行するタイミーは約39万(同年7月末)でした。出典はBusiness Insider Japan(2025年10月)です。

やめる判断と賭ける判断|2024〜2026年の主な動き
2024年3月

メルカリ ハロ開始

スキマバイト事業に参入

2025年5月

安心・安全の強化策を発表

AI不正監視・鑑定センター・補償の拡充

2025年6月

ハロの登録者1,200万人超

急成長が続く

2025年7月

米国事業が初の通期黒字

2025年6月期のコア営業利益9億円

2025年8月

AIネイティブカンパニーへの転換を発表

100名規模の専任チームを組成

2025年10月

ハロの終了を発表

12月18日にサービス終了

2026年8月

過去最高益・初の自社株買い

当期利益354億円、自社株買い上限100億円

出典:同社リリース、日本経済新聞、Impress Watch、advertimes

利用者の数だけを見れば、続ける理由はありました。それでも、事業として勝ち切れるかという基準で見直し、早い段階で幕を引いています。「伸びているか」ではなく「勝てるか」でやめる。撤退は失敗の証明ではなく、経営資源を本業へ戻すための判断だったと言えます。

全社員AI利用率100%|AIネイティブ化の中身

2025年8月、メルカリは「AI-Native Company」への転換を発表しました。100名規模の専任チームを立ち上げ、全業務を棚卸しする計画です。そのうえで、AIを前提とした業務の流れに組み直します(Impress Watch 2025年8月5日)。

1年後の2026年8月、決算発表で成果が示されました。「全社員のAI利用率100%」「開発量7.6倍」です(Business Insider Japan)。サービス面でも、2024年9月に「AI出品サポート」を始めました。写真を撮ってカテゴリを選ぶだけで、商品説明や価格をAIが入力する機能です(同社リリース 2024年9月10日)。

AI出品サポートは、最短3タップで出品が終わる設計です。出品の手間を減らすことは、創業時の「かんたんさ」の延長線上にあります。新しい技術を、創業からの価値を深めるために使っている点が、この転換の芯と言えるでしょう。自社でのデジタル化の進め方は、「DXとは?をわかりやすく解説」も参考になります。

成長投資を優先する資本配分

メルカリは2026年6月期に過去最高益を出しましたが、配当は出さない方針を続けています。代わりに、上限100億円の自社株買いを初めて実施しました(日本経済新聞 2026年8月)。自社株買いとは、会社が市場から自社の株式を買い戻すことです。

2027年6月期の計画は、売上収益2,750億円と2割増です。一方、営業利益は450億円と微増にとどめています(LIMO 2026年8月)。AIや成長分野への投資を優先する姿勢が、数字からも読み取れます。

山田CEOは決算説明で、利用者数の伸びを課題に挙げました。GMVの伸びに比べ、MAUの伸びが緩やかだという認識です(Business Insider Japan)。過去最高益の年に、あえて課題から語る。その姿勢に、この会社の次の一手が表れています。

中小企業がメルカリから持ち帰れる学び|自社に置き換える4つの問い

メルカリは売上2,000億円を超える上場企業ですが、学びの多くは規模を問いません。明日から自社の言葉で考えられる問いに、置き換えてみました。

参加のハードルを下げる、不安そのものを解消する、生まれたお金を循環させる、やめる基準を持つ。どの問いにも、紙とペンで始められる最初の一手を添えています。

自社の状況に近いものから、一つだけ選んで試してみてください。4つ全部を一度に変える必要はありません。一つ動かすと、ほかの問いへの答えも見えやすくなります。

中小企業がメルカリから持ち帰れる4つの問い
問い1|出品無料に学ぶ

お客様が最初の一歩を踏み出すハードルは低いか

最初の一手:申し込みまでの手順を紙に書き出す

問い2|匿名配送・代金預かりに学ぶ

お客様の「不安」を仕組みで消しているか

最初の一手:失注3件の断り理由の裏の不安を1行ずつ書く

問い3|メルペイに学ぶ

生まれた価値を自社の中で循環させているか

最初の一手:一度の取引を次の取引の入口に変える案を1つ出す

問い4|メルカリ ハロの判断に学ぶ

新しい挑戦に「やめる基準」を決めているか

最初の一手:続けている取り組みに期限と数字を1行添える

コントリ編集部作成

問い1|お客様が最初の一歩を踏み出すハードルは低いか

メルカリは出品を無料にし、「売れたときだけ払う」形にしました。お客様が最初に払うお金や手間が大きいほど、試してもらう前に離れてしまいます。

例えば、初回の相談を短時間で無料にする。成果が出たときに報酬を受け取る料金体系を一部に取り入れる。見積もりの依頼を、電話ではなくフォーム1枚で済むようにする。入り口の重さを一つ軽くするだけで、問い合わせの数は変わってきます。

まずは自社の申し込みまでの手順を、紙に書き出してみてください。お客様が迷いそうな段階が、一つは見つかるはずです。

問い2|お客様の「不安」を仕組みで消しているか

メルカリの匿名配送や代金の預かりは、「相手が見えない不安」を解消するための仕組みでした。自社の取引にも、お客様が口にしない不安が隠れていないでしょうか。

「追加費用がかかるのでは」「途中で連絡が取れなくなるのでは」。こうした不安は、営業トークで打ち消すより、仕組みで消すほうが届きます。料金の上限を先に示す、進み具合を定期的に共有する、といった形です。経営者の方々と対話してきた経験からも、選ばれ続ける会社ほど、お客様の不安を具体的な言葉で把握していると感じます。

直近で失注した案件を3件思い出し、断られた理由の裏にある不安を1行ずつ書いてみてください。

問い3|生まれた価値を自社の中で循環させているか

メルペイは、フリマで生まれた売上金を、そのままアプリの中で使える形にしました。本業で生まれた価値が外に出ていかない設計です。

中小企業でも、同じ発想は取り入れられます。例えば、購入時のポイントを次回のメンテナンスに使えるようにする。修理で得た顧客の情報を、買い替えの提案に生かす。一度の取引を、次の取引の入り口に変えるという考え方です。定額で続く関係を作る方法は、「中小企業のサブスクリプション型ビジネスモデル事例」も参考になります。

問い4|新しい挑戦に「やめる基準」を決めているか

メルカリ ハロは、利用者が伸びていても、勝ち切れるかという基準で撤退を決めました。新規事業は、始める判断より、やめる判断のほうが難しいものです。

新しい取り組みを始めるときに、「いつまでに、何がどうなっていなければやめるか」を1行で決めておく。期限と数字を先に置いておけば、撤退は感情ではなく約束の実行になります。やめて空いた時間と人を、本業に戻す判断もしやすくなるでしょう。

収益の型を広く見渡すなら、「ビジネスモデル一覧|収益の仕組み30種」が役に立ちます。仕組みで高い利益を残す型なら、「キーエンスのビジネスモデル」が比較に向きます。加盟店と粗利を分け合う「セブンイレブンのビジネスモデル」もおすすめです。

まとめ|メルカリのビジネスモデルは「取引が生まれ続ける場」でできている

メルカリのビジネスモデルは、出品無料・成約時10%の手数料という入り口の低さから始まります。その上に、不安を消す仕組み、売上金を循環させるメルペイ、海外へ広がる越境取引が重なっています。

その結果が、2026年6月期の売上収益2,292億円、営業利益439億円という過去最高の数字です。一方で、急成長した新規事業を早く閉じ、AIに経営資源を寄せ直す決断も続いています。

強い場を持つ会社ほど、何をやめて何に賭けるかを自分で選び直している。大企業の話に見えて、その根っこは中小企業の経営と地続きです。まずは自社の申し込みまでの手順を書き出し、お客様が止まりそうな一歩を一つ軽くするところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. メルカリのビジネスモデルを一言でいうと何ですか?

A. 個人どうしの売り買いの場を提供し、取引が成立したときに販売手数料10%を受け取るマーケットプレイス型のモデルです。出品無料で売り手を集め、品ぞろえが買い手を呼ぶ好循環が土台になっています。

Q2. メルカリはどうやって稼いでいるのですか?

A. 中心は国内フリマの販売手数料です。これに、メルペイやメルカードなどのFintech事業、米国事業の収益が加わります。2026年6月期の連結売上収益は2,292億円、コア営業利益は国内フリマが429億円、Fintechが91億円でした。

Q3. メルカリの手数料は他のフリマアプリより高いのですか?

A. メルカリは一律10%です。Yahoo!フリマの5%や、ラクマの4.5〜10%と比べると高めと言えます。それでも利用者が集まるのは、出品数の多さと、安心して取引できる仕組みが評価されているためと考えられます。

Q4. メルカリの米国事業は黒字なのですか?

A. 2025年6月期に、2014年の参入以来初めて通期で黒字化しました。コア営業利益は9億円です。2026年6月期も20億円の黒字を保ち、流通総額は11%伸びています。

Q5. メルカリ ハロはなぜ終了したのですか?

A. メルカリは、市場環境の変化や利用状況などから総合的に判断したと説明しています。2024年3月の開始から約1年9カ月、2025年12月18日にサービスを終えました。

Q6. 中小企業がメルカリから学べることは何ですか?

A. お客様が最初の一歩を踏み出すハードルを下げること、取引の不安を仕組みで消すことなどです。生まれた価値を次の取引につなげること、新しい事業にやめる基準を持つことも挙げられます。いずれも規模に関係なく考えられる視点です。

参考資料

本記事は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートをもとに、2026年9月時点で上記の公開情報を照合して作成しました。記事中の数値は、それぞれの出典が公表・報道した時点のものです。

編集部より

研究ノートをまとめるなかで印象に残ったのは、メルカリ ハロの終了を伝えるリリースの短さでした。登録者が1,200万人を超えた事業を、同社は2年を待たずに閉じています。数字が伸びている事業を止めるには、何のために始めたのかを自分たちの言葉で持っている必要があります。

もう一つは、過去最高益を出した決算の場で、山田CEOがまず利用者数の伸びの鈍さを課題に挙げた点です。良い数字の年に、足りないところから語る。コントリが経営者の方とのご縁を通じて伺う話でも、長く続く会社ほど、好調な時期に次の課題を言葉にしています。

自社でいま続けている取り組みのうち、「やめる基準」を決めていないものは何でしょうか。その一つに、期限と数字を1行で書き添えてみてください。

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