ローカルベンチマークとは|財務6指標で自社を見える化する健康診断ツール

ローカルベンチマークとは|財務6指標で自社を見える化する健康診断ツール

「自社の強みを、うまく言葉にできない」「金融機関に事業をどう説明すればいいか分からない」——そんな悩みを持つ経営者に役立つのが、ローカルベンチマークです。ローカルベンチマークとは、経済産業省がつくった企業の「健康診断」ツールのこと。略して「ロカベン」とも呼ばれ、財務と非財務の両面から自社を見つめ直せます。

本記事では、ローカルベンチマークの基本、中身、分かること、金融機関との対話での活かし方、始め方の順に整理していきます。難しそうに見えて、やることはシンプルです。自社を客観的に知る第一歩として、ぜひ活用してみてください。次の一手のヒントになれば幸いです。

ローカルベンチマークとは|経済産業省がつくった企業の健康診断ツール

ローカルベンチマークとは、経済産業省がつくった企業の「健康診断」ツールを指します。人が健康診断で体の状態を知るように、企業が自社の経営状態を知るための仕組みです。従来の決算書との違いは、数字だけでなく事業の中身まで見える化する点。まずは全体像を、表で整理してみましょう。

比較項目ローカルベンチマーク決算書だけの把握
見る範囲財務6指標+非財務4視点財務の数字が中心
分かること強み・課題・将来性まで過去の業績が中心
使う場面金融機関との対話・事業性評価納税・報告が中心
作成主体経済産業省が様式を提供会計基準に沿って作成

※出典:経済産業省「ローカルベンチマーク」活用ガイド 2024年をもとに整理

ローカルベンチマークの定義と『企業の健康診断』という位置づけ

ローカルベンチマークの核にあるのは、「自社を客観的に知る」という発想です。日々の忙しさの中では、自社の強みや課題を冷静に見つめる機会はなかなか持てません。ロカベンは、その機会を仕組みとして与えてくれます。だからこそ「健康診断」と呼ばれています。

中小企業庁の公式チャンネル(ミラサポplus)でも、『10分で分かるローカルベンチマーク』や『1分で分かるローカルベンチマーク』が公開され、入口として広く紹介されています。難しく身構える必要はありません。まず自社を知るための道具。そう捉えれば、ぐっと身近になります。

なぜ経済産業省がこのツールを用意したのか

背景にあるのは、中小企業と金融機関・支援機関の対話を深めたいという狙いです。数字だけでは、事業の本当の価値は伝わりません。技術や顧客との関係といった強みを共有できてこそ、実のある支援につながります。ロカベンは、その共通言語として設計されました。

言い換えれば、ローカルベンチマークは「伝わらない」を減らすための道具です。自社の実態を、相手が理解できる形に翻訳する。そんな役割を担っています。経営者と支援者が同じ絵を見ながら話せる。ここに、このツールの大きな意義があります。

ローカルベンチマークの中身|財務6指標と非財務4視点

ローカルベンチマークは、財務の6つの指標と非財務の4つの視点で構成されています。数字と事業の中身、その両輪で自社を見える化する設計です。ここでは、それぞれが何を見るためのものかを整理します。

ローカルベンチマークの構成(財務6指標 × 非財務4視点)
財務分析 6つの指標で数字を測る
  • 売上高増加率(成長性)
  • 営業利益率(収益性)
  • 労働生産性(生産性)
  • EBITDA有利子負債倍率(健全性)
  • 営業運転資本回転期間(効率性)
  • 自己資本比率(安全性)
非財務分析 4つの視点で中身を掘る
  • 経営者(意欲・後継者など)
  • 事業(強み・弱み・商流)
  • 企業を取り巻く環境・関係者
  • 内部管理体制(組織・仕組み)

財務分析の6つの指標が示すもの

財務面では、6つの指標で自社の状態を測ります。売上高増加率、営業利益率、労働生産性、EBITDA有利子負債倍率、営業運転資本回転期間、自己資本比率。それぞれが、成長性・収益性・生産性・健全性といった観点から会社を映し出します。

これらの指標は、同業他社との比較もできるように設計されています。自社の数字が、業界の中でどの位置にあるのか。それが見えれば、課題の優先順位もくっきりしてきます。経営相談の実務動画でも、ロカベンが財務情報編として丁寧に解説されています。数字は、自社を知るための出発点です。

非財務の4つの視点(業務フロー・商流など)

ロカベンの特徴は、非財務の4つの視点にあります。経営者、事業、企業を取り巻く環境・関係者、内部管理体制。この4つから、数字には表れない強みや課題を掘り下げます。業務フローや商流を書き出すことで、自社の価値の源泉が見えてきます。

METIの解説動画でも、業務フローの把握を通じて「顧客提供価値」や「強み・弱み」を見える化する使い方が紹介されています。私がこれまで経営者の方への取材を重ねるなかでも、この非財務の整理をきっかけに「自社の本当の強みに気づいた」という声を伺ってきました。見えていなかった価値の言語化。ここにロカベンの真価があります。

ローカルベンチマークで何が分かるのか(活用メリット)

ローカルベンチマークを使うと、自社の強みと課題が客観的に見えてきます。数字の裏にある事業の実態を言語化できるため、社内の共通認識づくりにも役立ちます。主な活用メリットを見ていきましょう。

自社の強み・課題が客観的に見える

最大のメリットは、自社を客観的に見られることです。財務指標で立ち位置を知り、非財務の視点で強みと課題を掘り下げる。主観だけでは気づけなかった事実が、浮かび上がってきます。課題が見えれば、打ち手も定まります。

これは、社内の共通認識づくりにも効きます。同じロカベンを見ながら話せば、経営者と社員の目線が自然とそろってきます。「何が強みで、どこが課題か」を全員が共有できる。組織を動かすうえで、これは大きな力になります。

事業の将来性を『語れる形』にできる

もう一つのメリットが、事業の将来性を語れる形にできることです。頭の中にある想いや強みを、ロカベンの枠組みに沿って整理すると、他者に伝わる言葉になります。金融機関への説明でも、事業計画づくりでも、この「語れる」状態が力を発揮します。

経営者保証に頼らない融資が広がるなかで、自社を語る力の重要性は増しています。担保を外す動きの詳細は、経営者保証ガイドラインの解説記事もあわせてご覧ください。語れる自社。それは、これからの経営の武器になります。

ローカルベンチマークと事業性評価・金融機関との対話

ローカルベンチマークは、事業性評価融資や金融機関との対話の入口として設計されています。数字と非財務の両面を共有できるため、担保に頼らない融資の場面でも力を発揮します。両者の関係を整理しておきましょう。

事業性評価融資の入口としてのロカベン

事業性評価融資とは、担保や保証ではなく事業の将来性で貸す融資のことです。この融資では、自社の将来性を説明する力が鍵になります。ローカルベンチマークは、その説明を支える道具として最適です。財務と非財務を一枚で示せるため、対話がスムーズに進みます。

実務家の動画では、ロカベンが「5分でできる企業の健康診断」として、事業承継やM&A、事業の磨き上げの場面で使われる様子が紹介されています。融資の考え方は事業性評価融資とは何かを解説した記事もあわせてご覧ください。ロカベンは、その入口を開く鍵になります。

金融機関・支援機関との対話をどう深めるか

金融機関や支援機関との対話は、同じ資料を見ながら話すことで深まります。ロカベンは、その共通の土台になります。自社の強みと課題を一緒に確認できれば、支援も的確になります。一方的な説明ではなく、対話が生まれます。

対話をさらに深めたいときは、専門家の力を借りるのも一つの方法です。認定経営革新等支援機関のような専門家は、ロカベンを使った対話の伴走に慣れています。頼れる相手の見つけ方は認定経営革新等支援機関とは何かを解説した記事もあわせてご覧ください。

ローカルベンチマークの使い方・始め方

ローカルベンチマークは、経済産業省が公開するツールを使って自分でも取り組めます。財務データを入力し、非財務の項目を対話形式で整理する流れです。ここでは、始め方の手順を具体的にまとめます。

ローカルベンチマークの始め方(3ステップ)
1ツール様式を入手経済産業省がウェブで公開する表計算形式の様式をダウンロードします。
2財務データを入力決算書の数字を入れると、6つの財務指標が自動で算出されます。
3非財務4視点を整理経営者・事業・環境・体制を、対話形式で言葉にして埋めていきます。

ツールの入手と財務データの入力

まずは、経済産業省のツール様式を入手します。ウェブ上で公開されており、表計算ソフトで使える形式です。そこに決算書の数字を入力すると、6つの財務指標が自動で算出されます。特別なソフトも、難しい計算も必要ありません。

数字が出そろったら、同業他社との比較を確認しましょう。自社がどの位置にあるかが見えると、課題の輪郭がはっきりします。ここまでは、決算書さえあれば一人でも進められます。まずは手を動かしてみることが、理解への近道です。

非財務項目を対話で埋める進め方

次に取り組むのが、非財務の4視点です。ここは数字ではなく、言葉で埋めていきます。経営者の想い、事業の強み、取引先との関係、社内の体制。業務フローや商流を書き出しながら、自社の価値の源泉を整理します。

この作業は、一人より対話で進めるほうが深まります。社員や専門家と一緒に埋めていくと、思わぬ強みや課題が見えてきます。基礎からの進め方は、滋賀県中小企業団体中央会などの解説動画も参考になります。手を動かすほど、自社が見えてきます。

中小企業がローカルベンチマークを経営に活かすコツ

ローカルベンチマークは、一度作って終わりにすると効果が薄れます。定期的に見直し、社内や専門家と共有することで、経営の羅針盤になります。活かすためのコツをまとめました。

定期的に見直して変化を追う

大切なのは、定期的に見直すことです。年に一度でも作り直せば、自社の変化が数字と言葉で追えます。強みが伸びたのか、課題は解消したのか。時間の流れの中で自社を見れば、経営判断の精度も高まっていきます。

健康診断も、一度受けただけでは意味が薄いもの。継続してこそ、変化に気づけます。ロカベンも同じです。作りっぱなしにせず、経営のリズムに組み込む。その習慣が、じわじわと効いてきます。

専門家・金融機関と一緒に読み解く

もう一つのコツが、一人で抱え込まないことです。ロカベンは、専門家や金融機関と一緒に読み解くほど価値が高まります。第三者の視点が入ると、見落としていた強みや課題に気づけます。対話の道具として使うのが、賢い活かし方です。

「自社のことは自分が一番分かっている」と思いがちですが、外の目は思わぬ発見をもたらします。ロカベンを手に、信頼できる相手と話してみる。その一歩が、事業を前に進めます。まずは自社を知ることから、始めてみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q. ローカルベンチマークとは何ですか?

経済産業省がつくった企業の『健康診断』ツールです。財務の6指標と非財務の4視点から自社を見える化し、金融機関や支援機関との対話の入口として使えます。

Q. ローカルベンチマークでは何を見ますか?

財務分析の6つの指標(売上高増加率や営業利益率など)と、非財務の4つの視点(経営者・事業・企業を取り巻く環境・内部管理体制、業務フローや商流を含む)を見ます。

Q. ローカルベンチマークは何に役立ちますか?

自社の強みと課題を客観的に把握でき、事業の将来性を語れる形に整えられます。金融機関との対話や事業性評価融資、事業承継の準備などに活かせます。

Q. ローカルベンチマークは自分でも作れますか?

経済産業省が公開するツールを使い、財務データを入力して非財務項目を整理すれば、自社でも取り組めます。専門家と一緒に進めると、より深く読み解けます。

Q. ローカルベンチマークと事業性評価融資はどう関係しますか?

ローカルベンチマークは事業性評価融資の入口として設計されています。財務と非財務の両面を金融機関と共有できるため、担保に頼らない融資の対話に役立ちます。

取材を重ねるたびに感じるのは、自社を客観的に見つめられる経営者ほど、次の一手が的確だということです。ローカルベンチマークは、その「自社を知る」を助けてくれる道具です。数字と言葉の両面から、自社の強みと課題を見える化する。その積み重ねが、確かな経営判断につながります。まずは一枚、自社のロカベンを描いてみませんか。コントリは、その一歩に寄り添い続けます。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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