事業性評価融資とは|担保に頼らず自社の将来性で資金を引き出す仕組み

事業性評価融資とは|担保に頼らず自社の将来性で資金を引き出す仕組み

「担保に出せる不動産がない」「経営者保証が重くのしかかる」——資金調達の場面で、そんな壁に突き当たってきた経営者は少なくありません。事業性評価融資とは、担保や保証ではなく、事業そのものの内容や将来性を評価して行う融資のことです。決算書の実績だけでなく、強みや成長の見込みを見て貸す。そんな発想が、いま広がりつつあります。

本記事では、事業性評価融資の基本、従来融資との違い、銀行が見る観点、企業価値担保権との関係、そして評価されるための準備の順に、経営者の目線で整理していきます。専門用語は難しく感じるかもしれませんが、要点はシンプルです。少しでも次の一手のヒントになれば幸いです。

事業性評価融資とは|担保・保証ではなく事業の中身で貸す融資

事業性評価融資とは、不動産担保や経営者保証ではなく、事業そのものの内容や将来性を評価して行う融資を指します。過去の実績だけを見るのではなく、これからどう稼いでいくのかを含めて判断する。ここが最大の特徴です。まずは従来の融資と何が違うのか、表で整理してみましょう。

比較項目事業性評価融資従来の担保・保証依存の融資
主に見るもの事業の内容・将来性・稼ぐ力担保余力・過去の財務実績
担保・保証依存を和らげる方向不動産担保・経営者保証が前提
評価の材料財務+非財務(強み・顧客・体制)財務・資産中心
後押しする制度企業価値担保権(2026年5月施行)従来からの融資実務

※出典:金融庁「事業性に着目した融資実務」に関する公表資料 2024年をもとに整理

事業性評価融資の定義と『事業の中身を見る』という発想

事業性評価融資の核にあるのは、「事業の中身を見て貸す」という発想です。担保となる資産の多寡ではなく、その企業が何で稼ぎ、どこへ向かうのかを評価します。だからこそ、有形資産の少ない企業や成長途上の企業にもチャンスが開けてきました。

経営者向けの基礎知識動画でも、事業性評価は「事業性評価とは何か」という問いから丁寧にひもとかれています。別の解説では、事業性評価は企業価値の向上を支援することだと語られています。単なる融資審査の話ではなく、事業を伸ばすための対話。そう捉えると、この仕組みの意味が見えてきます。

なぜ今、事業性評価が広がっているのか

背景にあるのは、担保・保証に依存した融資への見直しです。土地を持たない企業や、技術・サービスに強みがある企業ほど、従来は資金を借りにくいという現実がありました。この構造を変えようと、国は事業性評価にもとづく融資を後押ししています。

前述のとおり、経営者保証に依存しない新規融資の割合は約5割まで高まっています(金融庁の活用実績調査 2024年公表)。国は保護から伴走へと支援の軸足を移してきました。事業性評価融資は、その流れを象徴する考え方だと言えるでしょう。担保を外す動きの詳細は、経営者保証ガイドラインの解説記事もあわせてご覧ください。

事業性評価融資と従来の融資(担保・保証依存)の違い

事業性評価融資と従来融資の違いは、「何を評価するか」に集約されます。従来は担保余力と保証を前提としてきましたが、事業性評価融資は事業の将来性を軸に据えます。ここでは、その違いを経営者への影響とあわせて見ていきましょう。

何を評価するかの違い(資産か、事業の将来性か)

従来の融資が重視してきたのは、「持っている資産」でした。土地・建物・在庫といった担保に価値を見いだし、そこに融資枠を紐づけます。一方、事業性評価融資が見るのは「これから稼ぐ力」です。同じ融資でも、評価の起点がまるで異なります。

例えば、独自技術で安定した受注を持つ小さな製造業を思い浮かべてください。設備は多くなくても、技術と顧客基盤という強みがあります。従来の物差しでは評価しづらかったこの価値が、事業性評価融資では前面に出てきます。強みが正当に見てもらえる。そこに、この融資の意義が宿ります。

経営者保証への依存度の違い

もう一つの大きな違いが、経営者保証への依存度です。経営者保証とは、会社の借入を経営者個人が肩代わりして返す約束のこと。万一のときに個人資産まで及ぶため、思い切った挑戦や円滑な事業承継の妨げとなってきました。

事業性評価融資は、事業の将来性を軸にするため、こうした個人保証への依存を和らげる方向に働きます。資金調達の専門家も、事業性評価融資を「担保・保証に頼らない融資判断」と位置づけて解説しています。ただし、保証がゼロになると決まったわけではありません。個別の条件は、金融機関との対話で詰めていく必要があります。

銀行は事業性評価で何を見ているのか(評価の観点)

事業性評価で銀行が見ているのは、決算書だけでは表れない「事業の稼ぐ力」です。財務の数字に加えて、市場での立ち位置や顧客との関係、独自の強み、経営体制までを含めて判断します。ここでは評価の観点を具体的に掘り下げます。

事業性評価で銀行が見る観点(財務・非財務 × 現在・将来)
財務 × 現在業績・資金繰り直近の売上・利益・借入の状況など、いまの経営の健全性を確認します。
財務 × 将来事業計画の数値将来のキャッシュフローや投資計画など、数字で示す成長の道筋を見ます。
非財務 × 現在強み・顧客基盤技術・ブランド・顧客との信頼関係など、いま持っている稼ぐ力を評価します。
非財務 × 将来成長ストーリー・経営体制誰にどう価値を届けて伸びるのか、それを支える体制まで見られます。
財務だけでなく非財務の強みまで、伝わる形で説明できるかが評価を左右します

財務と非財務の両面から見る評価の視点

銀行はまず、財務の健全性を確認します。業績の推移、資金繰り、借入の状況。これらは融資判断の土台です。しかし事業性評価では、そこで終わりません。数字の背後にある非財務の強みまで踏み込んで見ようとします。

非財務の強みとは、技術力、顧客との信頼関係、ブランド、そしてそれを動かす経営体制のことです。実務のQ&A動画では「事業性評価での銀行融資は実際に使われているのか」という論点も語られ、金融機関側が抱える評価の難しさにも触れられています。評価は、貸す側と借りる側の対話の中で育っていくものだと分かります。

自社の強みを『伝わる形』にする重要性

ここで見落としてはいけないのが、強みは「伝わって初めて」評価されるという点です。どれほど優れた技術や顧客基盤があっても、経営者の頭の中にあるだけでは伝わりません。数字と言葉に落とし込み、相手が理解できる形にする。この作業が評価を左右します。

私がこれまで経営者の方への取材を重ねるなかで、「うちの強みをうまく説明できない」という悩みを何度も伺ってきました。強みは、語れる形にするだけで武器に変わります。事業性評価融資に向き合うことは、自社を見つめ直すきっかけにもなるのです。

事業性評価融資と企業価値担保権の関係

事業性評価融資は「考え方」、企業価値担保権は「担保の仕組み」です。2026年5月に施行された企業価値担保権は、事業性評価融資を後押しする受け皿として位置づけられます。両者は対立するものではなく、補い合う関係にあります。

事業性評価融資(考え方)と企業価値担保権(制度)の役割分担

整理すると、事業性評価融資は「事業の中身で貸す」という判断の考え方を指します。これに対して企業価値担保権は、事業全体を一体で担保にできる新しい制度です。考え方を実現するための、具体的な担保の受け皿。それが企業価値担保権だと捉えると、関係がすっきりします。

『国が進める新しい融資の形〜事業性融資、企業価値担保権〜』として、両者をセットで語る解説も出てきました。中小企業診断士による動画でも、2026年5月開始の企業価値担保権が事業性融資の文脈で紹介されています。制度の詳しい中身は、企業価値担保権とは何かを解説した記事もあわせてご覧ください。

国が進める『事業性融資』の全体像

国は、担保・保証に依存しない「事業性融資」を政策として推進しています。事業性評価融資という考え方を土台に、企業価値担保権という制度を用意し、伴走支援でそれを支える。この三つが噛み合うことで、中小企業の資金調達の選択肢が広がってきました。

制度の詳細は、金融庁の解説ページでも確認できます(金融庁「事業性に着目した融資実務」)。国の動きを知っておくことは、金融機関との対話でも役立ちます。政策の追い風を、自社の資金調達にどう活かすか。そこを考える価値は大きいと言えます。

中小企業が事業性評価で評価されるための準備

事業性評価は「説明できて初めて」評価につながります。月次決算で数字を早くつかみ、事業計画で将来性を言語化する。この二つが、そのまま評価の土台になります。今日から着手できる準備を具体的にまとめました。

事業性評価で評価されるための3ステップ
1月次決算で数字を早くつかむ毎月締めて業績を把握し、金融機関に「今」を語れる状態をつくります。
2将来性を言語化する事業計画とローカルベンチマークで、強みと成長の道筋を伝わる形に整えます。
3継続的に対話する金融機関や認定経営革新等支援機関と、決算期以外も関係を育てます。

月次決算で自社の数字を早くつかむ

最初の一歩は、月次決算で自社の数字を早くつかむことです。毎月締めて業績を把握していれば、金融機関に「今」を語れます。年に一度の決算だけでは、事業の勢いや将来性まで説明しきれません。数字を味方につけること。それが、将来性を語るための土台になります。

月次決算は、経営判断のスピードも上げてくれます。数字が早く見えれば、手を打つのも早くなる。事業性評価融資のためだけでなく、経営そのものを強くする習慣だと考えていただけたらと思います。

事業計画とローカルベンチマークで将来性を語る

次に取り組みたいのが、事業計画による将来性の言語化です。どんな強みで、誰に、どう価値を届け、どう成長していくのか。この物語を数字と結びつけて示せる企業は、事業性評価でも高く評価されやすくなります。

言語化の助けになるのが、経済産業省の「ローカルベンチマーク」です。これは企業の健康診断ツールで、財務指標と非財務の視点から自社を見つめ直せます。金融機関との対話の入口としても使われています。強みを語る準備として、活用してみてはいかがでしょうか。資金面の全体設計は経営者の保険の選び方もあわせて検討すると視野が広がります。

事業性評価融資を受けるための金融機関との付き合い方

事業性評価融資は、日頃の対話の積み重ねが効いてきます。決算のときだけ会うのではなく、事業を継続的に理解してもらう関係づくりが評価につながります。ここでは、金融機関や支援機関との向き合い方を見ていきましょう。

決算期以外も自社を伝える関係づくり

大切なのは、決算期以外も自社を伝えるという姿勢です。良いニュースも課題も、折に触れて共有しておく。そうすることで、金融機関は事業の実像を理解しやすくなります。事業性評価は、一度きりの審査ではなく、継続的な対話の中で深まっていくものだからです。

資金調達の専門家も、銀行取引を良好にしてスムーズに融資を受ける方法として、日頃の関係づくりの重要性を説いています。信頼は、一朝一夕には築けません。だからこそ、早めに動き出す価値があります。

認定経営革新等支援機関などの専門家を活かす

一人で抱え込む必要はありません。認定経営革新等支援機関のような専門家に相談すれば、事業計画づくりや資金調達の設計を伴走してもらえます。認定経営革新等支援機関とは、国が認定した税理士や金融機関などの支援機関のことです。

「一緒に考えてくれるパートナーを持つ」ことも、立派な経営判断です。事業性評価融資という選択肢を、信頼できる専門家とともに検討していきましょう。承継や資金の全体像は事業承継・M&A補助金の活用ガイドも入口として役立ちます。

よくある質問(FAQ)

Q. 事業性評価融資とは何ですか?

不動産担保や経営者保証ではなく、事業の内容や将来性を評価して行う融資のことです。決算書の実績だけでなく、強みや成長の見込みを見て貸す考え方を指します。

Q. 事業性評価融資と普通の融資は何が違いますか?

普通の融資が担保余力や保証を重視するのに対し、事業性評価融資は事業の将来性を重視します。担保が少なくても、将来性を説明できれば評価される道が開けます。

Q. 事業性評価融資と企業価値担保権はどう関係しますか?

事業性評価融資は「考え方」、企業価値担保権は2026年5月に施行された「担保の仕組み」です。企業価値担保権は事業性評価融資を後押しする受け皿として位置づけられます。

Q. 事業性評価で銀行は何を見ていますか?

決算書などの財務面に加え、市場での立ち位置・顧客との関係・独自の強み・経営体制といった非財務面も見ています。これらを伝わる形で説明できるかが鍵になります。

Q. 事業性評価で評価されるには何を準備すればよいですか?

月次決算で数字を早くつかみ、事業計画で将来性を言語化することです。ローカルベンチマークなどの対話ツールを使い、金融機関との関係づくりを続けることも役立ちます。

取材を重ねるたびに感じるのは、中小企業の本当の価値は決算書の数字だけには収まらない、ということです。技術、人、顧客との信頼——そうした目に見えない強みが、これからは融資の場面でも正しく評価されようとしています。事業性評価融資は、その扉を開く考え方です。自社の未来を自分の言葉で語る準備を、今日から少しずつ始めていきましょう。コントリは、その一歩に寄り添い続けます。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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