
「勧めること」と「やっていること」が一致したとき、事業の輪郭は変わる
仕事をしていると、たまに自分でも不思議に思う瞬間があります。
人には熱心に勧めているのに、自分はまだ完全にはやれていない。そういう状態って、案外ありふれているんですよね。悪意があるわけでも、怠けているわけでもない。ただ、自分のところに手が回らないまま、目の前のお客様への提供を優先してしまっている。
でも、その状態を放置していると、事業の言葉から少しずつ熱が抜けていくような感覚があるんです。
僕はこの5月、その違和感に正面から向き合うことにしました。
「勧める側」の姿勢が、事業の輪郭をつくる
コントリでは、中小企業の経営者向けに「ハッシンラボ Premium」というサービスを提供しています。AIを使って自社の発信を内製化する、そのための環境と知見をまとめたサブスクです。
このサービスを設計するなかで、僕は何度も自分に問い直してきました。
勧める側として、自分はどこまで実践できているか。
これは小さい問いに見えて、実は事業の輪郭そのものを決める問いなんです。勧めている人の生活と言葉が一致しているとき、相手は「この人の話を聞いてみよう」と感じる。逆に、ズレがあると、どんなに正しいことを言っていても、なんとなく届きが弱くなる。
これは経営者同士で話していると、いつも感じることです。商品やサービスの中身よりも、その人の姿勢から事業の信頼度を測っている。そういう瞬間が、本当に多い。
教える事業の落とし穴
教材やノウハウを売る事業には、固有の落とし穴があると思っています。
それは、「教える側」が「やっていない側」になりやすいということ。
最初は実践者が、自分の経験を教材化するところから始まる。でも事業が回り始めると、教えること自体が業務の中心になって、実践する時間がどんどん少なくなっていく。気づいたときには、過去の経験を切り売りしているだけの状態になっている。
これは構造的な問題で、本人の意志だけでは抗いにくい。だからこそ、意識的に「実践する側」に戻り続ける仕組みを、自分の中に持っておく必要があると考えています。
僕の場合、それが今回のSEO記事の自動化でした。
自社の発信を、自分で自動化してみた
5月22日と23日の2日間、僕はClaude Codeという開発ツールを使って、コントリのSEO記事制作プロセスをまるごと自動化しました。
これまで僕は、毎日朝の2時間を自社のSEO記事執筆に充てていました。その枠が、今日からは不要になっています。先週公開した「内製化メリット・デメリット」「内製化ロードマップ」という記事も、実はこの自動化の最初のアウトプットでした。
何が変わったかというと、勧めている内容と、自分の生活が一致したということです。
「AIで発信を内製化しましょう」と言っている自分が、自社の発信もAIで自動化している。当たり前のようで、ここに辿り着くまでに時間がかかりました。理屈ではわかっていても、手を動かす優先順位を変えるのは、思った以上に難しい。
でも、自分の生活の中に置いた瞬間、勧める言葉の質感が変わったんです。情報を伝えているのではなく、隣で同じ景色を見ている感覚に近づいた。
貢献ドリブン経営の延長線上にあるもの
この決断は、僕にとっては「貢献ドリブン経営」という考え方の自然な延長でした。
儲かるからやるんじゃなくて、貢献を続けるためにやる。そういう順序で動いていると、自然と「勧めることと、やっていることを一致させる」という選択になります。だって、貢献を続けたいなら、伝える言葉に重みがあったほうがいい。重みは、自分が実践しているという事実からしか生まれない。
これは精神論ではなく、構造の話なんです。
事業を3年、5年、10年と続けていくとき、その事業の輪郭を支えるのは、結局のところ「この人は本当にそう思っている」という相手側の納得感です。納得感は、どこから生まれるか。たぶん、勧めていることと、やっていることのズレの少なさから生まれる。
短期的には、ズレがあっても回ります。でも長期で見ると、そのズレは確実に事業のエネルギーを削っていく。だから、ズレを見つけたら、可能な限り早く解消したほうがいい。それが今回の判断でした。
環境を整えれば、誰でも実践者に戻れる
ひとつ強調しておきたいことがあります。
実践し続けることは、根性論ではない、ということ。
意志の力で頑張り続けるのは、長続きしません。環境を整えることのほうが、ずっと持続性があります。自社の発信をAIで自動化したのも、根性で毎日書き続けるのではなく、書き続けられる環境を作るための選択でした。
これは中小企業の経営者にも、まったく同じことが言えると思っています。
社員に「発信しよう」と呼びかける前に、発信できる環境を整える。テンプレートを用意する、AIプロンプトを共有資産にする、サポートの仕組みを作る。そういう環境さえあれば、能力の差ではなく環境の差で、発信は継続できるようになります。
ハッシンラボ Premiumが目指しているのも、結局のところそこなんです。能力差を埋めるのではなく、環境差を埋める。誰がやっても発信が続く状態を、事業の中に組み込む。
「先に出す」が、結局いちばん早い
もうひとつだけ、書き残しておきたいことがあります。
商売は貸しづくりだと、僕は思っています。先に出して、先に渡して、結果が返ってくるのは後。このスパンを受け入れられるかどうかが、長く続く事業を作れるかどうかの分かれ目だと感じています。
今回の自動化も、短期で見ればコストがかかっただけです。でも3年、5年のスパンで見れば、これが自社の発信品質を底上げし、勧める言葉の説得力を高め、結果としてサービスの信頼につながっていく。
そう信じられるかどうか。
すぐに結果を求める人には、向かない考え方かもしれません。でも、長く事業を続けたい経営者には、きっと伝わる感覚だと思っています。先に出すというのは、自分の側に在庫を持つことに似ています。在庫がある人は強い。誰かが必要としたときに、すっと差し出せるからです。蓄積している人ほど、ここぞというときに動ける。これは資金や設備の話ではなく、信頼や姿勢の話だと思っています。
勧めることを、自分でやる。
たったこれだけのことが、事業の輪郭を変える。
今、そう実感しているところです。

