「スマホで全部やれます」の落とし穴——AI時代に経営者が握るべき生産の場所
経営者と話していると、最近こんな言葉をよく聞きます。
「今はスマホでなんでもできるから、PCはほとんど触らなくなったよ」
たしかに、メールも決裁も予定調整も、手のひらの中で完結する時代です。便利になった。それは間違いない。ただ、AIをどう事業に組み込むかという話になると、僕はこの「スマホで全部やれます」に、少しだけ立ち止まってほしくなるんです。
便利さと、生産性は、似ているようでまったく別の話だったりするので。
消費の道具と、生産の道具は分けて考えたい
スマホという道具は、よくできています。受け取ることに、とことん最適化されている。流れてくる情報を、心地よく、途切れなく届けてくれる。指一本で世界とつながる。
でも裏を返すと、スマホは「受け取らせる」のがうまいんです。気づけば三十分、流れてくるものを眺めていた。経験のある方は多いと思います。
ここで僕が線を引きたいのは、デバイスの優劣ではありません。消費で終わるのか、生産に向かうのかという、使い方の姿勢のほうです。同じ一時間でも、受け取って消えていく時間と、何かが手元に残る時間がある。経営の時間は有限なので、この差は積み重なると、とんでもなく大きい。
スマホは消費に強く、PCは生産に強い。それぞれの得意を、混同せずに使い分けたいだけなんです。
スマホ=消費
受け取る・眺める・反応する
- 流れてくる情報を浴びる
- 一往復のやり取りで完結
- 気づけば時間が溶けている
PC=生産
作る・組む・動かす
- 資料を横断して並行処理
- AIを相棒に仕事を動かす
- 成果が手元に積み上がる
経営者の時間という観点で見ると、ここはもっとシビアな話になります。社長の一日は、ほとんどが受け取ることで埋まっていく。報告を受け、相談を受け、情報を受け、判断を求められる。意識しないと、丸ごと消費の側に流されてしまう構造の中にいる。だからこそ、一日のどこかで「生み出す側」に座り直す時間を、自分で設計しておく必要があると感じています。道具の選び方は、その設計の入り口なんです。
AIを「賢い検索」で終わらせていないか
ここ数年で、AIはすっかり身近になりました。多くの社長が、すでにスマホでAIに質問を投げています。
ただ、そこで起きているのは、たいてい一往復の会話です。聞いて、答えをもらって、コピーして、おしまい。これはこれで役に立つけれど、正直に言えば「賢い検索」の域を出ていない。受け取って終わる、消費のAI活用です。
AIを本当に事業の力にするなら、使い方の次元が変わります。複数の資料を横断させ、いくつもの作業を並行で走らせ、出てきた成果を確かめて、また指示を返す。AIを相棒にして、仕事そのものを動かしていく。この生産的な使い方は、今の技術では実質PCの上でしか成立しません。
スマホでのAIは消費寄り、PCでのAIは生産寄り。同じ「AIを使う」でも、出てくる成果は驚くほど違ってきます。
コントリが「制作の壁」を越えられた理由
これは理屈ではなく、コントリ自身が体験したことです。
僕らの事業の中心には、記事制作があります。ずっとつきまとっていたのが、制作にかかる工数という壁でした。人の手が増えなければ、こなせる量も増えない。多くの制作会社が抱える、構造的な制約です。
その壁を、僕はPCの上のAIで越えました。今はMac一台とAIで、複数のサイトの運用を、ひとりで回せています。少し前なら何人分もの手が必要だった仕事です。生産の道具を、生産の場所でちゃんと握ったから起きたこと。それ以上でも以下でもありません。
経営者と向き合う中で感じるのは、AIに対する期待と現実のあいだに、この「どこで使うか」のズレが潜んでいる、ということ。スマホで触って「思ったほどじゃないな」と判断してしまうのは、本当にもったいない。
しかも、この壁を越えると見えてくる景色が変わります。これまでは「人を増やさないと量は増えない」が前提だったので、事業の伸ばし方も人の確保とセットで考えるしかなかった。その前提が外れると、ボトルネックが移動するんです。制作の量ではなく、何をつくるかを決める判断のほうへ。つまり、本当に効く制約は、もう手数ではなく、経営者がどれだけ深く考えられるかになってくる。これは小さな会社にとって、けっこうな朗報だと思っています。
空いた時間を、考える時間に変える
AIが情報収集と制作を肩代わりしてくれた結果、僕の手元には時間が戻ってきました。
ここで経営者が問われるのは、その時間の使い道だと思っています。今日参加したある講演でも、まさにそこが話の核心でした。これからの経営に必要なのは、情報を集める量ではなく、集まった情報をもとに深く考え、自分で意思決定する力だ、と。
調べることはAIに任せられる。けれど、何を選び、何を捨て、どこに賭けるかを決めるのは、最後まで経営者自身の仕事です。だから僕は、空いた時間を、新しい情報を浴びることではなく、考えること・決めることに充てたい。
少し前までは、情報をたくさん持っている人が強かった。知っていること自体が、そのまま競争力だった時代です。でも、誰もが同じAIに同じ問いを投げられるようになると、情報の量では差がつかなくなる。差がつくのは、同じ材料を前にして、誰よりも深く考え抜き、腹をくくって決められるかどうか。情報の優位から、判断の優位へ。経営の勝負どころが、静かに移っているのを感じます。
道具が生産を肩代わりしてくれた先で、人間に残る最大の生産は、考え抜いて決断することなんだと思うんです。
発信を「消費の延長」で終わらせないために
最後に、コントリのミッションにも触れさせてください。僕らは「中小企業の発信を変える」ことを掲げています。
多くの会社の発信が、スマホで誰かの投稿を眺めて終わる、消費の延長で止まっている。眺めて、焦って、また眺める。けれど発信は本来、自社の想いを言葉にして届ける、まぎれもない生産の行為です。受け取る側から、生み出す側へ。ここを変えるのに、PCとAIの組み合わせはこれ以上ない武器になります。
コントリの「ハッシンラボ」も、発信を一過性の消費で終わらせず、社内に根づく生産活動へと変えていくための場として育てています。経営者の想いを届ける仕組みを、技術と一緒につくっていきたい。
もし発信のことで手が止まっているなら、気軽に声をかけてほしいなと思います。受け取るだけの会社から、生み出す会社へ。その転換に、僕らも伴走していきたいと思っています。
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