熊谷正寿と藤田晋に共通する「6つの再現可能な原則」を、経営者目線で分解する

経営者を100社以上取材してきて、ひとつ確信していることがある。うまくいっている人のやり方には、意外なほど「再現できる型」がある、ということ。

けさ、GMOインターネットグループの熊谷正寿さんと、サイバーエージェントの藤田晋さんを、あらためて並べて研究してみた。二人は経営スタイルがまるで違う。にもかかわらず、共通する原則が6つ、くっきり見えてきた。しかもそのどれもが、才能ではなく「やるかどうか」で真似できるものだった。

コントリという会社をどう育てていくか。その視点で、この6つを分解してみます。

未来を紙に固定して、そこから逆算する

一つ目は、成功した後の状態を先に決めてしまうという原則。

熊谷さんは若い頃、手帳に自分の未来年表を書いたと語っている。何歳までに会社を設立し、上場するか。著書『一冊の手帳で夢は必ずかなう』では、夢をかなえる力は想起した回数に比例する、脳は忘れるから書いて読み返す、という趣旨のことを述べている。

藤田さんは『ビジョナリー・カンパニー』に触発され、「21世紀を代表する会社を創る」という旗を創業から掲げ続けている。未来から逆算して、今日の一手を決める。

多くの経営者は、手元の資源から「できること」を積み上げる。この二人は逆で、なりたい状態から引き算している。コントリでも、目先の売上ではなく「どんな会社になっていたいか」を先に置くようにしています。

理念を、言葉にして組織へ流し込む

二つ目は、理念やビジョンを言語化し、組織に浸透させる仕組みを持っていること。

熊谷さんはスピリットベンチャー宣言として、価値観から行動規範までを明文化している。藤田さんは、いわゆる「渋谷ではたらく社長」のブログを黎明期から続け、会社の方向性を発信しながら社内の意志を揃えてきた。

理念は、額縁に入れて飾っても意味がない。毎日どこかで触れられる状態にして初めて、判断の基準になる。ここは事業を続けるほど痛感するところで、コントリの「想いを伝えることが、未来をつくる」という言葉も、社内で繰り返し使うことでようやく血が通ってくる。

人を、器で選ぶという判断

三つ目は、能力よりも人格・カルチャーフィットで人を集めていること。

熊谷さんは従業員を人財、パートナーと呼び、人は感情の生き物で、本人次第で生産性は大きく変わると語る。藤田さんは「素直でいいやつ」「一緒に働きたいと思えるか」を採用の芯に置いている。

スキルは後から伸ばせる。でも、同じ方向を向けるか、同じものを大切だと感じられるか。そこは簡単には変えられない。出会いの質をどう設計するか、という話に近くて、これはコントリが取材の現場でいちばん大事にしていることでもあります。

発信を、経営資源に変える

四つ目は、自ら情報を発信し、それをブランドや採用力に変えていること。

熊谷さんはXで多くのフォロワーに向けて、経営方針から趣味まで発信している(@m_kumagai)。藤田さんはアメブロの黎明期から社長ブログを続け、発信することの効用を自ら実証してきた。

発信は、コストではなく資源になる。ここは、僕がコントリでいちばん伝えたいところ。中小企業の経営者ほど、伝わっていない魅力を山ほど抱えている。製品への並々ならぬこだわりも、自社への誇りも、外からはほとんど見えていない。それを継続できる仕組みにできるかどうかで、数年後の景色が変わってくると思っています。一度の発信で終わらせず、届いた実感が積み上がるところまでやりきる。そこまで含めて、発信という経営資源なんだと考えています。

決断を型に乗せ、長く続ける

五つ目と六つ目は、セットで語りたい。判断を事前のルールに乗せることと、超長期でコミットし続けることです。

藤田さんは、事業から撤退する基準をあらかじめ決めていることで知られる。コミュニティは4ヶ月で月間PV3000万、ゲームは月商1000万を超えなければ撤退――と語られている(具体的な数値がどの時期のものかまでは、僕も確かめきれていない部分がある)。ここで大事なのは数字そのものより、「感情ではなく、決めておいた型で降りる」という設計だと思う。うまくいっていない事業ほど、人は情が移って引き際を見失う。撤退ラインを先に引いておけば、その迷いを構造で減らせる。だから次の一手にも早く動ける。

熊谷さんは、目標達成のための行動指針や、55年計画という超長期の時間軸を掲げていると言われる(現行値は公開情報を追う必要がある)。1年で見れば誤差のような差でも、何十年という単位で積み上げれば、複利のように効いてくる。時間を、敵ではなく味方に変えている。

この二つを見て感じるのは、続けられる仕組みを持っている人は強い、という当たり前の事実。根性で続けるのではなく、続く形にしてから走っている。ここは、発信をなかなか続けられない中小企業の現場を見てきた身として、いちばん実感するところです。

対比してみると、面白い違いも見えてくる。熊谷さんは固定した設計図に沿って進む逆算型、藤田さんは変化を前提に軌道を修正していく型。原点の動機も、片方は自己実現を突き詰めるベクトル、もう片方は勝負を挑むベクトルに見える。武器の置き場所も違って、熊谷さんは個人の手帳という自己管理ツールに、藤田さんは組織の事業ポートフォリオに強みを宿している。

同じ原則でも、宿し方は人それぞれでいい。だからこそ、真似ることは物真似で終わらない。型を受け取ったうえで、自分の会社の形に合わせて置き直せばいいんです。

こうして6つを分解してみると、どれも特別な才能を必要としていなかった。未来を先に決める。理念を言葉にする。人を器で選ぶ。発信を続ける。型で決断する。長く続ける。ぜんぶ、素直にやるかどうかの問題だった。守破離でいえば、まずは「守」。プライドを一度脇に置いて、うまくいっている型をそのまま受け取る。崩すのは、その先でいい。

コントリも、こうして学んだことを少しずつ実装しながら、経営者の想いが「届く」その先まで、一緒に伴走していきたいと思っています。

(出典:熊谷正寿『一冊の手帳で夢は必ずかなう』ほか公開情報/藤田晋の発言・公開情報。数値・時系列は各出典の確認が前提です)

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