経営者インタビュー

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「セキュリティ被害のほとんどはルール未定着の人災」──情報セキュリティマネジメントシステム認証支援で5,500社を支えた経営哲学

「ルールを守っていれば、事故は基本的に起きないはずなんです。交通事故と同じで、お互いが100%ちゃんと守っていれば、事故は起きない。この考え方が、自分はすごく腑に落ちるんです」——。

穏やかに、しかし確信を持った口調でそう語るのは、株式会社UPF代表取締役の仲手川啓氏です。1978年、神奈川県に生まれた仲手川氏は、プライバシーマークやISMS(ISO27001)といった情報セキュリティマネジメントシステム認証の取得・運用支援ひと筋。東京・名古屋・大阪・福岡の4拠点、正社員約40名、その他全国に業務委託パートナーを抱える体制で、これまでに累計5,500社(2026年7月現在)を超える企業を支援してきました。

仕事はニッチで極めて地味、華やかな市場でもありません。でも誰も出来ないレベルでひたすらやり続けてきたからこそ、質では絶対に負けるわけがない。その言葉には一本の芯が通っています。「事故の原因はルールからの逸脱」という問題意識、そしてAI時代にさらに重要視されつつある「個人の倫理」まで。時代が変わっても変わらない経営哲学に迫ります。

インタビューに答える株式会社UPF 仲手川啓氏

「当時はホワイトカラーの仕事をするとは思ってもいなかったです」──140年続く布団屋と、現場系の父の背中

「大学時代は?」という問いに、仲手川氏はさらりと答えます。「実は私、10代で社会に出てるんです」。

実家は代々、親戚で寝具販売の商売を営んでおり、父は内装工事の仕事を手がけていました。「今思うと、父はいつも我々家族に商売の話をよくしてくれていました」。そう振り返ります。

「父も祖父も、いわゆるサラリーマンではなかった。それを見ていたので、大きな組織の中で出世を目指していくという考えは、当時の自分はしたくないなと、どこかで思っていたのかもしれません」。父からは「勉強しろ」と言われた記憶もなく、好きにやらせてもらっていたといいます。

父を尊敬していた仲手川氏は「将来は職人の”親方”として大成したい」と、建築現場で修行を重ねます。しかし、仕事は楽しいながらも、労働集約での体力勝負と、将来の自分の理想像と日々向き合う中で、少しずつ違和感が芽生えていきました。

6カ月でトップへ──「目標」の裏にあったコツコツ愚直

転機は20歳のときに訪れます。東京で完全成果報酬制(フルコミッション)の携帯電話販売会社に勤めていた地元の友人から、「面白い仕事がある」と誘われたのです。「二つ返事で東京に行きました」と仲手川氏は笑います。

通信バブルの勢いのなか、その会社には将来の起業を夢見る野心的な若者が集まっていました。同世代のスタッフが200人ほどいたなかで、仲手川氏はわずか6カ月でトップ層に駆け上がります。

「苦労という感じはあまりなくて、ホワイトカラーの仕事が楽しくて楽しくて。これを頑張れば数字も順位も上がる、上がれば稼げる。とにかくがむしゃらにトコトンやるの一心だったと思います」。軽やかに笑いながら、仲手川氏はそう明かします。ただ、仕事の中身以上に大きかったのは、環境でした。「地元にいたら知り合えないような野心のある同世代がたくさんいて、そういう環境に自分を置いたこと。それが、自分の最初の転機だったと思っています」。

その「トコトンやる精神」の裏には、後の経営にまっすぐつながる芯もありました。「目の前のことをコツコツ、貪欲に。信じた道を貫く。余計なことを考えず、『これをやればいい』という方向が見つかったら、そこを愚直にやり続ける。大事なのは一点集中で、よそ見をして集中力が欠けるのが一番良くないと思っているんです」。この「コツコツ愚直」は、今の経営にも変わらず流れています。

この会社での日々は、もう一つの土台にもなりました。「実は、社外にも良い人脈がたくさんできたんです」。仲手川氏はそこで、企業のトップや経営層とのつながりを得て、それがやがて独立後の事業へとまっすぐつながっていきました。

「認証を取得したはいいが運用していない会社が多い」が、事業の芯になった──実務屋が認証の世界で見たもの

2005年、仲手川氏は独立します。最初の事業は、通販業者や広告代理店を相手にした、保有リストを使ったリピート戦略の立案と、ダイレクトメール(DM)の発送代行、いわゆるデータベースマーケティングでした。大量の顧客名簿を預かり、大切に活用し、コスト削減をしながら反響アップの成果を出す。「裏方の実務屋」としての出発です。

やがて主軸に据えたのが、情報セキュリティ認証の支援でした。プライバシーマークやISMSをはじめ、各種ISO認証、TISAX(自動車業界向け)やPCI DSS(カード会社向け)、AI利用のマネジメントシステム認証であるAIMS(ISO42001)まで、今では扱う認証は20カテゴリーほど。「いわゆるセキュリティ系マネジメントシステム支援の専門会社です」と仲手川氏は説明します。

こうした認証は、書類作成、社員教育、仕組みづくり、申請、審査通過まで、一連の流れに手間と労力がかかり、面倒です。中小企業からすると、認証の中身そのものは直接お金を生むわけではないのに、取らなければ仕事がもらえない、入札に参加できない、しかも社内で担当できるのはリーダークラスで報酬も高い優秀な人材に限られる、という現実がある。「それを私たちが、めちゃくちゃ低コストで代行(アウトソーシング)するんです」。

この仕事に打ち込むきっかけになったのは、「当時は形だけの認証が多い」ことへの、強い違和感でした。「規程を作っただけで、きちっと運用できていない会社が結構多いんですよ。立派な規程ができても、やらなければ意味がない。もっときちんと運用すれば、仕事自体のマニュアルとしても機能して効率化も進むし、事故も起きないので余計なロスタイムもなくなる。アピールすればするほど取引先からも信頼されて会社の評価は上がり、業績にも影響する。もったいないんです。宝の持ち腐れというか。これをトータルで支援している会社がなかったので、めっちゃチャンスがあるなと思いました」と仲手川氏は言います。

創業間もないころ、当時仲の良かった経営者仲間が立てていた「コストをかけて作った立派な経営計画書」が、結局は実行されずに終わっていく光景を見てきたことも、その思いを後押ししました。「大手のコンサル会社に数百万、数千万円かけても、実行されなければ意味がない。それでいいのか、と思っていました」。

ルールを守れば事故は起きない。「この考え方が理にかなってる」

なぜ、認証という地味な世界に、これほど信念を注ぐのか。仲手川氏の答えは明快でした。

「PマークやISMSの規格に沿って社員マニュアルを作って、決められたことを社員全員がちゃんと回していけば、基本的に事故は起きないはずなんです。交通事故と同じで、お互いがルールを守っていれば、絶対に起きない。そこから外れる人がいるから、原因があるから事故が起きる。つまりハッキングもウイルス感染も、結局はたいてい人災なんですよ」。

だからこそ、ルールを徹底し、それが回っている状態に意味がある。「自分たちで勝手に作ったルールではなく、プライバシーマークやISOのような第三者認証の基準がある。それは、仕事を発注する側も安心できることなんです。この考え方は、すごく理にかなっている。だから、これをもっと多くの組織に普及させたいんです」。力を込めて、仲手川氏はそう言い切ります。

その信念は、支援のスタイルにも表れています。UPFは、取得して終わりにせず、更新(Pマークは2年に一度、ISMSは3年に一度)まで運用も伴走します。担当コンサルタントに加えてコンサルタントマネージャー、アシスタントがつく複数人体制で、お客様がいつでもすぐに相談できる関係を保つ。「1人担当だと、何社も抱えていて、すぐ連絡が取れなかったりする。そのお客様が抱えるストレスが、嫌だったんです」。

情報セキュリティに特化して再現性を高めたことで、料金は大手コンサルの約3分の1に。さらに、在籍する社員コンサルタントには認定審査機関の審査員資格を「社員研修の一環」として取得させ、最新の審査傾向を踏まえた最短距離での取得を実現しています。「実際、『UPFが支援に入っている』となると、審査での指摘も少なくなる。そこが好評をいただいています」。

累計5,500社を超える支援(2026年7月現在)。特にプライバシーマークでは、都内で3割ほどのシェアをいただいているといいます。「この仕事はケースの数が重要なんです。我々が多くのシェアを取れば、それだけ多くのケースが貯まる。貯まれば貯まるほど強くなるんです。だからこそ、もっとシェアを取る必要がある。ISMSや他のカテゴリーではまだトップと言えるシェアではなく、伸びしろはまだまだあるので、もっと取っていきたいです」。

AI企業になるのではなく、AI企業を支える。「ずらす」弱者の戦略

なぜ、こうしたニッチな領域で戦うのか。その判断の背骨には、ランチェスター経営の「弱者の戦略」があります。

「起業した当時、いろんな本を読んでいて、『弱者の戦略』という言葉にピンときたんです」。仲手川氏は少し恥ずかしそうに笑いながら明かします。今でも年に1回は、竹田陽一氏の『ランチェスター弱者必勝の戦略』を読み返しているといいます。DM事業の時代から、データベースマーケティングでも特定の業種・業態だけを狙うターゲティングを徹底してきました。

その発想は、AIの時代にも一貫しています。「たとえば今なら、みんな『自分たちもAI企業にならなきゃ』とする。でも私たちは、AI企業になるのではなく、『AI企業を支える企業になろう』と考える。何かをやるとき、ちょっとだけずらすんです。このAI時代に、我々が経験を活かせることってなんだっけ、とひたすら考えるんです」。

決して爆発的に儲かる市場ではありません。それでも、確実に市場があるのなら、確実に積み重なる。認証支援の単価は1社あたり数十万円ほどを、認証の更新のタイミングでリピートしていただく。「1回あたりは大きくない。でも、この『積み重なる』ことに気づいたので、アクセルを踏みました。センターピンは、一度ご縁をいただいたお客様に、次の更新も『UPFにお願いしたい』と感じてもらうこと。人があまりやらないこと、『それって儲かるの?』『今さらやるの?』と言われるようなことにこそ、勝機があったんです」と仲手川氏は振り返ります。

飲み会より、仕組み。理念を「評価」に落とす理由

「仕組み化が、かなりキーワードかもしれません。こういう仕事をしているので、いろんなことを仕組み化するのが好きなんだと思います」。そう話す仲手川氏の組織づくりは、同社が顧客に提供する概念そのものを、自社にも当てはめたものです。

象徴的なのが、研修文化です。「めちゃめちゃ研修が多い会社だと思います」。同社では月に何度か、全員が何らかの社内研修を受ける決まりがあります。誰かが現場で得た気づき、クレーム、新しいトレンド——できるだけ社内で共有する。「中途で入ってくる社員はまず、研修の多さにびっくりしますね」と、仲手川氏は振り返ります。

UPFの社内勉強会の様子

一方で、レクリエーションや飲み会は「昔はめちゃくちゃ開催していましたが、今では少し減らしています」と言います。「会社イベントで頻繁に飲み会をやっても変わらない。そこじゃなかったんです」。代わりに徹底しているのが、スコアリングによる評価制度です。案件の進み方やスピード、顧客アンケート、商談転換率、営業の受注率、リピート率まで、すべてを評価に落とし込む。「むしろ、徹底的にスコアリングしていることが文化かもしれません。透明性があるから納得感が出る。だからモチベーションの高い低いに左右されにくくなるんです。能力があって頑張っている人ほど、正当な評価と高い報酬に居心地の良さを感じるんです」。

理念の浸透についても、考えは明快です。「理念を掲げてカードを配るだけでは、浸透しません。ある程度優秀な人でも、自分事にはなかなかならない。社員が自分事にするには、やっぱり評価なんです」。UPFでは「変化を受け入れる」「陰で人を否定しない」「自分から明るく元気に」といった行動指針までを評価制度に紐づけ、面談のフィードバックの軸にしています。

毎年1月の初日は、各自が一年の目標を発表するとともに、「書き初めの日」でもあります。その年の会社を漢字一字で書いて発表し、1年間をその一字で貫く。「今年はどんな年にしたいのか。目標を決めて、それに対して動く。目標があいまいな人は、うまくいく確率が低いんです」。とにかく、これを毎年繰り返すルーティンが大事なのだといいます。

社員が書いた漢字が並ぶUPFの社内(書き初め)

こうしたカルチャーを、誰が担うのか。かつては業界経験のある中途採用が中心でしたが、2021年から新卒採用を本格化させ、今では新卒メンバーが部長職にもなり、一線に立っています。「企業文化を育てるという意味では、新卒のほうが間違いなくいい。圧倒的によかったですね」。専門サービス業ゆえ覚えることは多く、覚悟が要る仕事だといいますが、だからこそ工程を分割し、早く活躍できる仕組みを整えています。業務委託の登録も含めれば、当社の業務の担い手は全国に広がっています。

INTERVIEW

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AI時代こそ、マネジメントシステムが要る──禁止ではなく、安全にどんどん使える状態を

インタビューの終盤、仲手川氏は今もっとも力を込めるテーマを語ってくれました。AI時代の「守る」です。

「漏えい事故の原因は、たいてい人災です。仕組みがないことに尽きる。そして、仕組みがあっても運用しなければ意味がない」。ここでも、貫くのは同じ哲学でした。個人アカウントで生成AIを業務に使う危うさ——入力した情報が学習される可能性や、退職時にリスクが残ること——を挙げ、法人アカウントの配布、ガイドラインの策定、定期的なガイドラインの改定の重要性を説きます。

同社は近年、AIを安全に活用するための国際認証AIMS(ISO/IEC 42001)の取得支援と、AI利用ガイドラインの策定支援を新たな柱に据えました。ただし仲手川氏は、安易なAI活用には釘を刺します。「AIで作った資料は、見ればわかってしまう。ハルシネーションもあるし、ところどころ間違っている。それを判断する能力が現場になければ、間違いに気づけない。文章もメールも、あくまで下書きとして考えなきゃいけないんです」。

だからこそ、専門家のフィルターが要る。「禁止ではなく、安全に使える状態をつくる。それが、AI時代における我々UPFの役割だと考えています」。実際、AIマネジメントシステムのサービスのプレスリリースを公開したところ、びっくりするような大手企業からも問い合わせが来て驚いたといいます。

「Pマークの時代も、ISMSの時代も、AIの時代も、やっていることの本質は変わりません」。まっすぐ前を見つめて、仲手川氏はそう締めくくりました。世の中の変化に寄り添う認証のパートナーであり続けながら、AIマネジメントの分野でも真っ先に思い出される存在になり、低価格でお客様に届ける。「『AIマネジメントシステムといえばUPF』。そう言っていただける存在に、必ずなります」。

コントリからのメッセージ

印象に残るのは、「作っても、使われなければ意味がない」という一言です。立派な規程も、掲げただけの理念も、動かなければただの飾りになる。だからルールを現場で回し切る——この一貫した問題意識は、情報セキュリティに限らず、すべての経営者に刺さるものではないでしょうか。

創業当時から「コツコツ愚直」を一度も手放さなかった仲手川氏。飲みニケーションよりも仕組みを、掛け声よりも評価制度を選び、書き初めで一年を刻む。その徹底ぶりの根っこには、「ルールが回っている状態こそ、人と組織を守る」という静かな確信がありました。

自社の取り組みが「作っただけ」で止まっていないか。そう感じた経営者の方は、ぜひ一度、仲手川氏に話を聞いてみてほしいと思います。

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プロフィール

株式会社UPF
代表取締役
仲手川 啓(なかてがわ けい)

1978年、神奈川県生まれ。20歳で上京し、完全成果報酬制の携帯電話販売会社にアルバイトスタッフとして勤務。2005年に独立し、DM発送代行をメインとしたデータベースマーケティング事業で起業。顧客と日々向き合う中で、個人情報管理と企業価値の相関という問題意識から、情報セキュリティ認証支援事業へピボット。プライバシーマーク・ISMSを中心に累計5,500社超の取得・運用を支援し、東京・名古屋・大阪・福岡の4拠点、社員約42名(2026年7月現在)、その他全国に業務委託パートナーを抱える体制へと成長させる。近年はAIMS(ISO/IEC42001)、AI利用ガイドライン策定支援でも多くの企業から注目を集める。愛読書は『ランチェスター弱者必勝の戦略』。趣味はキックボクシング。座右の銘は「期待はすれど、当てにはせず」。

ギャラリー

会社概要

会社名株式会社UPF
設立2005年5月
資本金1,000万円
本社所在地〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町2-4 三報ビルディング5階
従業員数42名
拠点東京・名古屋・大阪・福岡
事業内容情報セキュリティマネジメントシステム認証支援。①プライバシーマーク・ISMS(ISO27001)の取得/運用・更新支援 ②TISAX・ISMAP・PCI DSS等の各種認証支援 ③AIMS(ISO/IEC42001)取得支援・AI利用ガイドライン策定支援・個人情報保護/セキュリティ研修
コーポレートサイトhttps://upfsecurity.co.jp/

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