コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

YouTube登録者18万人を支える「発信の3つのルール」

YouTube登録者18万人を支える「発信の3つのルール」

発信を続けているのに、登録者が思うように伸びない。そんなとき、多くの人は「自分にはテクニックが足りないのでは」と考える。サムネイルの作り方、投稿の時間帯、台本の構成。学べる技術は、探せばいくらでも見つかる。

だが、YouTube登録者18万人という実績を持つ株式会社シトレアの藤本なおよ氏に話を聞くと、様子が違った。その発信を支えているのは、複雑なテクニックではない。本人が繰り返し語る、3つのシンプルなルールだった。

「本当に良いものしか伝えない」「正直に、ありのままを伝える」「楽しく伝える」。言葉にすれば当たり前に聞こえる。だが、続けるには相応の覚悟が要る基準だ。

この記事では、藤本氏が語った3つのルールを、実際の発言とエピソードに沿って順に紹介する。とくに3つ目のルールに付随する「発信者自身のコンディションが伝わってしまう」という指摘が印象的だった。テクニック論とは別の角度から、発信の質を考えさせる内容だ。

私たちコントリ編集部が話を聞きながら気になったのは、この3つのルールに共通する点だった。どれも、量を優先すると崩れやすい基準だということだ。

藤本なおよ 氏

株式会社シトレア 藤本なおよ 氏

ルール1「本当に良いものしか伝えない」

藤本氏が発信の1つ目に挙げたのは、内容の質にかかわる基準だった。良いと思えないものは、話題になりそうでも発信しない。この線引きが、藤本氏の発信の土台になっている。

妥協への歯止めという基準

藤本氏は次のように語っている。

“1つ目は『本当に良いものしか伝えない』こと”

このルールは、言い換えれば「発信できる範囲を自分で狭める」という選択でもある。YouTubeのような動画メディアでは、投稿頻度や話題性が視聴者数に直結しやすいとされる。だからこそ、質を妥協したくなる場面は少なくない。藤本氏がこの基準を1つ目に置いたのは、その誘惑への歯止めだったと考えられる。

視聴者との信頼を長期で捉える視点

この発言で印象に残ったのは、「良いものしか伝えない」が単なる完璧主義の表明ではなかった点だ。視聴者との関係を長期で見る姿勢の表れだと感じた。1本ごとの動画で、信頼を積み上げるか切り崩すかは、内容の質にかかっている。18万人という登録者数は、その積み上げの結果として語られていた。

このルールは、次の「正直に、ありのままを伝える」というルールとも地続きだ。良いものだけを選ぶ基準と、取り繕わずに伝える基準は、一見別の話に見える。だが、どちらも「発信者側の都合で内容を歪めない」という一点でつながっている。

受け取る側の時間を守る基準

もう一つ付け加えたい。この基準は、発信する側だけでなく、受け取る側の時間を守る基準でもある。視聴者は限られた時間の中で動画を選んでいる。良いと言い切れないものまで発信すれば、視聴者の時間を消費させるだけで終わる。

藤本氏がこの基準を自分に課しているのは、発信を一方通行の作業ではなく視聴者との関係として捉えているからだと読み取れる。中小企業の発信でも、「これは本当に相手の役に立つか」を投稿前に一度問い直す姿勢は、明日からでも取り入れられる実践だ。

ルール2「正直に、ありのままを伝える」

2つ目のルールは、発信する内容の見せ方に関するものだ。藤本氏はここで、うつやアトピーといった、本来なら公にしたくなるような経験をあえて発信してきたと語っている。

“2つ目は『正直に、ありのままを伝える』こと”

うつやアトピーも隠さず発信

藤本氏は、うつやアトピーといった自身のネガティブな経験もあえて発信してきた。良い面だけを切り取って見せる発信は珍しくないが、藤本氏はその逆を選んでいる。

体調や心の状態がすぐれなかった時期についても、隠さずに発信の対象にしてきた。この事実は、1つ目のルールとは対照的にも見える。しかし藤本氏の中では、この2つは矛盾していない。ネガティブな経験を正直に伝えることそのものが、視聴者にとって「良いもの」になり得るという理解があるからだ。

「1週間2000円レシピ」に見る実例

このルールを裏づける実例が、コロナ禍に生まれた「1週間2000円レシピ」がバズった出来事だ。外出や消費が制限される状況の中で、藤本氏が発信した節約レシピが多くの視聴者に届いた。狙って作り込んだ企画というより、自身や周囲が置かれていた状況を正直に反映させた発信だったと見ることができる。飾らない実情の発信が、結果として多くの人の共感を集めた。

筆者の立場から見ると、この反響は発信の教科書的なテクニックだけでは説明がつかない。コロナ禍という誰もが不安を抱えていた時期に、藤本氏自身の生活実感に根ざした情報が求められていた。そのタイミングの一致もあっただろう。

だが、それ以前から「正直に、ありのままを伝える」という基準を持ち続けていたからこそ、迷わず発信できたのではないか。日頃からの姿勢が、機会が訪れたときの発信の速さにつながっているように見える。

同じ「ありのまま」の延長線上に

うつやアトピーの発信と、節約レシピという生活情報の発信は、一見別のジャンルの話に思える。しかし、どちらも「自分が実際に置かれている状況を隠さずに見せる」という点では同じ線上にある。体調や心の状態を発信するのも、家計の実情に沿ったレシピを発信するのも、同じ線上にある。藤本氏にとっては、同じ「ありのまま」の延長線上にあったのではないか。

自社の実情を語ることへのためらいがあるなら、まずは小さな失敗談や試行錯誤から発信してみる。それが、このルールを自分の発信に持ち込む最初の一歩になる。

ルール3「楽しく伝える」と発信者自身のコンディション

3つ目のルールは「楽しく伝える」ことだ。だが、藤本氏の説明はここで終わらない。楽しく伝えるためには、発信者自身が満たされている必要があるという前提が続けて語られている。

“3つ目が『楽しく伝える』こと”

体調不良も見抜かれるという現実

藤本氏はこの3つ目のルールに続けて、次のように語っている。

“体調不良も見抜かれるんですよ。だから、自分が満たされていない状態では発信できない”

この発言が示しているのは、「楽しく伝える」とは表情や口調をつくることではないという現実だ。発信者の内側の状態が、そのまま画面越しに伝わってしまう。視聴者は、発信者が本当に楽しんでいるかどうかを、細部から感じ取っている。体調不良ですら見抜かれるという言葉は、そのシビアさを端的に表している。

この指摘は、発信のテクニックを語る文脈ではあまり強調されない部分だと思う。台本の作り方や編集の技術は学んで身につけられる。だが、発信者自身のコンディションは、テクニックでごまかせるものではない。

藤本氏は「満たされていない状態では発信できない」と明言している。発信の質を、発信者自身の生活や心身の状態と切り離さずに捉えている証拠だ。

発信者の状態を整える生活習慣

この考え方に立つと、発信を続けるための工夫は、動画編集の技術を磨くことだけにとどまらない。むしろ、発信者自身が満たされた状態を保つための生活の整え方そのものが、発信の質を左右する要素になる。コンテンツづくりと自分自身のコンディション管理を切り離さずに扱う姿勢。楽しく伝えるという言葉の裏にある、地道な積み重ねだ。

忙しい経営者ほど見落としがちだが、発信の前に自分の状態を整える時間を確保すること自体が、実践できる第一歩になる。

3つのルールを振り返る

ここまでの3つのルールを、藤本氏自身の言葉に沿って書き出すと次のようになる。

藤本氏が語る、発信の3つのルール

  • 本当に良いものしか伝えない
  • 正直に、ありのままを伝える
  • 楽しく伝える

3つとも言葉自体はシンプルだ。だが、実行し続ける条件は決して軽くない。良いものだけを選ぶには基準を持ち続ける必要がある。

正直に伝えるには、隠したい経験も対象にする覚悟が要る。楽しく伝えるには、発信者自身が満たされた状態を保つ必要がある。どのルールも、発信の外側の技術ではなく、発信者の内側の姿勢や状態に関わる内面の基準だ。

3つのルールが支える18万人という数字

藤本氏が運営するYouTubeチャンネルの登録者は18万人にのぼる。この数字を、3つのルールと切り離さずに見ると、また違った意味が浮かび上がる。

信頼の積み重ねという見方

18万人という登録者数は、単発でバズった動画の再生回数とは性質が異なる。継続的にチャンネルを見続けている人の数であり、1本ごとの発信に対する信頼の積み重ねを反映している。藤本氏が語った「本当に良いものしか伝えない」という基準は、この継続的な信頼を維持するための線引きだった。そう考えられる。

正直な発信が縮めた距離

また、うつやアトピーといった自身のネガティブな経験を正直に発信してきた姿勢もある。視聴者との距離を縮める働きをしていたはずだ。取り繕われた発信よりも、飾らない実情が伝わる発信の方が、見続けたいと思わせる力を持つ場合がある。コロナ禍の「1週間2000円レシピ」がバズった実例は、その力が実際に働いた証拠として位置づけられる。

そして「楽しく伝える」というルールは、発信者自身が満たされていなければ成立しない前提つきで語られていた。体調不良すら見抜かれるという藤本氏の言葉は、視聴者が発信の中身だけでなく発信者の状態そのものを見ていることを示している。18万人という登録者は、そうした発信者の状態まで含めて、長期間にわたって受け入れられてきた結果と見ることができる。

テクニックとは違う数字の土台

登録者数という指標は、しばしば発信のテクニックやアルゴリズムへの適応度を測るものとして語られがちだ。しかし藤本氏の話をたどると、18万人という数字の成り立ちは違う道筋をたどっているように見える。

良いものだけを選ぶという判断。隠したい経験まで含めて正直に伝えるという判断。そして自分自身が満たされた状態を保つという判断。

いずれも、1本の再生回数を伸ばすための工夫ではない。発信を長く続けるための土台に関わる判断だった。

まとめ

藤本氏の発信哲学からの示唆

  • 質を犠牲にした発信量は続かない
  • 取り繕わない姿が、かえって信頼になる
  • 発信者自身が満たされていることが、コンテンツの質を左右する

編集部コメント

私たちコントリ編集部が今回の話で着目したのは、3つのルールの並び順だった。1つ目が発信内容の質、2つ目が発信内容の見せ方、3つ目が発信者自身のコンディション。話が進むほど、発信の「外側」から「内側」へと焦点が移っていく構成になっている。

テクニックの話から始まらず、最後に発信者自身の状態に行き着く。この順序そのものに、藤本氏が何を土台と考えているかが表れていると感じた。

もう一点、事実として確認しておきたいことがある。藤本氏が語った内容には、うつやアトピーという具体的な経験名がある。「1週間2000円レシピ」というコロナ禍の実例も結びつけられていた。

抽象的な心構えとしてではなく、実際に起きた出来事としてだ。ルールを語るだけでなく、実行した結果として何が起きたかまでセットで語られている。発信論として読むうえで手がかりになる点だ。

18万人という登録者数だけを見れば、成功事例の一つとして片づけてしまいそうになる。しかし藤本氏の発言をたどると、その数字の背後には地味だが継続が難しい基準が積み重なっていた。「良いものだけを選ぶ」「隠さず伝える」「自分が満たされた状態を保つ」という基準だ。テクニックを探す前に、まず何を発信の軸に置くかという問いを、この事例は投げかけている。

私たちコントリ編集部は普段、経営者への取材を通じて発信や広報の相談を受ける機会も多い。そこでしばしば聞かれるのは、投稿頻度をどう上げるか、どんなテーマがバズるか、というテクニック寄りの問いだ。もちろん、そうした工夫が無意味だとは思わない。

ただ、今回の藤本氏の話を聞いて改めて感じたことがある。テクニックの前にある土台の部分こそが、長く発信を続けられるかどうかを分けているということだ。何を良いものと判断し、何を正直に見せ、どう自分のコンディションを保つか。

これは、コントリが大切にする「Communication × Contribution」とも重なる問いだ。誠実に伝え、相手の役に立つという姿勢である。

3つのルールは、明日から一度だけ実践するのは難しくない。難しいのは、それを何年にもわたって崩さずに続けることだ。うつやアトピーという経験を発信の対象にし続けること。コロナ禍のような状況の変化にも、正直な発信で応え続けること。

そして、自分自身が満たされた状態を意識し続けること。地道な継続。18万人という登録者数は、その継続の結果として今この時点に現れている数字だ。この3つのルールが続く限り、これからも更新され続けていく数字なのだと思う。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

関連記事一覧