
ユニクロのビジネスモデル|SPAと低価格高品質の仕組み
価格では大手にかなわない。でも品質には自信がある。そんな葛藤を、経営者の方から伺うことは少なくありません。
ユニクロのビジネスモデルとは、素材調達から企画、生産管理、販売までを自社で一貫して担うSPA(製造小売業)です。流行を追う服ではなく、毎年改良を重ねる「LifeWear(究極の普段着)」を、少ない品番で大量に、長く売り続けます。この設計こそが、低価格と高品質を両立させる土台です。
運営するファーストリテイリングの2025年8月期は、売上収益3兆4,005億円、事業利益5,511億円です(同社決算)。いまでは海外ユニクロ事業の売上が、国内の約1.86倍に育っています。
本記事は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートを材料に、2026年9月時点の公式発表と照合してまとめたものです。SPAの仕組み、東レとの協業、海外で稼ぐ構造、ZARAなどとの違いを順に見ていきます。
最後に、中小企業が自社に置き換えるための4つの問いを用意しました。大手と同じ土俵で戦わない道を考える手がかりになれば幸いです。
ユニクロのビジネスモデルとは|企画から販売まで自社で握るSPA
ユニクロのビジネスモデルは、素材調達から企画、生産管理、販売までを一社で担うSPAです。同社は、高品質・高機能な素材を使った独自の商品を掲げています。それを、あらゆる人が手に取りやすい価格で売る方針です(同社 公式サイト)。
SPAとは、自社で企画した商品を自社の店で売る業態のことです。例えば、パン屋が自分で小麦を選び、レシピを決め、店頭で売る形を思い浮かべてください。問屋を通さない分、値段も品質も自分で決められます。
この章では、成り立ち、LifeWearという考え方、そして数字で見た現在地を順に押さえます。
1984年、広島の1号店から世界3,500店超へ
ユニクロの源流は、1949年に山口県宇部市で開かれた紳士服店です。1984年、広島市に開いた「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」袋町店が、ユニクロの始まりでした。
全国に名前が知られたのは、1998年のフリースの大ヒットです。同じ年には、都心型の原宿店も開いています。
2001年にはロンドンに海外1号店を出し、翌2002年には中国大陸へ進出しました。1991年には社名をファーストリテイリングに改めています。2005年には、事業を子会社に分けてグループ全体を束ねる持株会社体制へ移りました(同社 沿革)。
2026年5月末のグループ店舗数は3,549店です。内訳はユニクロが国内785店・海外1,744店、ジーユーが484店です。セオリーなどのグローバルブランドも536店あります(同社 グループ店舗一覧)。地方の一紳士服店が、40年余りで世界に店を持つ企業になったことになります。
LifeWear|流行ではなく生活から考える普段着
ユニクロが掲げる「LifeWear」とは、あらゆる人の生活を、より豊かにするための服という考え方です。流行を追いかけるのではなく、着る人の暮らしの必要から考え抜いた普段着を目指しています。
ファッションの世界では、季節ごとに新しい流行を打ち出すのが一般的です。ユニクロはその反対を選びました。同じ定番を毎年改良しながら売り続けるという方針です。
この方針は、商品の考え方にとどまりません。品番が少なく、一つの品番を大量に長く売れるため、原価を下げやすく、売れ残りも読みやすくなります。LifeWearは、理念であると同時に、低価格と高品質を両立させる収益の設計図でもあるのです。
数字で見るファーストリテイリングの現在地
ファーストリテイリングは、2025年8月期まで増収増益を続けてきました。2026年8月期も、7月に通期予想を上方修正しています。
| 決算期 | 売上収益 | 事業利益 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2021年8月期 | 2兆1,329億円 | 2,555億円 | 同社 連結業績推移 |
| 2023年8月期 | 2兆7,665億円 | 3,819億円 | 同社 過去5年の業績(IFRS) |
| 2024年8月期 | 3兆1,038億円 | 4,853億円 | 同社 連結業績推移 |
| 2025年8月期 | 3兆4,005億円(+9.6%) | 5,511億円(+13.6%) | 同社 決算サマリー 2025年10月 |
| 2026年8月期(予想) | 3兆9,700億円(+16.7%) | 7,100億円(+28.8%) | 2026年7月の上方修正後 |
事業利益とは、売上から原価と販売管理費を引いた、本業のもうけを示す同社の指標です。2025年8月期の営業利益は5,642億円、当期利益は4,330億円でした(同社 連結業績推移)。
2026年8月期の第3四半期累計(2025年9月〜2026年5月)も好調です。売上収益は3兆651億円で17.1%増、事業利益は5,927億円で33.6%増でした。会社はこれを受け、通期予想を売上収益3兆9,700億円、事業利益7,100億円へ引き上げました。出典は同社の第3四半期決算サマリー(2026年7月9日)です。
経営者の挑戦と決断のストーリーを、インタビューでお届けしています。
低価格と高品質を両立する仕組み|SPAと「情報製造小売業」
ユニクロが低価格と高品質を両立できるのは、少ない品番を大量に、長く売り続ける設計になっているからです。自社工場は持たず、生産パートナーに熟練技術者を送り込んで品質を支えています。
さらに2017年からは、お客様の情報で企画から工場までをつなぐ「情報製造小売業」への転換を掲げてきました。つくる量を、売れる量に近づけるための改革です。
低価格と高品質は、ふつうは両立しにくい組み合わせです。安くすれば品質が落ち、品質を上げれば値段が上がる。ユニクロは、仕組みの組み合わせでこの壁を越えてきました。
ここでは、品質を握る仕組み、原価を下げる仕組み、つくりすぎない仕組みを順に見ていきます。
工場を持たずに品質を握る|生産パートナーと匠
ユニクロは自社で工場を持たず、中国やベトナムなどの生産パートナーに生産を委託しています。それでも品質を自社で握れるのは、つくる現場に深く入り込んでいるからです。
その象徴が、「匠」と呼ばれる熟練技術者のチームです。日本の繊維産業で経験を積んだ技術者が、工場で技術指導にあたってきました(ポーター賞 2009年)。
委託と聞くと、図面を渡して出来上がりを待つ関係を想像しがちです。ユニクロの場合は、技術と人を送り込み、相手の工場ごと育てる関係を築いてきました。品質の基準を守るだけでなく、守れる現場をつくる。自社工場を持たない会社の品質は、この考え方の上に成り立っているのです。
少品番・大量生産で原価を下げる
ユニクロの原価を下げている最大の要因は、品番の少なさです。一つの品番を世界中の店で大量に売るため、素材も生産ラインもまとめて確保できます。
例えば、ヒートテックやエアリズムは、毎年同じ名前で店頭に並びます。デザインを毎シーズン入れ替える服に比べ、一品番あたりの生産量が大きくなり、1枚あたりの原価が下がる。規模を、価格と品質の両方に回せる構造と言えるでしょう。
一方で、円安や原材料高、関税の影響から、個別商品の価格改定も続いています。大量生産による原価の強みは、外部環境のコスト増を吸収する余地としても働いています。値上げを重ねても定番として選ばれ続けるかどうかが、これからの試金石です。
つくらない・運ばない・売らない|有明プロジェクト
2017年3月、ファーストリテイリングは「有明プロジェクト」を発表しました。東京・有明の新オフィスに、ユニクロに関わる社員約1,000人を集めた全社改革です(流通ニュース 2017年3月)。
目指したのは、SPAから「情報製造小売業」への転換でした。情報製造小売業とは、お客様の声や販売の情報を起点に、企画・製造・販売のすべてを動かすビジネスモデルのことです。柳井氏は有明を「お客の声を起点とする情報製造小売業の拠点」と位置づけています。
その土台の一つが、2018年春夏商品から全商品に付けたRFIDタグです(流通ニュース 2018年10月)。RFIDとは、電波で商品情報を読み取る小さな電子タグを指します。
どの店で何がいくつ売れたかが見えるほど、判断は変わります。売れない服をつくらず、運ばず、売り場に置かない方向へ近づくのです。在庫と値引きを減らすことが、低価格を守る力にもなっているのです。
ヒートテック・エアリズムを生んだ東レとの協業
ユニクロの差別化の核は、素材メーカーの東レと共同で開発してきた機能性素材です。協業は1999年のフリース素材から始まりました。2003年発売のヒートテックは、累計15億枚を超えています(ユニクロ 2023年9月)。
一社で抱え込まず、強みを持つ相手と長く組む。この選択が、ほかの衣料品店にはない定番商品の力になっています。
素材は、服の着心地や機能を大きく左右します。そこを外部の専門企業と一緒に磨いてきたことが、価格だけでは測れない価値につながりました。
ここでは、協業の歩み、ヒートテックの育て方、ベーシックと高機能という掛け合わせを見ていきます。
1999年のフリースから始まったパートナーシップ
ユニクロと東レの取引は、1999年のフリース素材の供給から始まりました。2006年には「戦略的パートナーシップ」を結びました。企画・開発から生産まで一体で取り組む体制です(ファーストリテイリング 2006年6月)。
素材メーカーと小売が、新しい素材を一緒に考える。当時のアパレル業界では珍しい組み方でした。東レの技術と、ユニクロの販売データや売り場の声が合わさって、ヒット商品が生まれていきます。
エアリズム、ウルトラライトダウン、感動パンツなども、この協業の中から育った商品です。自社にない技術を、取引ではなく共同開発で取り込んだことが、ユニクロの商品力の土台になっています。
ヒートテック累計15億枚|毎年の改良で定番を育てる
ヒートテックは2003年の発売で、2023年に累計販売数15億枚を突破しました(ユニクロ 2023年9月)。2017年時点の累計は10億枚だったため、6年で5億枚を上積みしたことになります。
ヒートテックとは、体から出る水蒸気を熱に変えて暖かさを保つ機能性肌着のことです。発売から20年以上、名前は同じでも、素材や薄さ、肌ざわりは毎年のように見直されてきました。
新商品を次々に出すより、一つの商品を磨き続ける。定番を「育てる」という発想が、ヒートテックを冬の必需品に押し上げたと言えます。売れ筋を毎年つくり直す必要がないため、先に述べた少品番・大量生産ともかみ合っています。
ベーシック×高機能という掛け合わせ
ユニクロの商品は、デザインだけを見ればベーシックです。そこに東レとの素材開発による機能を掛け合わせたことで、ほかにない価値が生まれました。
ベーシックな服なら、どの店にも並びます。高機能な素材も、専門のスポーツブランドなら珍しくありません。ただ、普段着の価格帯で、機能まで備えた定番を大量に出せる会社はほとんどありません。
一つひとつは珍しくない要素でも、掛け合わせると独自の立ち位置になります。中小企業が自社の強みを考えるときにも、使える視点ではないでしょうか。
あなたの会社の強みを、
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海外で稼ぐユニクロ|売上は国内の約1.9倍に
2025年8月期の海外ユニクロ事業の売上収益は1兆9,102億円で、国内ユニクロ事業の1兆260億円の約1.86倍です。事業利益も海外が3,053億円と、国内の1,813億円を上回りました(同社 決算サマリー 2025年10月)。
2018年8月期に海外の売上が国内を初めて上回り、いまでは利益の面でもグループの稼ぎ頭です。
国内の人口が減っていくなかで、海外に成長の場を広げてきた道のりは、多くの企業にとって他人事ではありません。
ここでは、逆転までの流れと、地域ごとの状況、そして2026年8月期の足元を見ていきます。
2018年に海外が国内を逆転
海外への本格展開は、2001年のロンドン出店から始まりました。当初は店舗の縮小も経験しながら、少しずつ足場を築いていきます。
2016年8月期には海外の店舗数が国内を上回りました。続く2018年8月期には海外ユニクロの売上が、2019年8月期には利益も国内を上回っています。2023年8月期には、海外ユニクロの売上が全社の5割を超えています。出典はダイヤモンド・オンライン(2019年10月)と繊研新聞(2023年10月)です。
もはや「日本の会社が海外にも出ている」段階ではありません。世界の地域ごとに事業を組み合わせて稼ぐ会社へ。それがいまのユニクロの姿です。
北米・欧州の急成長と、中国の「個店経営」への転換
2025年8月期、北米の売上収益は2,711億円で24.5%増でした。欧州も3,695億円で33.6%増と伸びています(同社 ユニクロの事業戦略)。北米は2027年8月期に売上収益3,000億円を目指しています。
一方、中国大陸・香港・台湾からなるグレーターチャイナは減収減益でした。売上収益は6,502億円で4.0%減、事業利益は899億円で12.5%減です。店舗を一律の型で増やす経営から、地域ごとの需要に合わせる「個店経営」への転換を進めています。
個店経営とは、店ごとに地域の客層や気候に合わせて品ぞろえや売り場を変えるやり方です。急拡大した事業が踊り場を迎えたとき、どう立て直すか。多店舗展開を考える経営者にとっても、参考になる局面と言えるでしょう。
2026年8月期は第3四半期時点で通期予想を上方修正
2026年8月期の第3四半期累計では、海外ユニクロ事業の売上収益が1兆8,340億円で25.9%増えました。事業利益も3,453億円で45.4%増です(同社 2026年7月)。
同じ期間の国内ユニクロ事業も、売上収益8,676億円で8.3%増、事業利益1,729億円で15.1%増と伸びています。グレーターチャイナも増益に転じ、会社は通期予想を引き上げました。
2026年8月期の通期決算は、2026年10月に公表される予定です。海外と国内がそろって伸びるなか、中国の立て直しがどこまで進むかが見どころです。
ZARA・H&M・しまむらとの違い|同じ衣料品でも戦う土俵が違う
ユニクロ、ZARA、H&Mはいずれも自社で企画から販売までを担うSPAですが、戦い方は大きく異なります。ZARAはトレンドへの即応、ユニクロはベーシックと機能性という別の軸で選ばれています。
低価格の衣料品チェーンは、店の外から眺めるとよく似て見えます。ところが、何で選ばれているのか、どこで服をつくっているのかを比べると、立っている場所がまったく違うことに気づくはずです。
仕入れた商品を売るしまむらも含め、4社の違いを比較表で整理しました。
4社の比較|モデル・生産・商品の性格
ZARAを運営するスペインのインディテックスは、流行を素早く商品にして店に並べる速さで知られます。H&Mも、低価格で流行を取り入れた服を大量に届けるモデルです。
しまむらは、そもそも自社で服をつくる会社ではありません。販売する商品のほぼすべてを、仕入れ先(サプライヤー)から仕入れています。多くの品種を少しずつそろえるのが特徴です(しまむらグループ 公式サイト)。
同じ「安い服の店」に見えても、比べると違いは明らかです。ユニクロだけが「流行の速さ」ではなく「定番の質」で競っています。ユニクロとしまむらでは、ビジネスモデルの立脚点そのものが違うのです。
速さで競わず、定番の質で競う
流行の速さで競えば、ZARAのように企画から店頭までを短く回す仕組みが要ります。ユニクロはその土俵に乗らず、長い期間をかけて需要を読み、定番を大量につくる道を選びました。
どちらが優れているという話ではありません。自分が勝てる軸を選び、その軸に仕組みをそろえたことが、ユニクロの強さです。
同じSPAでも、無印良品は衣食住を「これでいい」という価値観で束ねています。考え方の違いは「無印良品のビジネスモデル」とあわせて読むと、つかみやすいでしょう。家具・インテリアの分野で、製造小売に物流とITまで取り込んだ例は、ニトリのビジネスモデルで解説しています。
ユニクロのビジネスモデルはなぜ真似されにくいのか
SPAという仕組みそのものは、いまや珍しいものではありません。それでもユニクロの立ち位置が揺らがないのは、商品・素材・供給網・人が同じ方向を向いて噛み合っているからです。
仕組みの一部だけなら、他社でも取り入れられます。ところが、素材の協業も、定番の改良も、挑戦を続ける組織も、長い時間をかけて積み上がったものばかり。どれも一朝一夕には手に入りません。
コントリ編集部が研究ノートを読み解くなかで見えた、真似されにくさの理由を3つに整理しました。
20年以上続く素材パートナーとの共同開発
一つ目の理由は、東レとの協業に積み重ねた時間です。1999年から続く関係は、お金を積めば明日から手に入るものではありません。
共同開発を続けるには、互いの技術や販売データを開き合う信頼が要ります。途中で商品が売れない年があっても、関係を切らずに改良を重ねてきたからこそ、次のヒットにつながりました。時間をかけた関係そのものが、他社には買えない資産になっているのです。
競合が同じ素材メーカーに声をかけても、20年分の試行錯誤や、互いの現場を知る人のつながりまでは手に入りません。取引の条件は真似できても、積み重ねた信頼は真似できない。ここに、協業を軸にした差別化の強さがあります。
定番を毎年改良し続ける我慢強さ
二つ目は、定番を磨き続ける我慢強さです。新しい商品を出すほうが話題にはなりやすく、社内の手応えも得やすいものです。
ユニクロは、ヒートテックを20年以上にわたって改良してきました。同じ名前の商品を毎年少しずつ良くするのは、地味で手間のかかる仕事です。けれども、この地味な仕事の積み重ねが、お客様の「今年もこれでいい」という信頼を生んでいます。形だけ真似た商品が追いつきにくいのは、この年月の差です。
毎年の改良には、お客様の声や販売データを読み、次の冬に何を変えるかを決める地道な作業が伴います。派手な新商品に比べて社外からは見えにくいぶん、競合も手を出しにくい領域です。見えない努力の蓄積が、そのまま参入の壁として働くわけです。
失敗を前提に挑戦し、立て直す組織
三つ目は、失敗を前提にした挑戦の文化です。柳井氏の著書の題名『一勝九敗』が示すように、10回挑んで1回勝てばよいという考え方が根底にあります。
海外の初期出店やグレーターチャイナの構造改革など、うまくいかない局面も隠さずに立て直してきました。
赤字だった北米事業を2022年8月期に黒字化へ導いたのは、塚越大介氏です。のちにユニクロ社長に就いています(繊研新聞 2025年10月)。挑戦と立て直しを経験した人が、次の経営を担う。この循環も、外からは真似しにくい強みです。
中小企業がユニクロから持ち帰れる学び|自社に置き換える4つの問い
ファーストリテイリングは売上収益3兆円を超える大企業ですが、学びの多くは規模を問いません。戦う軸をずらす、外の力と組む、つくりすぎない、任せ方を段階で設計する。
大がかりな投資は必要ありません。むしろ社員の顔が見える規模のほうが、決めたことを現場に行き渡らせやすい面もあります。
社長の一言が、翌日には現場の動きに変わる。その距離の近さは、中小企業ならではの強みです。
最後に、自社に置き換えるための4つの問いを整理しました。問いごとに「最初の一手」も添えたので、そのまま会議の議題に使えます。
問い1|大手と同じ土俵で戦っていないか
ユニクロは、ZARAやH&Mが競う「流行の速さ」の土俵に乗りませんでした。代わりに選んだのが、ベーシックと機能性という別の軸です。高機能と低価格の組み合わせで、職人向けの作業服から一般客へ客層を広げた例は、ワークマンのビジネスモデルで解説しています。
中小企業が価格や品ぞろえの量で大手と競えば、体力勝負になります。まず、直近で失注した3件を振り返り、何と比べられて負けたのかを書き出してみてください。比べられた軸が見えれば、あえて降りる軸と、自社が勝てる軸を分けて考えられます。
例えば、価格で負けていたなら、納期の確実さやアフターフォローなど、価格以外で選ばれた案件と比べてみてください。勝った案件と負けた案件の差に、自社が立つべき土俵のヒントが隠れています。
問い2|自社の強みを伸ばしてくれるパートナーはいるか
ヒートテックは、ユニクロ一社では生まれませんでした。東レという、自社にない技術を持つ相手と組んだからこそです。
仕入れ先や協力会社、地域の同業者。中小企業にも、組める相手は身近にいるはずです。
取引先の中から、一緒に新しいものをつくれそうな1社を選んでみてください。発注と納品の関係から一歩進めて、困りごとを持ち寄る場を月に一度つくるだけでも、関係は変わります。こうしたご縁を共同開発に育てられるかどうかが、自社だけでは届かない価値への近道になります。
問い3|「売れるだけ」つくれているか
有明プロジェクトが目指したのは、売れる分だけつくる会社への転換でした。つくりすぎは、在庫の山と値引きになって利益を削ります。
まずは昨年売れ残った在庫の上位3品目と、その理由を洗い出してみましょう。「多めにつくれば安心」という判断が、どこで入り込んでいたかが見えてきます。高価なシステムがなくても、販売の記録を週に一度見返し、次の仕入れや生産に反映させる。その小さな往復が、情報製造小売業の出発点です。
問い4|任せる順番を設計できているか
柳井氏から塚越氏への移行は、ユニクロ社長、そしてファーストリテイリング取締役へと、段階を踏んで進んでいます。塚越氏は2025年11月27日付で同社の取締役に就きました(繊研新聞 2025年10月)。
事業承継や幹部への権限移譲を考える中小企業にとっても、この「段階を踏む」考え方は参考になります。後継者や幹部に任せたい仕事を、小さいものから順に3段階で書き出してみてください。どこまで任せたら次へ進むかが決まっていれば、任せる側も任される側も迷わずに済みます。ビジネスモデルの型を広く見比べたい方は、「ビジネスモデル一覧」も参考にしてください。
まとめ|ユニクロのビジネスモデルの要点
ユニクロのビジネスモデルは、素材から販売まで自社で握るSPAです。LifeWearという定番を、少ない品番で大量に長く売る仕組みと言えます。要点は次の3つに集約できます。
1つ目は、生産パートナーへの技術指導と少品番・大量生産で、低価格と高品質を両立していること。2つ目は、東レとの共同開発が、ヒートテックのような育ち続ける定番を生んでいること。3つ目は、海外ユニクロの売上が国内の約1.86倍に育ち、世界で稼ぐ構造になったことです(数値は2025年8月期決算)。
規模は違っても、勝てる軸を選び、外の力と組み、つくりすぎない考え方は、中小企業にもそのまま持ち帰れます。ほかの企業のビジネスモデルも、あわせてご覧ください。直販と製造を持たない形で高収益を上げる「キーエンスのビジネスモデル」、加盟店とともに成長してきた「セブンイレブンのビジネスモデル」、個人間取引の場を育てた「メルカリのビジネスモデル」も、自社の型を考える材料になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ユニクロのビジネスモデルを一言で言うと何ですか?
A. 素材調達から企画、生産管理、販売までを自社で一貫して担うSPA(製造小売業)です。流行を追わない「LifeWear」を、少ない品番・大量生産で長く売り続けることで、低価格と高品質を両立しています。
Q2. ユニクロはなぜ安くて品質が高いのですか?
A. 品番を絞って大量に生産し、原価を下げていることが一つ目の理由です。加えて、「匠」と呼ばれる熟練技術者を生産パートナーに送り込み、品質を支えています。東レと共同開発した機能素材も強みです。
Q3. ユニクロは国内と海外のどちらで稼いでいますか?
A. 海外です。2025年8月期の海外ユニクロ事業は、売上収益1兆9,102億円、事業利益3,053億円でした。国内ユニクロ事業の1兆260億円、1,813億円をいずれも上回っています。
Q4. ユニクロとZARAのビジネスモデルの違いは何ですか?
A. どちらもSPAですが、ZARAは流行を素早く商品化するトレンド即応型です。ユニクロはベーシックと機能性を毎年改良する定番型で、戦う軸が異なります。
Q5. ユニクロの「情報製造小売業」とは何ですか?
A. お客様の声や販売の情報を起点に、企画・製造・販売のすべてを動かすビジネスモデルです。2017年3月の有明プロジェクトで打ち出されました。2018年春夏商品からは、全商品にRFIDタグを付けて情報の把握を進めています。
Q6. 中小企業がユニクロから学べることは何ですか?
A. 大手と同じ土俵で戦わない軸を持つこと、強みを持つ外部パートナーと長く組むことです。売れる分だけつくる仕組みや、権限を段階的に任せる考え方も参考になります。
参考資料
本記事で参照した主な公開資料は、次のとおりです。いずれも2026年9月時点で内容を確認しました。
- 株式会社ファーストリテイリング|IR情報
- 株式会社ファーストリテイリング|2025年8月期 決算サマリー(2025年10月9日)
- 株式会社ファーストリテイリング|2026年8月期 第3四半期決算サマリー(2026年7月9日)
- 株式会社ファーストリテイリング|連結業績推移(過去5年)
- 株式会社ファーストリテイリング|ユニクロの事業戦略
- 株式会社ファーストリテイリング|グループ店舗一覧
- 株式会社ファーストリテイリング|沿革 1949年-2003年
- 株式会社ファーストリテイリング|ファーストリテイリングについて
- 株式会社ファーストリテイリング|ユニクロ・東レ「戦略的パートナーシップ」の構築について(2006年6月)
- ユニクロ|ヒートテック 累計販売数15億枚を突破(2023年9月)
- ユニクロ|ヒートテック 累計販売数10億枚に(2017年9月)
- ポーター賞|株式会社ファーストリテイリング ユニクロ事業(2009年)
- 流通ニュース|ユニクロ/お客が求める商品を作る、情報製造小売業へ(2017年3月)
- 流通ニュース|ユニクロ/全商品にRFID貼付、製造から販売まで生産性を向上(2018年10月)
- 繊研新聞|ファーストリテイリング取締役に塚越ユニクロ社長が就任(2025年10月)
- ダイヤモンド・オンライン|「ユニクロ」国内低迷が顕著、海外ユニクロ売上高1兆円突破で差が鮮明に(2019年10月)
- 繊研新聞|ファーストリテイリング連結8月期 海外ユニクロけん引で最高業績(2023年10月)
- しまむらグループ|取引先に対する取組み
本記事は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートをもとに、2026年9月時点で上記の公開情報を照合して作成しました。記事中の数値は、それぞれの出典が公表・報道した時点のものです。2026年8月期の通期決算は、2026年10月に公表される予定です。
編集部より
研究ノートをまとめるなかで印象に残ったのは、ヒートテックの歩みでした。発売から20年たっても、同じ名前のまま改良され続けています。新しい看板をつくるより、一つの定番を磨き続ける。その判断を20年続けた結果が、累計15億枚という数字なのだと受け止めました。
もう一つは、東レとの関係が1999年のフリース素材の取引から始まっていたことです。一度のご縁を、共同開発という長い関係に育ててきた。コントリが経営者の方とのご縁を通じて大切にしてきた「関係を続けることで生まれる価値」と重なります。
自社の商品やサービスのうち、毎年少しずつ磨き続けているものは何でしょうか。まずは1つ、今年改良したい点を書き出してみてください。
あなたの経営の歩みを、
次の挑戦者へ届けませんか。
判断の背景や試行錯誤こそ、同じ立場の経営者に届く価値があります。取材から記事化まで編集チームが伴走します。
- 取材・構成・執筆をまるごと支援
- 経営者の言葉を活かした記事化
- 掲載後の発信・活用まで相談可能

