
akippaはどうやって稼ぐ?土地を持たないビジネスモデル
スタジアムに車で行くとき、akippa(アキッパ)で駐車場を予約した経験はないでしょうか。個人宅の車庫や月極駐車場の空き区画を、アプリで予約して停められるサービスです。ただ、土地も精算機も持たない会社が、どうやって稼いでいるのかは見えにくいものです。
答えは、「空いている時間」を仲介し、貸す側と借りる側の両方から手数料を受け取ることにあります。オーナーが受け取るのは原則として利用料金の46.3%で、残りがakippaの取り分です。利用者からも、駐車料金の15%をサービス料として別に受け取ります。
2025年12月期の売上高は38.3億円で、それを総資産10.5億円の会社が回しています(同社の上場申請書類)。2026年9月には、東証スタンダード市場に上場しました。スタンダード市場とは、東証の3つの市場のうち、一定の規模と実績を持つ企業向けの市場です。
本記事では、上場申請書類と公式資料をもとに仕組みを読み解きます。手数料の流れ、パーク24との違い、供給を集める営業、需要の中身、弱点の順です。
最後に、中小企業が持ち帰れる4つの問いをまとめました。自社の取引を見直す材料としてお使いください。
akippaはどうやって稼ぐ?答えは「両側から取る仲介手数料」
akippaは、土地も精算機も持たずに、他人の空いている駐車スペースを予約制で貸し出す仲介役です。利用があったときだけ、オーナーへの報酬から手数料を差し引き、利用者からもサービス料を受け取ります。
この形で、2025年12月期に売上高38.3億円・営業利益2.0億円を計上しました。駐車場の会社でありながら、手元の資産は10.5億円にとどまります。まずは会社の歩みと規模を確かめます。
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)2026年8月18日
営業代行の会社から駐車場シェアへ|2014年開始・2026年9月上場
akippaの出発点は、IT企業ではなく営業代行の会社でした。2009年2月、代表取締役社長CEOの金谷元気氏が大阪で創業しています(上場申請のための有価証券報告書)。創業当初は、携帯電話の販売代理などを手がけていました。
転機は2013年5月です。同じ書類によると、社内で世の中の困りごとを書き出すと、ある声が出ました。「コインパーキングは現地に行って初めて満車と知る」というものです。
そこから、空きスペースの持ち主と停めたい人をネットでつなぐ構想が生まれます。
2014年4月に「あきっぱ!」(現アキッパ)を始め、2016年12月には求人情報サービスと営業代行事業を終えました。同じ書類を見ると、2019年10月にはSOMPOホールディングスと資本業務提携を結んでいます。
そして2026年9月18日、東京証券取引所スタンダード市場に上場しました(akippa)。スタンダード市場を選んだのは、M&Aを見据えたためと会社は説明しています(ASCII STARTUP)。M&Aとは、企業の合併や買収のことです。
2025年12月期は売上高38.3億円・営業利益2.0億円
売上高とは、商品やサービスを売って得たお金の合計のことです。有価証券報告書によると、2025年12月期の売上高は38.3億円で、前期比20.0%増でした。
営業利益とは、売上総利益から人件費などの運営費用を引いた、本業のもうけのことです。営業利益は2.0億円で、前期の0.3億円から大きく伸びました。
当期純利益とは、税金なども差し引いた最終的なもうけのことです。2025年12月期の当期純利益は2.2億円でした。
売上は4年で2.6倍になりました。同じ書類によれば、2021年12月期は14.8億円で、経常損失3.1億円を計上していました。
経常損失とは、本業の損益に利息などを加えた、ふだんの事業活動の赤字のことです。通期で黒字になったのは2023年12月期からです。
2026年12月期は、売上高43.0億円・営業利益3.4億円の予想です(業績予想、2026年8月)。中間期の時点で営業利益は1.2億円と、社内計画を77.88%上回りました。この上振れをどう扱うかは、弱点の章で触れます。
有価証券報告書によると、従業員は2025年末で60名です。ほかに臨時雇用が平均29.1名います。累計会員数は2026年7月に550万人を超えたと発表しています(PR TIMES、貸主は含まない)。
稼ぎを支える3つの仕組み|成果報酬・両側課金・持たない資産
上場申請書類を読み込むと、akippaの稼ぎ方は3つの仕組みに整理できます。3つは別々の工夫ではなく、互いを支え合う関係です。
出典:akippa 上場申請のための有価証券報告書(2026年8月)、2026年12月期の業績予想について(2026年8月)、オーナー向けページをもとに作成
1つめは、オーナーに費用をかけさせない成果報酬です。初期費用も月額もかからないため、「試しに貸してみる」人が集まりやすくなります。2つめは、両側から少しずつ受け取る料金の設計です。
3つめは、土地も設備も持たないことです。会社自身も有価証券報告書で、自社で駐車場資産を持たない「アセットライト」なモデルだと説明しています。
アセットライトとは、土地や設備などの資産を軽くして事業を回すことです。以下の章で、1つずつ中身を確かめます。
オーナーから53.7%、利用者から15%|売上と手数料の流れ
akippaは、利用者が払う駐車料金とサービス料の全額を売上に計上し、オーナーへの支払いを売上原価に置いています。売上原価とは、売上を生むために直接かかった費用のことです。
オーナーが受け取るのは原則として利用料金の46.3%です。利用者からは、駐車料金の15%をサービス料として別に受け取ります。
そのため、売上高は「アプリの上を流れたお金」にほぼ近い数字です。akippaの本当の取り分は、売上から原価を引いた売上総利益のほうに表れます。有価証券報告書では、2025年12月期の売上総利益は19.3億円で、売上総利益率は50.4%でした。
利用者が駐車料金1,000円の駐車場を予約した場合を例に、お金の流れを図にしました。
出典:akippa オーナー向けページ(報酬46.3%)、2026年12月期の業績予想について(サービス料15%)、2026年10月確認。数値は原則の料率による計算例で、個別の条件により異なる
オーナーの受け取りは利用分の46.3%|テイクレートは原則53.7%
オーナー向けページには、受け取れる金額がはっきり書かれた箇所があります。利用分の46.3%を報酬金として口座に振り込む、という説明です(オーナー向けページ)。残りは、24時間のサポートや利用促進の広告費などに使うとしています。
上場申請書類では、この取り分を「テイクレート」という言葉で表します。テイクレートとは、取扱高(サービス上で取引された金額)に対して、運営会社が受け取る手数料の割合のことです。有価証券報告書によると、akippaは原則53.7%で、2026年6月末時点の数字です。
貸し手を集めたいサービスは、ふつう手数料を低くしがちです。それでもakippaは、書類で集客力を根拠に高い料率を保っていると説明します。
「アキッパなら確実に予約が入る」という信頼です。オーナーには初期費用・月額・退会手数料がかからず、使われなかった月の費用もありません(オーナー向けページ)。
利用者からもサービス料15%|2025年12月期は4.79億円
akippaは、オーナーだけでなく利用者からもお金を受け取る仕組みです。業績予想の資料には、「駐車料金の15%をサービス料として課金」とあります。
有価証券報告書の売上内訳では、駐車場売上が32.39億円、サービス料が4.79億円でした。サービス料は駐車場売上の14.8%にあたり、15%という料率とほぼ一致します。
残りの1.10億円は、有料会員「バリュープラス」の会費などからクーポンの値引きを引いた純額です。賃貸収入0.08億円も含みます。バリュープラスは月額料金を払うと、一般の会員より先に予約でき、割引も受けられるサービスです。
38.28億円
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)2026年8月18日。その他には、リース会計基準に基づく賃貸収入等0.08億円を含む
1台あたり5,059円|オーナーの受け取りは月約2,300〜3,000円(推定)
1台あたりの稼ぎも、数字で確かめられます。業績予想の資料を見ると、掲載駐車場1台あたりの駐車場売上(台あたり売上高)は、2025年12月期が5,059円でした。
2026年12月期の見込みは5,178円です。売上計画の組み立て方から見て、月あたりの数字と読めます。
ここからは開示数値をもとにした推定です。5,059円に標準の報酬率46.3%を掛けると、1台あたりのオーナーの受け取りは約2,300円です。
一方、有価証券報告書によると、売上原価19.00億円は駐車場売上の58.7%です。この割合で計算すると約3,000円です。ただし原価にはイベント分も含まれるため、対象のそろわない概算です。
つまり、掲載1台あたりのオーナーの受け取りは、月約2,300〜3,000円と推定できます。複数台を貸す法人オーナーなら、台数分だけ増える計算です。
原価の割合が46.3%より高いのは、イベント主催者への収益分配や法人オーナーとの個別条件が含まれるためと考えられます。ただし原価の内訳は開示されていません。
予約1件あたりの売上も、目安として計算できます。2025年の予約数は350.8万件で、売上高を割ると1件あたり約1,090円です(同書類をもとに計算)。予約数にはキャンセル分も含まれるため、実際の1件あたりはもう少し大きくなります。
借り上げるパーク24、仲介するakippa|稼働リスクを誰が負うか
同じ駐車場の事業でも、パーク24のタイムズは土地を借り上げて毎月一定額の賃料を払い、空きのリスクを自社で負います。akippaは借りも買いもせず、使われた分だけ報酬を払う成果報酬型です。
駐車場が空いたとき、損をするのは誰か。タイムズでは運営会社で、akippaでは主にオーナーです。この違いが、資産の重さと1台あたりの稼ぎにそのまま出てきます。
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(2026年8月)、パーク24 2025年10月期 決算短信(2025年12月15日)。投資に使ったお金は投資活動によるキャッシュ・フロー。パーク24は海外駐車場・カーシェアを含む連結の数字で単純比較の目安。各社資料をもとに計算
総資産10.5億円で売上38.3億円|投資は売上の0.7%
総資産とは、会社が持つ現金や設備などの資産の合計のことです。有価証券報告書によれば、akippaの2025年末の総資産は10.5億円で、売上高はその約3.6倍です。決算短信によると、パーク24は、総資産3,544億円に対して売上高4,062億円で、約1.15倍でした。
ただしパーク24の数字は連結です。連結とは、子会社まで含めたグループ全体の数字のことです。海外の駐車場やカーシェアの車両も含むため、単純比較の目安として見てください。
投資に使ったお金にも、はっきり差があります。投資活動によるキャッシュ・フローとは、設備やシステムなどの投資に使った、または売却で得たお金の動きのことです。有価証券報告書では、akippaは2025年12月期にマイナス0.26億円で、売上高の0.7%でした。
決算短信によると、パーク24はマイナス461億円で、売上高の11.3%にあたります。akippaには精算機や看板、電気工事の費用がかからず、土地の賃料を毎月払う義務もありません。akippaが仕入れているのは、他人の駐車場の「空いている時間」だけです。
パーク24は固定賃料で稼働リスクを引き受ける
パーク24の土地オーナー向けの説明は対照的です。タイムズ24は地主から土地を借りて運営し、「賃料は毎月一定額」を払う形です(タイムズ24)。埋まっても空いても、地主に入るお金は同じです。
その代わり、駐車料金はすべてパーク24の売上になります。2025年10月期の国内駐車場事業は、売上高2,004億円・セグメント利益375億円でした(パーク24 決算短信)。
セグメント利益とは、事業の区分ごとの利益のことです。精算機と立地選びで稼働を上げ、賃料との差で稼ぐ「運営業」と言えます。
akippaは、空きのリスクをオーナーに残し、使われた分から手数料を受け取ります。立場としては「仲介業」です。どちらが優れているかではなく、誰が空きのリスクを持つかで、お金の流れが正反対になるということです。
違いを表で並べます。
| 項目 | akippa | パーク24(タイムズ・国内駐車場) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 持たない・借りない(オーナーが持ったまま) | 地主から借り上げる | akippa 有価証券報告書(2026年8月)・タイムズ24(2026年10月確認) |
| 持ち主への支払い | 利用分の46.3%(成果報酬) | 稼働に関係なく毎月一定額の賃料 | akippa オーナー向けページ・タイムズ24 |
| 空きのリスク | 主にオーナーが負う | 運営会社が負う | 上記の支払い方をもとに整理 |
| 規模 | 掲載55,020台(2025年12月) | 総駐車場運営881,545台(2025年10月末) | akippa 有価証券報告書・パーク24 決算短信(2025年12月) |
| 売上高 | 38.3億円(全社、2025年12月期) | 国内駐車場事業2,004億円(2025年10月期) | akippa 有価証券報告書・パーク24 決算短信 |
| 1台あたりの月間売上 | 5,059円(会社開示。月あたりと推定) | 約1.9万円(単純計算による推定) | akippa 業績予想(2026年8月)・パーク24 決算短信をもとに計算 |
1台あたりの売上は小さく、仕入れはほぼゼロ
1台あたりの稼ぎを比べると、差はさらにはっきりします。パーク24の国内駐車場の売上を運営台数で割ると、1台あたり月約1.9万円です。
決算短信をもとにした単純計算の推定です。売上には運営受託などの収入も、台数には月極や管理受託の分も含まれるため、あくまで目安です。
akippaは1台あたり5,059円でした(業績予想)。月あたりの数字と推定できます。
akippaには、持ち主が使わない時間だけ「たまに空く」スペースも多く含まれます。24時間売れる専用の区画と比べれば、1台あたりの売上は小さくなりやすいと言えます。
その代わり、1台ごとの仕入れ値(賃料や設備)はゼロに近い水準です。売れなければオーナーに払うお金も発生しません。1台の稼ぎが小さくても、在庫を抱えないから成り立つ、それが仲介型の損益の形です。
ただし、会社全体の費用は小さくありません。販売費及び一般管理費(販管費)とは、人件費や広告費など、事業を運営するための費用のことです。
有価証券報告書を見ると、akippaの販管費は売上の45.1%を占めます。会社は業績予想の資料で、人件費や開発外注費など固定費の割合が高いと説明しています。この点は弱点の章で詳しく見ます。
パーク24自身も、予約制の駐車場シェア「タイムズのB」を手がけています(タイムズのB、2026年10月確認)。借上げの本業を持ちながら、仲介型も手元に置いている形です。
空きスペースは営業で集める|アプリの裏にある「足で稼ぐ」開拓
アプリの会社に見えるakippaですが、供給の土台は営業担当者と代理店による開拓です。掲載駐車場の約28%は月極駐車場の空き区画で、不動産会社が管理する区画などが含まれます。
さらに保険料をすべて自社で負担し、オーナーの「損するかもしれない」という不安を先に取り除いています。仲介型でも、自社で抱えるものがゼロになるわけではありません。何を引き受けているかを見ていきます。
の種別
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)2026年8月18日
掲載の内訳|月極28%・個人宅26%・店舗18%
有価証券報告書で掲載駐車場の種別を見ると、最も多いのは月極駐車場で約28%でした。個人宅の駐車場が約26%、店舗駐車場が約18%、時間貸し駐車場が約13%と続きます。空き地などのその他は約15%です。
法人オーナーの例として、書類が挙げるのは3つです。不動産会社が管理する月極の空き区画、一般企業の休日の来客用駐車場、営業時間外の店舗の駐車場です。「個人の車庫を貸すアプリ」という印象とは違い、法人の空き区画が供給の大きな柱になっています。
同じ書類で地域を見ると、首都圏が約28%、関西圏が約25%でした。主要都市(福岡県・愛知県・北海道)が約13%、それ以外の地方が約34%です。
首都圏と関西圏で、掲載の過半を占める構成です。2026年12月期は、単価の高い東京都で掲載車室数を前期比19.6%増やす計画です(業績予想)。自社営業と代理店で開拓する分の計画値です。
営業・代理店による提案と、オーナーモードの2つの経路
オーナーの登録には、主に2つの経路があります。営業担当者や代理店(パートナー)による提案と、オーナー自身のアプリ登録です(有価証券報告書)。営業経由の主な対象は、法人や、ITに苦手意識のある人です。
代理店には、新規に獲得した実績に応じて手数料を払います。書類では、これを「営業コストの変動費化」と表現しています。
変動費とは、売上や件数に応じて増減する費用のことです。2025年度に新規掲載された車室のうち、約16.0%が代理店経由でした。SOMPOグループの保険代理店網を通じた開拓も可能だとしています。
オーナー自身が登録する「オーナーモード」は、2024年に提供を始めました。書類の沿革では、2025年4月を正式リリースとしています。マイナンバーカードで本人確認が最短即時に終わり、AIなどを使った審査で最短当日から掲載できます。
創業者の金谷氏は、大手が次々と参入した時期を振り返っています。ソフトバンクグループやリクルート、楽天などが参入したといいます(創業手帳)。
最終的に大手が撤退し、自社が残ったという振り返りです。小さく散らばった空きスペースを1件ずつ集める作業は、アプリだけでは進みにくいのでしょう。
保険料は全額akippa負担|オーナーの不安を先に引き受ける
他人の車を自分の土地に停めさせるのは、オーナーにとって不安なことです。akippaは、損害保険ジャパンと共同開発した専用の保険を全登録駐車場に適用しています(同書類)。物損事故や人身事故などの一定の損害に対応する保険です。
この保険料は、オーナーも利用者も払いません。すべてakippaの負担です。
2019年10月のSOMPOとの資本業務提携も、安心の仕組みづくりを掲げたものでした(PR TIMES)。この提携で、累計の調達額は約35億円になったと発表しています。
上場直前の2026年9月14日には、オーナーの不安を減らす機能を加えました。違反した利用者の予約を一時的に止める機能や、優良な利用者のバッジ表示です(ASCII STARTUP)。
土地を持たない代わりに、オーナーの不安を引き受ける仕組みを自社で持つ。それが仲介型の「持つもの」です。
駐車場売上の3分の1はイベント|コロナで組み替えた日常の需要
駐車場売上の約34%は、コンサートやスポーツ観戦などのイベント目的です。コロナ禍ではイベントが止まり、売上が前年同月比で4割減った時期もありました。
そこで伸びていた通勤の需要を見つけ、オフィス街や工場地帯の開拓に営業を振り向けています。いまは日常の利用が、売上の土台を支える存在です。
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)2026年8月18日。予約時に利用者が選んだ利用目的に基づく
イベント34%・通勤通学16%|利用目的の内訳
有価証券報告書で駐車場売上を利用目的別に見ると、イベントが約34%で最大でした。続いて通勤・通学が約16%、旅行・観光が約9%、家族や知人宅の訪問が約9%、ビジネスが約8%です。
イベントでは、主催者と組んで公式駐車場を予約制にする取り組みが中心です。連携先は、Jリーグの20クラブをはじめ、Bリーグなどのクラブにも広がります(有価証券報告書)。会場の周りの空きスペースも開拓し、来場者の駐車場を増やす形です。
2026年10月には、長野市の花火大会で公式駐車場の運営が決まったと発表しました(PR TIMES、2026年10月)。2026年12月期は、大型イベント駐車場売上を前期比22.7%増と計画しています(業績予想について)。イベントは、新しい利用者と出会う入口にもなっていると言えそうです。
コロナ禍は前年同月比4割減|通勤需要へ営業を振り向けた
コロナ禍で、イベントの需要は一気に消えました。金谷氏は、前年同月比で売上が4割減り、1か月の赤字が数千万円に達したと振り返っています(創業手帳、2024年9月)。
そこで手をつけたのが、データの分析でした。調べると、通勤の需要だけが伸びていたといいます(同記事)。そこでオフィス街や工場地帯の駐車場を増やすことに集中し、人件費以外のコストも削りました。
上場申請書類に載る5年分の数字でも、立て直しの跡が見えます。2021年12月期は経常損失3.1億円でしたが、2023年12月期に経常利益0.5億円へ転じました(有価証券報告書)。
売上の柱が止まったとき、伸びている使われ方をデータから探した。いまの通勤16%も、その延長にあると見ることもできます。
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(2026年8月)、2026年12月期の業績予想について(2026年8月18日)。2026年は会社予想(経常利益3.41億円)
予約351万件・利用者99万人|台数が増えるほど使われる
予約制の駐車場は、目的地の近くに選択肢が十分にないと使われません。掲載駐車場数は、2022年12月の35,601台から2025年12月の55,020台へ増えました(同書類)。2026年6月には58,870台です。
同じ書類によれば、この3年で年間の予約数は205万件から351万件へ増えました。年間に駐車場を使った人数(重複を除く)は、55.3万人から99.3万人になりました。
台数が増えると利用者が増え、利用者が増えるとさらにオーナーが集まる。これをネットワーク効果と呼びます。
ネットワーク効果とは、使う人が増えるほど、サービスの価値が上がる仕組みのことです。会社は、予約可能な駐車場掲載数で第1位を獲得したと発表しています(PR TIMES、2026年8月)。
これは日本マーケティングリサーチ機構の調査で、主要5社への個別聞き取りなどによる2026年7月時点の実績です。会社自身も、優位性を保証するものではないと注記しています。
持たない強みの裏側|利益率5%台・乗り換えやすさ・M&Aの行方
akippaの営業利益率は2025年12月期で5.3%で、過去の赤字による利益剰余金のマイナスも残っています。設備がないぶん、オーナーは他のサービスへ乗り換えたり、掛け持ちしたりしやすいと考えられます。
上場後は、駐車場運営事業者などの買収が成長策の柱です。「持たない」モデルから一歩踏み出す計画です。ここでは、上場申請書類が自ら挙げているリスクを中心に、弱点を整理します。
出典:akippa 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)2026年8月18日。その他は販管費合計から主な4費目を引いた計算値
営業利益率5.3%・利益剰余金はマイナス14.8億円
利益の水準は、まだ小さい段階です。営業利益2.0億円は、パーク24の国内駐車場事業の利益375億円の約0.5%です。
各社の資料をもとに計算しました。売上総利益率50.4%に対し、販売費及び一般管理費が売上の45.1%を占めます(有価証券報告書)。
主な費用は、決済手数料と代理店への報酬を含む支払手数料5.39億円です(同書類)。給料及び手当4.23億円、外注費2.61億円、広告宣伝費1.13億円と続きます。
広告宣伝費は売上の3.0%です。会社自身も書類で、サービスの認知度の低さを課題に挙げています。
会社の資産と負債を示す貸借対照表を見ると、2025年末の利益剰余金はマイナス14.8億円でした。利益剰余金とは、会社がこれまでに積み上げた利益の合計のことで、マイナスは過去の赤字が残っている状態です。
繰越欠損金とは、過去の赤字を翌年以降の利益と相殺して税金を減らせる枠のことです。上場でこの控除に上限がかかり、2026年12月期は税負担が約0.56億円増える見込みです(業績予想)。
乗り換えやすさという弱み|還元率を掲げる競合
設備を置かないぶん、オーナーは他社へ移ったり掛け持ちしたりしやすいと考えられます。上場申請書類も、競合の台頭による競争の激化をリスクに挙げています。過去には資本力のある複数の企業が参入した事例があった、という記述もあります。
同じ成果報酬型の駐車場シェアには、アース・カーの「特P」があります。特Pは、2021年1月の同社調べにもとづき「業界No.1の売上還元率」を掲げています(特P、2026年10月確認)。同じページでは、月100万人以上が使うともうたっています。
オーナーの取り分で比べられると、46.3%という条件は不利になりやすいでしょう。53.7%の手数料は、「akippaなら予約が入る」という集客力があってこそ成り立つものです。競合が集客で追いつけば、料率には下げる圧力がかかります。
代理店への依存もリスクの1つです。2025年度の新規掲載のうち、上位3社の代理店による獲得が約11.7%を占めます(同書類)。関係が悪化すれば、ノウハウの流出や、代理店自身が競合になるおそれがあると会社は書いています。
イベント・天候・利用者トラブルという変動要因
需要の波も大きい事業です。7月から9月は旅行やレジャーで売上が高くなります(有価証券報告書)。
プロスポーツのオフシーズンと重なる1月から3月は低めです。需要のピークに台風や大雪が重なると、予約のキャンセルが増えます。
場の責任も、プラットフォームならではの課題です。会社は書類で、悪用や不適切な駐車場の混入を完全に排除するのは困難だと書いています。そのうえで、本人確認や掲載基準による審査、利用後のレビューを整え、通報窓口なども設けています。
他人の車を停めさせる以上、利用者のマナーへの不安はつきものです。2026年9月の新機能は、こうしたオーナーの不安に応えるためのものでした(ASCII STARTUP)。安心の仕組みは、つくって終わりではなく、更新し続ける必要があります。
業績予想は上方修正を見送り|買収で「持つ」側へ近づく
2026年12月期の業績予想には、上場前から注目点がありました。中間期の営業利益は計画を77.88%上回りました(業績予想)。会社自身も「業績予想の修正基準に達する水準」と書いています。
それでも、上方修正は見送りました。8月と9月が最大の繁忙期で、台風や長雨、イベントの開催状況に左右されるためです(同資料)。
9月以降の取締役会で修正の要否を判断し、必要なら速やかに開示する方針です。2026年10月初め時点で、修正の開示は確認できません(akippa IRニュース)。
上場後の成長策として、会社が掲げるのはM&Aです。駐車場運営事業者や不動産管理会社を買収し、デジタル化で価値を上げる「ロールアップ戦略」です(同書類)。
キャッシュレス化やAIによる価格の最適化を入れるとしています。売り手側では、後継者不在などで中小コインパーキング事業者の譲渡ニーズが広がっていると分析しています。ロールアップとは、同じ業界の小さな会社を次々に買収してまとめ、価値を高める手法です。
実現すれば、駐車場の設備や土地の契約を自ら抱えることになります。パーク24の型に一歩近づく選択です。
なお、M&Aの業績への影響は、2026年12月期の予想には含まれていません(業績予想について)。持たない身軽さと、持つことで得る利益をどう両立させるかが、上場後の課題と言えます。
相手の「始める負担」をゼロにできるか|中小企業が持ち帰れる4つの問い
akippaから中小企業が持ち帰れるのは、4つの問いです。相手の負担をゼロにできるか、何を引き受けるか、両側から受け取れているか、データで次の需要を探せるかです。
上場したばかりのプラットフォームのまねを、そのまますることはできません。それでも、他社の空いている資産や時間を借りて商売をする場面は、どの業種にもあるはずです。
空いている倉庫、閑散期の機械、営業時間外の店舗。思い当たるものを1つ浮かべながら読んでみてください。
出典:akippa 上場申請のための有価証券報告書、業績予想について、創業手帳インタビューをもとに作成
相手の初期費用と固定費をゼロにする提案ができるか
オーナーの取り分は利用料金の半分以下です。それでも約5.5万台が集まった理由の1つは、初期費用も月額もかからず、使われなかった月に損をしないことだと考えられます。取り分の大きさより、「損をしない」安心のほうが人を動かすことがあります。
中小企業でも、取引先に「始める負担」と「やめる負担」を求めている場面は多いものです。導入費、最低契約期間、解約金などが当てはまります。まず、自社の取引で相手が払う初期費用と、やめるときに残る支払いを書き出してみてください。
そのうえで、どれか1つをゼロにした場合に、自社の利益がどう変わるかを計算します。ゼロにした分を、成果に応じた料金で回収できるなら、提案の形を変える価値があります。他社の空いている資産を活かす考え方は、小さな会社の隠れた資産でも整理しています。
持たない代わりに、何を自社で引き受けるか
akippaは土地を持たない代わりに、保険料や24時間のサポート、掲載の審査を自社で抱えています。手数料の53.7%は、こうした「相手の不安を引き受ける費用」の対価でもあります。持たない経営は、何も持たない経営ではありません。
他社の資産や人を借りて事業をするなら、相手が恐れる失敗を3つ挙げてみてください。壊される、揉める、損をする、といったものです。そのうち自社が引き受けられるものに印をつけると、仕入れの条件を交渉する材料が見えてきます。
他社の設備を回して事業にした例として、ラクスルのビジネスモデルも参考になります。印刷会社の空いている印刷機を活かす仕組みで、akippaと同じく「他社の空き」を売り物にしています。
取引の両側から、少しずつ受け取れているか
akippaは、オーナーから手数料を、利用者からサービス料を受け取る形です。予約1件あたり約1,090円の取引です。
売上総利益19.3億円を分けると、駐車場の手数料分約13.4億円、サービス料4.79億円、その他1.10億円です。原価をすべて駐車場売上分とみなした計算値です。片側だけに高い料金を求めるより、両側の負担は軽く感じられると考えられます。
中小企業でも、仲介や紹介の役割を担っている取引はあるはずです。片側だけに請求している取引を一覧にしてみてください。もう片側が「払ってもいい」と思うだけの価値を、自社が渡せているかどうかを見直すきっかけになります。
貸し手と借り手、企業と求職者など、両側の顧客をつなぐ事業の型は、リクルートのビジネスモデルでも詳しく扱っています。
売上の柱が止まったとき、データで次の需要を探せるか
コロナ禍でイベントが消えたとき、akippaは予約のデータから通勤の需要が伸びていることを見つけました。営業先をオフィス街や工場地帯に変えたことが、いまの日常利用の厚みにつながったと見ることもできます。危機のときに頼りになったのは、手元にあった顧客の使われ方の記録でした。
中小企業でも、顧客が何のために買っているかを記録しておくことはできます。まずは月に1回、用途や業種別に売上を集計してみてください。半年分たまると、伸びている使われ方と、止まりやすい使われ方が見えてきます。
ほかの会社の稼ぎ方は、ビジネスモデル一覧にまとめました。他社の場所に乗る手数料型の例として、セブン銀行のビジネスモデルも比べてみてください。
まとめ|akippaの稼ぎ方を一言でいうと
akippaは、他人の駐車場の「空いている時間」を仲介し、オーナーと利用者の両方から手数料を受け取って稼いでいます。土地も精算機も持たず、総資産10.5億円で売上高38.3億円を回す仕組みです。
強さを支えるのは、負担ゼロの成果報酬、営業で空きを集める力、保険などで不安を引き受ける仕組みの3つです。一方で、利益率はまだ5%台で、オーナーの乗り換えやすさやイベントへの依存といった弱点も抱えています。
自社に置き換えるなら、まず取引先が「始めるとき」と「やめるとき」に払うお金を書き出すところから。
編集部コメント
上場申請書類を読み込むなかで、私たちコントリ編集部が印象に残ったのは、業績予想の上方修正を見送った理由の書き方でした。中間期は計画を大きく上回り、修正の基準に届く水準だと会社自身が認めています。そのうえで、台風や長雨で8月と9月が崩れるかもしれないと、慎重な判断の理由を具体的に並べていました。
イベントが消えたコロナ禍には、データから通勤の需要を見つけて営業先を変えた。上場の直前には、天候の怖さを知っているからこそ、数字を急いで上げなかった。どちらも、自社の弱みを知っている会社の判断に見えます。
資料を読み比べるなかで、私たちはある点に気づきました。akippaの「持たない経営」は、オーナーの不安という見えにくいものを引き受ける経営だったことです。
コントリが経営者インタビューで大切にしているのは、こうした判断の理由をご本人の言葉で伺うことです。何を持たず、何を引き受けると決めたのか。その理由を自分の言葉で語れることは、規模を問わずどの経営者にも通じる強さだと私たちは捉えています。
よくある質問(FAQ)
Q1. akippaのビジネスモデルをひと言でいうと?
A. 個人宅や月極駐車場の空きスペースを、予約制の駐車場として貸し借りできるようにする仲介モデルです。akippaは土地や設備を持たず、利用があったときに両側から手数料を受け取ります(出典:akippa 有価証券報告書)。
Q2. akippaに駐車場を貸すと、オーナーはいくら受け取れますか?
A. オーナー向けページによると、駐車場の利用分の46.3%が報酬として振り込まれます。初期費用・月額・退会手数料は0円です。金額は立地や利用状況で大きく変わります(出典:akippa オーナー向けページ)。開示数値からの推定では、掲載1台あたり月約2,300〜3,000円です。
Q3. akippaの利用者が払うサービス料とは?
A. 駐車料金とは別に、利用者が支払う料金です。会社の業績予想資料では、駐車料金の15%をサービス料として課金していると説明されています。2025年12月期のサービス料は4.79億円でした(出典:akippa 有価証券報告書)。
Q4. akippaとパーク24(タイムズ)の違いは何ですか?
A. タイムズは土地を借り上げて毎月一定額の賃料を払い、空きのリスクを自社で負います。akippaは借り上げず、使われた分だけ報酬を払います。空きのリスクは主にオーナーに残ります(出典:各社オーナー向けページ)。
Q5. akippaは黒字ですか?
A. 2023年12月期から通期で黒字です。2025年12月期は売上高38.3億円、営業利益2.0億円でした。ただし2025年末の利益剰余金は、マイナス14.8億円です(出典:akippa 有価証券報告書)。
Q6. akippaはいつ上場しましたか?
A. 2026年9月18日に、東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました(出典:akippa 新規上場のお知らせ)。上場後は、駐車場運営事業者などの買収を成長策に掲げます(出典:akippa 有価証券報告書)。
参考資料
本記事の土台は、コントリのビジネスモデル研究ノート(2026年10月作成)です。主要な数字は、akippaの上場申請書類・業績予想・公式ページで照合しました。
パーク24の数字は決算短信で確かめました。研究ノートの記述のうち、出典で裏が取れなかったものは本文から外しています。
- 日本取引所グループ|akippa株式会社 新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)(2026年8月18日)
- akippa株式会社|2026年12月期の業績予想について(2026年8月18日)
- akippa株式会社|東京証券取引所スタンダード市場への新規上場に関するお知らせ(2026年9月18日)
- akippa株式会社|IRニュース
- PR TIMES|「第120回長野えびす講煙火大会」にてアキッパの公式駐車場運営が決定(2026年10月)
- アキッパ|駐車場オーナー向けページ
- PR TIMES|アキッパの会員登録数が累計で550万人を突破(2026年7月18日)
- PR TIMES|アキッパが「予約可能な駐車場掲載数」でNo.1を獲得(2026年8月19日)
- ASCII STARTUP|会員数550万人の駐車場シェア「アキッパ」が新規上場 安心安全を目指す3つの新機能を発表(2026年9月24日)
- PR TIMES|akippa、SOMPOホールディングスと資本業務提携(2019年10月3日)
- 創業手帳|akippa 金谷元気 楽天、ソフトバンクも撤退した駐車場シェアリングを制す番狂わせストーリー(2024年9月)
- パーク24|2025年10月期 決算短信(2025年12月15日)
- タイムズ24|駐車場運営をご検討の方
- タイムズのB|予約制駐車場シェアリングサービス
- 特P(アース・カー)|駐車場オーナー向けページ

