
メニコンのビジネスモデル|サブスクの原型は定額コンタクト
「うちの商品は、値引きしないと売れない」。販売店や代理店を通して商品を届けている経営者の方なら、一度はこの言葉を口にしたことがあるのではないでしょうか。
メニコンのビジネスモデルは、コンタクトレンズを1枚ずつ売るのではなく、会員から毎月の定額を受け取る仕組みです。中心にあるのは、2001年に始まった定額制「メルスプラン」。サブスクという言葉が広まるずっと前に生まれた、定額制の先駆けです。
2026年3月期のメルスプラン売上高は約507億円で、連結売上高1,256億円の約4割を占めました。出典はメニコンの決算説明資料(2026年5月)です。しかもこの仕組みは、販売店どうしの値引き合戦を止めるための設計でした。
本記事の主な材料は、コントリ編集部がまとめたビジネスモデル研究ノートです。最新の決算資料と照らし合わせ、お金の流れ、数字、真似されにくい理由、課題の順に整理しました。最後は、中小企業が自社に置き換えられる4つの問いで締めくくります。値引き競争から降りる道筋を考えるきっかけになれば嬉しく思います。
メニコンのビジネスモデルとは|売上の約4割を定額制が支える
メニコンの事業の土台は、定額制「メルスプラン」です。2026年3月期の連結売上高1,256億円のうち、メルスプランの売上は約507億円で、約4割を占めました。レンズを売り切るのではなく、会員から毎月の定額を受け取る仕組みこそ、会社の収益の柱です。
2001年に始まった定額制「メルスプラン」とは
メニコンは、1951年に日本で初めて角膜コンタクトレンズを開発した会社です。角膜コンタクトレンズとは、黒目の上にのせて使う小さなレンズのことです。名古屋に本社を置く、国内コンタクトレンズ業界の草分けと言える存在です。
そのメニコンが2001年に本格的に始めたのが、メルスプランです。メルスプランとは、月々の定額費用を払うと、眼科医の処方にもとづいてメニコンのレンズを使い続けられるサービスのことです。例えば、度数が合わなくなったときや、落ちない汚れ・キズがついたとき、破損したときにレンズを交換できます。
公式サイトで案内されている月額費用は、2026年9月時点で2,310円から6,270円です。金額はレンズの種類ごとに異なります。入会時に入会金と2か月分の月額費用を払い、3か月目以降は自動引き落としという流れです。
いまでは動画配信や音楽アプリで当たり前になった定額制も、2001年当時はまだ珍しいものでした。メルスプランを構想した田中英成氏(現・名誉会長)も、公式コラムで当時をふり返っています。携帯電話にもまだ定額制がなく、前例がなかったそうです。
私たちコントリ編集部が注目したのは、ある意外性でした。「日本のサブスクの原型は、実はコンタクトレンズだった」という点です。しかも思いつきではなく、業界の構造的な問題を解くための打ち手でした。
レンズ販売型とメルスプラン型の違いを比較表で見る
従来のレンズ販売と、メルスプランの違いを並べました。一番の違いは「誰と誰が契約し、誰が値段を決めるか」という点です。
| 項目 | 従来のレンズ販売 | メルスプラン | 出典 |
|---|---|---|---|
| 契約の相手 | 利用者と販売店 | 利用者とメニコン | NTT東日本 BizDrive |
| お金の流れ | 利用者→販売店→メーカー | 利用者→メニコン→販売店 | NTT東日本 BizDrive |
| 販売店の収入 | 仕入れて売った差額 | 会費の一部を手数料として受け取る | ニュースイッチ 2019年3月 |
| レンズの交換 | 買い直しが基本 | 度数変化・汚れ・キズ・破損で交換 | メルスプラン公式 2026年9月 |
| メーカーの収入 | 販売店への卸売 | 会員の月額費用。平均3,249円 | 決算説明資料 2026年5月 |
表を見ると、メルスプランが料金の形だけを変えたサービスではないとわかるはずです。契約の相手とお金の向きを変えたことで、販売店の役割そのものが変わりました。なぜそこまでする必要があったのかを、次の章で見ていきます。
経営者の挑戦と決断のストーリーを、インタビューでお届けしています。
ビフォー|売れば売るほど疲弊する構造にはまっていた
メルスプランが生まれる前、コンタクトレンズ業界は激しい価格競争のなかにありました。1990年代後半、海外メーカーの使い捨てソフトレンズが広がり、販売店どうしの値引き合戦が進んだためです。メニコン自身も、その渦中で業績の不安定さに直面します。
メルスプランが生まれるまでと、その後の歩みを年表にまとめました。
使い捨てレンズの普及と販売店の値引き合戦
使い捨てソフトレンズとは、1日や2週間などの期間で使い終えて交換する柔らかいレンズのことです。手入れの手間が減る便利さから、利用者は一気に広がっていきます。一方で、1枚あたりの単価は下がっていきます。
NTT東日本のコラム「BizDrive」によると、1990年代後半に海外メーカーが使い捨てレンズで参入しました。そこから価格競争が起きた、という見立てです。販売店は「安い店」を選ぶ利用者を取り合い、値引きで応じるしかありません。販売店の利益が削られれば、メーカーへの卸値も下げてほしいという声が強まります。
田中英成氏はメニコンの公式コラムで、当時をこうふり返っています。バブル崩壊後のデフレのなかで価格が下がりすぎ、販売店の経営が悪化した。さらに、レンズが医療機器ではなく使い捨ての商品のように扱われ、目のトラブルにもつながっていた、と。
売れば売るほど販売店もメーカーも疲れていく。こうした構造に悩んだ経験は、業種を問わず多くの経営者の方にあるのではないでしょうか。
メーカーから最終顧客が見えないという弱点
もう一つの問題は、メーカーから最終顧客の顔が見えないことでした。レンズは販売店を通して売られるため、誰がどのレンズをどれくらい使っているのかを、メーカーは直接知ることができません。
顧客が見えなければ、ロイヤルティ(そのブランドを選び続ける気持ち)も育ちにくいものです。利用者の関心は「どのメーカーか」より「どの店が安いか」に向かいます。結果として、価格以外で選ばれる理由を作りにくい状態が続いたわけです。
研究ノートでは、この状態を「売れば売るほど疲弊する構造」と呼んでいます。メルスプランは、この構造を正面から変えるために生まれた仕組みでした。
お金の流れを図解|販売店を値引き競争から降ろした仕組み
メルスプランの核心は、お金の流れを逆向きにしたことです。従来の「利用者→販売店→メーカー」から、「利用者→メニコン→販売店」へ。利用者はメニコンと直接契約し、販売店は仕入れも在庫も持たずに、会費の一部を手数料として受け取ります。
三者の関係を、従来の形と並べて図にしました。
平均3,249円メニコン値段を決める・直接契約手数料
会費の一部加盟店約1,600店舗・在庫なし
利用者・加盟店・メニコンの三者の取り分
メルスプランがうまく回っている理由は、三者それぞれに得がある点です。一つずつ見ていきましょう。
- 度数変化・汚れ・キズ・破損で交換できる安心
- 支出が毎月一定で見通しが立つ
- 全国の加盟施設で受け取り・交換
- 仕入れと在庫が不要
- 会費の一部を手数料として受け取る
- 値引き競争から降りられる
- 月額費用が積み上がり収益が安定
- 会員と直接契約し利用データが集まる
- 最終顧客が見えるようになる
1つめは、利用者の取り分です。度数の変化や破損を気にせず、レンズを交換できる安心が手に入ります。支出が毎月一定なので、家計の見通しも立てやすいでしょう。
2つめは、加盟店の取り分です。加盟店とは、メルスプランの受付やレンズの受け渡しを担う眼科や販売店のことです。加盟店は会費の一部を手数料として受け取ります。レンズを仕入れて在庫を抱える必要がありません。値引きで客を取り合う必要がなくなり、収入の見通しも立てやすい立場に変わったのです。
3つめは、メニコンの取り分です。毎月の会費が積み上がることで、収益が安定します。さらに、会員と直接契約しているため、誰がどのレンズを使っているかのデータが手元に集まります。販売店経由では見えなかった最終顧客が、見えるようになりました。
三者のどこか一つだけが得をする仕組みは、長くは続きません。2001年から25年近く続いていること自体が、三者の取り分の設計がかみ合ってきた証拠と言えるでしょう。
販売店が値付けしないから値引きが起きない
値引き競争が止まった理由は、とてもシンプルです。販売店が値段を決めなくなったからです。
従来は、販売店がメーカーからレンズを仕入れ、自分で値段をつけて売る形でした。隣の店が安くすれば、こちらも下げる。値段を決める人が多いほど、値引きの連鎖は起こりやすいものです。
メルスプランでは、月額費用を決めるのも受け取るのもメニコンです。加盟店にとっての収入は、会員を担当することで入る手数料です。値段を下げても自分の収入は増えないため、値引きをする理由そのものがなくなりました。
研究ノートでの表現は「値付けの主体を変えた」。安くしない努力を重ねるのではなく、競争の土俵そのものを消した打ち手です。
「いつでも交換できる」という約束の意味
もう一つの柱が、交換の約束です。メルスプランの会員は、度数が合わなくなったときや、落ちない汚れ・キズがついたとき、破損したときにレンズを交換できます。旅先や転居先でも、全国の加盟施設で受け取りや交換が可能です。
この約束は、メーカーから見るとコストのかかる約束です。それでも交換を約束した理由は、利用者の不安にあります。「壊れたらどうしよう」「度数が変わったら買い直しか」という不安を消すためでした。
利用者の不安を先回りして消すことは、価格で選ばれる状態から抜け出す強い武器です。安さではなく安心で選ばれる。メルスプランの差別化は、この一点に集約されます。
あなたの会社の強みを、
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数字で見るメルスプラン|会員130万人と平均月額3,249円
メルスプランの会員数は2019年1月に130万人に到達し、2026年3月期末も130.0万人です。一方で、会員1人あたりの平均月額費用は、2年で2,883円から3,249円に上がりました。数字を並べると、会員数を増やす段階から、会員あたりの価値を上げる段階へ移っていることが見えてきます。
直近3期の推移を、数値カードで見てみましょう。
2026年3月期決算のポイント
まず、会社全体の数字から確認しておきましょう。2026年3月期の連結売上高は1,256億円で、前期比3.4%の増収です。営業利益は102億円(2.2%増)、経常利益は110億円(15.2%増)です(決算説明資料 2026年5月)。
このうちメルスプランの売上高は506億8,700万円で、前期比1.8%の増加でした。1日使い捨ての「1DAY」タイプが伸びた一方、それ以外のタイプはほぼ横ばいです。決算説明資料によると、1DAYの会員が増えた分、1DAY以外の会員数が減った形です。
会社全体の伸びを支えたのは、海外での1DAYの販売拡大でもあります。国内で築いた定額制の土台と、海外での物販の拡大を組み合わせて、成長を図っている姿が見えてきます。
会員数は横ばい、平均月額費用は上昇
会員数の推移を見ると、2019年1月に130万人に到達しました(メニコン公式ニュース 2019年1月)。その後、2024年3月期末は134.3万人、2025年3月期末は132.5万人、2026年3月期末は130.0万人です。この2年は、会員数がゆるやかに減っています。
一方で、平均月額費用は上がり続けてきました。平均月額費用とは、メルスプランの売上高を月数と会員数で割った、会員1人あたりの月の支払額のことです。2024年3月期の2,883円から、2026年3月期は3,249円へ。2年で366円の上昇です。
上昇の理由として、決算説明資料が挙げるのは2つです。1DAYや遠近両用といった単価の高いレンズを選ぶ会員が増えたこと。そして価格改定の効果です。会員数が微減でも売上が伸びたのは、この単価の上昇によるものです。
過去の報道では、会員数が年々増えていると紹介されてきました。最新の決算資料で確かめると、ここ2年は増加ではなく微減です。数字は時点で大きく変わります。引用するときは、最新の開示で確かめておくと安心です。
中期経営計画で掲げるメルス売上550億円
メニコンは中期経営計画で、2028年3月期にメルスプランの売上高550億円を目標に掲げています。あわせて、メルス会員に占める1DAYの比率を33%以上にする目標も示しています(決算説明資料 2026年5月)。
2027年3月期の会社予想では、メルスプランの売上高は517億円(前期比2.0%増)です。目標の550億円に向けては、1DAYへの切り替えを進め、会員あたりの単価を上げていく道筋が読み取れます。
会員の数を追うより、会員1人との関係を深めて単価を上げる。定額制を25年続けてきた会社が選んだ、次の一手と言えそうです。
なぜメニコンのモデルは真似されにくいのか
定額制という料金の形そのものは、どの会社でも真似できます。それでもメルスプランと同じ形が広がりにくいのは、仕組みを支える土台づくりに長い時間がかかるからです。コントリの研究ノートでは、3つの壁として整理しています。
壁1:約1,600店舗の加盟施設と眼科医との信頼
メルスプランは、約1,600店舗で展開されています(決算説明資料 2025年5月)。この数の加盟施設と業務委託の関係を結ぶには、一朝一夕ではすみません。
しかもコンタクトレンズは、眼科医の処方を前提とする医療機器です。加盟施設を広げるには、販売店だけでなく、医療の側からの信頼も積み上げる必要があります。後から参入する会社が、同じ密度のネットワークを短期間でつくるのは難しいというのが研究ノートの見立てです。
壁2:交換自由を約束できる自社製造
「いつでも交換できる」という約束は、レンズの供給を自社でコントロールできなければ成り立ちません。どのレンズを、いつ、どれだけ用意するかを自分で決められる必要があるからです。
メニコンは、日本で初めて角膜コンタクトレンズを開発して以来、自社でレンズを開発・製造してきました。他社の製品を仕入れて売る商社的な立場の会社では、同じ約束をするのは難しいでしょう。約束の大きさは、自社で持っている力の大きさに比例すると言えます。
壁3:交換コストを吸収できる会員規模とデータ
交換の約束は、会員が少ないうちは重いコストです。会員が増えるほど、交換にかかる費用が全体のなかで薄まっていきます。つまり、規模が先に立つほど有利になる構造です。
この規模を支えるのが、継続率の高さです。日刊工業新聞の報道(ニュースイッチ 2019年3月)では、退会率は7%と紹介されていました。退会率とは、会員のうち1年間でやめる人の割合のことです。最新の値は開示で確認できないため、2019年時点の数字として受け止めておきます。
さらに、会員と直接契約していることで、装用の実態データが集まります。どのレンズがどれだけ使われ、どれだけ交換されているのか。25年近く積み上げたデータは、商品開発や生産計画の精度を高める土台と言えます。後発の会社が、このデータの蓄積を一気に追いかけることはできません。
メルスプランの課題|会員数の伸び悩みと価格改定
強いモデルにも、向き合うべき課題があります。会員数は2024年3月期末の134.3万人から2年続けて減り、増収には価格改定の効果も含まれています。グローバル大手との競争や、視力矯正手術の広がりといった外部環境の変化も無視できません。
メルスプランの売上高と会員数を、同じ期間で並べてみます。
会員数の純減と1DAYへの移行
2026年3月期の決算説明資料では、1DAYの会員が増えた一方、1DAY以外の会員数は減ったと説明されています。メルスプラン全体の会員数は130.0万人で、前期末の132.5万人から2.5万人の減少です。
1DAYへの移行は単価の上昇につながるため、売上の面では追い風です。一方で、新しく入会する人を増やせているかどうかは、今後の注目点でしょう。会員数の減少が続けば、単価の上昇だけで売上を伸ばし続けるのは難しくなるからです。
価格改定に頼る増収の限界
2025年3月期の決算説明資料は、1DAY以外のメルスプランについて説明しています。会員数は減ったものの、価格改定の効果で伸びたという内容です。価格改定の効果は22.7億円です。
値上げを受け入れてもらえるのは、利用者がサービスに価値を感じている証でもあります。ただし、値上げは何度もくり返せる手段ではありません。会員数の純増と単価の上昇を両立できるかが、定額制の次の段階を左右しそうです。
眼科医療の制度や代替手段の広がり
コンタクトレンズの市場では、世界的な大手メーカーとの競争が続く状況です。1DAYの分野では特に、海外の大手との価格や品揃えの競争が避けられません。
また、処方を前提とするモデルのため、医療の制度や規制が変われば影響を受けます。ICL(目の中にレンズを入れる手術)などの視力矯正手術も広がっています。コンタクトレンズを使う人そのものが減る要因になりえます。こうした外部の変化にどう備えるかも、長く続いてきたモデルの課題と言えるでしょう。
中小企業が持ち帰れる学び|値引きをやめるより値付けの主体を変える
メルスプランは、コンタクトレンズを扱わない会社にも応用できる問いの宝庫です。特に、代理店や販売店を通して売っている製造業・卸・小売にとっては、他人事ではない話です。研究ノートの読み解きから、自社に置き換えやすい4つの問いにまとめます。
値付けを誰がしているかを書き出す
メルスプランが値引き競争を止めた理由は、販売店ではなくメニコンが値段を決める形に変えたことでした。値引きをやめる努力より先に、値付けの主体を変えたわけです。
中小企業でも、同じ見直しは可能です。例えば、地域の食品メーカーが卸を通してスーパーに商品を置いている場合、店頭の値段を決めているのはスーパーです。特売の目玉にされるほど、メーカーの手取りは細っていきます。
まず、自社の主な商品を3つ書き出し、それぞれ「最終的に値段を決めているのは誰か」を書いてみてください。自社以外が値段を決めている商品があれば、直販の定期便や、会員制の仕組みで値付けを取り戻せないか考える余地があります。
販売チャネルが儲かる設計を先に考える
約1,600店舗が加盟したのは、加盟店にとって仕入れも在庫も持たずに手数料が入るという条件があったからです。販売チャネルが儲からない仕組みは、どれだけ理屈が正しくても広がりません。
新しい仕組みを考えるとき、多くの経営者の方は自社の取り分から考えがちではないでしょうか。メルスプランの順番は逆でした。販売店が値引き合戦から降りられ、収入の見通しが立つ設計を先に用意したのです。
自社の代理店や販売店の立場に立って、「この仕組みに乗ると、何が楽になり、何が儲かるのか」を1行で書いてみてください。1行で書けないなら、チャネルにとっての利点がまだ足りないサインです。
単価ではなく顧客あたりの月次収入を守る
使い捨てレンズの普及で、レンズ1枚あたりの単価は下がる一方でした。メニコンはその単価を守るのではなく、会員1人あたりの月の収入を守る考え方に切り替えています。いまの平均月額費用3,249円は、その考え方の延長線上にある数字です。
単価で見るか、月次収入で見るかの違いを、Before/Afterで並べました。
- 商品を1個ずつ売り切る
- 単価が下がると利益も下がる
- 値引きで客を取り合う
- 最終顧客の顔が見えない
- 毎月の定額を受け取る
- 単価の高い商品への切り替えで顧客あたりの収入が上がる
- 交換や安心の約束で選ばれる
- 顧客と直接つながる
商品の単価が下がっていく業界では、この転換が大きな意味を持ちます。例えば、消耗品を扱う会社なら、1回ごとの販売を「定期交換サービス」に変えられないかを考えてみる。単価の比較から、月々の安心の比較へと、顧客が見る基準が変わります。
サブスクを自社に取り入れる具体的な進め方は、「中小企業のサブスク導入事例」で詳しく整理しています。業種別の事例や、売上を安定させる設計の考え方をあわせてご覧ください。
顧客の不安を消す約束は価格より強い
「いつでも交換できる」という約束は、メーカーにとってコストのかかる約束でした。それでも、この約束が利用者の不安を消し、価格ではなく安心で選ばれる理由になりました。
自社の顧客が、買う前にためらう理由は何でしょうか。「失敗したらどうしよう」「合わなかったら損だ」という不安が見つかったとします。それを消す約束をつくれないか、考えてみてください。不安を消す約束は、値引きよりも長く効く差別化になります。
私たちコントリ編集部も、経営者の方々への取材を重ねてきました。そのなかで、値引きではなく仕組みで選ばれる会社に何度も出会ってきました。そうした会社の多くに共通するのは、自社の強みを言葉にできていることです。言葉にするきっかけは、誰かに聞かれることや、人とのご縁から生まれることが少なくありません。
まとめ|メニコンのビジネスモデルは「値付けの主体」を変えた物語
メニコンのビジネスモデルは、コンタクトレンズを売り切るのではなく、会員から毎月の定額を受け取る仕組みです。2026年3月期は、メルスプランの売上高が約507億円でした。連結売上高の約4割にあたります(決算説明資料 2026年5月)。
2001年に始まったメルスプランは、販売店を値付けから解放することで、値引き競争そのものを止めました。約1,600店舗の加盟施設、交換自由を支える自社製造、会員規模とデータが、このモデルを真似されにくくしています。
一方で、会員数はこの2年ゆるやかに減っており、増収には価格改定の効果も含まれます。会員を増やしながら会員あたりの価値を高められるかが、次の25年を左右しそうです。
自社の商品の値段を、最終的に決めているのは誰でしょうか。まずは主な商品を3つ書き出し、値付けをしている人の名前を横に書くところから始めてみませんか。
ほかの企業の仕組みと比べてみたい方は、「ビジネスモデル一覧」もご覧ください。本部と加盟店の関係づくりでは「セブンイレブンのビジネスモデル」が参考になります。値引きに頼らず高い付加価値を生む例は「キーエンスのビジネスモデル」です。
製造と販売を一体で設計する例として、「無印良品のビジネスモデル」もおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q1. メニコンはどうやって利益を出しているのですか?
A. コンタクトレンズとケア用品の開発・製造・販売が事業の中心です。国内では定額制の「メルスプラン」が大きな柱になっています。2026年3月期のメルスプラン売上高は約507億円でした。連結売上高1,256億円の約4割です(決算説明資料 2026年5月)。
Q2. メルスプランはいつから始まったのですか?
A. 2001年に本格的に市場に導入されました(メニコン公式ニュース 2019年1月)。サブスクという言葉が広まるずっと前で、定額制の先駆けとして報道でも紹介されてきたサービスです。
Q3. メルスプランの加盟店はどうやって収入を得ているのですか?
A. 利用者はメニコンと直接契約し、月額費用はメニコンが受け取ります。加盟店は会費の一部を手数料として受け取ります。レンズの在庫を抱えずに済む仕組みです(NTT東日本 BizDrive、ニュースイッチ 2019年3月)。値段を決めるのは加盟店ではないため、加盟店どうしで値引き合戦をする必要がありません。
Q4. メルスプランの会員数は増えているのですか?
A. 2019年1月に130万人に到達しています。その後、2024年3月期末の134.3万人から、2026年3月期末は130.0万人とやや減っています。一方で、1DAYなど単価の高いレンズの比率が上がりました。平均月額費用は3,249円です(決算説明資料 2026年5月)。
Q5. メルスプランはいつでも解約できるのですか?
A. 公式サイトのよくある質問では、入会から1年を超えればいつでも解約できると案内されています。入会1年未満は、原則として解約できません。入会を考える場合は、契約内容を公式サイトで確かめておくと安心です。
Q6. 中小企業がメニコンから学べることは何ですか?
A. 値引き競争から抜けるには、「誰が値段を決めているか」という構造を変える発想が役に立ちます。販売チャネルが儲かる設計を先に考えることも大切です。単価ではなく顧客1人あたりの月の収入を守る視点も、自社に置き換えやすいでしょう。
参考資料
本記事の土台は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートです。2026年9月時点で確認できた決算資料・公式発表・報道と照合しました。数字は出典ごとに時点と範囲が異なるため、年月を併記しています。
- メニコン|2026年3月期 決算説明資料(2026年5月13日)
- メニコン|2025年3月期 決算説明資料(2025年5月)
- メニコン|決算説明資料(IR情報)
- メニコン|定額制コンタクト「メルスプラン」会員数130万人到達のお知らせ(2019年1月)
- メニコン|定額制コンタクトレンズ「メルスプラン」の誕生秘話をメニコン会長が語る
- メニコン|メルスプラン
- メニコン|メルスプラン よくあるご質問
- メニコン|沿革
- NTT東日本 BizDrive|価格競争の泥沼から脱したメニコンの秘策
- ニュースイッチ(日刊工業新聞)|“サブスクの先駆け”コンタクトレンズ「メルスプラン」が世界を駆ける日(2019年3月)
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判断の背景や試行錯誤こそ、同じ立場の経営者に届く価値があります。取材から記事化まで編集チームが伴走します。
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編集部コメント
印象に残ったのは、決算説明資料の「平均月額費用」の注記でした。メルス売上高を月数で割り、さらに会員数で割る。会社として、レンズ1枚の値段ではなく、会員1人との毎月の関係で事業を見ていることが、計算式の一行に表れていました。もう一つは、会員数が2年続けて減っていることを、資料が隠さずに載せていたことです。25年続いた仕組みでも、次の手を打ち続けている。その姿勢が数字の並べ方から伝わってきました。コントリはこれからも、企業や経営者の方が積み上げてきた仕組みを、一次情報に沿って丁寧にお届けしていきます。