メンタルヘルス休職・復職の判断基準|産業医がいない中小企業の実務ガイド

メンタルヘルス休職・復職の判断基準|産業医がいない中小企業の実務ガイド

社員からメンタル不調で休職したいと申し出があり、やがて復職の相談を受ける。専属の産業医も専門知識もない中で「本当に戻して大丈夫か」と判断に迷う中小企業経営者の方は、決して少なくありません。

ご相談を伺っていて感じるのは、迷いの正体が「正しい判断ができる人がいない」ことだという点です。けれども、復職の可否は主治医の診断書1枚で決まるものではなく、最終的に判断するのは会社です。判断を誤らない鍵は、産業医の有無ではなく、会社が事前に 「判断基準」 を持っているかどうかです。

本記事では、厚生労働省が示す職場復帰支援の5ステップを最短で押さえたうえで、産業医がいない中小企業でも使える 5つの判断基準 と、判断を誤ったときに会社が負う両面のリスクの避け方を順に解説します。社員の回復と会社を守る判断を、一歩前へ進めるきっかけになれば嬉しく思います。

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経営の判断に迷う夜、ほかの経営者はどう向き合ってきたのか。コントリの経営者インタビューに、そのヒントがあります。

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メンタル不調による休職・復職の現在地——中小企業ほど「判断する人がいない」

メンタル不調で1か月以上休む社員がいた事業所は、いまや約1割。しかも規模が小さいほど、対策も専門人材も不足しているのが実情です。

まず、自社だけの問題ではないという現在地から押さえていきましょう。数字で見ると、課題の輪郭がはっきりしてきます。

中小企業のメンタルヘルス休職・対策の現在地

12.8%

連続1か月以上の休業・退職者がいた事業所

令和6年 労働安全衛生調査

94.3%50人以上
55.3%10〜29人

メンタルヘルス対策の実施率

規模で広がる格差

2028年4月

ストレスチェックが全事業場で義務化

50人未満も対象に

連続1か月以上の休業・退職は12.8%——上昇傾向にある

厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、過去1年間にメンタル不調で連続1か月以上休業した、または退職した労働者がいた事業所の割合は 12.8% でした(こころの耳 統計情報・調査結果)。

注目したいのは、その推移です。令和5年調査では10.4%でしたので、わずか1年で上昇しています。業種による差も大きく、情報通信業のように4割近い事業所で休業・退職が起きている領域も見られます。

つまり、メンタル不調による休職は「特別な事情を抱えた一部の会社」の話ではありません。どの規模・どの業種の経営者にとっても、いつ直面してもおかしくない経営課題になっています。

対策実施率は50人以上94.3%・10〜29人55.3%——規模で広がる格差

ところが、備えの状況には大きな格差が横たわっています。

同じ調査で、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は全体で63.2%。これを規模別に見ると、労働者50人以上の事業場では94.3%が実施している一方、10〜29人規模では55.3%にとどまります(令和5年 労働安全衛生調査の概況)。

この差を生む背景には、中小企業特有の事情が隠れています。

  • 労働者50人未満の事業場には 産業医の選任義務がなく、就業判定を担う専門家がいない
  • 人事労務の専任担当がいないか、いても1〜2名で手一杯
  • 不調が表面化しにくく、休職の申し出が出た時点ですでに重くなっている

備えが薄いまま当事者になると、判断はどうしても経営者の経験則に頼りがちです。

2028年4月にストレスチェックが全事業場で義務化——予防と復職はセット

制度面でも、中小企業を取り巻く環境は動いています。

2025年に成立した労働安全衛生法の改正により、これまで50人以上の事業場に限られていたストレスチェックが、2028年4月から 50人未満の事業場にも義務化 される見通しです。小規模事業場向けの実施マニュアルも順次整備が進められています。

ストレスチェックは不調の早期発見、つまり「予防」のための仕組みです。一方で、すでに休職した社員をどう戻すかは「復職対応」の領域といえます。この2つは別物ではなく、地続きの体制づくりとして考えていきたいところです。

そもそも復職の可否は誰が決めるのか——主治医・産業医・会社の役割

復職の可否を最終的に判断するのは、医師ではなく会社です。主治医の診断書も産業医の意見書も、あくまで判断材料の一部にすぎません。

ここを取り違えると、「診断書が出たから戻すしかない」と受け身の判断に陥ってしまいます。三者の役割を、まず正しく分けて理解しておきましょう。

主治医の診断書は「日常生活が送れるか」——復職可の意味を取り違えない

最初に押さえたいのが、主治医の診断書が示す「復職可」の意味です。

主治医は、患者の日常生活が円滑に送れるかどうかという観点で回復を判断していることが多いとされています。つまり「復職可」は、必ずしも「フルタイムで従前の業務をこなせる」ことを意味しません。

ここにすれ違いが生まれます。本人は早く戻りたい一心で主治医に伝え、主治医はその意向もくんで診断書を書く。けれども職場が求める業務水準とは前提がずれている、ということが起こり得ます。診断書を受け取ったら、まず 「どの程度の負荷を想定した復職可なのか」 を確認する姿勢が欠かせません。

産業医は「業務に耐えられるか」の意見書——診断は出さない

これに対して産業医は、その人が自社の業務に耐えられる状態かという観点で就業判定を行う専門家です。

ここで知っておきたいのが、産業医は 診断書を出さない という点です。産業医が作成するのは、就業上の配慮に関する「意見書」です。診断は主治医、就業判定は産業医、と役割が分かれています。

ただし、産業医の選任義務があるのは50人以上の事業場です。多くの中小企業には産業医がいません。その場合、この「業務に耐えられるか」の判定を誰が担うのかという空白が生まれます。だからこそ、後述する判断基準と外部資源の活用が効いてきます。

最終判断は会社——だからこそ自社の判断基準が要る

そして最も大切なのが、復職可否の 最終判断は会社が行う という原則です。

主治医の診断書、本人との面談、産業医がいればその意見。これらを総合して、会社が「復職を認める/もう少し療養する/配置を変えて戻す」を決定します。医師に判断を丸投げできるわけでも、本人の希望だけで決まるわけでもありません。

判断する責任が会社にあるからこそ、判断者がいない中小企業ほど「基準」で補う発想が欠かせません。経営者個人の勘や、そのときの状況に左右される属人的な判断は、社員にとっても会社にとっても危うさを残します。

厚労省「職場復帰支援の手引き」5ステップ——中小企業向けに最短で押さえる

厚生労働省は復職対応を5つのステップで整理しています。産業医がいない中小企業でも、この順番を踏むだけで判断のブレを大きく抑えられます。

正式名称は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」です(厚生労働省 手引きページ)。専門的に見えますが、骨格はシンプルです。

厚労省「職場復帰支援の手引き」5ステップ

1

病気休業の開始と休業中のケア

2

主治医による復帰可能の判断

3

復職可否の判断と支援プラン作成

最重要
4

最終的な復職の決定

5

復職後のフォローアップ

ステップ1・2:休業中のケアと、主治医による復帰可能の判断

最初の2ステップは、いわば休職の入口にあたる場面です。

ステップ1では、本人から診断書が提出され休職が始まります。ここで会社が担うのは、安心して療養に専念してもらうためのケアです。傷病手当金などの事務手続きや、復職までのおおまかな流れを伝えておくと、本人の不安が和らぎます。

ステップ2は、本人から復職の意思表示があった段階です。主治医に職場復帰が可能かを確認し、復職に向けた診断書と、就業上の配慮に関する意見を受け取ります。前章で触れたとおり、この「復帰可能」が何を前提にしているかの確認が出発点です。

ステップ3:復職可否の判断と職場復帰支援プランの作成——ここが要

5ステップの中で最も重要なのが、このステップ3です。そして、中小企業が最も省きがちな工程でもあります。

ここでは、本人の健康状態・回復状況と、戻る職場の環境との適合性を評価します。そのうえで、いきなり通常勤務に戻すのではなく、段階的な職場復帰支援プラン を作成します。最初の2週間は短時間勤務、次の2週間で定型業務から、といった具体的な設計です。プランに盛り込む項目は、厚生労働省の手引き本体(PDF)に様式例まで示されています。

「診断書が出た翌週からフルタイム復帰」という運用は、ここを飛ばしている状態です。再発の引き金になりやすく、結果として本人にも会社にも負担が戻ってきます。手間に見えても、このプラン作成こそが復職成功の分かれ目。少し立ち止まって設計する価値があります。

ステップ4・5:最終的な復職決定と、復帰後のフォローアップ

最後の2ステップで、復職を決定し、戻ったあとを支えます。

ステップ4は、会社による最終的な復職決定です。就業上の配慮の内容を本人と話し合い、できれば書面にして共有します。「誰が・いつまで・どこまで配慮するか」を明文化しておくと、現場の上司も動きやすくなります。

ステップ5は、復帰後のフォローアップです。復職はゴールではなくスタートです。定期的な面談で状態を観察し、無理が生じていないかを確かめる。再休業を防ぐうえで、このフォローが効いてきます。復職後の評価や受け入れ方については、人事評価制度の形骸化対策 の視点もあわせてご参照ください。

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産業医がいない中小企業の「5つの判断基準」——専門家不在でも迷わない

専属の産業医がいない中小企業でも、次の 5つの判断基準 を順に確認すれば、復職可否の判断を一定の根拠に乗せられます。

経営者の方への取材を重ねるなかで見えてきたのは、判断に迷わない会社ほど、医学的な専門用語ではなく「自社の言葉で確かめる基準」を持っているという共通点です。ここからが本記事の核心です。

産業医がいなくても使える 復職可否の5つの判断基準

基準 01

生活リズム

勤務時間帯に安定して活動できているか

基準 02

業務遂行

「生活できる」と「働ける」を分けて確認できているか

基準 03

再発予防

不調の引き金と対処法を本人が言葉にできているか

基準 04

受け入れ環境

戻る職場・業務・上司の準備ができているか

基準 05

試し出勤

段階的に職場へ慣れる仕組みを設計できているか

判断基準1:生活リズム基準——通勤時間帯に安定して活動できているか

第一の基準は「生活リズム基準」です。復職後の勤務時間帯に合わせて、本人が安定して活動できているかどうか。ここを最初に見ます。

療養中は生活が昼夜逆転しやすいものです。決まった時間に起き、日中に活動し、夜に眠れている。この基本リズムが戻っていなければ、通勤そのものが大きな負担になりかねません。

実務でよく使われるのが、復職前のおおむね1か月、本人に生活記録をつけてもらう方法です。図書館や近所のカフェに毎日同じ時間帯に通えるか、といった「通勤の予行演習」が、回復度を測るわかりやすい目安になるでしょう。

判断基準2:業務遂行基準——「生活できる」と「働ける」を分けて確かめる

第二の基準は「業務遂行基準」です。日常生活が送れることと、業務を遂行できることは別もの。ここを切り分けて確かめます。

生活リズムが戻っていても、長時間の集中力や、仕事上の判断力までは回復していない場合があります。確認したいのは、本を1冊読み通せるか、PC作業を一定時間続けられるか、といった具体的な遂行力です。集中が15分も続かない状態であれば、復職はまだ早いサインと受け止めたいところです。

ここで、戻る予定の業務がどの程度の負荷かを照らし合わせます。従前と同じ業務量を前提にするのか、当面は軽い業務から始めるのか。その見立てが、次の試し出勤の設計にもつながっていきます。

判断基準3:再発予防基準——不調の引き金と対処法を本人と共有できているか

第三の基準は「再発予防基準」と捉えています。なぜ不調に至ったのか、その引き金と対処法を本人自身が言葉にできているかどうかを見ていきましょう。

復職を急ぐあまり見落とされがちなのが、この振り返りです。同じ環境にそのまま戻せば、同じ要因で再び不調に陥りかねません。「どんなときに調子を崩しやすいか」「そのサインに気づいたらどうするか」を本人が説明できる状態が望ましいでしょう。

これは会社だけで判断する項目ではありません。主治医・本人・会社の三者で、再発のサインと対処をすり合わせておくと、復帰後のフォローもぐっと楽になるはずです。

判断基準4:受け入れ環境基準——戻る職場・業務・上司の準備ができているか

第四の基準は「受け入れ環境基準」です。本人の状態だけでなく、戻る側の職場に受け入れる準備ができているかどうかも問われます。

どれだけ本人が回復していても、休職前と同じ業務量・同じ人間関係にそのまま戻せば、再発のリスクは高まります。元の部署が適切でなければ、配置転換も視野に入れましょう。

見落とされやすいのが、受け入れる上司や同僚への事前共有です。配慮の内容を伝えないまま戻すと、現場は対応に戸惑い、本人も居心地の悪さを感じます。組織として人を支える体制づくりは、組織50人の壁を超える対策 でも別の角度から取り上げています。

判断基準5:試し出勤基準——いきなり通常勤務に戻さず段階を設計する

第五の基準は「試し出勤基準」です。本復帰の前に、段階的に職場へ慣れる仕組みを設計できているか。最後にここを確かめましょう。

判断に迷うときほど、いきなり白黒つけずに段階を挟むことをお勧めします。短時間から始める試し出勤やリハビリ勤務を設ける。社内に専門家がいなければ、医療機関などが提供するリワークプログラムへの参加を本人に検討してもらうのも有効です。

ただし、試し出勤には賃金や労災の扱いという論点が伴います。業務性をどう見るかで判断が変わるため、無給か有給か、どこまでを業務とみなすかを 事前に取り決めて文書化 しておく必要があります。この点は後ほどFAQでも触れます。

判断を誤ったときのリスク——「急がせる」も「拒みすぎる」も会社の責任になる

復職判断は、早すぎても、遅らせすぎても、会社の法的責任を問われます。両面のリスクを理解したうえで、基準を運用していきましょう。

経営者にとって悩ましいのは、ここが「やさしさ」だけでも「慎重さ」だけでも正解にならない領域だという点です。

急がせても拒みすぎても、会社の責任になる

◀ 早すぎる復職

再発・症状悪化/安全配慮義務違反のリスク

適切な復職判断

5つの判断基準+記録・書面化

拒みすぎる復職 ▶

不当な退職扱い/違法と判断されるリスク

早すぎる復職は再発と安全配慮義務違反——会社の責任に問われる

一つ目のリスクは、回復が不十分なまま復職を急がせてしまうことです。

会社は労働契約法上、社員の心身の健康に配慮する 安全配慮義務 を負っています。十分に回復していない社員を無理に復帰させ、その結果として症状が悪化すれば、会社の義務違反が問われかねません。

「本人が戻りたいと言っているから」「人手が足りないから」という事情があっても、それは復職を急がせる理由にはなりません。判断基準に照らして時期尚早であれば、もう少し療養を続けてもらう判断も、会社を守る一手といえます。

復職拒否のしすぎも違法に——「従前業務」だけで判断しない

二つ目は、逆に慎重になりすぎて復職を認めないリスクです。

回復した社員の復職を不当に拒み、休職期間満了で退職扱いにすれば、それはそれで違法と判断されかねません。ここで知っておきたいのが、復職可否は「従前の業務をフルにこなせるか」だけで判断するものではないという考え方です。

一般に、すぐ元の業務に戻れなくても、配置可能な他の軽易な業務で就労できるのであれば、復職を認めるべきとされる場面があります。「100%元どおりでなければ復職不可」という運用は、リスクをはらみます。配置転換や段階的復帰の選択肢を検討したうえで判断する姿勢が大切です。

記録と書面化が会社を守る——様式と就業規則を事前に整える

両面のリスクから会社を守るのは、結局のところ記録と書面です。

産業医がいない中小企業ほど、ここを整えておく価値は大きいといえます。具体的には、次の3点を事前に準備しておきましょう。

準備しておくもの内容効果
復職診断書の様式会社所定のフォーマットを用意主治医から必要な情報を過不足なく得られる
面談・判断の記録復職判断の経緯と根拠を残す判断の妥当性を後から説明できる
休職・復職の就業規則期間・手続き・提出書類を明記属人的判断を防ぎ全社で運用できる

判断そのものに迷ったとしても、「基準に沿って・記録を残して・規則どおりに」進めた事実そのものが、会社を守る土台。迷いの多い領域だからこそ、過程を残しておく意味は大きいのです。

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FAQ——メンタル不調の休職・復職の判断でよくある質問

復職判断の現場で、中小企業の経営者の方から特に多くいただく質問を5つ取り上げました。

Q1. 主治医が「復職可」と書いた診断書があれば、必ず復職させなければいけませんか?

いいえ、診断書は判断材料の一つであり、それだけで復職が確定するわけではありません。主治医の「復職可」は日常生活が送れる水準を指していることが多く、業務を遂行できるかは別の確認が必要です。診断書の前提を主治医に確認し、本人との面談や業務遂行基準と合わせて、最後は会社が総合的に判断するものです。

Q2. 産業医がいない中小企業は、復職の相談を誰にすればよいですか?

労働者50人未満の事業場が無料で使える 地域産業保健センター(地さんぽ) という公的な窓口があります。医師や保健師に相談でき、就業判定の助言を受けられます。あわせて、本人の同意を得たうえで主治医に職場での業務内容を伝え、就業上の意見をもらう方法も有効です。スポット契約の産業医や社会保険労務士を活用する会社も増えています(こころの耳)。

Q3. 試し出勤中の賃金や労災はどう扱えばよいですか?

事前の取り決めがすべてです。試し出勤を無給とするか有給とするか、どこまでを業務とみなすかによって、賃金の要否や労災の判断が変わります。曖昧なまま始めると後のトラブルになりやすいため、就業規則や本人との覚書で、賃金・労災・期間を明文化してから実施してください。判断に迷う場合は、地域産業保健センターや社労士への相談をお勧めします。

Q4. 復職後に再び不調になった場合、どう対応すればよいですか?

早期に把握し、業務負荷を再調整することが基本です。復職後のフォローアップ面談で兆候をつかみ、必要なら勤務時間や業務量を一段戻します。再休職もあり得る前提で、休職期間の通算規定(一定期間内の再休職は通算する等)を就業規則に定めておくと、その場の判断に追われずに対応できます。

Q5. 休職と復職のルールは就業規則にどう定めておくべきですか?

最低限、次の3点を盛り込んでおくと運用が安定します。第一に、休職できる期間と、再休職した場合の通算の扱い。第二に、復職判断の手続きと、本人に提出してもらう書類(復職診断書の様式など)。第三に、休職期間が満了しても復職できない場合の取り扱いです。あらかじめ定めておくことで、いざというときに属人的な判断や後出しのルール変更を避けられます。

まとめ——判断基準と記録が、産業医のいない中小企業の「もう一人の専門家」になる

ここまで、メンタル不調による休職・復職の現在地、復職可否を決めるのは誰かという役割分担、厚労省の5ステップ、そして産業医がいない中小企業のための5つの判断基準と両面リスクの避け方を見てきました。

中小企業の復職判断でつまずく本当の原因は、産業医がいないことそのものではありません。会社が事前の判断基準を持てているか。そこがすべての分かれ目になると感じています。

明日から進めていただける一歩は、復職診断書の様式を1枚用意することと、休職・復職のルールを就業規則で見直すことです。そのうえで本記事の5つの判断基準を手元に置けば、専門家がいなくても、判断を一定の根拠に乗せられます。

社員の不調と向き合う場面は、経営者にとって心の重い時間です。だからこそ、迷ったときに立ち返れる基準を持っておくことが、社員の回復を支え、同時に会社を守る力になります。本記事が、皆様の判断を一歩前へ進めるきっかけとなれば嬉しく思う次第です。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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