ハラスメント外部相談窓口の委託費用|中小企業の相場と選定基準

ハラスメント外部相談窓口の委託費用|中小企業の相場と選定基準

「ハラスメントの相談窓口を外部に委託すると、いくらかかるのか」。見積もりを取る前に、まず相場を知っておきたい。そう感じている経営者の方は少なくありません。

結論からお伝えします。外部委託の費用は、年間11万円程度のミニマムプランが一つの目安です。相談対応や事実確認の調査まで含めると、数十万円規模まで広がるのが実情です。

料金体系は、月額固定型・従業員数による従量型・スポット対応型の3つに分かれます。自社の規模とリスクの大きさに合わせて選ぶのが基本です。

本記事では、費用相場の中身、価格を左右する要素、内製との比較、委託先を見極める5項目までを順に整理します。義務化を踏まえた投資判断の勘所として、お役に立てれば嬉しく思います。

ハラスメント外部相談窓口とは|中小企業も設置が義務になった背景

外部相談窓口とは、社内とは別に第三者が通報や相談を受け付ける仕組みのことです。第三者が間に入る分、相談者は安心して声を上げやすくなるものです。

2022年4月、パワハラ防止法が中小企業にも全面適用されました。いまでは相談窓口の設置と周知が、すべての事業主の義務です。

いま問われているのは「設置したかどうか」ではありません。「実際に機能しているか」という運用の中身です。窓口を置くだけで安心してしまう企業ほど、リスクが見えにくくなります。形だけの設置に、本来の意味はありません。

ハラスメント対策 義務化の流れ
  • 2020年6月
    大企業にパワハラ防止措置を義務化
    改正労働施策総合推進法が施行。まずは大企業から、相談窓口の設置などが求められました。
  • 2022年4月
    中小企業にも全面適用
    猶予期間が終了し、中小企業を含むすべての事業主が対象に。相談窓口の設置と周知が義務となりました。
  • 2026年10月
    就活セクハラ対策を全企業に義務化(見込み)
    採用面接や説明会の場も対策の射程に。窓口の対象範囲を採用領域まで広げる検討が必要になります。
出典:改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)ほか。2026年の就活セクハラ義務化は見込み。

パワハラ防止法で求められる「相談窓口の設置」の中身

パワハラ防止法とは、正式には改正労働施策総合推進法のことです。事業主には、相談に応じる体制の整備が求められます。あわせて、相談した人への不利益な取り扱いも禁止されています。

窓口は社内に置いても、外部に委託しても構いません。ただし、ここに見落とされがちな落とし穴が潜んでいます。窓口を用意するだけでは、要件を満たしたとは言い切れないのです。

相談を受けた後の事実確認、当事者への配慮、再発防止までの流れ。この一連の設計があって、はじめて体制が整います。制度の趣旨は、相談しやすさと公正な対応の両立にあります。中小企業では人事担当者が他業務を兼任しがちだからこそ、外部の力を借りる選択肢が現実味を帯びてきます。

内部窓口だけでは機能しない理由

社内に窓口を置くと、相談者は身構えてしまいます。「噂が広まらないか」「評価に響かないか」という不安がつきまとうためです。従業員数の少ない企業ほど、担当者と相談者は顔見知り。心理的なハードルは高くなりがちです。

相談しても処分につながらない、という不信感も根深い課題でしょう。ある社会保険労務士の方も、印象的な発信をしておられました。会社がパワハラ上司を処分しない理由と、その対策を動画で解説した内容です(馬谷邦彦の働く人を応援するチャンネル)。

社内だけで完結させると、どうしても判断に身内びいきが入りやすいものです。第三者が間に入れば、相談者は格段に声を上げやすくなります。中立性こそ、窓口が使われるための生命線です。

就活セクハラなど2026年に広がる規制範囲

規制の対象は、既存社員へのハラスメントだけにとどまりません。就活セクハラについては、2026年10月から全企業に対策が義務化される見込みです。採用面接や会社説明会の場も、対策の射程に入ってきます。

一般社団法人日本ハラスメント協会も、この義務化と外部委託の有効性について動画で繰り返し発信しています。新卒採用を行う企業にとって、見過ごせない動きです。

窓口の対象範囲を、既存社員から採用候補者まで広げる検討。これが近い将来の宿題になりそうです。早めに体制を見直しておくほど、義務化への移行もスムーズでしょう。

外部委託にかかる費用の相場|料金体系の3タイプ

外部委託の費用は、月額固定型・従業員数による従量型・スポット対応型の3タイプに大別されます。まずは自社がどのタイプに合うのかを見極めることが、費用最適化の出発点です。

最も手頃な水準では、内部通報・相談窓口の外部委託が年間11万円程度から提供される例も存在します。一方で、調査対応まで含むと数十万円規模に届きます。価格の幅は、対応範囲の広さによって生まれるものです。

自社のリスクと体制を踏まえ、どこまでを外部に任せるか。その線引きが、適正な費用を決めます。

料金体系の3タイプ
月額固定型
年 十数万円〜
毎月一定額
向く規模
少人数・相談件数が読みにくい企業
対応範囲
一次受付・記録・報告まで
従業員数 従量型
月 2万円〜
1人あたり数十〜数百円
向く規模
人員が変動する成長フェーズ企業
対応範囲
規模に応じて柔軟に調整
スポット対応型
数万円〜/件
都度の発生払い
向く規模
相談が少なく、必要時のみ使いたい企業
対応範囲
個別の相談・調査ごと

月額固定型の相場と含まれる範囲

月額固定型は、毎月一定額で相談受付を委託する方式です。年額に換算すると、十数万円から数十万円が一つの目安です。日本ハラスメント協会は、内部通報窓口の外部委託を年間11万円(税込)のオプションで利用できると案内しています。

この価格帯に含まれるのは、多くの場合、相談の一次受付と内容の記録、企業への報告までです。事実確認の調査や当事者へのヒアリングは、別オプションとなるのが一般的だと捉えています。

「月額が安い」だけで判断するのは禁物です。いざというときに対応範囲外となり、追加費用が発生する事態も起こり得ます。含まれる範囲と含まれない範囲を、契約前に切り分けておくことが欠かせません。

費用感を3つの代表的な水準で整理しました。

費用水準の目安(3つのレンジ)
ミニマム
年11万円
程度〜(税込)
内部通報・相談の一次受付が中心。まず体制を整えたい企業向け。
従量型の例
月2万円
程度〜(従業員100名規模)
1人あたり単価で計算。人員変動に合わせて費用が動く。
調査対応まで
数十万円
規模
事実確認・ヒアリングや専門家の関与まで含む手厚いプラン。

従業員数で変わる従量型の考え方

従量型は、従業員一人あたり月額数十円から数百円という単価で計算する方式です。たとえば従業員100名で単価200円なら、月2万円、年間24万円といった概算になります。人数が増えるほど、総額も膨らみます。

ただし、一人あたりのコストは抑えやすい構造です。成長フェーズで人員が変動しやすい企業には、実態に応じて費用が動く従量型が馴染みます。

一方、少人数の企業では話が別です。月額固定型のほうが割安になるケースもあるためです。どちらが得かは、損益分岐を試算してから選ぶのが賢明でしょう。数字を並べて比べる一手間が、無駄な出費を防ぎます。

初期費用・オプション費用の落とし穴

見積もりを比べるときは、月額だけに目を奪われないでください。初期費用とオプション費用にも、しっかり目を向けることが大切です。初期設定費、周知用ポスターやカードの制作費、調査対応の都度費用。これらが別建てになっている契約は珍しくありません。

カスタマーハラスメントの相談窓口でも、同じ構造が見られます。日本ハラスメント協会は、対応代行や調査のオプション費用が別途かかると説明しています。表示された月額だけでは、本当の負担額は見えてきません。

総額で比較してこそ、本当の安さが見えてくるもの。契約前に「この金額に何が含まれ、何が含まれないのか」を、一行ずつ確かめておきましょう。

費用を左右する3つの要素|安さだけで選ばない判断軸

同じ外部窓口でも、価格は大きく動きます。対応チャネル・対応者の専門性・調査対応の有無という、3つの要素が効いてくるためです。

経営者に求められるのは、費用の数字の裏にある対応品質を読み解く視点です。安さには、必ず理由が隠れているものです。その理由を確かめないまま契約すると、肝心なときに頼りにならない窓口を抱えることになりかねません。

価格と品質は、切り離して語れない関係にあります。次の3点から、自社に必要な水準を見定めていきましょう。判断軸を持てば、見積書の読み方そのものが変わってきます。

費用を左右する3つの要素
CH
相談チャネルの多さ
電話だけか、メール・専用フォーム・チャットまで揃うか。夜間や休日の対応可否も価格を分けます。
入り口が広いほど費用は上がる
EX
対応者の専門性
一般オペレーターの一次受付か、弁護士・社会保険労務士が関与するか。法的助言の有無で差が出ます。
専門家関与で価格帯が上がる
IN
調査対応の有無
一次受付までか、事実確認やヒアリングまで委託するか。社内で調査できる人材の有無が判断軸です。
調査込みで料金は上がる

相談チャネル(電話・メール・専用フォーム)の差

相談を受け付ける手段が多いほど、費用は高めです。電話のみなのか、メールや専用フォーム、チャットまで揃っているのか。チャネルが多いほど、相談者は自分に合った方法を選べます。

夜間や休日の対応可否も、価格を左右する要素です。緊急性の高い相談に、いつ応じてもらえるのか。対応時間帯は、必ず確認しておきたいところです。

入り口が狭ければ、本当に困っている人ほど相談をためらいます。相談者が声を上げやすい入り口の広さが、窓口の実効性を決めます。費用を見るときは、この入り口の数とあわせて評価してください。

弁護士・社労士など対応者の専門性

誰が相談を受けるのかは、費用と品質の両方に直結します。一般のオペレーターが一次受付をする窓口と、専門家が関与する窓口。両者では、価格帯が明確に異なります。

弁護士や社会保険労務士が関与する窓口なら、法的な判断にも踏み込めます。弁護士法人による内部通報・公益通報窓口の外部委託サービスも提供されています。

訴訟リスクを見据えた助言まで求めるなら、専門家が関与する窓口に分があるでしょう。逆に、一次受付だけで足りる場合もあるでしょう。自社が抱えるリスクの大きさに応じて、必要な専門性の水準を見定めることが肝心です。

事実確認・調査まで委託するかどうか

相談を受けた後の調査を、どこまで委託するか。この線引きも、費用を大きく分けます。一次受付だけなら安価ですが、調査やヒアリングまで含めると料金は上がります。

ここは自社の体制と相談しながら決める部分です。調査を社内で行える人材がいるなら、一次受付の委託で足ります。いないのであれば、調査まで任せる判断が合理的だといえます。

感情面の対処も含めた組織づくりに関心があれば、アンガーマネジメントのやり方もあわせて参考になります。

窓口の設計は、組織全体の関わり方とつながっています。費用と効果の両面から、任せる範囲を決めていきましょう。迷ったときは、専門家に相談しながら線を引くのも一つの手です。投資対効果は、対応範囲の見極めで大きく動きます。

内製と外部委託の比較|中小企業はどちらを選ぶべきか

コストだけを見れば、内製のほうが安く映るはずです。しかし、それは表面的な比較にすぎません。利益相反・通報者保護・運用負荷といった隠れコストを含めると、見え方は変わります。

総額で比べたとき、外部委託が合理的になるケースは少なくありません。中小企業ほど、表面の金額だけでは判断を誤りやすいのが実情です。

どちらが正解かは、企業の規模や体制しだいです。自社にとっての総コストという物差しで、冷静に見比べていきましょう。目先の金額だけを追うと、大切な視点を取りこぼしがちです。

内製と外部委託の比較
比較項目内製(社内窓口)外部委託
初期の費用
中立性×
通報者保護
運用負荷×
専門性
内製が向く:相談対応の専任者を置け、中立性を保てる体制がある企業。
外部委託が向く:少人数で兼任が前提、中立性と通報者保護を重視する中小企業。
一次受付は外部、その後の対応は社内というハイブリッド運用も現実的です。

内製で見落とされがちな「隠れコスト」

内製は「人件費だけ」と捉えられがちです。しかし実際には、見えにくいコストが積み上がっていくものです。担当者の教育費、対応マニュアルの整備、相談記録の管理。どれも軽視できない負担です。

担当者が他業務と兼任していれば、本来の業務が圧迫されます。これも立派な機会損失といえるでしょう。

私たちコントリ編集部も、経営者インタビューを重ねてきました。そのなかで「窓口は作ったが運用が回らない」という声を、繰り返し伺っています。設置の費用より、運用を維持する負荷のほうが重い。そんな現実が、多くの現場に横たわっています。

中立性・通報者保護の観点

社内の人間が窓口を担うと、相談者との利害関係を切り離せません。とくに相談の対象が経営層や上司である場合は深刻です。内部窓口は、構造的に機能しにくくなります。

通報者を守れなければ、窓口は名ばかりです。一度でも情報が漏れたという噂が立てば、誰も二度と使わなくなるでしょう。

中立性と通報者保護は、外部委託が優位に立つ最大の理由です。第三者だからこそ守れる距離感があります。労務管理全体の体制づくりについては、労務管理の完全ガイドで基礎から整理しています。あわせてご覧ください。

ハイブリッド運用という現実解

すべてを外部に委ねる必要はありません。一次受付は外部窓口に任せ、その後の対応や再発防止は社内で主導する。そんな役割分担も有効です。

このハイブリッド運用なら、両者の強みを生かせます。相談しやすさという外部の強み。自社の事情を踏まえた対応という内製の強み。両立できる点が魅力です。

万一、労基署の調査につながる事案へ発展した場合の備えも欠かせません。事前に労基署の調査・呼び出しへの準備に目を通しておくと安心です。

いざというときに落ち着いて動けるかどうかは、日頃の備えで決まります。備えがあるだけで、対応の質は大きく変わってきます。状況に応じた柔軟な設計が、中小企業には現実的だといえます。

委託先の選び方|契約前に押さえたい5項目

料金表だけでは、委託先の良し悪しは判断できません。対応範囲・報告フロー・守秘の担保など、契約前に押さえておきたい項目があります。

ここでは、見落としやすい5つの観点を整理します。この5点をチェックリストとして持っておけば、価格に惑わされずに済みます。実効性のある窓口を、落ち着いて選べるはずです。

数字の安さに飛びつく前に、まずは中身を一つずつ確かめる。その姿勢が、後悔のない選択につながります。急がば回れの発想が、ここでは確かに効いてきます。

委託先選定 5項目チェックリスト
1
対応範囲と「やらないこと」の線引き
一次受付・調査・再発防止のどこまでか。やらない範囲を明文化しているか確認。
2
経営層への報告フローとスピード
いつ・誰に・どの粒度で届くか。緊急事案の初動の早さを取り決める。
3
守秘義務と通報者保護
情報の保管・匿名化の手順、不利益取り扱いの禁止が担保されているか。
4
対応者の専門性と資格
弁護士・社会保険労務士など、自社のリスクに見合う専門性があるか。
5
契約解除と費用の透明性
初期費用・オプションを含む総額と、解約条件が明確か。

対応範囲と「やらないこと」の線引き

最初に確かめたいのは、対応範囲です。一次受付までなのか、事実確認の調査まで含むのか、再発防止の助言まで担うのか。ここを曖昧にしたまま契約すると、後で食い違いが生じます。

「何をやらないか」を明文化している委託先ほど、信頼できる傾向があります。境界線をはっきり示す姿勢は、誠実さの表れだからです。

範囲が曖昧なまま進めると、トラブル発生時に「それは範囲外です」と突き返されかねません。期待値のずれを防ぐためにも、業務の境界線を契約書で確かめておきましょう。一手間が、後の安心を生みます。

経営層への報告フローとスピード

相談内容が、いつ・誰に・どのように報告されるのか。この報告フローも、重要な確認点です。緊急性の高い事案を何日も寝かせる窓口では、意味がありません。

報告のスピードと経路は、あらかじめ取り決めておきましょう。初動の早さが、事態の悪化を防ぎます。

報告の形式にも目を向けてください。件数だけの月次サマリーなのか、個別事案の詳細まで上がるのか。粒度によって、経営判断のしやすさは大きく左右されます。自社が必要とする情報が届く設計かどうか。そこを見極めることが、投資を生かす鍵になります。

守秘義務と通報者保護の担保

相談者の情報が、どこまで守られるのか。ここは窓口の信頼を左右する核心です。守秘義務の範囲、情報の保管方法、社内へ共有する際の匿名化の手順を、契約前に確かめてください。

通報したことで不利益を被らない仕組みが整っているか。この一点が崩れると、どれだけ立派な窓口でも誰も使わなくなります。

仕組みは、就業規則との整合があってこそ生きます。規程の見直しを検討する際は、就業規則の不利益変更が手がかりになります。

制度と運用の両輪で、通報者を守る体制を整えていきましょう。守りの設計こそが、安心して相談できる空気を生みます。目に見えない部分ほど、丁寧に詰めておきたいところです。

導入後によくある失敗と対策|窓口を「使われる」状態にする

窓口を設置しても、社員に知られず使われなければ、かけた費用は無駄です。投資を成果に変える分岐点は、周知・信頼・経営の姿勢という3点に宿ります。

設置はゴールではありません。むしろ、運用のスタートラインです。ここを取り違えると、せっかくの投資が空回りします。

実際に使われる窓口へ育てるには、地道な働きかけが必要です。導入後にこそ、経営者の本気が試されるのです。焦らず、一歩ずつ浸透させていく姿勢が求められます。ここから先の取り組みが、投資の成否を分けます。

ハラスメント外部相談窓口の委託費用を案内するポスターがある明るいオフィス

「設置しただけ」で終わる典型パターン

最も多い失敗は、窓口を契約したものの、その存在が社員に伝わっていないケースです。年に一度の通知メールだけでは、いざというときに思い出せません。「どこに相談すればいいのか」が、記憶から抜け落ちてしまうのです。

周知が形骸化すると、相談件数はゼロのまま推移します。ここに落とし穴があります。

件数が少ないことを「問題がない証拠」と受け取るのは危険です。声が上がらない職場ほど、潜在的なリスクを抱えていることもあります。沈黙は、安全のサインとは限りません。

従業員への周知と利用率の高め方

窓口を使ってもらうには、繰り返しの周知が欠かせません。カードの配布、休憩室への掲示、入社時の説明、定期的な研修への組み込み。接点を複数用意することが効果的です。

匿名で相談できること、相談しても不利益はないこと。この2点を、具体的な言葉で伝えてください。抽象的な案内では、不安は消えません。

利用率は、安心感の積み重ねによって少しずつ上がっていきます。新入社員への案内を仕組み化したいなら、入社手続きの流れの段階管理が参考になります。最初の接点で伝えておくと、定着しやすくなります。

周知を定着させるための接点を、流れで示しました。

窓口を「使われる」状態にする 周知4ステップ
STEP 1
入社時の説明
最初の接点で「ある」ことを刷り込む。匿名・不利益なしを明言。
STEP 2
カードの配布
連絡先を手元に。いざというとき迷わず届く状態をつくる。
STEP 3
休憩室への掲示
日常の視界に入れ、相談のハードルを少しずつ下げる。
STEP 4
定期研修への組み込み
繰り返し伝え、利用率と信頼を積み上げていく。

経営者の姿勢が窓口の信頼を決める

最後に、最も大きな要素は経営者自身の姿勢です。トップが「相談を歓迎する」と明言する。そして、実際に上がった声へ誠実に向き合う。その積み重ねが、窓口への信頼を育てます。

口先だけの設置では、社員はすぐに見抜きます。姿勢は、行動を通じて伝わるものです。

私たちが取材で出会ってきた経営者の方々のなかにも、印象的な方がいました。ハラスメント対応を「コスト」ではなく「人を大切にする経営の土台」と位置づけ、組織を立て直した方です。窓口の費用は、安心して働ける職場への投資。そう捉え直したとき、金額の見え方も変わってくるのではないでしょうか。

よくある質問

中小企業もハラスメント相談窓口の設置は義務ですか?

はい、義務です。根拠は、2022年4月に全面適用されたパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)にあります。中小企業を含むすべての事業主に、相談窓口の設置と周知が義務付けられました。社内・外部のどちらに置くかは問われません。ただし、相談に応じる体制の整備と、相談者への不利益取り扱いの禁止が求められます。

外部委託の費用はいくらからですか?

サービスによって幅があります。内部通報・相談窓口の外部委託は、年間11万円程度のミニマムプランから提供される例があります。対応チャネルの多さ、対応者の専門性、調査対応の有無によって費用は上がっていきます。月額だけでなく、初期費用やオプション費用を含めた総額で比較することが大切です。

内製と外部委託はどちらが安いですか?

表面的な費用は内製が安く見えます。ただし、隠れコストを見落としてはいけません。担当者の人件費や教育費、中立性の確保、通報者保護。これらを含めて総額で比べると、見え方が変わります。外部委託のほうが合理的になるケースが、実は多くあります。少人数で専任体制を組みにくい中小企業ほど、外部委託の費用対効果は高まりやすいといえます。

窓口を設置すれば義務は果たせますか?

設置は最低条件にすぎません。従業員への周知と、実際に使われる信頼の醸成までできて、はじめて法の趣旨と投資効果の両方を満たせます。相談件数がゼロのまま放置されている窓口は、機能していないのと同じ状態です。周知と運用まで含めて、義務への対応と捉えてください。

就活セクハラへの対応も必要ですか?

就活セクハラについては、2026年10月から全企業に対策が義務化される見込みです。新卒採用を行う企業では、採用面接や説明会の場も対策の対象です。相談窓口の対象範囲を、既存社員だけでなく採用候補者まで広げる検討が、これからの課題になります。早めの準備が、移行をなめらかにします。

編集部から

ハラスメントの相談窓口というテーマは、つい「義務だから仕方なく」と受け止められがちです。けれども取材を重ねるなかで、私たちは少し違う景色を見てきました。

この窓口は、「働く人を大切にする」という経営者の想いを形にする手段でもあります。義務という言葉の奥に、人を思う気持ちが宿っているのです。

費用の数字に向き合うとき、その先にいる従業員一人ひとりの安心を思い浮かべていただけたら。小さな一歩に思えても、それが信頼される職場への確かな土台になります。御社にとって最適な選択を見つける一助となれば、これほど嬉しいことはありません。

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飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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