経営者インタビュー

全国の経営者に直接取材した、想いと挑戦のストーリーを紹介するインタビュー記事一覧です。創業の背景や苦難の乗り越え方、経営理念など、それぞれの経営者だからこそ語れる言葉をそのままお届けします。

「三浦さんの考えていることが知りたいんです」——一人の販売員の言葉が教えた、経営の本質

「三浦さんの考えていることが、私は知りたいんです」——。

子ども服デザイナー時代、週に2回ほどしか出勤しないパートの販売員から投げかけられた一言が、今も仕事の軸になっています。そう語る三浦真由美さんは、アパレル企画職として約30年のキャリアを積んだのち、45歳で社会保険労務士を志し、2019年に東京都品川区でWORK LABO社労士事務所を開業した社労士です。手続きや助成金よりも、経営者が自分の言葉で従業員に想いを伝える手助けに軸足を置く三浦さんに、その原点を伺いました。

名古屋の子ども服デザイナーから、社労士への回り道——45歳の決断

三浦真由美さん(WORK LABO社労士事務所代表)が笑顔でインタビューに応じる様子
三浦真由美さん。名古屋出身、アパレル企画職を約30年経て社会保険労務士に転身した

名古屋出身の三浦さんは、名古屋モード学園を卒業後、子ども服アパレル会社に入社しました。結婚後は業務委託のデザイナーとして、女児服の企画を約30年手がけてきました。ちょうどバブル崩壊後のデフレ期にあたり、コストを抑えるため中国・上海周辺から内陸の工場まで数十回の出張を重ねた経験を持っています。

転機は45歳の頃に訪れました。「デザイナーはいつまでも続けられないんじゃないか」という周囲の一言をきっかけに、資格取得を決意した三浦さん。最初に挑んだのは行政書士でした。1年間勉強したものの、「相続とか不動産登記とか、正直つまらないなと感じてしまって」と苦笑いしながら振り返ります。そこで出会ったのが社会保険労務士です。「人が生まれてから亡くなるまで関わることができる仕事だ」と知り、方向転換。あまりの業務範囲の広さに驚きながらも、3回目の受験で合格を果たしました。

合格しても実務経験はゼロ。合格したのは、ちょうど離婚を経験した時期とも重なっていました。人生の大きな節目の中、昔からの知人だった社長に声をかけられ、転勤という形で上京します。税理士事務所での修業を経て、2019年7月にWORK LABO社労士事務所を開業しました。だがその直後、新型コロナウイルスの感染拡大が始まります。「これはまずいぞ」と、年金事務所の相談員として食いつなぎながらブログを書き続け、少しずつ実績を積み重ねていったといいます。

「伝えたいのに、伝わらない」——中国出張で学んだ意思疎通の作法

三浦さんが今の仕事に生きていると語るのが、アパレル時代の中国出張の経験です。1枚の指示書だけで、思い通りのサンプルを作ってもらわなければなりません。紙の上ではできあがってくるのに、どこか意図とずれている——そんな場面で必要だったのが、伝わったかどうかを確認し続ける姿勢でした。

「目の前にいる人は、自分とは違う人間なんだと、まずそれを自覚しないと、スタートにすら行けないんです」。三浦さんは力強くそう言い切ります。「私はこう思うから、こうでしょう」と決めつけたところで、育った環境が違う相手には伝わりません。だからこそ、「私はこう思って、こう考えるんだけれども、どうですか」というスタンスに変えたことで、意思疎通がぐっとうまくいくようになったと明かしてくれました。

中国の現地法人で見た、お昼休みの2分前からそわそわし始める従業員たちの様子や、有給休暇の感覚の違い。異なる「当たり前」を持つ相手と向き合い続けた経験が、後年、日本の経営者と従業員の間に立つ仕事の土台になっています。

公園の木々を背景に、中国出張での経験を振り返りながら語る三浦さん
中国出張での経験を振り返りながら語る三浦さん

独りよがりだったと気づいた日——発信を変えた販売員の一言

本記事の核心にあるのが、アパレル時代のある出来事です。三浦さんが担当していた店舗で、週に2回ほどしか勤務しないパートの販売員から、こう告げられたといいます。「三浦さんの考えていることが、私は知りたいんです」。

その瞬間、三浦さんは自分がいかに独りよがりだったかに気づかされたと、少し照れくさそうに振り返ります。「売れるものさえ作っておけば売れるんだ」と、販売の現場に立つ人の存在をどこか棚上げにしていたことに気づいたといいます。それから三浦さんは、毎週のコーディネート提案や年間トレンドの発信を始めました。結果として売り上げは伸びていったといいます。

この構造は、社労士になった今も顧問先で繰り返し目にする光景だと三浦さんは語ります。ある顧問先に3日間の出張に行った帰り、長年働くパートの女性が車で送ってくれた際、ぽつりとこう漏らしたといいます。「社長が何を考えているのか知りたかった」。今後どうしていくのか、会社をどうしたいのか——立場は違っても、従業員が知りたいことは、あの日のパート販売員とまったく同じでした。

「もっと従業員に、一番近い従業員に、毎日のように伝えればいいんですよ。朝でも、『うちの会社はこうで、僕はこうしたいと思ってる』と」。三浦さんは穏やかな口調で、そう続けます。

手続きより先に向き合う——労使間の”もめ事”という沼

WORK LABO社労士事務所には、就業規則の作成や社会保険手続き、助成金申請の相談が数多く寄せられます。だが三浦さんが最も力を注ぐのは、労使間のコミュニケーションを整えることです。「もめ事はマイナスでしかない。解決策を知らないために沼から出られないのは、もったいない」と三浦さんは言い切ります。

たとえば有給休暇の取り方一つでも、「おかしくないですか」と経営者から相談が来ることがあります。そんなとき三浦さんは、まず就業規則や労働条件通知書で、勤務時間や手当、休暇の取り方といった「一番もめそうなところ」を先に明文化することを勧めます。パートさんへの健康診断の特別対応のように、裁量権があるがゆえに線引きが難しくなる場面も多くあります。「その子がやりたいと言ったらどうしますか?と聞くと、経営者は『ダメダメ』と言うんです。じゃあ、どんな理由でこの子を入れたんですか、と。そこはちゃんと鬼になってもらう必要があります」

相談の入り口は些細な質問でも、よくよく聞いていくと本音が出てくる、と三浦さんは言います。「経営者って皆さん、死ぬほど頑張っているじゃないですか。だから頑張ってなんて、簡単には言えないんですよ」。

経営者は死ぬほど頑張っている——だからこそ、まず聞くという流儀

顧問先との向き合い方にも、中国出張時代から続く一貫した姿勢があります。まずは聞くこと。「なんでこうなったの」と、何を思ってその状況に至ったのかを聞き、受け止めた上で「今回はこっちがよかったかな」と伝える——指摘から入るのではなく、相手が「何かを得よう」とする姿勢をこちらも作ってから話す、というプロセスです。

最近、中国の取引先から逆に指摘を受けたエピソードも、三浦さんにとって印象深い学びになりました。サンプルの出来について「これでいいのか悪いのか、あなたは言っていないじゃないか」と言われたといいます。日本人同士なら「これってこういう指示でしょう」というオブラートに包んだ言い方で通じ合えますが、それでは伝わらない相手もいます。「まず、これがいいのか悪いのかを判断してあげてください」と教えられ、はっきり伝えることの大切さを改めて実感したといいます。「本当に、目の前の人は自分と違う人間だという前提で、この人は外国の方だな、ぐらいの感覚で話した方がいいかもしれません」。少し苦笑いしながら、三浦さんはそう明かしてくれました。

「会社を守り、継続する」——伝えることが生む、二、三年後の変化

三浦さんが掲げるビジョンは「会社を守り、継続する」。抽象的な言葉に聞こえますが、その裏には具体的な変化の実例があります。ある顧問先では、契約当初、出勤簿も給与計算も曖昧なままで、経営者自身は「お金を払えばいいんでしょう」という認識だったといいます。だが働く側にとって給料は生活の糧であり、管理が曖昧な職場では安心して働けません。

「第三者の専門家に任せているというだけで、従業員は安心するんです」。三浦さんはそう説明します。助成金の申請には適正な労務管理が土台として欠かせません。だからこそ、まず労務を整えることから始めます。1年ほど経つと、組織は目に見えて回り出します。回り出すと助成金も継続的に申請できる体質になり、好循環が生まれます。「今は損に見えるかもしれないけれど、二、三年後にはきっと違う形になって現れる」——そう伝え続け、根気よく向き合うことで、経営者の意識は少しずつ変わっていくのだといいます。

横浜アンパンマンこどもミュージアムを背景に立つ三浦さん
アンパンマンをはじめキャラクターものの子ども服企画も長年手がけてきた三浦さん
INTERVIEW

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覚悟を持って人を雇う——三浦流、経営者へのエール

「人を雇うということは、それなりの覚悟を持って、毎月の売上が下がっても上がっても、お給料は必ず発生するということです。これは絶対です」。三浦さんは力を込めてそう語ります。払える見込みが立たないまま無理に採用に踏み切る経営者や、働く本人の意向を確認せずに待遇変更を進めようとするケースを見てきたからこその言葉です。

一方で、経営者自身が自分の弱さと向き合いきれず、判断から逃げてしまう場面もあると三浦さんは明かします。ある顧問先では、社長・奥様と三人で経営課題を話し合ったこともあったといいます。「ご主人のことをよくわかっている奥様だからこそ、どのあたりがラインかを分かっていて、ちょっと手前で止めてくれました」。処理の仕方だけを伝え、最後は経営者自身の自覚に委ねる——そんな距離の取り方も、三浦さんの流儀です。

今後については、事務所の規模を無理に大きくするつもりはないといいます。「アシスタントがお客さんと直接対峙するのではなく、社労士である私が担当する。そこは絶対に守ります」。今いる顧問先と、これから少しずつ増えていくであろう出会いを大切にしながら、継続していく考えです。仕事と同じくらい、旅行や読書といった自分の時間も大切にしたいと語る三浦さんの表情には、来年還暦を迎えるからこその、飾らない穏やかさがにじんでいました。

コントリからのメッセージ

印象に残るのは、「目の前にいる人は、自分とは違う人間だ」という三浦さんの言葉です。中国出張という異文化の現場で鍛えられたこの感覚が、日本の経営者と従業員の間に立つ今の仕事にまっすぐつながっていること。そして、その原点が、社労士としての実務ではなく、アパレル時代に一人のパート販売員からかけられた「三浦さんの考えていることが、私は知りたいんです」という素朴な一言だったこと。手続きや助成金の先に、経営者自身の言葉を従業員に届ける仕事があるという三浦さんの姿勢は、「思いはあるのに、伝わっていない」という多くの経営者が抱える課題そのものに向き合っています。従業員との向き合い方に悩んでいる経営者の方は、ぜひ一度、三浦さんに話を聞いてみてほしいと思います。

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プロフィール

WORK LABO社労士事務所
代表・社会保険労務士
三浦 真由美(みうら まゆみ)

1967年、愛知県名古屋市生まれ。名古屋モード学園卒業後、子ども服アパレル会社に入社し、結婚後は業務委託のデザイナーとして女児服の企画を約30年手がける。45歳で資格取得を決意し、社会保険労務士を3回目の受験で合格。離婚を経て上京し、税理士事務所での修業を経て2019年7月にWORK LABO社労士事務所を開業する。就業規則作成や社会保険手続き、助成金申請を手がけながら、労使間コミュニケーションの支援に軸足を置き、女性従業員の多い顧問先を中心に「会社を守り、継続する」ことを支える。座右の銘は「真実を見つめて自由に美しく」。

ギャラリー

会社概要

事務所名WORK LABO社労士事務所
代表者三浦 真由美(社会保険労務士)
開業2019年7月
所在地〒141-0031 東京都品川区西五反田3-15-6 リードシー目黒不動前ビルMIDPOINT
事業内容就業規則作成、労務相談、雇用管理、社会保険・労働保険手続き、給与計算、助成金申請、人材活用コンサルティング
コーポレートサイトhttps://worklabo-sharousi.com/

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