コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

ワークマンのビジネスモデル|職人市場を軸に過去最高益

ワークマンのビジネスモデル|職人市場を軸に過去最高益

新しいお客様を増やしたい。けれど、長く支えてくれた常連さんが離れてしまうのは怖い。事業を広げようとした経営者の方なら、一度はこの板挟みを感じたのではないでしょうか。

ワークマンのビジネスモデルは、職人向けの作業服で鍛えた商品力と店舗網を、一般客の市場へ持ち出す仕組みです。店舗の92.0%は夫婦で営むフランチャイズで、荒利益を本部6・加盟店4で分け合います。2026年3月期のチェーン全店売上高は2,092億円、営業利益は296億円で、ともに過去最高でした(同社決算短信)。

ただ、その歩みはまっすぐではありません。2024年3月期には営業減益となり、既存店の売上も前期を下回っています。一般客を広げるなかで、職人のお客様が入りにくくなったと報じられた時期です。

本記事の材料は、コントリ編集部がまとめたビジネスモデル研究ノートです。数字は2026年9月時点の決算資料と公式サイトで確かめ直しています。稼ぐ仕組み、客層拡大とつまずき、組織の順に見たうえで、中小企業が持ち帰れる4つの問いを用意しています。

ワークマンのビジネスモデルとは|数字で見る全体像

ワークマンは、作業服と機能性ウエアを扱う全国チェーンです。2026年3月期のチェーン全店売上高は2,092億円、営業利益は296億円で過去最高でした。1,094店のうち92.0%がフランチャイズ、売上の71.9%を自社開発のPB商品が占めます。

作業服専門店から「機能性ウエア」のチェーンへ

ワークマンは、1979年に群馬県伊勢崎市で創業した会社です。東証スタンダード市場に上場し、証券コードは7564です。カインズやベイシアと同じ、ベイシアグループの一員でもあります。

もともとは、建設や工場の現場で働く職人のための作業服専門店でした。朝早くから開き、必要なものがすぐにそろう。そんな店として、郊外のロードサイドに店を増やしてきました。

いまの同社は、自らを「すべての人に機能性ウエアを」届ける会社と位置づけています。2025年5月に発表した「中期成長ビジョン2030」で掲げた言葉です。職人の現場で磨いた機能を、普段の暮らしにも届けるという考え方が、事業の芯にあります。

2026年3月期決算の要点|売上・利益・店舗数

ここ3年の数字を並べると、つまずきから回復までの流れが見えてきます。2024年3月期の減益を経て、2年で営業利益は約1.3倍に伸びています。

決算期チェーン全店売上高営業利益出典
2024年3月期1,752億円(3.2%増・既存店1.4%減)231億円(4.0%減)2024年3月期決算短信(2024年5月)
2025年3月期1,831億円(4.5%増)243億円(5.4%増)2026年3月期決算短信(2026年5月)
2026年3月期2,092億円(14.3%増・既存店9.0%増)296億円(21.7%増・過去最高)2026年3月期決算短信(2026年5月)
2027年3月期 会社予想2,379億円(13.7%増)321億円(8.2%増)2026年3月期決算短信(2026年5月)

チェーン全店売上高とは、直営店と加盟店の売上をすべて足した数字のことです。本部の決算上の売上にあたる「営業総収入」は、2026年3月期で1,608億円でした。営業総収入に対する営業利益率は18.4%で、自己資本比率は82.8%です。

主な数字を1枚にまとめました。

数字で見るワークマン(2026年3月期)
チェーン全店売上高2,092億円前期比14.3%増・過去最高
営業利益296億円前期比21.7%増・過去最高
FC比率92.0%1,094店中1,006店がフランチャイズ
PB比率71.9%自社開発商品の売上構成比
期末店舗数1,094店ワークマン・プラス・Colors・#女子・Proの合計
※出典:ワークマン 2026年3月期決算短信・決算説明会資料(2026年5月11日)

4つの業態と店舗数の内訳

客層ごとに看板を分けた複数の業態も、ワークマンの特徴です。2026年3月期末の1,094店の内訳は次のとおりです(決算短信)。

最も多いのは、作業服に加えアウトドアやスポーツ用品もそろえる「ワークマンプラス」の711店です。職人向けの「ワークマン」が255店で続きます。一般客向けの「Workman Colors」は87店、#ワークマン女子は31店です。プロ向けの「WORKMAN Pro」は10店でした。

1年前の2025年3月期末は、ワークマン317店・#女子62店・Colors17店でした。出典は中期成長ビジョン2030です。古い看板を一般客向けの業態へ切り替えていることが、数字から読み取れます。

業態ごとの店舗数を図にしました。

業態別店舗数(2026年3月期末)
合計1,094店
  • ワークマンプラス711店(65.0%)
  • ワークマン255店(23.3%)
  • Workman Colors87店(8.0%)
  • #ワークマン女子31店(2.8%)
  • WORKMAN Pro10店(0.9%)
※出典:ワークマン 2026年3月期決算短信(2026年5月11日)。構成比は店舗数から算出
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稼ぐ仕組み①|粗利益を分け合うフランチャイズ

ワークマンの店舗の9割超は、夫婦で運営する個人フランチャイズです。加盟店は月間の荒利益額の40%を受け取り、本部が60%を受け取ります。商品の開発と供給は本部が担い、加盟店は店舗の運営と接客に力を注ぐ役割分担です。

荒利益の40%が加盟店収入になる分配方式

フランチャイズとは、本部が商品や看板、ノウハウを提供し、加盟店が店を営む仕組みのことです。例えば、コンビニの多くもこの形です。ワークマンでは、2026年3月期末で1,006店がフランチャイズでした。

同社の公式サイトによると、Aタイプと呼ぶ加盟契約では、店の荒利益額の40%が加盟店の取り分です。荒利益とは、売上から商品の仕入れ原価を引いた利益を指します。残る60%が本部の収入で、人件費などの営業経費は加盟店が負担します。

公式サイトのモデル例では、月の売上1,415万円・荒利益率36.5%の店を想定しています。荒利益516万円の40%にあたる約207万円が、加盟店の取り分です。売上ではなく利益を分けるため、本部と加盟店が同じ方向を向きやすい点が特徴です。

荒利益を分け合う方式は、セブン-イレブンと共通する考え方です。コンビニとの違いは「セブンイレブンのビジネスモデル」と比べると、より立体的に見えてくるはずです。

お金の流れを図にしました。

ワークマンの荒利益分配の流れ
STEP 1本部が商品を開発・供給PB商品を企画し、加盟店へ届ける
STEP 2加盟店が販売する夫婦で店を運営し、お客様に向き合う
STEP 3店の荒利益が生まれる荒利益=売上-商品の仕入原価
STEP 4荒利益を分け合う加盟店は取り分から人件費などの経費を負担
加盟店40%荒利益額に対する取り分
本部60%荒利益額に対する取り分
モデル例:月の売上1,415万円・荒利益率36.5%の店では、荒利益516万円のうち約207万円が加盟店の取り分です。 ※出典:ワークマン公式サイト「加盟条件と契約内容」Aタイプ契約(2026年9月閲覧)

夫婦で営む個人FCと、新たに始まった法人FC

ワークマンの加盟条件は、ともに55歳未満の夫婦であることが基本です(公式サイト、2026年9月閲覧)。契約は個人のみで、契約者本人が専任で店に立ちます。契約期間は3年で、保証金100万円を含む必要資金は212.5万円です。

公式サイトによれば、加盟者の6割以上は販売の未経験者です。家族で店を守る人たちこそ、全国の店舗網の土台です。

一方で、2026年3月期には新たに「法人フランチャイズ制度」が始まりました。ショッピングセンターへの出店を進めるための仕組みです。期末の法人FCは6店でしたが、2026年6月末には13店に増えました(各決算短信)。

直営店と法人FCが増えた結果、FC比率は前期末から0.7ポイント下がりました。ロードサイドの個人FCと、商業施設の法人FC。二つの形を組み合わせる段階に入った、と読むことができます。

本部が商品と在庫を担う理由

ワークマンの店では、品ぞろえや発注の多くを本部が支えています。作業服は「今日の現場で使うもの」を買いに来るお客様が多く、欠品が許されないためです。

加盟店が一から発注を考える必要が小さければ、未経験の夫婦でも店を回せます。本部はデータで売れ筋を読み、店に商品を届ける。加盟店は目の前のお客様に向き合う。役割の線引きがはっきりしていることが、1,000店を超える店舗網を支えています。

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稼ぐ仕組み②|PB71.9%と「高機能×低価格」の空白市場

ワークマンの利益を支えるもう一つの柱が、自社開発のPB商品です。2026年3月期のPB比率は71.9%で、2026年4〜6月期には74.9%まで上がりました(各決算短信)。職人向けに鍛えた機能を低い価格で出す位置取りは、一般客にも届きました。

職人の現場で鍛えた機能を、普段着に転用する

PBとは、プライベートブランドの略で、小売店が自ら企画する商品のことです。例えば、スーパーの自社ブランドのお惣菜もPBにあたります。ワークマンのPB売上高は、2026年3月期で1,501億円という規模です。

同社は決算短信で、プロ向けに培った技術をカジュアルウエアへ転用したと説明しています。防水・防寒・耐久といった機能は、もともと現場の職人が求めてきたものです。厳しい現場で試された機能だからこそ、キャンプや通勤でも信頼されるという流れが生まれました。

2026年3月期に大きく伸びたのが、疲れをやわらげるリカバリーウエアです。同社はこれを「当社を代表するヒット商品へと成長」したと記しています。職人の疲れに向き合う商品が、一般の人の暮らしにも広がった一例です。

競合の少ない「高機能×低価格」という位置取り

ワークマンの商品戦略を語るうえで欠かせないのが、「高機能×低価格」という位置取りです。アウトドア専業のブランドは機能が高い一方で、価格も高めです。一般的なカジュアル衣料は手頃ですが、過酷な環境向けの機能は多くありません。

その間に空いていた市場こそ、ワークマンの狙いどころでした。土屋哲雄氏の見立てでは、この空白市場は4,000億円規模です。出典はダイヤモンド・オンライン(2021年1月)です。土屋氏は三井物産に30年以上勤めたのち、2012年にワークマンへ入った人物です。

位置取りを図で整理しました。

機能性と価格で見た位置取り
縦軸:機能性(上ほど高い)
高機能 × 低価格ワークマン職人向けで鍛えた機能を手頃な価格で
高機能 × 高価格アウトドア専業ブランド機能は高いが価格も高め
低機能 × 低価格一般的な低価格カジュアル衣料手頃だが過酷な環境向けの機能は少ない
低機能 × 高価格ファッション性重視の衣料機能より見た目やブランドで選ばれる
価格:低い高い
土屋哲雄氏は、この「高機能×低価格」の空白市場を4,000億円規模と見積もっています。 ※出典:ダイヤモンド・オンライン「ワークマン大躍進の秘密は『しない経営』と『エクセル経営』」(2021年1月20日)。象限の分類は編集部による整理

ユニクロ・アウトドア専業ブランドとの違い

同じ衣料品でも、ユニクロとワークマンは出発点が異なります。ユニクロは、企画から販売までを自社で担うSPAという形で、日常着の品質と価格を磨いてきました。ワークマンは、職人の現場という限られた市場で機能を鍛えてから、一般客へと広げています。

SPAとは、製造小売業のことで、服を企画から販売まで一貫して手がける形を指します。仕組みの違いは「ユニクロのビジネスモデル」とあわせて読むと、より鮮明になるでしょう。

アウトドア専業ブランドとの違いは、主に価格帯にあります。ワークマンが選んだのは、同じ土俵で機能の高さを競うことではありません。「この値段でここまでの機能」という驚きを、売り場で積み重ねる道です。

職人市場から一般客へ|客層拡大と2024年のつまずき

ワークマンは2018年のワークマンプラス出店から、一般客へと客層を広げてきました。一方で2024年3月期は営業減益となり、既存店売上高も前期比1.4%減に転じます。職人向けの原点に立ち返り、#ワークマン女子をWorkman Colorsへ切り替えたことが回復につながりました。

ワークマンプラスと#ワークマン女子で広がった客層

一般客向けの「ワークマンプラス」の出店が始まったのは、2018年です。背景には、職人の減少による作業服市場の先細りへの懸念があったと報じられています(東洋経済オンライン、2023年10月)。

その後、作業服をアウトドアや普段着として楽しむ投稿がSNSで広がっていきます。2020年10月には、女性客を主な対象にした「#ワークマン女子」1号店を横浜・桜木町に開きます。職人の店が、一般の人も通う店へと姿を変えていった時期です。

客層が広がったことで、店舗数も売上も伸びていきます。ただ、その裏側では別の変化も起きていたのです。

2024年3月期の減益と「ワーク強靭化」

2023年秋、ワークマンの既存店売上は伸び悩みます。2023年9月の既存店売上高は前年同月比6%減でした(東洋経済オンライン、2023年10月)。一般客向けの売り場が広がるなかで、職人客が入りにくくなったと指摘されています。

2024年3月期の決算は、営業利益231億円で前期比4.0%減、2期続けての減益でした。既存店売上高は1.4%減です(2024年3月期決算短信)。同社は暖冬や円安による仕入価格の上昇も要因に挙げています。

ここで同社が打ち出したのが「ワーク強靭化」です。職人向けの商品に改めて力を入れ、原点の客層を固め直す取り組みを指します。広げた客層を追いかけるより、足元のお客様に戻った判断といえます。

Workman Colorsへの転換と過去最高業績への回復

次の一手は、#ワークマン女子の改装転換です。中期成長ビジョン2030でも、#ワークマン女子の改装転換を方針に掲げています。男性客も取り込む普段着寄りの業態「Workman Colors」への切り替えです。

2026年3月期は、Colorsを38店新規出店し、全業態で87店を改装転換しました。既存店売上高は9.0%増まで戻り、営業利益は過去最高を更新します。2026年4〜6月期もチェーン全店売上高が18.6%増、営業利益は33.3%増でした。

2012年以降の歩みを年表にしました。

ワークマンの客層拡大と立て直しの歩み
  • 2012年土屋哲雄氏が入社し、エクセル経営を推し進める
  • 2018年一般客向けの「ワークマンプラス」の出店を開始
  • 2020年10月「#ワークマン女子」1号店を横浜・桜木町に出店
  • 2023年秋既存店売上が伸び悩み、「ワーク強靭化」で職人向けに原点回帰
  • 2024年3月期営業利益231億円(前期比4.0%減)、既存店売上高1.4%減
  • 2025年5月中期成長ビジョン2030を発表。#ワークマン女子をWorkman Colorsへ改装転換
  • 2026年3月期営業利益296億円で過去最高。既存店売上高9.0%増
  • 2026年8月台湾に100%出資の子会社を設ける決議
※出典:ワークマン各期決算短信・中期成長ビジョン2030(2025年5月)・2020年10月ニュースリリース、東洋経済オンライン(2023年10月)

中期成長ビジョン2030には、2030年3月期の目標も示されています。チェーン全店売上高2,400億円、営業利益350億円、1,300店です。2027年3月期の会社予想は売上高2,379億円です。会社予想の段階で、売上高は2030年の目標まであと一歩です。

さらに2026年8月には、台湾に100%出資の子会社を設ける決議も行われています。資本金は2億台湾ドル(約10億円)で、直営での展開を予定しています(2027年3月期第1四半期決算説明会資料)。

エクセル経営と「しない経営」|仕組みで回す組織

ワークマンの強さは、商品やFC制度だけでは説明しきれません。全社員がExcelでデータを扱う「エクセル経営」と、無理な頑張りを求めない「しない経営」が組織を支えています。コントリはこれを、普通の人が迷わず動ける仕組みづくりと読み解いています。

特別なシステムではなく、全員が使えるExcelで考える

エクセル経営とは、表計算ソフトのExcelを使い、社員一人ひとりがデータで判断する経営のことです。例えば、売れ筋の偏りや棚の並べ方を、自分で集計して確かめます。2012年に入社した土屋哲雄氏が持ち込んだ考え方です。

同社は全社員に、VLOOKUPやSUMIFといった基本関数を学ばせています。NTT東日本のインタビュー記事(2025年12月)が伝える内容です。入社2年目からは直営店の店長を経験し、データで店を改善する経験を積みます。社内で作られたExcelツールは60種類以上にのぼるそうです。

土屋氏は同じ記事で「データで話せるようになると、人は大きく変わります」と語っています。高価な分析システムや専門家に頼るのではありません。全員が使える道具で、全員がデータを読むという発想です。

しない経営|やめることで現場の時間を守る

「しない経営」は、土屋氏の著書『ワークマン式「しない経営」』の題にもなった考え方です。例えば、頑張らない、ノルマを課さない、社内行事をしないといった方針です。ダイヤモンド・オンライン(2021年1月)で紹介された項目です。

一見すると、ゆるい会社に見えるでしょうか。けれど狙いは逆です。無理な目標や会議を減らせば、社員は現場の改善やデータ分析に時間を使えます。

やることを増やす前に、やらないことを決める。この順番が、少ない人数で大きな店舗網を支える土台です。

しない経営の主な項目をまとめました。

ワークマンの「しない経営」の主な方針
×頑張らない
×ノルマを課さない
×期限を設定しない
×社内行事をしない
×残業しない
×極力出社しない
やめた分の時間を、現場の改善とデータ分析に回す ※出典:ダイヤモンド・オンライン 土屋哲雄「ワークマン大躍進の秘密は『しない経営』と『エクセル経営』」(2021年1月20日)

本部が決め、加盟店が迷わない役割分担

私たちコントリ編集部が研究ノートをまとめるなかで印象に残ったのは、本部と加盟店の役割の分け方でした。本部はデータで売れ筋を読み、商品と在庫を整えます。加盟店はその仕組みの上で、目の前のお客様に向き合います。

NTT東日本の記事によれば、加盟店を指導するスーパーバイザーも、現場経験のある社員が担っています。データを読めて、店の実情も知っている人が間に立つ。だからこそ、提案に納得してもらいやすくなります。

数字に強い一部の人だけが判断する会社は、その人が抜けると止まってしまいます。ワークマンは、判断の土台を全員で共有することで、店が増えても回る組織をつくってきました。

なぜワークマンのビジネスモデルは真似されにくいのか

低価格の機能性ウエアを出すだけなら、他社にもできそうに見えます。しかしワークマンの型は、職人市場での信頼、PB開発、FC網、データ経営が組み合わさって成り立っています。一つだけ真似しても同じ結果にならない理由を、三つの観点で整理します。

職人という「厳しい顧客」が品質の基準をつくっている

ワークマンの商品の基準は、職人という厳しい顧客がつくってきました。雨の日の現場で水が染みれば、その服は二度と選ばれません。こうした厳しさが、機能の底上げを促してきたと考えられます。

一般客向けの業態から始めた会社には、この「試験場」がありません。先に厳しい顧客に選ばれ、その後で広い市場へ出る。この順番自体が、ワークマンの模倣しにくさの源です。

顧客の現場から商品を考える姿勢は、高収益で知られる企業に共通する特徴でもあります。例えば「キーエンスのビジネスモデル」も、顧客の現場の課題を起点にした商品づくりで知られています。

粗利益分配FCと本部発注がかみ合った店舗網

二つ目は、店舗網の仕組みです。荒利益を分け合う契約、本部による商品供給、データを読めるスーパーバイザー。どれか一つでは機能しません。

ワークマンの型を支える要素を、1枚の図に整理しました。

ワークマンの型が真似されにくい理由
一般客への客層拡大
全員のデータ活用エクセル経営・しない経営
荒利益を分け合うFC網FC1,006店と本部の商品供給
PB中心の商品開発PB比率71.9%
職人という厳しい顧客現場で鍛えた機能と信頼が土台
※出典:ワークマン 2026年3月期決算短信・決算説明会資料(2026年5月11日)。構造の整理は編集部による

2026年3月期のフランチャイズ店の売上は1,848億円で、チェーン全店の88.3%を占めました(決算短信)。1,000を超える店が同じ仕組みで動いていること自体が、大きな参入障壁です。同じ規模の店舗網を、後から一気につくるのは簡単ではありません。

広げすぎたら戻る、という軸の強さ

三つ目は、軸の強さです。ワークマンは一般客へ大きく広げたあと、職人のお客様が離れかけたところで原点に戻りました。

新しい市場で手応えがあると、多くの会社はそのまま走り続けたくなるものです。ワークマンは減益という数字を前に、自分たちの土台がどこにあるかを確かめ直しました。戻る場所がある会社は、思い切って広げられる。この軸こそ、最も真似しにくい部分だと私たちは考えています。

中小企業が持ち帰れる4つの問い

ワークマンの歩みには、規模を問わず自社に置き換えられる問いが詰まっています。鍵は「本業で鍛えた強みを、隣の市場へどう持ち出すか」という一点です。明日から自社で考えられる4つの問いにまとめました。

自社の「職人市場」はどこにあるか

一つ目は、自社にとっての「職人市場」を見つける問いです。職人市場とは、ここでは、要求が厳しく、ごまかしのきかない顧客層を指します。

例えば、地域の工務店なら、細部にうるさい大工さんからの指名がそれにあたるでしょう。そうした顧客に選ばれている理由を3つ書き出してみてください。その理由こそが、隣の市場へ持ち出せる強みです。

ワークマンにとっての強みは、雨や寒さに負けない機能を手頃な値段で出せることでした。その強みを、キャンプや通勤という隣の市場へ持ち出したわけです。工務店であれば、大工さんに評価された丁寧な納まりを、一般のリフォーム客への提案に生かす形が考えられるでしょう。新しい市場を探す前に、すでに厳しい目で評価されている部分を言葉にしておく。そこが出発点です。

新しい客層を広げるとき、既存客の居場所を守れているか

二つ目は、既存のお客様の居場所を守れているかという問いです。ワークマンでも、客層を広げた結果、職人のお客様が入りにくい店が生まれた時期がありました。

新しい商品やサービスを始めるときは、常連のお客様を3人思い浮かべてみてください。その方々にとって、店や会社は前より使いやすくなったでしょうか。一人ずつ確かめるだけでも、離れていく兆しに早く気づけます。

ワークマンが打ち出した「ワーク強靭化」は、まさに足元のお客様を固め直す取り組みでした。新しい客層と既存の客層は、同じ売り場や同じ窓口を取り合う関係になりがちです。例えば、新サービスの問い合わせ対応に追われ、長年の取引先への連絡が遅れていないか。月に一度、既存のお客様からの注文数や問い合わせ数を確かめておくと安心です。

高価なシステムの前に、全員が使える道具でデータを見ているか

三つ目は、データの見方を問うものです。ワークマンは、専門家や高価なシステムより先に、全社員がExcelを使える状態を整えています。

中小企業でも、今月から始められる形があります。例えば、商品別の売上を月に1回、全員で1枚の表にして眺めるだけでも十分です。数字で話せる人が一人増えるたびに、会議の中身が変わっていきます。

大切なのは、一部の詳しい人だけに集計を任せないことです。ワークマンは、入社2年目の社員にも店長としてデータで店を改善する経験を積ませています。自社でも、若手に1枚の表の作成を任せ、気づいたことを一言添えてもらう形から始められます。表の出来よりも、全員が同じ数字を見て話す習慣のほうが、後になって効いてきます。

やらないことを、決めているか

四つ目は、「しない」を決めているかという問いです。新しいことを始めるたびに、社内の仕事は少しずつ増えていきます。

1週間分の会議と報告を書き出し、なくしても困らないものに印をつけてみてください。やめた時間を、お客様と数字に向き合う時間に回す。それが、しない経営を自社に取り入れる第一歩です。

やめる対象を決めるときは、「誰のための仕事か」を問うと判断しやすくなります。お客様にも社員にも役立っていない定例会議や、読まれていない報告書は、見直しの候補です。いきなり全廃する必要はありません。まずは1か月だけ止めてみて、困ったことがあれば戻す。そのくらいの軽さで試すと、社内の抵抗も小さく済みます。

経営者の方への取材を重ねるなかで、私たちコントリ編集部が感じてきたことがあります。自社の強みは、社内で考えているだけではなかなか言葉になりません。お客様や取引先とのご縁のなかで問われ、語ることで、ようやく輪郭を持ちます。ワークマンも、SNSで自社の服を楽しむお客様の声から、新しい客層に気づきました。4つの問いを、身近な人と話しながら考えてみるのも一つの方法です。

4つの問いを1枚にまとめました。

ワークマンから持ち帰る4つの問い
※コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートをもとに作成

まとめ|ワークマンは「戻れる本業」があるから広げられた

ワークマンのビジネスモデルは、職人向けの作業服で鍛えた商品力と店舗網を、一般客の市場へ持ち出す仕組みです。荒利益を本部6・加盟店4で分け合うフランチャイズが、1,094店の店舗網を支えています。2026年3月期はチェーン全店売上高2,092億円、営業利益296億円で過去最高でした(決算短信)。

PB比率71.9%の商品は、「高機能×低価格」という競合の少ない位置を占めています。組織の面では、エクセル経営としない経営で、普通の人が迷わず動ける仕組みを整えてきました。

2024年には客層拡大の反動で減益を経験しました。職人向けの原点に戻ったうえで、Workman Colorsへの転換に踏み出しています。広げる力と、戻る力の両方を持っている。この組み合わせこそ、ワークマンから学べるいちばんの点です。

自社にとっての「職人市場」はどこでしょうか。まずは要求の厳しいお客様に選ばれている理由を、3つ書き出すところから始めてみませんか。ほかの企業の稼ぎ方と比べてみたい方は、「ビジネスモデル一覧」もご覧ください。

編集部コメント

印象に残ったのは、2024年3月期の決算短信の書き方でした。減益の要因として暖冬や円安を挙げつつ、同じ時期に職人向け商品への原点回帰へ舵を切っています。外部環境のせいにせず、自分たちのお客様が誰だったかを確かめ直した判断だったと受け止めました。もう一つは、2026年3月期にFC比率が0.7ポイント下がったことを、同社が資料のなかでそのまま示していた点です。法人FCや直営を増やす新しい挑戦の途中経過を、数字で隠さずに見せています。広げることと戻ることを行き来しながら、方針を自分たちの言葉で語り続ける。その姿勢に、長く選ばれてきた理由があると感じました。コントリはこれからも、企業が積み上げてきた仕組みを、一次情報に沿って丁寧にお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q1. ワークマンはどうやって利益を出しているのですか?

A. 加盟店への商品供給と、加盟店の荒利益の60%を受け取るフランチャイズ収入が中心です。PB比率71.9%(2026年3月期)が利益の支えです。2026年3月期の営業総収入に対する営業利益率は18.4%でした(決算短信)。

Q2. ワークマンのフランチャイズの取り分はどうなっていますか?

A. 公式サイトによると、Aタイプの加盟契約では月間荒利益額の40%が加盟店、60%が本部の取り分です。人件費などの営業経費は加盟店が負担します。加盟条件は、ともに55歳未満の夫婦であることが基本です(2026年9月閲覧)。

Q3. ワークマンプラスとWorkman Colorsの違いは何ですか?

A. ワークマンプラスは、作業服に加えアウトドアやスポーツ用品もそろえる業態です。Workman Colorsは、#ワークマン女子を改装転換した、男性客も取り込む普段着寄りの業態です。2026年3月期末で、プラスは711店、Colorsは87店でした(決算短信)。

Q4. ワークマンの業績はなぜ一度落ち込んだのですか?

A. 2024年3月期は、暖冬や円安による仕入価格の上昇が重なりました。加えて、一般客向けの拡大が進むなかで職人客が入りにくくなったと報じられています。営業利益は前期比4.0%減、既存店売上高は1.4%減でした(決算短信)。

Q5. ワークマンの「エクセル経営」とは何ですか?

A. 全社員がExcelを使い、データに基づいて店や商品を改善する経営のことです。2012年に入社した土屋哲雄氏が推し進めました。専門家や高価なシステムに頼らず、全員が基本関数を学んでデータを読む点が特徴です。

Q6. 中小企業がワークマンから学べることは何ですか?

A. 要求の厳しい顧客で鍛えた強みを、隣の市場へ持ち出すことです。あわせて、新しい客層を広げても既存客の居場所を守ることが欠かせません。全員が使える道具でデータを見ることと、やらないことを決めることも参考になります。

参考資料

本記事の土台は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートです。2026年9月時点で確認できたワークマンの決算資料・公式サイトと照合しました。数字は資料ごとに時点が異なるため、年月を併記しました。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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