
社会課題を事業にした経営者8人は、全員「かわいそう」を使っていなかった|118社インタビューの記録から
社会課題を解決する事業、と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、困っている人の窮状を伝え、共感を集め、支援を募るという形ではないでしょうか。募金のポスターも、寄付の呼びかけも、たいていはその作りになっています。
ところがコントリが取材した118社を読み直したところ、社会課題への使命感を起点に事業を立ち上げた経営者が8人いて、その8人が全員、まったく逆の設計をしていました。支援する相手を「かわいそうな人」の位置に固定しない。そのために、同情の代わりに別のものを置いていたのです。
しかも、その意図をはっきり言葉にしていた経営者が4人いました。偶然そうなったのではなく、意識的な経営判断だったということです。8人の証言を実名で整理します。
この記事の元になった8社
何をもとに書いているかを先に示します。NPO法人、一般社団法人、株式会社が混在していますが、共通しているのは「先に解きたい社会課題があり、そのために事業の形を選んだ」という順序です。
8人が向き合っている課題
| 企業・団体 | 経営者 | 向き合っている課題 |
|---|---|---|
| 認定NPO法人グローブジャングル | 森 絵美子 氏 | カンボジアで親と暮らせない子どもたちの養育・自立 |
| 株式会社アクティブ アンド カンパニー(奨学金バンク) | 大野 順也 氏 | 若者が数百万円の奨学金返還を背負って社会に出る構造 |
| NPO法人JOY GIFT | 下中 恵 氏 | インドの子どもたちの教育機会 |
| 株式会社ヴォルフェ(ヴォルフェ北海道) | 木下 瑛博 氏 | 地方の地域課題と、女子スポーツの環境整備 |
| 株式会社FeelWorks | 前川 孝雄 氏 | 「管理職は罰ゲーム」と言われる職場と、若者の働きがい |
| 株式会社運動会屋 | 米司 隆明 氏 | 職場・地域・国籍を越えた人の分断 |
| 一般社団法人なないろ | 入澤 繭子 氏 | 子どもの孤食と教育格差 |
| 株式会社リステップ | 浜路 洋一郎 氏 | 建設職人が抱える不安と、業界全体の地位 |
「社会に貢献したい」と語った人は含めていません
取材記事を機械的に検索すると、「社会」「貢献」「使命」といった言葉はもっと多くの記事に出てきます。しかし、事業の結果として社会に良い影響がある会社と、解きたい課題が先にあって事業を後から設計した会社は別物です。本記事は後者に絞り、全文を読んだうえで8社としました。母数を検算できるよう、この判断基準を明記しておきます。
全員が、相手を「かわいそうな人」にしない設計をしていた
8社を並べて最も驚いたのがここです。支援の対象になる人を、支援される側に固定しない。そのための具体的な仕掛けが、それぞれの事業に組み込まれていました。4人はその意図をはっきり言葉にしています。
グレーのポスターを、21年間つくらなかった
認定NPO法人グローブジャングル・森絵美子氏は、カンボジアで孤児院の運営支援を続けて21年になります。支援を訴えるポスターを作るとき、この分野の定石は決まっています。うつむいた子どもの写真、彩度を落とした色、深刻なコピー。森氏はそれを採りませんでした。
「みんな笑顔で、とにかくカラフルで。暗い写真を使うなんて、私が見てきたものと全然違う、と思ったんです」
認定NPO法人グローブジャングル 森絵美子氏
逆張りだと分かったうえで、「笑顔の写真だけを使う」と決めます。結果、集まってきたのは「支援することで自分もハッピーになりたい」という人たちだけでした。暗い訴求をしていたら、「本当にちゃんとやっているのか」と検分されるような、ぎこちない関係になっていたかもしれない——というのが森氏の振り返りです。
この判断は、支援者側だけの話ではありません。森氏は、子ども自身への影響も見ていました。「かわいそうな子」として扱われ続けると、その役割から抜け出せなくなってしまう。支援の現場に21年立ってきた人の観察です。
この姿勢を貫いた先に何があったか。グローブジャングルは大阪府から認定NPO法人として認められています。認定NPO法人は、全NPO法人の約3%しか取得できない資格です。
「こども食堂」という名前が、子どものプライドを傷つけていた
同じ問題に、まったく別の場所で突き当たっていたのが一般社団法人なないろ・入澤繭子氏です。群馬県前橋市でこども食堂の運営を始めた入澤氏は、その名称そのものが障壁になっていることに気づきます。
「こども食堂となると『支援してあげてる』とか『かわいそう』というように見られがちです。子供もプライドがあるので、自ら貧困の支援をされているところに行くということには抵抗感を感じてしまうんですね」
一般社団法人なないろ 入澤繭子氏
本当に来てほしい子ほど来られない。入澤氏が出した答えは、看板を掛け替えることでした。たどり着いた形が【「習い事」+「ご飯」】です。ものづくり、アート、音楽を体験できる場に、ご飯がついてくる。楽しいことをして、おいしいご飯を食べて、みんなで話して帰る。それなら、子どもは気負わずに来られます。
周囲の反応も、この判断の正しさを裏づけていました。チラシの回覧を頼みに行くと、「うちの地区にそんな貧困な子供はいない」「そんな子が行ってるところがあるなんて知られたらかっこ悪い」と、どこも受け入れてくれなかったといいます。「かわいそう」という枠組みは、支援したい側ではなく、支援される側と地域の側を先に遠ざけていました。
支援する側とされる側に、上も下もない
森氏はコロナ禍で支援ツアーが全面的に止まり、「孤児院も解散か」というところまで追い詰められます。そこで打ち出したのが「世界一おもしろいクラウドファンディングをやろう」という方針でした。
リターンの中身が独特です。孤児院のお母さんが子どもたちを起こす声を録音して送るボイスメッセージ(5,000円)、「絵美子とボードゲームをやる権」(1万円)、そして「あなただけのためにザ・ベストテンをやります」(20万円)。20万円のリターンには、複数の申し込みが入りました。
「お願いして集めるのではなく、こちらもちゃんと価値を提供する。支援する側とされる側に、上も下もないと思っているんです」
認定NPO法人グローブジャングル 森絵美子氏
同じ考え方は、まったく別の業種にも出てきました。株式会社ヴォルフェ・木下瑛博氏は、北海道旭川で女子フットサルチームを運営しています。個人からの支援を集める仕組みを設計するとき、「ファンクラブ」という名称を避けました。
「ファンクラブという言い方は、ファンとそうじゃない人の線引きをしてしまっているニュアンスがある気がしていて、あまり好きじゃなく」
株式会社ヴォルフェ 木下瑛博氏
法人からの支援についても、木下氏は同じ立ち位置を取ります。「これって、スポンサーシップというより共同事業に近いんです。どうやって一緒に価値を作っていくか」。支える側を「お願いする相手」にも「格上」にもしない。森氏とまったく同じ設計思想です。
同情の代わりに、8人が置いたもの
「かわいそう」を使わないと決めた場合、共感を集める別の入り口が必要になります。8人が置いたものは、大きく3つに分かれました。
| 置いたもの | 企業・団体 | 具体的な形 |
|---|---|---|
| 楽しさ | グローブジャングル | 伝統舞踊と音楽で子どもを育てる。笑顔の写真しか使わない |
| なないろ | 「習い事」+「ご飯」。貧困支援の看板を外す | |
| 運動会屋 | 分断の解消を「運動会」という共通体験で行う | |
| ヴォルフェ | アーティストとのコラボグッズなど、競技以外の入口を用意 | |
| 仕組み | 奨学金バンク | 人材紹介手数料の一部を返還に充てる。寄付に依存しない |
| FeelWorks | 上司の姿勢を変える研修事業として収益化 | |
| 対等 | JOY GIFT | 支援者と子どもを一対一でマッチングし、会いに行ける関係にする |
| リステップ | 職人を守る対象ではなく、スポットライトを当てる対象にする |
寄付ではなく、既存のお金の流れを付け替えた
3つのなかで最も構造的だったのが、株式会社アクティブ アンド カンパニー・大野順也氏の設計です。大野氏が向き合っているのは奨学金の返還負担で、その規模は個人の善意でどうにかなる水準ではありません。
大学生の約2人に1人が奨学金を利用し、平均借入額は約330万円、返還期間は平均15年。返還者は約490万人、貸付残高は9兆5000億円にのぼります。
大野氏が2024年3月にローンチした「奨学金バンク」は、寄付を集める仕組みではありません。奨学金を抱える求職者を企業に紹介し、その人材紹介手数料の一部を返還に充てます。もともと人材業界で動いていたお金の行き先を変えただけ、という構造です。
「支援金を本人に渡すのではなく、日本学生支援機構に直接払う仕組みにしました。すると、本人の所得にならないので所得税がかかりません。(中略)所得として計上されないということは、社会保険料の算定基礎にも影響しないので、社会保険料も上がらない。つまり、税金も社会保険料も一切増えないんです」
株式会社アクティブ アンド カンパニー 大野順也氏
ここにも「かわいそうにしない」設計が入っています。支援金を本人の口座に入れないということは、その人を受給者にしないということです。資金は三井住友信託銀行の専用口座で管理され、同行との財産隔離契約によって自社資産と法的に切り離されています。
重い課題ほど、軽い入口から入る
株式会社運動会屋・米司隆明氏が扱っているのは、ひきこもり、自殺、いじめ、そして職場や地域の分断です。ところが同社の商品は運動会です。
「年齢、性別、国籍、人種、宗教、障がいなどを超越して全ての人が関われるのが『運動会』だという結論に行き着き、NPO法人を立ち上げたというのが事業を始めることになったきっかけです」
株式会社運動会屋 米司隆明氏
米司氏は運動会を「哲学」と表現します。国籍や人種を超えて協力し合い、同じゴールを目指す仕組みは、多様性を受け入れ助け合う理想の社会そのものだ、と。同社はこれまでアメリカ、インド、タイ、ラオス、アフリカなど世界7カ国で運動会を実施しています。
課題が重いほど、入口は軽くする。森氏のエンタメ、入澤氏の習い事、米司氏の運動会は、まったく違う現場で同じ結論に達しています。
動き出してから器ができるまで、平均7.4年かかっている
もう一つ、並べて初めて見えたことがあります。思いついてすぐ始めた人が、一人もいません。課題に向き合い始めてから、法人やサービスという器が立ち上がるまでの年数を、記録から特定できた5社で計算しました。
| 団体 | 向き合い始めた年 | 器ができた年 | 期間 |
|---|---|---|---|
| グローブジャングル | 2005年 カンボジア支援を開始 | 2016年 NPO法人設立 | 11年 |
| JOY GIFT | 2012年頃 支援活動を開始 | 2025年8月 法人設立 | 約13年 |
| なないろ | 2017年 こども食堂の運営を開始 | 2022年7月 一般社団法人設立 | 5年 |
| 運動会屋 | 2007年 NPO法人を設立 | 2010年10月 株式会社を設立 | 3年 |
| 奨学金バンク | 2019年頃 奨学金問題を知る | 2024年3月 サービス開始 | 5年 |
最短3年、最長13年、平均7.4年。残る3社は年の特定ができなかったため計算から外していますが、いずれも複数年を要しています。
知ってから2年、ひたすら考えていた
この5年をどう使っていたかを、大野氏が具体的に語っています。きっかけは、プライベートで知り合った35歳の男性の一言でした。「実は、まだ奨学金を返しているんです」。
「45歳のとき、2019年頃に奨学金問題を知って、そこから約2年間、ずっと考えていました。2021年頃、ようやく『こういう仕組みなら実現できる』という設計図ができあがって、銀行や行政機関に提案を持っていったんです」
株式会社アクティブ アンド カンパニー 大野順也氏
知って2年考え、設計図ができてから3年かけて銀行や行政機関を動かす。この時間の使い方が、寄付に頼らない仕組みを可能にしています。社会課題を事業にするうえで、着手の遅さは怠慢ではなく、設計の深さと交換されているようです。
自己犠牲にしない構造を、先に作っていた
8社は全社が今も続いています。当たり前のようですが、社会課題に取り組む活動が途中で止まる最大の理由は、資金よりも担い手の消耗です。8人はそこにも手を打っていました。
「私はマザーテレサじゃない」
NPO法人JOY GIFT・下中恵氏は、インドの子ども208人の教育を支援し、150人の支援者一人ひとりに今も手作業でメールを送り続けています。一斉送信なら数分の作業です。それでも手を動かす理由を、下中氏はこう語ります。「一人ひとりとのつながりを『数字』ではなく、『顔』や『一人の人間』として感じていたいんです」。
一方で下中氏は、燃え尽きた人を何人も見てきました。
「私はマザーテレサじゃないし、そこまでできないなと思って。でもできる範囲で何かしたい想いはあったから。それをいかに楽しくできるのか、ずっと考えていました」
NPO法人JOY GIFT 下中恵氏
下中氏は同時通訳者としての仕事を別に持ち、支援活動を人生の一部として位置づけました。法人化が13年目まで遅れたのも、意図的な判断です。支えるメンバーが揃うまで待ち、自己犠牲にならないタイミングを選んだ結果でした。
この選び方は、支援の質にも効いています。法人化前、150人規模になるまで、下中氏は個人名義の口座で支援金を預かっていました。「下中恵の口座に振り込んでたわけだから。それは信頼ないとしないですよ」。年間9万円を個人口座に振り込み続ける人が150人いた、ということです。
700通の挨拶状を出して、返信はゼロだった
構造を作らずに始めるとどうなるかを、株式会社FeelWorks・前川孝雄氏が正直に語っています。前川氏はリクルートで「リクナビ」「就職ジャーナル」などの編集長を務めた後、2008年に独立しました。
創業当初の2年間、若者向けキャリア支援イベントを500円のワンコインで開催します。20人集まっても参加費は1万円。ゲストへの謝礼、会場費、資料代、懇親会費を足せば完全な赤字で、すべて自己負担でした。退職金をつぎ込んだ資本金は減り続け、破産の危機を感じるところまで行きます。
「せめて1人ぐらいは『頑張ってください』という励ましの返事があってもよいのではと期待していましたが、結果は完全にゼロでした。つまり、リクルートのリクナビ編集長として仕事をしていた頃の人脈は、あくまで会社の看板あってのものだったということを思い知らされたのです」
株式会社FeelWorks 前川孝雄氏
リクルート時代の人脈700人に挨拶状を送り、返信はゼロ。手を差し伸べたのは、損得抜きで付き合っていた友人たちでした。志だけでは事業は立たない。この経験を経て、前川氏の事業は「上司力®研修」という収益の立つ形に組み直され、現在は500社以上に導入されています。
前川氏が指摘する数字も、課題の輪郭を示しています。日本で昇進を望む人はわずか19.8%で、先進国で最も低い水準です。「管理職は罰ゲーム」という言葉は感覚ではなく、数字に裏づけられています。
使命は「社会統計」ではなく、個人的な記憶から来ていた
最後にもう一つ。8人が課題に出会った瞬間を並べると、統計やニュースではなく、自分が実際に立っていた場所の記憶から始まっていました。
避難所で見た「×」のスプレーサイン
株式会社リステップ・浜路洋一郎氏は中卒でとび職の世界に入り、20歳で二世帯住宅を建てるほどの成功を収めた人です。転機は2011年、東日本大震災でした。岩手出身の相棒の実家を訪ね、避難所の光景を目にします。衣食住のない人々の放心した表情、建物や車に記された「×」のスプレーサイン。
「そのときは言葉にできなかったけど、すごくスーッと腑に落ちたんです」
株式会社リステップ 浜路洋一郎氏
その体験が「職人さんが不安にならない会社を作ろう」という決意になり、いまは「俺たちの姿勢を通じて、技術の価値を高め、建設業の底上げをする」というビジョンに広がっています。浜路氏が語る職人像も、守るべき弱者ではありません。「職人ってマニアックじゃないですか。そういう人たちにスポットライトが当たると、ニンマリするんですよ」。
米軍基地の街で、交わらない二つの世界を見ていた
米司氏の原点は、1980年生まれの山口県岩国市での子ども時代です。近くの米軍基地から響く轟音で少年野球の練習が中断される日常のなか、若いアメリカ人兵士と地元のお年寄りがまったく交流しない光景に違和感を持ち続けていました。「もっと交流すれば良いのにな」。その違和感が、運動会という事業になっています。
木下氏の場合は、大学時代にプロテストを受けて道が閉ざされた経験でした。「スポーツに育ててもらったという思いがあって、スポーツへの恩返しみたいなことができたらいいなと」。そこから14年間ITコンサルタントとして働き、遠回りをしたうえで旭川に移り住んでいます。
8人とも、課題を外から発見したのではなく、自分の記憶のなかにすでに持っていました。これは業界の不合理から起業した9人とも共通する構造です。
まとめ:社会課題を事業にする人が、最初に決めていたこと
8社を並べて見えたことを整理します。
- 相手を「かわいそうな人」にしない。 8人全員が、支援の対象になる人を支援される側に固定しない設計をしていました。うち4人はその意図を明言しています
- 同情の代わりに、楽しさ・仕組み・対等のいずれかを置いている。 課題が重いほど、入口を軽くしていました
- 動き出してから器ができるまで平均7.4年。 思いつきで始めた人は一人もいません
- 自己犠牲にしない構造を先に作っている。 本業を別に持つ、法人化を待つ、収益の立つ商品に組み直す。続けるための設計が入っていました
- 使命の出どころは、統計ではなく個人的な記憶。 避難所、基地の街、35歳の知人の一言。全員が自分の記憶から始めています
いま解きたい課題を持っている方にとって、8人の証言が示しているのは「共感を集める方法」よりも「相手をどの位置に置くか」を先に決めているということです。訴求の巧拙ではなく、設計の順序の話でした。
この記事の限界
8社は無作為抽出ではなく、コントリの取材に応じた企業です。同じように社会課題に取り組み、続かなかった団体は含まれていません。「かわいそうを使わなければ成功する」ことを示すデータではなく、「続いている8社ではこう語られた」という記述にとどまります。平均7.4年という数字も、年を特定できた5社に限った集計です。各社の事業モデルの評価や優劣を論じるものでもありません。分類は編集部の判断によるものです。
編集部より
取材時には、それぞれ独立した一社の物語として書いてきました。カンボジアの孤児院と、群馬のこども食堂と、旭川の女子フットサルチームに共通点があるとは思っていませんでした。並べて読み直して初めて、「相手をかわいそうな人にしない」という同じ判断が三者に入っていることに気づきました。個別の記事では見えなかったことです。
本記事で引用した8社を含む全インタビューは経営者インタビュー一覧から、関連する横断記事は経営者118人に聞いた起業のきっかけ、経営者11人が「任せる」に変わった日からお読みいただけます。
よくある質問(FAQ)
社会課題を解決する事業は、NPOで始めるべきですか
8社の内訳は、NPO法人が2、一般社団法人が1、株式会社が5です。法人格の選択と課題の重さに関係は見られませんでした。JOY GIFT・下中氏や運動会屋・米司氏のように、活動を先に始めて、続けられる体制が整ってから器を選んだ例が複数あります。法人格を先に決めるより、続けられる構造を先に決めるという順序でした。
寄付に頼らずに社会課題の事業を続けられますか
8社のうち、寄付や支援金を主な原資にしているのはグローブジャングルとJOY GIFTの2社です。奨学金バンクは人材紹介手数料、FeelWorksは研修、運動会屋は企業向けの運動会企画とキャンプ場運営、ヴォルフェはスポンサーとメンバーシップ、リステップは建設業の本業と、それぞれ収益源を持っています。ただし、8社のなかで最も長く続いているグローブジャングル(21年)が寄付を原資にしている点も付け加えておきます。収益源の種類より、その原資が続く形になっているかどうかが分かれ目でした。
なお、寄付を主な原資とする2社は、いずれも支援者との関係づくりに事業の中心的な労力を割いています。JOY GIFT・下中氏の手作業のメール150通、グローブジャングルのクラウドファンディングの企画がその例です。
なぜ「かわいそう」という訴求を避けるのですか
記事中で語られた理由は3つあります。1つ目は、支援される側が来られなくなること(なないろ・入澤氏)。2つ目は、その役割から抜け出せなくなること(グローブジャングル・森氏)。3つ目は、支援者との関係が検分するような性質になること(同)。いずれも、支援を集める効率ではなく、その後の関係の質を理由にしています。
課題に気づいてから、どのくらいで始めるべきですか
年を特定できた5社の平均は7.4年でした。ただしこれは「始めるまで待った」期間ではありません。多くの場合、活動そのものは早い段階から小さく始まっていて、法人やサービスという器ができるまでに時間がかかっています。奨学金バンクの大野氏のように、知ってから2年間ひたすら設計を考えた例もあります。
本業を持ちながら社会課題に取り組むことはできますか
JOY GIFT・下中氏は同時通訳者の仕事を続けながら、13年間インドの子どもたちの教育支援を続けています。「私はマザーテレサじゃない」という言葉どおり、自己犠牲にならない範囲を先に決めたうえで活動を設計した例です。なないろ・入澤氏も前橋市議会議員と法人代表を兼ねています。
この8社は、どういう基準で選んだのですか
コントリが取材・掲載した118社の記事を対象に、「社会」「使命」「課題」などの語で機械的に候補を抽出したうえで、候補記事を全文読み、解きたい課題が事業より先にあったと判断できたものだけを残しました。事業の結果として社会に良い影響がある会社は含めていません。各社名からリンクしているインタビュー記事に、会社概要と公式サイトを掲載しています。なお本記事の引用は各社の掲載記事からのものであり、あらためて取材を行ったものではありません。


