コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

ダイソーはなぜ安い?100円を守る売価起点の仕組みと中小企業の学び

ダイソーはなぜ安い?100円を守る売価起点の仕組みと中小企業の学び

原材料も物流費も上がり続けるなかで、ダイソーの店には今も100円の商品がずらりと並びます。なぜあの値段で続けられるのか、自社の値付けと重ねて気になった経営者の方も多いのではないでしょうか。

ダイソーが安い理由は、値段を先に決めて、商品をあとから合わせる順番にあります。「100円で売る」と先に決め、量目・素材・包装・運び方を工場と一緒に詰めていきます。商品の約9割が自社企画で、国内外約5,900店で売り切れる規模が、その交渉力の源です。

2026年2月期の連結売上高は7,710億円でした。売上高は15年連続で過去最高を更新しています(大創産業 発表、2026年6月)。

本記事は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートをもとに、会社発表と社長インタビューで数字を確かめて構成しました。売価起点の商品づくり、多品目を少人数で回す仕組み、100円を守りつつ上の価格帯で稼ぐ設計を順に見ていきます。非上場ゆえに利益が見えにくい点や円安の課題にも触れ、最後に中小企業が持ち帰れる5つの視点にまとめました。自社の値付けを見直す材料としてお役立てください。

ダイソーはなぜ安い?答えは「値段を先に決める」商品づくり

ダイソーの安さは、原価の安い商品を集めた結果ではありません。「100円」という値札を先に決め、その値段で売れる仕様をあとから作る順番が土台です。

普通の小売業は、仕入れ値に利益を乗せて売価を決めます。ダイソーはその逆で、売価から原価・量目・包装を逆算します。まずは会社の全体像を数字で確認しておきましょう。

1972年の移動販売から国内外5,891店へ|会社の基本データ

ダイソーの出発点は、1972年3月に創業者の矢野博丈氏が始めた家庭用品の移動販売「矢野商店」です(大創産業 会社概要・沿革)。1977年12月に株式会社大創産業として法人化し、1991年4月に直営1号店を高松に出しました。本社は広島県東広島市にあります。

2026年2月末の店舗数は、国内外で5,891店です。内訳は国内4,784店、海外1,107店で、国内のうち849店は代理店による運営です。2026年6月26日には、国内外の総店舗数が6,000店を超えました(同社発表・PR TIMES)。海外の出店先は、日本を除く25の国と地域に及びます(2026年2月末)。

現在の代表は、創業者の次男で2018年3月に就任した矢野靖二社長です。創業者の矢野博丈氏は2024年に亡くなりました(国立国会図書館典拠データ)。移動販売から始まった店が、二代目のもとで仕組みの会社へと形を変えている途中にあります。

連結7,710億円・単体6,983億円|非上場で利益は非開示

大創産業の2026年2月期は、連結売上高が7,710億円(前期比+6.4%)でした。単体売上高は6,983億円(同+3.2%)です(大創産業 発表、2026年6月)。

連結売上高とは、海外子会社などグループ全体の売上を合わせた数字のことです。単体は大創産業1社分の売上を指します。例えば、海外子会社が運営する店の売上は、連結には含まれますが単体には含まれません。

単体の売上は、6,249億円(2024年2月期)、6,765億円(2025年2月期)と毎年伸びてきました(流通ニュース、2025年6月)。

一方で、大創産業は非上場で、営業利益や経常利益を開示していません(日本経済新聞)。非上場とは、株式を証券取引所に公開していない会社のことです。上場企業のように決算短信や有価証券報告書で利益を開示する義務がないため、利益の水準は外から見えません。

そのため、利益の高さを外から評価することはできません。ここからは、売上と価格の構造から安さが成り立つ仕組みを読み解きます。利益について確かめられるのは、社長が語った言葉にとどまります。この点は後半の課題の章で改めて扱います。

安さを支える3つの仕組み|売価起点の開発・多品目の運営・価格帯の二段構え

私たちコントリ編集部が研究ノートを読み解くと、ダイソーの安さは3つの仕組みに分けられました。1つめは、値段から逆算して商品を作る売価起点の開発。2つめが、7万を超える品目を少ない人手で回す多品目の運営を指します。そして3つめは、100円で来店を集め、上の価格帯で単価を取る価格帯の二段構えと呼べる設計です。

3つはばらばらではなく、互いを支え合う関係です。売り切る店が多いから、工場に専用の仕様を頼めます。品目が多いから、自動発注や物流の仕組みが欠かせません。そして100円という信頼があるから、300円や500円の商品も「この値段ならお得」と受け止められるのです。

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商品の約9割が自社企画|「100円で売れる形」から逆算する

ダイソーの商品は約9割が自社企画のPBで、開発商品は約7万6,000SKUにのぼります(矢野靖二社長、2025年2月)。売価を先に決め、その値段に収まる仕様を工場と一緒に作ることが、安さの出発点です。

PB(プライベートブランド)とは、小売業が自ら企画して販売する独自の商品のことです。例えば、スーパーが自社の名前を付けて売る食品もPBにあたります。

SKUとは、色やサイズ違いまで分けて数えた商品の最小単位を指します。例えば、同じコップでも青と赤があれば2SKUと数えます。ここでは、ダイソーが商品をどう作り、どう入れ替えているかを見ていきます。

量目の調整と包材の小型化|値上げではなく仕様で100円を守る

DAISOの商品は約9割がPBで、残りは主に食品です(東洋経済オンライン、2024年2月)。自社で企画しているからこそ、値段に合わせて中身を変える判断ができます。

円安と原料高への対応について、矢野靖二社長は量目の調整や包材の小型化で積載効率を上げると語っています(リテール・リーダーズ、2025年2月)。量目とは、1つの商品に入っている量や重さのことです。例えば、1袋の枚数を見直したり、箱を一回り小さくしたりする工夫を指します。

積載効率とは、トラックやコンテナにどれだけ無駄なく荷物を積めるかの度合いです。例えば、包材が小さくなれば、同じトラックやコンテナに積める数が増えます。

1個あたりの運ぶ費用が下がり、その分を原価の上昇に充てられる仕組みです。社長は同時に、品質管理部の体制を整えたとも明かしました(リテール・リーダーズ、2025年2月)。値上げではなく仕様を詰めて100円を守る、この順番がダイソーの基本姿勢です。

新商品を出しても総SKUは増やさない|入替えの規律

ダイソーは新商品を毎月大量に投入する会社です。その数は、2019年の同社情報システム部の説明では月約800点でした(Business Insider Japan、2019年6月)。2025年10月の報道では月約1,300点とされ(現代ビジネス、2025年10月)、時点と媒体によって幅があります。季節の行事やSNSで話題になった用途に、素早く当てていくのが特徴です。

ところが総SKU数は増やしていません。矢野社長は、倉庫の制約から総数を増やさず、生産を終えた商品を終売にして入れ替えると語っています(リテール・リーダーズ、2025年2月)。新しいものを足すたびに、古いものを同じだけやめる規律です。

品目が増え続けると、倉庫も棚も発注の手間も膨らみます。出す数とやめる数を揃えることで、7万を超える品目の運営を一定の重さに保っているのです。真似しにくいのは新商品の数ではなく、入れ替えの規律。それが編集部の見立てです。

売れなくても値下げしない|例外は季節品と食品だけ

ダイソーは、売れ行きの悪い商品でも原則として値下げしません。矢野社長によれば、過去に一度値下げをしたものの売れなかった経験があるそうです(リテール・リーダーズ、2025年2月)。例外は季節商品と食品に限られます。

値下げをすると、お客様に「待てば安くなる店」という印象が残ります。100円という一つの値札で選ぶ手間をなくしている店にとって、値下げはその約束を自ら崩すことになりかねません。売れない商品は値段を守って待ち、だめなら終売にする。判断の型が、先に決まっているのです。

産地の工場から各国へ直送|日本を経由しない物流

ダイソーの商品の多くは、産地の工場から各国へ直接送られています(リテール・リーダーズ、2025年2月)。海外の店に並ぶ商品も、基本的に日本を経由しません。運ぶ回数と在庫を置く場所が減り、その分だけ費用が抑えられます。日本の港や倉庫で積み替える手間がなくなれば、届くまでの日数も縮まります。

この仕組みは、大量に作って安く仕入れるだけでは成り立ちません。ロットとは、工場が一度にまとめて作る生産の単位のことです。例えば、1回に1万個まとめて作れば、1個あたりの段取りの費用が下がります。

世界約5,900店で同じ商品を売り切れる販売力が、ダイソーにはあります。だから工場も専用仕様の大きなロットを引き受けやすい、というのが編集部の見方です。売り場の規模が、商品開発の自由度を買っていると言えます。

7万SKUを少人数で回す|自動発注・セルフレジ・物流網

1個あたりの粗利が小さい商売では、人と物流の効率がそのまま利益を左右します。ダイソーは自動発注やセルフレジ、自前の物流網で、7万を超える品目を少ない人手で回しています。

粗利とは、売上から商品の原価を引いた残りの利益のことです。例えば、原価60円の商品を100円で売れば、粗利は40円です。100円の商品は1個あたりの粗利の額が小さいため、店員1人が何個売るか、トラック1台に何個積むかが利益を決めます。ここでは、その効率を支える仕組みを見ていきます。

POSの統計解析で30日先まで予測する自動発注

ダイソーは2015年に、店ごとの需要を予測して発注する自動発注システムを導入しました(Business Insider Japan、2019年6月)。POSデータとは、レジで記録される「いつ・何が・いくつ売れたか」の販売記録のことです。例えば、雨の日に傘が何本売れたかも記録に残ります。この記録を統計的に解析し、全店を対象に30日先まで需要を予測します。

2019年時点の同社情報システム部の説明では、毎晩105億レコードを処理していました。7万SKUを数千店で発注する作業を、人の勘だけで回すことはできません。自動発注は、多品目・多店舗を続けるための前提条件です。欠品を減らすことは、お客様の「行けば必ずある」という信頼にもつながります。

セルフレジと人時生産性|対面レジは基本的に不要

矢野社長によれば、ダイソーは人時売上高を3年で1.3倍に引き上げました(リテール・リーダーズ、2025年2月)。人時売上高とは、従業員1人が1時間働いたあたりの売上高のことです。例えば、10人が8時間働いて80万円売れた店なら、1人時あたり1万円となります。

人時売上高の改善と並んで社長が挙げたのが、レジのセルフ化です。商業施設独自のポイントカードなど特殊な場合を除き、対面レジは基本的に不要という考えを示しています(同)。

レジに立つ時間が減れば、品出しや売り場づくりに人手を回せるのです。7万を超える品目を並べ続ける店では、棚を整える時間そのものが売上を左右します。人時売上高の伸びは、こうした時間の配分を変えた結果と読めます。

25坪から1,650坪まで|同じ商品群を面積に合わせて切り出す

ダイソーの店舗は、最小で約25坪、最大で千葉県船橋市の約1,650坪と、広さに大きな幅があります(リテール・リーダーズ、2025年2月)。駅の中の小さな店から郊外の大型店まで、同じ商品群を面積に合わせて切り出して並べる方式です。

出店先も、スーパーの中、ホームセンターの中、百貨店や駅ビルなどさまざまです。ホームセンターのコーナンの中には約110店があります(同)。出店のペースは、国内が年300〜400店、海外が年約100店です。国内では都市部、とくに東京23区に出店の余地が大きいとの見方を示しました(リテール・リーダーズ、2025年2月)。

国内9か所の倉庫と10か所目のRDC計画

店の数が増えるほど、商品を運ぶ仕組みの重さが増します。ダイソーは国内に9か所の倉庫を持ち、そのうち約4か所を移転・増床する予定です(リテール・リーダーズ、2025年2月)。宮城県には10か所目のRDCを計画中です。

RDCとは、地域ごとに商品を集めて各店へ配る地域物流センターのことです。例えば関東の店には、2023年7月に稼働した神奈川RDCのような拠点からまとめて商品が届きます(同社沿革)。海外ではマレーシアのグローバル物流センターが2027年に稼働する予定です。

出店のペースに合わせて、運ぶ仕組みも先回りで広げている形です。運ぶ費用こそ、100円という価格の生命線。

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100円比率は約85%から約80%へ|「やめない、それだけにしない」価格帯

円安で輸入原価が上がっても、ダイソーは100円を主力の値段として守っています。100円で来店と買い上げ点数を取り、200〜700円の商品と別ブランドで単価を取る二段構えが、価格の設計です。

ここでは、100円の比率がどう動いたのか、上の価格帯をどう整えたのかを見ていきます。よく語られる「原価の俗説」についても、確かめられる範囲で整理しました。

150円をやめ、200・300・500・700円に集約

矢野社長によると、100円商品の比率は2022年度の約85%から約80%(2023年度)に下がりました(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2024年10月)。それでも社長は、ここからさらに大きく下げるつもりはないと述べました。

社長は「これ以上5ポイント以上は下がらない」と語り、その理由を「100円をやめれば買い上げ点数が大きく減る。経営上の死活問題だ」と説明しました(同)。一方、別のインタビュー(リテール・リーダーズ、2025年2月)では、今後さらに下がる可能性にも触れています。最新の数字として確かめられるのは、2023年度の約80%までです。

一方で、価格帯の数を増やし始めたのは約20年前で、円安がきっかけではないとも社長は語っています(リテール・リーダーズ、2025年2月)。中途半端だった150円をやめ、200円・300円・500円・700円に集約しました。品群ごとに、高めの売価に寄せるか100円に寄せるかを決める運用です(リテール・リーダーズ、2025年2月)。

掃除・台所・文具のような消耗品は100円にこだわり、毎週のように来る理由を作ります。おもちゃや収納、季節品は「100円では作れないが、300〜500円なら驚く」商品として上の価格帯に置きます。値段の種類を区切りよく絞ることで、お客様も社員も迷わない売り場になっているのです。

THREEPPYとStandard Products|別の客と財布を取りにいく

ダイソーはDAISOのほかに、2つの別ブランドを育ててきました。300円ショップの「THREEPPY」は、2018年に展開を始めました。トレンドカラーの雑貨や食器、キャラクターとの協業商品を扱います。

生活雑貨の「Standard Products by DAISO」は、2021年に1号店を出しました。300円を中心に、100〜1,000円の商品が並ぶ店です。

2026年2月末の国内店舗数は、THREEPPYが601店、Standard Productsが228店です(大創産業 会社概要)。前者は若い世代や女性、後者はインテリアを揃えたい層と、DAISOとは別のお客様が狙いです。3つのブランドを1か所にまとめた複合店も、国内外で増えてきました。

「100円商品は原価が数十円」はよく言われるが確認できない

ダイソーについては「100円商品は原価率が低いから儲かる」「どの商品も原価は数十円」といった話がよく語られます。しかし、商品ごとの原価率は公表されておらず、こうした俗説は一次情報では確かめられません。原価の高い商品と低い商品を混ぜて全体で利益を出す、という創業者の逸話も、数字の裏づけはありません。

むしろ社長は、2024年2月期の利益を「為替の影響で厳しかった」と語っています(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2024年10月)。少なくとも円安の局面では、100円の粗利がかなり圧迫されていると読むのが自然です。100円の商品は赤字覚悟の目玉ではなく、点数を稼ぐ主力として設計されている、と捉えるのが実態に近いでしょう。

セリア・キャンドゥとの比較|真逆の戦略でどちらも伸びている

同じ100円ショップでも、セリアは100円均一を守り、ダイソーは価格帯と海外を広げています。どちらも売上を伸ばしており、どちらが正しいかではなく、何を取りにいく戦略なのかを比べることが大切です。

自社の価格戦略に正解は一つではない、という視点で読むと参考になります。決算期が各社で違う点に注意しながら、数字を並べてみます。

100円ショップ大手3社の売上・店舗数を比べる

大手3社の直近の決算と店舗数を、表にまとめました。決算期や店舗数の時点が異なるため、数字は同じ時点の比較ではありません。また、大創産業は利益を開示していないため、利益率の欄は「非開示」と記しました。

会社売上高(前期比)営業利益率店舗数価格の考え方出典
大創産業(ダイソー)連結7,710億円(+6.4%)/単体6,983億円(+3.2%)、2026年2月期非開示国内外5,891店(2026年2月末)100円が約80%(2023年度)、200〜700円と別ブランドで単価を取る大創産業 発表(2026年6月)
セリア2,557億円(+8.2%)、2026年3月期8.2%2,134店(2026年3月末)100円均一を守る決算短信(2026年5月)
キャンドゥ870億円(+4.4%)、2026年2月期1.8%1,357店(2025年5月末)100円が中心、イオン傘下で商業施設に出店決算短信(2026年4月)

キャンドゥの営業利益は15億3,200万円で、決算短信に記載された売上高営業利益率は1.8%です。規模の面では、ダイソーが他の2社を大きく引き離す構図です。一方で、売上の伸び率ではセリアがダイソー単体の+3.2%を上回りました。

セリアは「100円一本で利益率」、ダイソーは「価格帯を広げて規模」

セリアが守るのは、純粋な100円ショップの路線です。2026年3月期は営業利益210億円(前期比+24.5%)で、報道では売上総利益率が41.7%に改善しました。売上総利益率とは、売上に占める粗利の割合のことです。例えば100円の商品の粗利が40円なら、40%となります。

他社が100円以外を増やすなかで100円を守った「残存者利益」という見方もあります(ビジネス+IT)。残存者利益とは、競合が撤退した市場に残った会社が得る利益のことです。例えば、近くの店が閉じたあと、残った店に客が集まる状態を指します。

ただし、「100円均一をやめたダイソーが負けている」という見方は、実態とずれています。ダイソーも15年連続で売上の過去最高を更新しており、規模の差は大きいままです。両社が選んだのは、100円一本で利益率を取るか、価格帯を広げて規模と海外を取るかという真逆の戦略です(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2024年10月)。

キャンドゥは2022年1月、イオンが株式の51.16%を取得して連結子会社になりました。イオングループの商業施設に出店しやすくなった一方、利益率はセリアに大きく及びません。ダイソーとの差は、自社で開発して売り切る規模の差と言えるでしょう。

同じ低価格でも、稼ぎ方は会社ごとに違います。自社工場と業務用の大容量で価格を作る例は、業務スーパーのビジネスモデルで整理しました。工程の設計で安さを守る例は、サイゼリヤはなぜ安いのかで扱っています。

なぜ真似されないのか|売り切る力・入替えの仕組み・安さの信頼

ダイソーの仕組みが他社に真似されにくい理由は、大きく4つあります。1つめは、100円で作れる仕様を工場に頼めるのは、売り切る力がある会社だけだという点です。帝国データバンクも、地場の小さなチェーンは100円を維持できず、閉店や縮小が続いていると指摘しています(帝国データバンク調査、2026年4月)。

2つめは、7万SKUを回す入れ替えの仕組みです。毎月数百〜1,000点を超える新商品を出しながら、総数は増やしません。自動発注、国内の倉庫網、産地直送、終売の判断までがつながって初めて成り立ちます。品目の数そのものより、「出す・売る・やめる」を毎月回す仕組みこそが壁です。

3つめは、100円という約束が積み上げた信頼です。「ダイソーは安い」と知られているから、同じ店の300円や500円の商品も割安に見えます。ゼロから300円ショップを始める他社は、この信頼の貯金を持っていません。

4つめは、非上場であることです。四半期ごとの利益を株主に説明する必要がありません。円安で利益が厳しくても、100円の比率を急には下げずに耐える判断がしやすい立場です。ただし矢野社長は、上場は未定としつつ、上場基準の体制づくりは進めていると述べています(リテール・リーダーズ、2025年2月)。

同じ製造小売でも、少ない品目を大量に作るユニクロは「絞り込み型」です。7万SKUを入れ替えるダイソーは「多品目型」で、商品数の考え方が正反対と言えます。詳しくはユニクロのビジネスモデルで整理しています。

見えにくい利益と円安|ダイソーが抱える課題

ダイソーは非上場で、営業利益や経常利益を開示していません。売上は15年連続で最高を更新しています。ただ、利益が同じように伸びているかは外から確かめられません。

社長自身が、2024年2月期の利益を「為替の影響で厳しかった」と述べています(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2024年10月)。ここでは、公表されている数字から見える課題を整理します。

単体売上は+8.3%から+3.2%へ減速

大創産業の単体売上の伸びは、2025年2月期の+8.3%から、2026年2月期は+3.2%に鈍りました(大創産業 発表、流通ニュース)。同じ時期、セリアは+8.2%の伸びでした(2026年3月期決算短信)。国内では年300〜400店の出店を続けているため、既存の店の伸びがどうなっているかが気になるところです。

社長によれば、2024年12月時点の既存店売上は前年比103%弱でした。客数・客単価とも伸びていたそうです(リテール・リーダーズ、2025年2月)。ただし、その後の既存店の数字は、確認できた範囲では公表されていません。100円の安さで選ぶお客様がセリアへ流れていないかは、公表データからは判断できない状況です。

円安も、重い課題として残ります。ダイソーは海外の工場から直接仕入れる商品が多く、為替の変動を直接受けます。社長は「1ドル170円でも潰れない」準備を進めていると語りました(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2024年10月)。それを超える円安や原料高が来れば、仕様の工夫だけでは吸収しきれません。

米国1,000店・世界1万店はあくまで目標

成長の重心は、別ブランドと海外に移りつつあります。2026年2月末の海外店舗は25の国・地域で1,107店、うち米国は231店です。会社は米国で2030年度までに1,000店を目指しています(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2026年3月)。

2025年2月時点の米国の最低価格は、西海岸で1.75ドル、東海岸で1.99ドルです(リテール・リーダーズ、2025年2月)。日本の100円より高い値段で同じ商品を売れる市場は、円安下の100円モデルを支える外貨の稼ぎ口とも読めます。ただし関税の引き上げは、輸入品の原価を押し上げます。州ごとの製品規制への対応も課題とされました(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2026年3月)。

中期目標は、2030年に世界で売上高1兆円・1万店です(MD NEXT、2024年4月)。2026年8月の発表時点で、同社は9月のメキシコ進出と、12月までに5店を目指す計画を示していました(同社発表)。2026年10月には、東欧ジョージアへの初出店も発表しました。11月26日に首都トビリシで1号店を開く予定で、事業展開は世界28の国・地域になるとしています(同社発表)。米国1,000店や世界1万店は目標で、達成が決まったものではありません。

現在の約6,000店から1万店へは、約1.7倍の拡大です。倉庫の制約でSKUを増やせないと語る会社だけに、物流と人手が追いつくかが問われます。

300〜500円の土俵では「安さの王者」ではない

300円以上の価格帯では、ダイソーは強い競合と向き合います。100円ショップ大手は、300〜500円の自社商品を増やしてきました。帝国データバンクは、その結果3COINSなどの300円ショップや無印良品との競合が始まったと指摘しています(帝国データバンク調査、2026年4月)。編集部の見方では、ニトリやドン・キホーテのPBも、この価格帯にひしめいています。

100円の世界で効いていた「圧倒的な安さ」の驚きは、300円の世界では薄れます。比べられるのは、デザインや品質です。Standard Productsの国内店舗は228店です(2026年2月末)。2024年時点で掲げた国内500店の目標(東洋経済オンライン、2024年2月)の半分に届いていない状況です。

規模の拡大と並んで、経営の仕組みづくりも途上にあります。前の章で触れた上場基準の体制づくりも含め、二代目のもとで会社の仕組みが整えられている段階です。

ダイソーの仕組みから、中小企業が持ち帰れる5つの視点

数千店の販売力や自前の物流網は、多くの中小企業には真似できません。それでも「値段を先に決める」「看板は守り、周りで稼ぐ」という考え方は、規模を問わず自社に置き換えられます。

値上げの悩みは、業種を問わず多くの経営者が抱えるテーマです。研究ノートの整理から見えた論点を、すぐに着手できる5つの視点にまとめます。

売価を先に決め、原価をあとから合わせる

ダイソーは100円という値札から逆算して、量目・素材・包装・運び方を決める会社です。中小企業でも、お客様が払いやすい値段を先に決め、そこに収まる仕様を考えてみてはいかがでしょうか。

例えば、町の洋菓子店なら「手土産に1,000円で買える箱」を先に決め、個数や箱の大きさを合わせる発想です。値上げか据え置きかの二択で迷っているときこそ、量・包装・工程・届け方という別の打ち手が見えてきます。

進め方は3段階です。まず、看板商品について「お客様が払いやすい値段」を1つ決めます。次に、今の原価を「量」「包装」「工程」「届け方」の4つに分けて書き出します。

最後に、どれを変えればその値段に収まるかを1つだけ選び、翌月から試します。下の表をそのまま書き写して使ってみてください。

見直す項目確認する問い記入例(町の洋菓子店)
払いやすい値段お客様が迷わず払える値段はいくらか手土産の箱を1,000円にする
量個数・大きさ・重さを変えられるか焼き菓子を8個から6個にする
包装箱・袋・資材を小さく、少なくできるか個包装をやめ、箱の仕切りで分ける
工程まとめて作れる作業はないか生地の仕込みを週2回にまとめる
届け方運ぶ・並べる手間を減らせるか店頭の陳列を箱のまま並べる形にする

値上げ幅の考え方は、値上げ率の計算方法でも整理しています。

看板の値段は守り、上位版や別ラインで利益を取る

ダイソーは100円で来店と点数を取り、200〜700円と別ブランドで単価を取る形をとります。看板商品の値段は簡単には動かさず、その周りで利益を確保する設計です。

中小企業でも、看板メニューはそのままに、上位版やセット、別の屋号の新ラインで利益を取る形が考えられます。お客様にとっての「いつもの値段」を守ること自体が、店への信頼の貯金になります。

例えば、定食屋が看板の日替わり定食は据え置き、小鉢付きの上位セットを新たに用意する形です。上位セットを選ぶお客様が一定数いれば、看板の値段を動かさずに客単価を上げられます。社長の言う「死活問題」は、規模の小さな会社にも通じる話です。

価格帯は細かく増やさず、区切りよく整理する

ダイソーは150円をやめ、200・300・500・700円に集約しました。値段の種類が多いと、お客様も社員も迷います。料金表を覚えやすい数段階に整理するだけでも、選ばれやすさは変わります。

まずは自社のメニューや料金表を書き出し、似た値段の商品がいくつあるかを数えてみてください。数が見えると、どこを揃えればよいかの順番が決まります。

例えば、980円・1,080円・1,180円と細かく並ぶ商品があるとします。こうした商品を、1,000円と1,200円の2段にまとめられないかを考えます。社員がお客様に説明する手間も減り、勧めやすい料金表になります。

新しいものを出すなら、同じ数だけやめる

ダイソーは新商品を毎月出しながら、総SKUを増やしていません。新しいメニューやサービスを足すたびに何を減らすかを決めないと、在庫と手間だけが増えていきます。

おすすめは、新しいものを1つ加える会議で、やめるものを1つ同時に決めるルールです。手順は次の3つです。

  • 今の商品・メニューを売上順に並べる
  • 下位の1割に印を付ける
  • 新しいものを加えるたびに、印の中から1つを終える

この3つを回すだけで、品目の数は増えずに入れ替わっていきます。売れない商品を値下げで処分するのではなく、値段を守って待つか、終売にするかを先に決めておく。値下げのルールを季節品だけに限るなど、判断の型を作っておくとブランドを守れます。

「1時間あたり」「1配送あたり」の数字を毎月見る

ダイソーは人時売上高を3年で1.3倍に引き上げ、包材の小型化で積載効率を上げました。単価の低い商売ほど、人と物流の効率が利益を決めます。

自社でも「1時間あたりの売上」「1回の配送あたりの件数」を、毎月1回ノートに書き出すところから始められます。前の月と比べるだけで、改善の余地がある作業が見えてきます。数字が下がった月には、その月に増えた作業を書き出してみてください。既存の強みを土台に新しい客層を広げた例としては、ワークマンのビジネスモデルも参考になるでしょう。

まとめ|ダイソーの安さを一言でいうと

ダイソーの安さを一言でいうと、「値段を先に決め、仕様と仕組みをあとから合わせる」ことです。商品の約9割を自社で企画し、量目や包材まで工場と詰めて100円に収める。7万を超える品目は、自動発注・セルフレジ・自前の物流網で、少ない人手で回す仕組みです。

価格の面では、100円を約80%(2023年度)の主力として守りながら、200〜700円と別ブランドで単価を取る二段構えです。一方で、非上場のため利益は見えず、円安・国内の伸びの鈍化・海外の関税という課題も抱えています。

中小企業にとっての持ち帰りは、規模ではなく順番です。お客様が払える値段を先に決め、看板は守り、周りで稼ぐ。自社の料金表を1枚書き出すところから、見直しを始めてみてください。他社の稼ぎ方と比べたい方は、ビジネスモデル一覧もご覧ください。

編集部コメント

研究ノートをまとめるなかで印象に残ったのは、「100円をやめれば買い上げ点数が大きく減る」という社長の言葉でした。7,000億円を超える売上の会社が、1個100円の買い上げ点数を、経営の生命線として語る。その姿勢に、値段を守る覚悟が表れていました。値段を守ることが、お客様が毎週来る理由そのものになっているのだと感じました。

値上げの悩みは、つい「上げるか、据え置くか」の二択で考えがちです。ダイソーの事例は、看板の値段を守りながら周りで稼ぐという、もう一つの道を示すものです。自社の言葉で値付けの考え方を語れるようになることが、価格を守る第一歩になると私たちは考えています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ダイソーはなぜ100円で売れるのですか?

A. 「100円で売る」という値段を先に決め、量目・素材・包装・運び方を工場と一緒に詰めて合わせているためです。商品の約9割が自社企画で、国内外約5,900店で売り切れる規模があるため、工場に専用仕様の大ロット生産を頼めます。自動発注やセルフレジで店の手間を減らしていることも、安さの支えです。

Q2. ダイソーの商品は今も100円が中心ですか?

A. はい。矢野靖二社長によると、100円商品の比率は2022年度の約85%から約80%(2023年度)に下がりました。それでも主力の価格帯です(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2024年10月)。

一方で、200円・300円・500円・700円の商品も並びます。300円中心の別ブランド、THREEPPYとStandard Productsも展開中です。

Q3. ダイソーは儲かっているのですか?

A. 2026年2月期の連結売上高は7,710億円でした。売上高は15年連続で過去最高を更新しています(大創産業 発表、2026年6月)。ただし非上場のため、営業利益などは開示されていません。社長は2024年2月期の利益について「為替の影響で厳しかった」と述べており、利益の水準を外から確かめることはできません。

Q4. ダイソーとセリアの違いは何ですか?

A. セリアは100円均一を守り、2026年3月期の営業利益率は8.2%でした。ダイソーは価格帯と別ブランド、海外展開を広げて規模を取る戦略です。どちらも売上を伸ばしており、真逆の戦略がそれぞれ成り立っています。

Q5. ダイソーの店舗数はどのくらいですか?

A. 2026年2月末で国内外5,891店です。国内が4,784店(直営3,935店・代理店849店)、海外が25の国・地域で1,107店でした。2026年6月26日には、国内外の総店舗数が6,000店を超えています(同社発表・PR TIMES)。

Q6. 中小企業がダイソーから学べることは何ですか?

A. まず、お客様が払いやすい値段を先に決めて仕様を合わせることです。看板商品の値段は守り、上位版や別ラインで利益を取る形も参考になります。価格帯を区切りよく整理すること、新商品を足すたびに何かをやめることも、規模を問わず始められます。

参考資料

本記事の土台は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノート(2026年10月調査)です。2026年11月4日時点で確認できた大創産業の会社発表、各社の決算短信、社長インタビュー、報道と照合しました。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、経営者の方々への取材を重ねている。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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