コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

業務スーパーのビジネスモデル|直営4店で5,517億円の理由

業務スーパーのビジネスモデル|直営4店で5,517億円の理由

店を増やすほど、在庫と売れ残りの心配も増えていく。複数の店舗や販売先を持つ経営者の方なら、一度はこの重さを感じたことがあるのではないでしょうか。

業務スーパーのビジネスモデルは、店で消費者に売るのではなく、自社で作った食品を加盟店に卸して稼ぐ仕組みです。運営会社の神戸物産は、全国1,144店舗のうち、直営はわずか4店舗。2025年10月期の連結売上高5,517億円は、ほぼ加盟店への卸売で積み上がっています。

本部の売上は、商品を加盟店に出荷した時点で立ちます。だからこそ、ロイヤリティは仕入高のわずか1%で足りるのです。出典は神戸物産の決算説明資料(2025年12月・2026年9月)です。

本記事の材料は、コントリ編集部がまとめたビジネスモデル研究ノートです。2026年9月時点の決算資料と照らし合わせ、お金の流れ、製販一体、強みと弱点の順に見ていきます。そのうえで、セブンイレブンと比べたフランチャイズの収益設計の違いを掘り下げます。最後に、中小企業が自社に置き換えられる4つの問いを用意しました。自社の稼ぎ方を見直す手がかりになれば幸いです。

業務スーパーのビジネスモデルとは|直営4店舗で売上5,517億円

業務スーパーを運営する神戸物産は、小売業というより「食品メーカー兼卸売業」です。全国1,144店舗のうち、直営は兵庫・大阪・神奈川の4店舗だけです。2025年10月期の連結売上高5,517億円は、加盟店への商品の卸売が中心です。

店舗の99%以上がフランチャイズという構造

フランチャイズとは、本部が商標や商品、運営ノウハウを提供し、加盟店が自分の資金で店を開く仕組みのことです。例えば、看板は同じ「業務スーパー」でも、店を経営しているのは地域の別会社という形です。

業務スーパーの場合、2026年7月末の1,144店舗のうち1,140店舗が加盟店です。割合にすると99%以上がフランチャイズで、本部が自ら運営するのは4店舗しかありません。業務スーパーのFC1号店は、2000年に兵庫県で開店しました(神戸物産 FC加盟店募集ページ)。

契約の形は2つあります。1つは北海道・関東・関西・九州の「直轄エリア」で、1店舗ごとに結ぶFC契約です。もう1つはそれ以外の「地方エリア」で、県単位で出店の権利を任せるエリアライセンス契約です。2026年7月末の契約社数は、直轄エリア87社、地方エリア14社です。

店舗の内訳を、契約の形ごとに並べました。

業務スーパー1,144店舗の内訳(2026年7月末)

加盟店が 1,140店、直営は 4店 だけ

直轄エリアのFC店1店舗単位のFC契約・契約87社
723店
地方エリアの店舗県単位のエリアライセンス契約・契約14社
417店
直営店兵庫県・大阪府・神奈川県
4店

※出典:神戸物産 月次情報、2026年10月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月)。店舗数は2026年7月末、契約社数は同月末時点

小売チェーンに見えて実態は「メーカー兼卸」

店頭だけを見ると、業務スーパーは食品スーパーのチェーンです。ところが決算資料を読むと、見え方が変わってきます。

神戸物産は、主力の業務スーパー事業を「加盟店への卸売やロイヤリティなどの他、自社グループ工場の損益」と説明しています。つまり、工場で作り、加盟店に卸し、少額のロイヤリティを受け取る。この3つが売上と利益の中身です。

同社は自らを「食品業として日本最大の製販一体企業」と位置づけます。製販一体とは、商品の製造から販売までを1つのグループで手がける形のことです。店で売るのは加盟店、作って届けるのが本部という役割分担が、このモデルの骨格といえます。

数字で見る神戸物産|2025年10月期決算の要点

2025年10月期の決算を、主な数字で確かめておきます。売上高・営業利益とも、決算資料に並ぶ過去5期で最も高い水準でした。

主な数字を1枚にまとめました。

数字で見る神戸物産(業務スーパー)
業務スーパーの店舗数(2026年7月末)1,144店うち直営は 4店残る1,140店はすべて加盟店が運営
連結売上高5,517億円2025年10月期・前期比8.6%増
連結営業利益399億円同16.1%増・営業利益率7.2%
業務スーパー事業の売上構成比約96%セグメント売上5,305億円(2025年10月期)
自己資本比率60.5%2025年10月期末

※出典:神戸物産 2025年10月期 決算説明資料(2025年12月)、2026年10月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月)

親会社株主に帰属する当期純利益は318億円で、前期から48.7%増えました。ただし、この伸びには工場に関わる補助金収入や、為替予約の評価益も含まれます(決算説明資料)。本業の力を見るなら、営業利益の16.1%増に注目するのが確かです。

足元の2026年10月期も、第3四半期累計の売上高は4,329億円(前年同期比5.2%増)でした。営業利益は313億円で、同3.2%の増加です(2026年10月期第3四半期決算説明資料)。

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本部の収益構造|儲けは加盟店への「出荷」で確定する

神戸物産にとっての直接の顧客は、店頭の消費者ではなく加盟店です。本部の売上は、商品を加盟店に出荷した時点で立ちます。ロイヤリティは仕入高の1%と低く、稼ぎの中心は卸売の粗利にあります。

お金の流れを図解|消費者・加盟店・本部の関係

業務スーパーのお金の流れは、一般的なスーパーとは向きが違います。商品とお金が、どこで誰に渡るかを図にしました。

業務スーパーの商品とお金の流れ
国内28工場・海外からの直輸入自社グループで作る国内PBと、直輸入の輸入PB
↓PBを製造・調達
神戸物産(FC本部)直接の顧客は消費者ではなく加盟店
↓商品を出荷した時点で本部の売上が立つ
加盟店(1,140店)仕入れた商品の在庫を持って店を運営
↓店頭で販売。売れ残りの在庫は加盟店が持つ
消費者全国1,144店舗の業務スーパーで購入
加盟店から本部へ戻るお金商品代金 + ロイヤリティ(直轄エリアは総仕入高の1%)。配送料は原則本部負担

※出典:神戸物産 2026年10月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月)をもとにコントリ編集部作成。店舗数は2026年7月末

ポイントは、本部の売上が「加盟店に出荷した時点」で立つことです。店頭で商品が売れるのを待つ必要はありません。売れ残った商品の在庫は、仕入れた加盟店が持つ形になります。

この構造を裏づけるのが、神戸物産が毎月公表している数字です。月次情報で店舗数と並ぶのは、「加盟店への商品出荷実績」の前年比です。2026年8月の全国全店の出荷は、前年同月比105.6%でした(神戸物産 月次情報)。本部が追いかけている数字は、店頭の売上ではなく出荷なのです。

もちろん、店で売れなければ加盟店の次の発注は細ります。長い目で見れば、店頭の売れ行きは本部にも返ってきます。それでも、日々の値下げロスや廃棄を本部が直接かぶらないという点で、一般的な小売業とは立ち位置がはっきり違います。

ロイヤリティ「仕入高の1%」は何を意味するか

ロイヤリティとは、加盟店が本部の看板やノウハウを使う対価として、継続的に払うお金のことです。業務スーパーでは、直轄エリアで総仕入高の1%です。地方エリアでは対象商品の仕入高の1%と定められています(2026年7月末現在)。

研究ノートの段階では「総売上高の1%」と書かれた資料も見られました。ただ、神戸物産の決算資料とFC募集ページで確認できる基準は「仕入高」です。売上ではなく、本部から仕入れた額に1%を掛ける。この基準の選び方にこそ、卸で稼ぐという設計が表れているといえるでしょう。

本部の稼ぎの中心は、卸売の粗利です。粗利とは、売上から仕入原価を引いた利益のことで、例えば100円で仕入れて120円で売れば20円です。

低いロイヤリティは、加盟店への配慮だけで決まったものではありません。本部の利益は、加盟店が仕入れる量に比例します。加盟店が儲かって店が増え、仕入れが増えるほど本部も伸びる。ロイヤリティを高く取って加盟店の手元を薄くするより、卸の量を増やすほうが本部にとって合理的な選択です。

加盟の初期費用も、決算資料で公開済みです。直轄エリアの場合、加盟金は200万円、保証金は1,000万円です。常温棚と冷凍設備の工事は約3,600万円からが目安です。配送料は原則として本部が負担します(2026年7月末現在、決算説明資料)。

加盟店の損益シミュレーションから見える現実

では、加盟店の手元にはどれくらい残るのでしょうか。手がかりは、神戸物産が決算資料で示す標準的な店舗の月間損益シミュレーションです。

標準的な業務スーパー加盟店の月間損益
売上高
5,200万円100%
売上原価
▲4,300.4万円82.7%
売上総利益
899.6万円17.3%
販売管理費
▲777万円14.9%
営業利益
122.6万円2.4%
仕入高を約4,300万円とすると、ロイヤリティ1%は月に約43万円(編集部試算)。薄い利幅を売上の量で積み上げる商売です。

※出典:神戸物産 2026年10月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月)の損益シミュレーション。売上原価は売上高と売上総利益の差として編集部算出。販売管理費には賃料140万円・人件費301.6万円を含む

月商5,200万円に対して、粗利率は17.3%、営業利益率は2.4%です。売上から粗利を引いた約4,300万円が仕入高だとすると、ロイヤリティ1%は月に約43万円(編集部試算)。営業利益122.6万円と比べると、決して軽い額ではありません。

つまり、業務スーパーの加盟店は薄利を量で積み上げる商売です。神戸物産は、生鮮など独自商品の扱いで、シミュレーションより効率よく運営している加盟店も多いと添えています。ロイヤリティの低さは、この薄い利幅を加盟店に残すための前提と読むほうが実態に近いでしょう。

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安さを生む製販一体|国内28工場と輸入PBの組み合わせ

業務スーパーの安さは、商品をつくる段階から自社グループで握っていることに支えられています。国内の自社食品工場は28工場、PB比率は34.58%(2026年10月期第3四半期)です。衣料のSPAを、食品の卸で実践している姿とも読めます。

国内PBと輸入PBの二本立て

PBとは、プライベートブランドの略で、小売や卸の会社が自ら企画して売る独自商品のことです。例えば、業務スーパーの店頭に並ぶ大容量の冷凍食品やデザートの多くがこれにあたります。

2026年10月期第3四半期のPB比率は34.58%でした。内訳は、自社工場で作る国内PBが10.9%、直輸入の輸入PBが23.7%です(第3四半期決算説明資料)。

業務スーパー向け出荷に占めるPBの内訳
国内PB国内28の自社工場で製造10.9%
輸入PB海外から直輸入23.7%
PB以外ナショナルブランドなど65.4%

※出典:神戸物産 2026年10月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月)。PB以外の比率は編集部算出。内訳の合計は端数処理のためPB比率と一致しない場合があります

国内の自社食品工場は、2026年4月30日に柏露酒造がグループに加わり、28工場になりました。2025年4月の上原食品工業のグループ化で27工場となっており、M&Aで工場を少しずつ増やしてきた経緯が読み取れます。研究ノートでは「25か所以上」と幅を持たせていましたが、本記事は最新の決算資料の数字を採りました。

作る段階を自社で持つと、問屋などの中間の取り分が生じません。そのぶんを、店頭価格の安さと本部の卸の粗利に回せる。これが製販一体の強みです。

ユニクロのSPAとの共通点と違い

SPAとは、商品の企画から製造、販売までを1社で手がける「製造小売」の形のことです。衣料ではユニクロが代表例で、詳しくは「ユニクロのビジネスモデル」で解説しています。

作るところから握って中間のコストを省く点で、業務スーパーは「食のSPA」と呼ばれることがあります。ただ、大きな違いが1つあります。ユニクロは自社の店で消費者に売り、業務スーパーは加盟店に卸すという点です。

ユニクロ型では、店頭の売れ残りは自社の在庫になります。業務スーパー型では、在庫は仕入れた加盟店の側に移ります。同じ製販一体でも、在庫リスクを誰が持つかで、本部の損益の揺れ方は変わってきます。ノーブランドの独自商品で製販を組み立てた例としては、「無印良品のビジネスモデル」も参考になります。

中期目標は1,500店舗・PB比率40%・営業利益率10%

神戸物産は長期ビジョンとして、業務スーパーを1,500店舗以上に増やす目標を掲げています。あわせて、PB比率40%以上と連結営業利益率10%以上も目標に据えました。外食・中食事業は全業態で500店舗以上が目標です(同社 中期経営計画ページ)。

足元の数字と並べると、目標までの距離が見えてきます。店舗数は1,144店、PB比率は34.58%、2025年10月期の営業利益率は7.2%でした。国内PBを強くするため、設備投資を毎年100億円以上行う方針です。

業務スーパーの強みと弱点|景気に左右されにくい安さの裏側

業務スーパーの強みは、景気の向きにかかわらず「安さ」が選ばれやすい立ち位置にあります。一方で、売上の約96%が業務スーパー事業に集中し、輸入PBは為替の影響を受けます。在庫を加盟店が持つ構造は、本部の強みであると同時に加盟店の負担でもあります。

デフレでもインフレでも選ばれやすい立ち位置

物価が下がる局面では、安さそのものが支持されます。物価が上がる局面では、節約したい家庭の受け皿として、さらに選ばれやすくなります。神戸物産も2025年10月期について、「依然として高い節約志向が売上高の増加に寄与」と説明していました。

景気がよくても悪くても、選ばれる理由が変わらない。小売として珍しい、景気の方向に依存しにくいポジションです。加えて、店の品ぞろえは常温・冷凍の商品が中心です。FC募集ページでは「ほとんどロスが出ない」ラインナップとうたわれており、加盟店側の廃棄の少なさにもつながっています。

一本足・為替・加盟店の在庫負担という3つのリスク

強みの裏側には、はっきりしたリスクもあります。まず、事業の偏りです。2025年10月期のセグメント別の売上を並べました。

神戸物産のセグメント別売上高(2025年10月期)
業務スーパー事業5,305億円約96%
外食・中食事業165億円約3%
エコ再生エネルギー事業47億円約1%

※出典:神戸物産 2025年10月期 決算説明資料(2025年12月)。億円未満は四捨五入。構成比は連結売上高5,517億円に対する割合

1つめのリスクは、この一本足の構造です。外食の「神戸クック・ワールドビュッフェ」や焼肉の「プレミアムカルビ」、惣菜の「馳走菜」も育ちつつあります。それでも、会社の業績は業務スーパー事業の動きでほぼ決まります。

2つめは為替と原材料価格です。PBの約3分の2は輸入PBで、円安や原材料高は仕入れのコストを直接押し上げます。実際、2026年10月期の5〜7月の3か月は、営業利益が前年同期比8.7%減でした。売上総利益が2.1%減り、販売管理費が9.0%増えたためです(第3四半期決算説明資料)。

3つめは、加盟店の側の負担です。在庫を持ち、薄い利幅で店を回すのは加盟店です。加盟店の収益が細れば発注が減り、本部にも跳ね返ります。本部の強みと加盟店の負担は、表と裏の関係にあるといえます。

セブンイレブンと比べて分かるFC収益設計の2つの型

同じフランチャイズでも、本部がどこで稼ぐかによって設計はまったく変わります。セブンイレブンは加盟店の粗利を分け合い、業務スーパーは加盟店に商品を卸して稼ぎます。この違いが、ロイヤリティ率の差や、在庫リスクを誰が負うかの差として表れています。荒利益を本部と加盟店で決まった割合で分け合う別の例は、ワークマンのビジネスモデルで解説しています。

粗利分配型(セブンイレブン)と卸売型(業務スーパー)の比較

コントリの研究ノートでは、業務スーパーを単体で見るより、コンビニとの対比で見るほうが学びが大きいと考えました。2つの本部の稼ぎ方を並べます。

項目粗利分配型(セブンイレブン)卸売型(業務スーパー)
本部の主な収入加盟店の粗利から受け取るチャージ加盟店への商品の卸売
ロイヤリティの基準売上総利益(粗利)仕入高
率の例Aタイプで粗利の45%(24時間営業は43%)仕入高の1%
本部の売上が立つ時点店頭で売れて粗利が生まれたとき加盟店に出荷したとき
本部と加盟店が共に追う数字店の粗利加盟店の仕入れ量と店数
出典セブン-イレブン・ジャパン 加盟案内 Aタイプ(2026年9月確認)神戸物産 決算説明資料(2026年9月)

一見すると「45%」と「1%」の差は大きく見えます。ただ、掛ける基準が粗利と仕入高でまったく違うため、率だけを並べて高い・安いを語ることはできません。見るべきは率ではなく、本部がどこで利益を得る設計になっているかです。

セブンイレブンのAタイプとは、オーナーが土地と建物を用意して開業する契約タイプのことです。本部が店舗を用意するCタイプでは、粗利が増えるほど率が上がる段階制です。詳しくは「セブンイレブンのビジネスモデル」で、2026年に発表された新しい契約タイプも含めて解説しています。

本部と加盟店が「同じ数字」を追う仕組みの違い

どちらの型にも、本部と加盟店の利害をそろえる工夫が備わっています。違うのは、そろえる数字です。

セブンイレブンは、店の粗利を本部と加盟店で分け合います。だから本部も「利益の出る売り方」を一緒に考える立場に立ちます。発注の精度を上げる単品管理や、商品開発への投資は、店の粗利を増やすための仕組みといえます。

業務スーパーは、加盟店が仕入れる量で本部が稼ぎます。だから本部は、加盟店が仕入れやすく、店を増やしやすい条件を整えます。仕入高1%のロイヤリティ、原則本部負担の配送料、ロスの少ない常温・冷凍中心の品ぞろえ。いずれも、加盟店の仕入れと出店を後押しする方向を向いています。

ハンバーガーチェーンの中には、本部が店の不動産を持ち、賃料でも稼ぐ型があります。本部の稼ぎ方の型をもっと比べたい方は、「マクドナルドのビジネスモデル」もあわせてご覧ください。

FC本部をつくる・加盟する経営者が見るべき点

自社のフランチャイズ展開を考えている経営者の方は、最初に「本部はどこで稼ぐのか」を決めておくことが欠かせません。ロイヤリティの率を先に決めてしまうと、本部と加盟店の追う数字がずれてしまいます。

自社に製造や調達の強みがあるなら、業務スーパーのように卸で稼ぐ道があります。店舗運営のノウハウそのものが強みなら、粗利や売上から対価を受け取る型が向いています。多店舗化の手順は「フランチャイズ展開の始め方」にまとめました。

加盟を検討する側なら、ロイヤリティの率だけで比べないことです。何を基準に何%か、配送料や廃棄は誰が負担するか、本部が何で稼いでいるか。この3点を並べると、同じ「低いロイヤリティ」でも意味の違いが見えてきます。

なぜ業務スーパーのモデルは真似されにくいのか

ロイヤリティを1%に抑える設計は、製造機能を持つ本部でなければ成り立ちません。仕入れて卸すだけの本部では卸の粗利が薄く、ロイヤリティで稼ぐしかないためです。工場群と、複数店を運営できる加盟企業の集まりは、時間をかけてしか築けない資産でもあります。

真似されにくい理由を3つの壁として整理しました。

業務スーパーのモデルが真似されにくい3つの壁
壁1作れる本部だけが選べる「ロイヤリティ1%」自社で作るから卸の粗利が厚い。仕入れて流すだけの本部では、同じ率では本部を支えきれません。
壁21社で平均約11店を運営する加盟企業の層契約101社で加盟店1,140店。複数店を回せる地域の企業が、出店の速さと運営の安定を支えます。
壁3国内28工場という時間の壁M&Aと設立を重ねて築いた製造網。売場の数と工場の数が互いを支え合う関係は、短期間では再現できません。

※出典:神戸物産 2026年10月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月)。契約社数・店舗数は2026年7月末。1社あたり平均店舗数は編集部試算

作れる本部だけが選べる「ロイヤリティ1%」

仕入れた商品を加盟店に流すだけの本部は、メーカーと加盟店の間で薄い差額しか取れません。その場合、本部を維持する収入は、ロイヤリティに頼らざるを得なくなります。

業務スーパーのPBは、自社工場と直輸入で調達したものです。作る段階の利益まで本部が持っているから、ロイヤリティを1%に抑えても本部が成り立つ。製造機能のない本部が同じ率を真似すると、本部を支える原資が足りなくなります。率は真似できても、率を支える構造は真似できないということです。

1社で平均10店以上を運営する加盟企業の層

2026年7月末の契約社数は、直轄エリア87社と地方エリア14社の計101社です。加盟店1,140店を101社で割ると、1社あたり平均約11店(編集部試算)。個人オーナーの寄せ集めではなく、複数店を運営できる地域の企業が中心です。

地方エリアのエリアライセンス契約では、県単位でエリアオーナーに独占権が与えられます。地域の事情を知る企業に広い範囲を任せることで、出店の速さと運営の安定を両立しやすくなります。こうした加盟企業との関係は、後から参入した本部が短い期間で集められるものではありません。

買収と設立を重ねた工場群という時間の壁

国内28工場は、一度に建てたものではありません。2025年に上原食品工業、2026年に柏露酒造がグループに加わったように、M&Aを重ねて製造網を広げてきました。M&Aとは、会社の合併や買収のことで、ここでは既存の食品会社をグループに迎え入れる形を指します。

工場は、建てれば終わりではない資産です。作る品目を決め、加盟店の売場で売れる量と価格に合わせて改良を続ける必要があります。時間をかけて積み上げた製造と販売の噛み合わせこそ、資金だけでは追いつけない壁といえます。

工場を持つことは、稼働率を保つ責任を負うことでもあります。1,100を超える加盟店の売場があるから、工場は作った量を売り切れる。売場の数と工場の数が互いを支え合う関係は、どちらか一方だけを真似しても再現できません。

中小企業が持ち帰れる4つの問い

業務スーパーの仕組みには、規模の大小を問わず自社に置き換えられる問いが詰まっています。鍵は「誰から売上を立てるか」と「取引先の利益をどう設計するか」の2点です。明日から考えられる4つの問いとして整理しました。

まずは全体を、チェックリストの形で確かめてみてください。

業務スーパーから持ち帰る4つの問い

※コントリ編集部作成。チェックを入れると項目が薄く表示されます(ページを再読み込みすると元に戻ります)

問い1|売上を「誰から」立てているか

神戸物産は、消費者ではなく加盟店から売上を立てると決めました。その決断によって、在庫リスクの持ち方も、追いかける数字も変わりました。

例えば、地域の食品メーカーが、直売所・スーパー・飲食店の3つに卸しているとします。売上の相手を並べると、在庫を抱えているのが自社なのか取引先なのかが見えてきます。まずは主な売上先を3つ書き出し、それぞれ在庫を誰が持っているかを横に書いてみてください。

問い2|取引先が儲かるほど自社が伸びる設計か

ロイヤリティ1%は、善意だけで決まった数字ではありません。加盟店が儲かるほど発注が増えるという計算に基づいています。

代理店や販売店への手数料を決めるとき、自社の取り分から考えていないでしょうか。相手の手元に何%残れば、店や取引量を増やしたくなるのか。そこから逆算すると、条件の決め方が変わってきます。取引先1社の年間の粗利を、一度試算してみるところから始められます。

問い3|作る力が価格の自由度を生んでいるか

作れない会社は、値引きでしか差をつけにくくなります。業務スーパーが低価格と本部の利益を両立できるのは、作る段階を自社で握っているからです。

自社で作ることだけが答えではありません。仕入れ先と共同で独自商品をつくる、特定の工程だけを内製する、といった段階的な方法もあります。自社の売上上位の商品のうち、原価の内訳を自社で説明できるものがいくつあるか、数えてみてください。

問い4|景気の向きに左右されない価値は何か

好況でも不況でも選ばれる理由。業務スーパーにとって、それが安さでした。安さでなくても、圧倒的な品質や、近さ、頼みやすさといった価値でも同じことが起こり得ます。

自社の顧客が、景気が悪かった年にも離れなかった理由は何だったでしょうか。その理由を1行の言葉にできると、次の打ち手の軸が定まります。私たちコントリ編集部も、経営者の方への取材を重ねてきました。そのなかで、自社の価値を言葉にできている会社ほど判断がぶれにくいと感じています。言葉にするきっかけは、誰かに問われることや、人とのご縁から生まれることが少なくありません。

まとめ|業務スーパーは「誰から稼ぐか」を設計し直した

業務スーパーのビジネスモデルは、自社で作った食品を加盟店に卸して稼ぐ仕組みです。運営会社の神戸物産は、1,144店舗のうち直営が4店舗だけです。2025年10月期の連結売上高は5,517億円でした(決算説明資料)。

本部の売上は加盟店への出荷時点で立ち、ロイヤリティは仕入高の1%です。国内28工場と輸入PBを組み合わせた製販一体が、低価格と本部の利益を同時に支えています。一方で、業務スーパー事業への集中、為替の影響、加盟店の薄い利幅という課題も残ります。

セブンイレブンとの比較で見えたのは、FCの収益設計には「粗利を分け合う型」と「卸で稼ぐ型」があるという点でした。どちらが優れているかではなく、本部の強みに合った型を選べているかが問われます。

自社の売上は、誰から、どの時点で立っているでしょうか。まずは主な売上先を3つ書き出すところから始めてみませんか。ほかの企業の稼ぎ方と比べてみたい方は、「ビジネスモデル一覧」もご覧ください。

編集部コメント

印象に残ったのは、神戸物産が毎月公表している月次情報の並べ方でした。店舗数の次に載っているのは、店頭の売上ではなく「加盟店への商品出荷実績」の前年比です。自社が何で稼ぐ会社なのかを、公表する数字の選び方そのもので示しているように読めました。もう一つは、決算資料が加盟店の損益シミュレーションを営業利益率2.4%まで載せていたことです。加盟を考える企業に向けて、薄い利幅であることを隠さずに示している。本部の都合のよい数字だけを並べない姿勢が、101社・1,140店という加盟企業との関係を支えているのだと受け止めました。コントリはこれからも、企業が積み上げてきた仕組みを、一次情報に沿って丁寧にお届けしていきます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務スーパーの運営会社はどこですか?

A. 兵庫県加古郡稲美町に本社を置く、株式会社神戸物産です(東証プライム・証券コード3038)。業務スーパーのフランチャイズ本部として、自社グループ工場で作った商品や輸入商品を加盟店に卸しています。

Q2. 業務スーパーはフランチャイズですか?直営店はありますか?

A. ほぼすべてがフランチャイズです。2026年7月末の1,144店舗のうち、直営は兵庫県・大阪府・神奈川県の4店舗のみです。残る1,140店舗は加盟店が運営しています(2026年10月期第3四半期決算説明資料)。

Q3. 業務スーパーのロイヤリティはいくらですか?

A. 直轄エリアのFC契約では総仕入高の1%です。地方エリアのエリアライセンス契約では、対象商品の仕入高の1%です(2026年7月末現在)。売上や粗利ではなく、仕入高を基準にしている点が特徴です。

Q4. 業務スーパーの本部はどうやって利益を出しているのですか?

A. 主な収益源は、加盟店への商品の卸売です。自社グループ工場の商品や輸入商品を加盟店に出荷した時点で、本部の売上が立ちます。その卸売の粗利が利益の中心で、ロイヤリティ1%は補助的な収入です。

Q5. 業務スーパーとセブンイレブンのフランチャイズは何が違いますか?

A. 本部の稼ぎ方が違います。セブンイレブンは加盟店の粗利を一定の率で分け合う方式で、Aタイプでは粗利の45%(24時間営業は43%)がチャージです。業務スーパーは加盟店に商品を卸して稼ぎ、ロイヤリティは仕入高の1%にとどまります。基準が違うため、率だけでは比べられません。

Q6. 業務スーパーの加盟店はどれくらい利益が出るのですか?

A. 神戸物産が示す標準店の試算では、月商5,200万円に対して粗利率17.3%、営業利益率2.4%です。出典は2026年10月期第3四半期決算説明資料です。薄い利幅を売上の量で積み上げる形で、生鮮など独自商品の扱いでより効率よく運営する加盟店も多いとされています。

参考資料

本記事の土台は、コントリ編集部のビジネスモデル研究ノートです。2026年9月時点で確認できた神戸物産の決算資料・公式発表と照合しました。数字は資料ごとに時点が異なるため、年月を併記しました。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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