中小企業の経営計画書 実例|成果を生む骨格7要素と運用の仕組み

中小企業の経営計画書 実例|成果を生む骨格7要素と運用の仕組み

中小企業の経営計画書は、テンプレートを埋めただけでは現場で機能しません。社員30〜100名規模の組織で成果につながっている1冊には、共通する条件があります。経営者本人の言葉で書かれていること。数字目標と現場の行動がワンセットで紐づいていること。全社員が手に取れる物理的な形。この3つです。

本記事では、武蔵野(小山昇社長)の方針書型、焼肉チェーン宝山本部の運用、古田土会計グループの「6つの骨格」テンプレートなど、実在する5パターンを取り上げます。設計思想と特徴を1つずつ比較していきます。

さらに、私たちコントリ編集部が経営者インタビューを100社以上重ねるなかで見えてきた骨格を構成する7要素を整理しました。月次レビューと年1回の発表会を軸にした運用の型、ありがちな失敗パターンと回避策まで体系的にまとめています。

「他社のリアルな中身を知ってから、自社版の1冊に着手したい」とお考えの経営者の方へ、明日からの判断材料をお届けします。

まずは自社の経営計画書づくりに向けて、どこから手を付けるべきか迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。

INTERVIEW

新規事業の立ち上げ、最初の一歩はメンバーとの対話から。


経営者インタビューを読む

中小企業の経営計画書が成果を生む3条件
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条件①
経営者本人の言葉で書く

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条件②
数字と行動をワンセットに

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条件③
全社員が手に取れる形に

中小企業の経営計画書が「大企業の事業計画書」と決定的に違う3点

中小企業の経営計画書は、大企業のそれとは性質が異なります。形式・対象読者・運用方法のいずれにおいても、別物として設計しなければ現場で回りません。

ここでは、現場で機能している実例から共通点を3点に絞ってお伝えします。読み進めながら、自社が大企業型のフォーマットを当てはめようとしていないか、振り返っていただけたらと思います。「経営計画書とは、社内向けに自社の理念・数字・行動を一冊にまとめた文書のこと。例えば武蔵野では『方針書』と呼ばれます」。この前提を踏まえたうえで、3点を見ていきましょう。

①「経営者の言葉」で書かれていること

中小企業の経営計画書で最も重視されるのは、平易さよりも「経営者本人の言葉」で書かれているかどうかです。大企業の事業計画書は経営企画部が整えた均質な文体になりがちですが、中小企業ではそれが逆効果になりかねません。

社員数30〜100名規模の組織では、社長と社員の距離が近いものです。文章のトーンが「いつもの社長の言い方かどうか」で受け止め方が大きく変わります。コンサルタント任せで作った計画書が現場で浮いてしまうのは、ここに原因があるのではないでしょうか。

「【中小企業には “経営がない”】まずは事業計画書から始めよ」(PIVOT 公式チャンネル)で13代 中川政七氏は、中小企業ほど経営者自身の言葉で計画を語る必要があると指摘しています。

私自身、取材の場で社長の口グセがそのまま冒頭に置かれた経営計画書を拝見したことがあります。社員の方々が自然と内容を諳んじている場面に立ち会ったのですが、文体そのものが社内に浸透するかどうかを左右する要素なのだと実感させられました。経営者の言葉で書く、というのは小手先ではなく、計画書全体の温度を決める骨格といえます。

② 数字目標と日々の行動がワンセットで紐づいていること

中小企業向けの経営計画書では、売上・粗利益・経常利益などの数字目標と、現場の行動計画が同じ1冊の中にあること。この一体化が要件です。

ここで「粗利益(粗利)とは、売上高から売上原価を差し引いた、商品やサービスそのものが生み出す利益のこと。例えば1,000円の商品を600円で仕入れたら、粗利益は400円です」と補足しておきます。経常利益は、本業の利益と財務活動を合わせた、企業の総合的な稼ぐ力を示す数字です。

大企業の事業計画書は数値計画と行動計画が別文書になっていることが多く、それでも組織として動けます。一方、中小企業ではそれが致命傷になりやすいのです。理由はシンプルです。現場の社員は数字だけ見ても自分の動き方に翻訳できない場合が多いから。「粗利を3%改善する」と書くだけでは、店長や現場リーダーは何をすればよいか判断できません。

数字目標と「誰が何を毎月実行するか」が1ページの中で結ばれていること。これが計画書を「使える1冊」に変える分岐点になります。私たちが取材した中小企業でも、この紐付けがある会社ほど、月次レビューが実のあるものになっていました。

③ 全社員が手に取れる「冊子」または「ファイル」になっていること

経営計画書は、PDFをサーバーに置くだけでは形骸化しがちです。実際に成果を出している中小企業の多くは、印刷された冊子や、専用のバインダーファイルとして全社員に配布しています。

「いつでも、どこでも、全社員が手に取れる物理的な形」を選んでいる点は、業種や規模を問わず共通する特徴。形あるものが机の上にあれば、朝礼で開かれ、会議で参照され、新入社員研修で配られます。

ここでバインダーファイルという言葉を補足します。「バインダーファイルとは、A4などの用紙を綴じて差し替えできるリング式ファイルのこと。例えば武蔵野ではA5サイズの冊子型を採用しています」。差し替えできる形式は、年次改訂のしやすさという利点につながっています。

逆に、データだけで管理している企業は半年で誰も中身を覚えていない、という現実が取材現場でも繰り返し見られました。物理的に手に取れる形にする一手間が、計画書の生死を分けるといえます。

ここまでで挙げた3点を、大企業の事業計画書と比較する形で図にまとめます。

中小企業の経営計画書 vs 大企業の事業計画書
比較軸 中小企業の経営計画書 大企業の事業計画書
①文体 経営者の言葉
(一人称・情熱が伝わる文体)
経営企画部の
標準文体
②対象読者 全社員 株主・取締役会
③運用形態 冊子で常時携行 PDF+プレゼン資料

実際に成果を出している中小企業の経営計画書 実例5パターン

中小企業の経営計画書には、業種・規模ごとに代表的な5パターンがあります。武蔵野型の方針書、外食チェーンの店舗運営型、会計事務所監修のテンプレート型、A3一枚のシンプル型、製造業の二段構え型。自社規模・業種に近いものから読み進めていただけたらと思います。

① 武蔵野(小山昇社長)型:方針書として全社員に配布する厚手の冊子

最も有名な実例が、株式会社武蔵野の経営計画書です。小山昇社長が体系化した「方針書」型の経営計画書は、A5サイズの厚手の冊子として全社員に配布されます。社員はこれを常時携帯するスタイルが基本です。

「【初公開】小山昇流経営計画書の作り方①|29年連続最高売上達成の極意」(経営者アカデミー® 『仕組みで勝つ』強い会社のつくり方)と「【保存版】儲かる会社の最強の武器『経営計画書』作り方/武蔵野 小山昇」(同チャンネル)では、武蔵野が29年連続で過去最高売上を更新し続けている事実と、その背景にある経営計画書運用のしくみが詳しく語られています。

特徴は3つあります。1つ目は方針項目の網羅性で、人事方針・お客様に関する方針・教育方針など数十項目に分かれているところ。2つ目は社員一人ひとりが「自分の手帳」として持ち、運用が徹底されている点。3つ目は年1回の経営計画発表会を通じて、計画書の中身が全社員の前で読み上げられる場が設計されていることです。

コントリ編集部としても、ここまで運用の型が確立している実例は他に類を見ないと感じています。「冊子+発表会+日常運用」の3点セットが武蔵野型の本質といえます。詳細は「新規事業の立ち上げメンバー選定」に関連する取材記事もあわせてご覧いただけたらと思います。

② 焼肉チェーン宝山本部型:店舗運営に直結する数値計画+行動指針

外食業の経営計画書として参考になるのが、焼肉チェーン宝山本部のケースです。「【経営計画②】経営計画書「焼肉チェーン宝山本部の実例」《作間信司TV》」(日本経営合理化協会)では、店舗単位の売上計画と、その実現のための行動指針を一体化して運用している様子が紹介されています。

外食チェーンの場合、本部の経営計画が「店長レベルで翻訳できる粒度」になっているかが運用の鍵を握ります。宝山本部型は、月次の数値目標を店舗ごとに割り付け、その達成のために店舗で取り組む行動を明文化するスタイルです。

多店舗展開している中小企業にとって、フォーマットとして参考にしやすいパターンといえます。私たちが取材した外食企業でも、店舗別に1枚の計画シートを持たせる工夫が、店長育成にも役立っているとお話しいただきました。「数値の店舗別ブレイクダウン」と「行動の動詞化」の組み合わせが運用の核になります。

③ 古田土会計型:6つの骨格でテンプレ化したA4三つ折りタイプ

会計事務所監修の代表格が、古田土会計グループのテンプレートです。「経営計画書を構成する6つの「骨格」を解説します!」(中小企業のための経営数字アカデミー/古田土会計グループ)では、経営計画書を「6つの骨格」に分解してテンプレ化する方法論が解説されています。

会計事務所が監修しているだけあり、数値計画の精度が高いのが特徴です。A4三つ折りで携帯性も高く、社員規模20〜50名のフェーズで取り入れやすい設計になっています。

骨格をテンプレ化しておくと、毎年の作成負荷が下がります。「ゼロから書く」のではなく「型に当てはめて魂を入れる」に発想を切り替えられるところが、テンプレ型最大のメリットといえます。

④ 自社テンプレ集約型:A3一枚に主要要素を凝縮する小規模版

創業3年以内の経営者の方には、A3一枚に主要要素を集約するスタイルが取り組みやすい選択肢になります。経営理念・3カ年の数値目標・来期の重点アクションを1枚に凝縮するスタイルで、中小企業庁や商工会議所が配布する「ローカルベンチマーク」「経営力向上計画」のひな型をベースに自社版を作るやり方が現実的です。

書く側にとっても読む側にとっても負担が軽く、最初の1枚として扱いやすいのが利点。後から肉付けして冊子型に育てていく道筋も描けるため、創業期から成長期にかけてのスタートアップ・小規模企業に向いた形式といえます。

私たちの取材経験でも、創業数年の経営者がA3一枚版から始めて、3年目に冊子型へ移行した事例を複数拝見してきました。「軽量で改訂しやすい形式から育てる」という発想が、創業期にはなじみやすいといえます。

⑤ 製造業オーナー型:5カ年中期計画+単年度行動計画の二段構え

製造業のオーナー企業に多いのが、中期5カ年計画と単年度行動計画を二段構えにするパターンです。設備投資・人材採用・生産能力増強といった、長期視点でしか判断できない項目を中期計画に置きます。それを単年度の行動計画に翻訳していく形です。

製造業は数年単位での意思決定が多いため、単年度の計画書だけでは判断材料が不足しがちです。中期計画と単年度計画を1冊にまとめた「二段構え」が、製造業オーナーの実感に沿った形式といえます。

5カ年計画と単年度計画を1冊にまとめた「二段構え」は、設備投資の重い業種で特に威力を発揮します。5パターンの設計思想を整理した一覧を、次の図でお見せします。

5パターン比較:どの経営計画書スタイルが自社に合う?
武蔵野型
形式:A5冊子
規模:20〜300名
強み:全社員が常時携帯
向いている業種:全業種・成長期

宝山本部型
形式:店舗別計画シート
規模:5〜50店舗
強み:数値の店舗ブレイクダウン
向いている業種:外食・多店舗展開

古田土会計型
形式:A4三つ折り
規模:20〜50名
強み:会計事務所監修・数値精度高
向いている業種:製造・サービス業

A3一枚集約型
形式:A3一枚
規模:5名以下・創業3年以内
強み:軽量・改訂しやすい
向いている業種:全業種・創業期

製造業オーナー型
形式:中期+単年度二段構え
規模:50〜200名
強み:5カ年と単年度を統合
向いている業種:製造業

中小企業向け 経営計画書を構成する7つの骨格

中小企業の経営計画書は、形式が違っても押さえる要素はおおむね共通しています。古田土会計グループの「6つの骨格」を中小企業向けに再整理しました。そこへコントリ編集部が経営者インタビューから抽出した「経営者の決意」を加え、7要素にまとめています。

7つの骨格は、土台(理念・中期数値)から頂点(経営者の決意)まで階層的に積み上がるイメージで捉えていただけたらと思います。

① 経営理念・経営の目的

最初に来るのが、経営理念と経営の目的です。「何のためにこの会社を続けるのか」という問いに対する経営者の答えを、社内向けの言葉で記します。「経営理念とは、企業が何を大切にし、何のために存在するかを明文化した基本姿勢のこと。例えば武蔵野では『世のため人のため』が冒頭に置かれています」。

ここを省略して数字計画から始める企業がよくありますが、それでは社員が「自分の働く意味」を理解できません。中小企業の場合、理念は飾りではなく、日々の判断基準そのものになります。

経営理念は、現場でとっさの判断を迫られたときに開く「コンパス」です。例えば「お客様からの無理な値引き要請にどう応じるか」「採用面接で何を最優先するか」。マニュアルでは決められない局面で参照されます。

私たちが取材した経営者の方々の多くも、判断に迷ったときに理念のページを開く習慣をお持ちでした。理念は飾り棚に置く言葉ではなく、引き出しから取り出して使う道具なのだと感じます。

② 中期5カ年の数値目標(売上・粗利・経常利益)

次に置くのが、中期5カ年の数値目標。売上・粗利益・経常利益の3指標を、5年後・3年後・来期の順で時系列に並べていきます。

5年後を起点に逆算するのが基本動作です。「5年後にこうなっていたい」という像があるからこそ、3年後の中間地点と来期の数字が意味を持ちます。逆算思考は、中小企業の経営計画書を作成するうえで欠かせない発想といえます。

ここで「逆算思考とは、最終ゴールから現在に向かって必要なステップを割り出す考え方のこと。例えば5年後に売上10億円なら、3年後7億・来期5.5億と中間目標を置く形です」と補足しておきます。

また、数値目標の根拠を整理したいときに役立つのがSo What / Why So フレームワークです。施策と数字の因果関係を構造化することで、計画書の論拠が一段強くなります。

私たちが取材した経営者の中にも、5年後の数字を社員と一緒に決めた瞬間、3年後・来期の数字に「自分ごと感」が宿ったとお話しになる方がいらっしゃいました。数字は経営者だけで決めず、幹部社員と一緒に置くと、計画書の納得度が大きく変わります。

③ 単年度の利益計画と月次の数値目標

中期計画の最も近い1年分を、月次レベルにブレイクダウンしたものが単年度の利益計画です。粗利益を12カ月に割り付け、季節変動を加味して月次の目標値を置きます。

「【経営計画書シリーズ④】まず最初にするのは利益目標の決定」(鈴木賢司飲食総合研究所)では、飲食業を例に「最初に利益目標を確定させてから売上を逆算する」順番が解説されています。中小企業でありがちな「売上目標を先に決めて、利益が後回しになる」誤りを避けるための要点です。

利益目標を起点にして売上目標を決める順番に変えるだけで、計画の現実度は一段上がります。月次にブレイクダウンする際は、繁忙月と閑散月の差を忘れずに織り込んでおきましょう。

④ 部門別・店舗別の行動計画

数値目標を、部門別または店舗別の行動計画に落とし込みます。営業部・製造部・店舗A・店舗Bといった単位で、月次の目標と、その達成のために取り組むアクションを記述します。

ここで重要なのは、行動計画は「動詞」で書くことです。「強化する」「改善する」のような抽象表現ではなく、具体的に書きます。「毎週水曜にA顧客を訪問する」「月末に在庫差異を全件チェックする」のように。誰が見ても同じ動きが取れる粒度に揃える発想です。

ある中小企業では、当初「営業を強化する」と書いていた行動計画を「週3件の新規訪問を1月から開始する」に書き換えました。すると月次レビューでの進捗確認が一気にラクになった、というお話もいただいています。

行動計画の解像度が、月次レビューの質を決めるといっても言い過ぎではありません。動詞で書くという1つのルールが、計画書を「使える1冊」に変える力を持っています。

⑤ 人事・組織方針(評価・教育・採用)

経営計画書には人事・組織に関する方針も含めます。評価制度の運用方針、教育・研修の年間スケジュール、採用人数と採用基準などが該当します。

数字計画だけがあっても、それを担う人がいなければ画餅で終わります。「絵に描いた餅」のたとえどおり、人材計画と数字計画は本来セットで描くものです。

「数字目標は3年後の社員の顔ぶれと一緒に決める」という発想は、後ほど「魂を入れる3ステップ」の章で詳しく取り上げます。ここでは、人事方針が単なる総務的な項目ではなく、数値達成の土台になることをお伝えしておきます。

私たちが取材した経営者の方も、人事方針を計画書に書き込むようになってから、社員の定着率が変わったとお話しされていました。

⑥ お客様・取引先・地域に対する方針

お客様、取引先、地域社会に対する方針を明文化します。「どのようなお客様を大切にするか」「取引先とどう向き合うか」「地域に何を還元するか」。外部に対するスタンスを記述する項目です。

この項目を入れる企業はまだ多くありませんが、入れた瞬間に経営計画書全体の温度が上がります。社員にとっては、自社が誰のために、どんなスタンスで存在するのかを再確認する場になるからです。

ある製造業の経営者は、「取引先方針」の項目を入れたところ、営業担当が安易な値引きを断れるようになったとお話しされていました。外部への方針が、社内の意思決定基準を強くするという、目に見えにくい副次効果があるのです。

地域貢献の項目を入れる会社も、近年は増えています。経営計画書を「対外的な約束の場」として位置付ける動きが、中小企業のあいだで広がりつつあるといえます。

⑦ 経営者の決意・社員へのメッセージ

最後に置くのが、経営者本人の決意表明と、社員へのメッセージです。これは古田土会計の「6つの骨格」には含まれませんが、コントリ編集部としては不可欠な7つ目だと考えています。

「コミット文とは、自分が責任を持って実行することを一人称で言い切った宣言文のこと。例えば『私は本年、新規事業の立ち上げに自ら責任を持って取り組みます』のような文です」。

100社以上の経営者インタビューを通じて感じるのは、社員は社長の数字目標ではなく、社長の決意に動かされるという現実。決意とは、「自分はこの1年、何を引き受けるか」を一人称で言い切った文章のことです。

ここが欠けていると、計画書全体が他人事に見えてしまうとお話しされる経営者の方が、本当に多くいらっしゃいました。社員へのメッセージは、計画書という冷たい紙に体温を通わせるための、最後の一筆になります。

7つの骨格をピラミッド構造で整理した図を、次に示します。

経営計画書を構成する7つの骨格
⑦ 最上段
経営者の決意・社員へのメッセージ

人事方針
お客様・取引先方針

単年度利益計画
部門別行動計画

① 土台経営理念
② 土台中期5カ年数値目標

上位ほど「経営者の意志」 / 下位ほど「組織の土台」

7つの骨格を押さえた上で、自社版の経営計画書づくりを進めたい方は、以下からお気軽にご連絡ください。

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経営計画書テンプレートに「経営者の魂」を入れる3ステップ

経営計画書の中身を決めるのはテンプレートではなく、自社の言葉です。コントリの取材から導いた「魂を入れる3ステップ」を順にご紹介します。

各ステップは、半日〜1日でできる対話と意思決定が中心。経営者お一人で抱え込まず、社内外の伴走者と一緒に進めていただけたらと思います。

ステップ① 「なぜこの会社を続けるのか」を経営者が言語化する

最初のステップは、経営者本人が「なぜこの会社を続けるのか」を自分の言葉で言語化することです。これは経営理念の言い換えのようでいて、もっと根源的な問いです。

私自身、取材の場で「なぜこの会社を続けるんですか」と問いかけると、ほぼ全ての経営者が一瞬詰まる場面に立ち会ってきました。普段は数字や戦略を語り慣れているのに、根本の問いになると言葉に詰まる。それだけ普段は言語化されていない領域だ、ということです。

ここを言語化する作業は、できれば第三者の前で行う進め方が向いています。一人でPCに向かっても、なかなか言葉は出てきません。社外取締役、経営コーチ、編集者など、聞き役になれる相手と対話しましょう。ご縁のあった創業の原点まで遡って、言葉を引き出していきます。

言語化は「書く作業」ではなく「話す作業」だと感じます。聞き役を立てて、対話のなかから言葉を拾い上げていく姿勢が結果的に近道になります。

ステップ② 数字目標は「3年後の社員の顔ぶれ」と一緒に決める

2つ目のステップは、数字目標を立てる際に「3年後の社員の顔ぶれ」を同時に決めることです。売上目標だけを独立に立てると、人材戦略が後追いになり、数字に追われる組織になっていきます。

3年後に売上を1.5倍にしたいなら、3年後の組織図に何人が必要なのかをセットで描いてみましょう。営業が何人、製造が何人、管理が何人と置いてみると、向こう3年で何人を採用し、何人を育成すべきかが具体的に見えてきます。

私たちが取材した経営者の方も、「数字と組織図を同じ会議室で書いた瞬間、目標の意味が変わった」とお話しされていました。数字目標と組織図は、できるだけ同じ会議で決める。これだけで、計画書の現実度が一段上がります。

採用計画とセットで描いておくと、人事担当に対する指示はより具体的な内容に変わっていきます。3年後を描く作業は、現在の組織を見直す好機でもあります。

ステップ③ 言いっぱなしを避ける「コミット文」で締める

3つ目のステップは、経営計画書を「コミット文」で締めることです。コミット文とは、経営者本人が一人称で「自分はこの1年、何を引き受けるか」を言い切る文章のこと。

「私は本年、◯◯のために以下の3つを実行します」という形式で、3〜5項目を箇条書きにします。社員に対する号令ではなく、経営者自身の宣言として書く点が要点です。

これがあると、計画書全体が「言いっぱなしの紙」から「経営者と社員の約束」に変わります。私たちが取材した経営者の中には、コミット文を書いてから変化を感じた方もいらっしゃいました。社員から「社長、◯◯どうなりましたか」と進捗を問われるようになった、というお話です。

コミット文は、計画書のなかで最も短く、最も重い1ページになります。3ステップの流れを、次のタイムライン図でご覧いただけたらと思います。

経営計画書に「経営者の魂」を入れる3ステップ
1
STEP 1
なぜこの会社を続けるのかを言語化する
半日
👥経営者+社外伴走者

2
STEP 2
数字目標と3年後の組織図を同時に決める
1日
👥経営者+幹部

3
STEP 3
コミット文で締める
2時間
👤経営者単独

形骸化させないための運用:月次レビューと方針共有会のしくみ

経営計画書は、運用設計が抜け落ちると一気に形骸化します。書き上げる労力の半分は、運用のしくみ作りに振り向ける意識が必要です。

ここでは月次レビュー会議、年1回の方針共有会、部門会議という3層の運用ステップを、実例から具体的にご紹介します。

月次レビュー会議の標準アジェンダ(90分構成)

最も基本となる運用が、月次レビュー会議です。経営者と幹部社員が月1回集まり、計画書の数値と行動進捗を確認します。「月次レビューとは、月単位で計画と実績の差を確認し、翌月のアクションを決める定例会議のこと。例えば多くの中小企業では月初か月末の半日を充てています」。

「【経営者必見】経営計画書で会社が劇的に変わる5つのステップ」(黒字社長の絶対つぶれない経営学)では、経営計画書を5ステップで運用に落とし込む方法論が紹介されており、月次レビューの設計はその中核に位置付けられています。

90分の典型構成はこうです。前月の数値振り返り(20分)、計画とのギャップ分析(20分)、部門別の行動進捗報告(30分)、来月のアクション確認(20分)。要点は、毎月同じアジェンダで進める運用です。

会議の型が固定されると、参加者の準備の質が一段上がります。毎回フォーマットが変わると、準備に時間がかかり、本題に入る前に集中力が削がれてしまいます。アジェンダは1枚にまとめ、参加者全員が事前に目を通す習慣を作っておきましょう。

年1回「経営計画発表会」を開く中小企業が増えている理由

近年、年1回の「経営計画発表会」を開催する中小企業が増えています。経営者が全社員の前で、来期の経営計画書を読み上げ、決意を表明する場です。

「【完全版】売上を左右する経営計画・事業計画づくりが苦手な方は見てください」(マーケティング侍の非常識なビジネス学)でも、経営計画書を作るだけでなく「発表する場」を設ける効果が語られています。

発表会の効果は、社員のモチベーション向上だけではありません。経営者自身が全社員の前で読み上げる行為によって、計画書の言葉に責任が宿ります。

私たちが取材した企業のなかでも、発表会を始めてから計画書の中身が明らかに変わった、という声を複数いただきました。年1回、半日でも構わないので、社員全員が集まる場を確保する価値は大きいと感じます。会場は社内会議室でも、近隣のホールでも構いません。

詳しい運用のヒントは「新規事業の立ち上げメンバー選定」の取材記事もあわせてお読みいただけたらと思います。

数値計画を「現場の行動」に落とすための部門会議の運用例

経営計画書の数値目標は、最終的に部門会議で「現場の行動」に翻訳されて初めて意味を持ちます。月次レビューで合意したアクションを、各部門が週次の会議で進捗確認していく流れです。

部門会議の典型は週1回30分。前週の振り返り、今週の重点アクション、ボトルネックの共有という3点を毎回カバーします。「ボトルネックとは、全体の流れを止めている最大の制約のこと。例えば営業部の新規訪問件数が伸びない原因が、見込み客リストの不足にあるとします。その場合、リスト整備がボトルネック解消の打ち手になります」。

「経営計画書の◯ページに書かれた行動を、今週どこまで進めたか」という形で計画書を参照しましょう。これが習慣になると、計画書は机の上から離れなくなります。

週次・月次・年次の3層が連動して初めて、経営計画書は機能するものです。1つの層でも欠けると、計画と現場のあいだに溝ができてしまいます。3層の運用構造を整理した図を、次にご覧いただけたらと思います。

形骸化させない3層運用
年次
経営計画発表会
全社員参加
半日

月次
レビュー会議
経営者+幹部
90分

週次
部門会議
部門長+メンバー
30分

ありがちな失敗:経営計画書が紙のままで終わる3パターン

経営計画書がワークしないケースには共通点があります。「立派なのに使われない」3つの失敗パターンと、その回避策をご紹介します。

自社が当てはまっていないか、ご自身の取り組みと照らし合わせながら読み進めていただけたらと思います。

失敗① コンサル丸投げで「経営者の言葉」が消える

最も多い失敗が、外部コンサルタントに丸投げした結果、経営計画書から「経営者の言葉」が消えてしまうケース。完成物としては整っていても、社内では誰も読まないという現象が起こります。

外部の知見を借りること自体は否定されません。譲れないのは、文体・章立て・キーメッセージは経営者本人が最終的に書き入れる、という線を引く姿勢です。

コンサルタントには構造設計・数値モデリング・編集を担当してもらい、魂の部分は経営者が一人称で書く役割分担にしましょう。これだけで、計画書が自社のものとして機能し始めます。

外注して良いところと、外注してはいけないところの線引きが、コンサル活用の成否を分けます。私たちの取材経験でも、この線引きを明確にしている経営者の方ほど、外部の知見を上手に取り込んでいらっしゃいました。

失敗② 数値が壮大すぎて社員が自分ごと化できない

2つ目の失敗が、数値目標が壮大すぎて社員が自分ごと化できないケースです。「3年で売上3倍」のような派手な目標が掲げられているケースです。現場の社員からは「自分には関係ない数字」として受け取られてしまいます。

数値目標は「来期の数字」を最も丁寧に描き、その達成像を社員一人ひとりの動きに翻訳する作業が大切。3年後の壮大な像は、来期の数字とつなげて語れる範囲に留めるのが現実的です。

壮大すぎる目標は、経営者の野心の表現にはなっても、社員の行動を変える力はあまり持ちません。「来期の数字を社員一人ひとりの動きに翻訳できているか」を最終チェックの基準に据えていただけたらと思います。

失敗③ 配布したきりで「触れる機会」がない

3つ目の失敗は、経営計画書を配布したきりで、その後社員が触れる機会がないというパターンです。配布日だけ盛り上がって、翌週には机の引き出しに入ったまま、という光景は本当によく見かけます。

回避策は、運用のしくみで「触れる機会」を意図的に作る工夫。月次レビュー、週次の部門会議、新入社員研修、半期面談、評価面談。計画書を物理的に開く場面をカレンダーに組み込んでみてください。

「経営計画書を開かない月をゼロにする」が、形骸化を防ぐ目安になります。年間カレンダーに「計画書を開く場面」を書き込んでおくと、運用が習慣化しやすくなります。

失敗パターンと回避策を1枚にまとめた図を、次に示します。

失敗パターン3つと回避策
❌ 失敗パターン(Before)
コンサルに丸投げして作成
壮大すぎる数値目標を掲げる
配布したきりで開かない

✅ 回避策(After)
魂の部分は経営者が自分の言葉で書く
来期の数字を丁寧に積み上げる
開く場をカレンダーに組み込む

自社の経営計画書を「実例として語れる1冊」にするための最初の一歩

中小企業の経営計画書づくりは、規模・フェーズによって最初の一手が変わります。創業3年以内ならA3一枚版、社員20〜50名なら7要素を1冊にまとめる方法、50名以上なら方針書と数値計画書の二段構成へ。

模倣ではなく「自社版」の着手につながる初手を、3つの規模感に分けてご紹介します。

創業3年以内:A3一枚版から始める

創業3年以内の経営者の方には、A3一枚版から始める選択肢が取り組みやすい1つの方法です。先述のA3一枚集約型が最もとっつきやすく、半日あれば下書きまで進められます。

A3一枚に、経営理念・3カ年の数値目標・来期の重点アクションを凝縮します。最初から完璧を目指さず、四半期ごとに見直していくつもりで書き始める姿勢が現実的でしょう。

創業期は環境変化が大きいため、軽量で改訂しやすい形式が向いています。私たちが取材した創業3年目の経営者は、「四半期ごとにA3を書き直しているうちに、自社の方向性が見えてきた」とお話しされていました。1枚を書き直し続ける行為そのものが、経営者の思考を鍛える場になっていくのです。

中小企業庁の「ローカルベンチマーク」や「経営力向上計画」のひな型を出発点として活用するやり方も、取り組みやすい1つの選択肢になります。

社員20〜50名:骨格7要素を1冊にまとめる

社員20〜50名規模の中小企業には、本記事で示した7つの骨格を1冊にまとめる方法が向いています。A4で30〜50ページの冊子型が、運用と携帯性のバランスが取れる現実解です。

このフェーズでは、計画書を作る作業そのものが、幹部社員の育成機会にもなります。経営者だけで書き上げず、幹部社員に章ごとの執筆を任せ、経営者がレビューする形にしてみましょう。

組織として計画を作る力が育っていきますし、幹部社員にとっても経営視点を養う機会になります。私たちが取材した社員30名規模の経営者は、「幹部に章を任せたら、責任感が変わった」とお話しされていました。

「作る過程そのものが幹部育成になる」という副次効果は、このフェーズの経営計画書づくりが持つ大きな価値です。関連する取材は「新規事業の立ち上げメンバー選定」もあわせてご覧いただけたらと思います。

社員50名以上:方針書+数値計画書の二段構成へ

社員50名を超えてくると、方針書と数値計画書を別冊にする二段構成へ移行する企業が増えてきます。方針書は社員全員に配布する「読み物」、数値計画書は幹部・部門長が運用に使う「実務書」と役割を分ける形です。

武蔵野型がこの段階の代表例。組織が大きくなるほど、計画書の読み手が分かれていくため、目的別に分冊する設計が現場で機能します。

社員全員には「自社が何を大切にしているか」を伝える方針書を渡します。幹部には「数字と行動の細部」を載せた実務書を持たせる、という分担が現実的です。読み手の役割に応じて、伝える情報の粒度を変える。この発想が、組織規模が大きくなったときの計画書設計の鍵になります。

規模・フェーズ別の最初の一手を、次のマトリックス図でご覧いただけたらと思います。

規模×フェーズ別:最初の一手
↓規模 / フェーズ→ 初めて作る経営計画書がない状態から 改訂する既存の計画書をアップデート
小規模5〜20名 A3一枚版で着手
まず「書く習慣」をつくる
7要素を1冊化
既存の断片を体系へ
中規模20〜50名以上 方針書+数値計画書
に分冊して着手
年1回発表会で更新
運用サイクルを定例化

コントリ編集部としては、経営計画書は完成品の見栄えよりも2点を最優先していただきたいと考えています。「自社の言葉で書かれているか」「毎月開かれているか」。この2つです。

100社以上の経営者にお話を伺うなかで強く感じることがあります。計画書を支えるのは美しいフォーマットではなく、ご縁のある社員一人ひとりに向き合おうとする経営者の真心だ、ということ。小さな1冊からでも、社員と未来を共有する場が生まれます。

明日からの一歩を、心から応援しております。コントリでは中小企業経営者の取材実例を継続的に発信中です。「意思決定に使えるフレームワーク解説」もぜひあわせてご覧いただけたらと思います。

自社の経営計画書を「実例として語れる1冊」に仕上げていくプロセスを一緒に歩んでまいります。



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よくある質問

中小企業の経営計画書は何ページくらいが適切ですか?

規模やフェーズによって幅がありますが、社員20〜50名規模であればA4で30〜50ページの「冊子型」、創業3年以内であればA3一枚版で十分機能します。重要なのはページ数ではなく、社員が日常的に手に取れる形になっているかどうかです。厚さよりも、月次レビューで開かれる回数のほうが、実用度を測る本当の指標になります。

経営計画書のテンプレートはどこで入手できますか?

中小企業庁、商工会議所、地方銀行・信用金庫、税理士法人などが無料で雛形を配布しています。古田土会計の「6つの骨格」や中小企業診断士監修のテンプレートも広く使われています。ただし「箱」だけで満足せず、自社の言葉で各項目を埋める姿勢が前提です。テンプレートは出発点に過ぎず、最終的な文体は経営者本人が決めていくものとお考えいただけたらと思います。

経営計画書と事業計画書はどう違いますか?

事業計画書は資金調達や新規事業立ち上げの際に、外部(金融機関・投資家)に向けて書くのが中心です。経営計画書は経営者から社員へ向けて、自社の理念・数字・行動を統合的に示す内部向け文書になります。中小企業では両者を分けて運用するケースが増えており、対象読者が違うため、文体や強調するポイントも変わってきます。

経営計画書はどのくらいの頻度で見直すべきですか?

中期5カ年計画は年1回(決算後)が目安です。単年度の数値計画は月次レビューで進捗確認、方針書部分は3年に1度の大幅見直しがおすすめです。月次レビューを抜くと一気に形骸化しますので、月次の30〜90分だけはどうしても確保していただけたらと思います。年1回の経営計画発表会と組み合わせると、運用が一段安定します。

経営計画書づくりはどのくらいの期間で完成させるのが現実的ですか?

初年度はキックオフから完成まで2〜3カ月を見ておくと安心です。理念の言語化に2〜3週間、数値計画と組織図のすり合わせに1カ月、行動計画と方針書部分に1カ月、最後にコミット文を書いて完成、というスケジュール感が一般的です。2年目以降は前年版をベースに改訂するため、1カ月ほどで仕上がる企業が多いです。

経営計画書を作っても社員が読んでくれません。どう改善すればよいですか?

「読んでもらう」から「使ってもらう」への発想転換が解決の糸口になります。月次レビューや週次の部門会議で「計画書の◯ページを開いてください」と毎回参照しましょう。これだけで、自然と読み込まれていきます。配布したきりにせず、開く機会をカレンダーに組み込むことが何より効果的です。新入社員研修や評価面談にも計画書を持参してもらうと、触れる頻度が一段上がります。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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