中小企業の退職金設計|経営者と従業員で分ける制度の選び方と節税

中小企業の退職金設計|経営者と従業員で分ける制度の選び方と節税

「退職金まで手が回らない」。日々の資金繰りや採用に追われるなかで、そう感じておられる経営者の方は多いのではないでしょうか。後回しにしているうちに、気づけば自分自身の退職金も未設計のまま、という声を取材現場でも繰り返し伺ってきました。

先に結論をお伝えします。中小企業の退職金設計は、「経営者(役員)の分」と「従業員の分」をまず切り分けることから始まります。両者は税務の扱いも、積み立てる手段もまったく別物だからです。従業員には中退共などの外部積立、経営者には小規模企業共済などを、退職という出口から逆算して組み合わせる。これが設計の基本形になります。

本記事では、退職金設計の二層構造を整理します。そのうえで従業員向け・経営者向けそれぞれの制度の選び方、退職所得控除を軸にした節税の勘所までをお届けします。現場でやりがちな失敗も取り上げます。明日から動ける3ステップもご用意しました。お役に立てれば嬉しく思います。

中小企業の退職金設計とは|「経営者の分」と「従業員の分」をまず切り分ける

退職金設計とは、退職時に支払う原資を「誰に・いくら・どう積むか」を決めることです。一つの制度で完結するものではありません。最初の分かれ道は、経営者(役員)と従業員を切り分けること。ここを曖昧にしたまま進めると、設計全体がちぐはぐになります。

なぜ切り分けが必要なのでしょうか。理由は、両者で税務の扱いも、原資の積み方も大きく異なるからです。従業員の退職金は規程で定めれば全額が経費になり、外部積立が基本。経営者の退職金は損金の上限に注意が必要で、自分で積む共済や保険が中心になります。同じ「退職金」でも、設計の作法はまるで別物。だからこそ、最初に二層に分けて考える姿勢が、設計のブレを防ぐ土台になります。

退職金設計とは、退職時に支払う原資を「誰に・いくら・どう積むか」を決めること

退職金設計とは、将来支払う退職金の原資を計画的に準備する仕組みづくりのことです。例えば、10年後に従業員5名へ計1,000万円を支払う見込みだとします。その原資をどこに、毎月いくら積むかを今決めておく作業を指します。

ポイントは「いくら必要か」を先に置くこと。支給額の見込みがなければ、積立額も決まりません。退職金規程で支給基準を定め、そこから逆算して原資づくりに入る。この順序が設計の背骨になります。

行き当たりばったりで毎月いくらか貯めるのとは、根本的に違うアプローチです。必要額という出口から逆算する。それが「設計」という言葉の意味するところ。

役員退職金と従業員退職金は税務も準備手段も別物という前提

ここが最初の関門です。役員退職金と従業員退職金は、税務上も準備手段も別物として扱う必要があります。

従業員の退職金は、就業規則や退職金規程で定めれば全額が損金(会社の経費)になります。準備手段は中退共などの外部積立が中心。一方、役員退職金には「不相当に高額」と判断されると損金が否認されるルールがあります。準備手段も小規模企業共済や保険が主役になります。

つまり、同じ「退職金」という言葉でも、対象者が変われば制度設計はまったく別の話になるわけです。両者を一緒くたに考えてしまうのが、最初のつまずきポイント。

役員退職金と従業員退職金の違い

比較の軸従業員退職金役員退職金
対象者 従業員(正社員・パート等) 経営者・役員
主な準備手段 中退共などの外部積立 小規模企業共済・生命保険・iDeCo
損金算入のルール 規程で定めれば全額が損金 ○ 「不相当に高額」は否認
設計の難所 減額・元本割れへの配慮 適正額の根拠づくりと出口設計

※ 同じ「退職金」でも対象者が変われば制度設計はまったく別物。まず二層に切り分けて考えるのが出発点です。

なぜ中小企業ほど早めの設計が効くのか──固定費化と簿外債務の回避

中小企業こそ、退職金設計は早めに着手するほど効いてきます。理由は2つあります。

1つは、積立が時間を味方につける仕組みだから。早く始めれば毎月の負担は小さくて済みます。逆に着手が遅れると、退職時期が迫ってから一気に原資を用意することになり、資金繰りを直撃しかねません。

もう1つは、簿外債務(帳簿に表れない将来の支払い義務)の回避です。退職金規程で支給を約束しているのに原資を積んでいなければ、それは見えない借金と同じ。外部積立で原資を先に確保しておけば、将来の支払い負担を平準化できます。設計の遅れが、未来の固定費化を招くという現実。

従業員の退職金設計|中退共を軸に「外部積立」で簿外債務を防ぐ

従業員の退職金は、社内に積むより外部機関へ積み立てるのが基本の考え方です。代表格が中小企業退職金共済、通称「中退共」。ただし、メリットだけでなく注意点も知ったうえで選ぶ必要があります。

なぜ外部積立なのでしょうか。社内に資金を留保する方式には弱点があります。退職金規程で支給を約束した時点で、簿外債務(帳簿に表れない将来の支払い義務)を抱えてしまうからです。資金繰りが厳しい時期に退職が重なれば、支払い原資が足りなくなる不安もあります。外部へ先に積んでおけば、こうしたリスクを平準化できます。ここでは中退共を軸に、企業型確定拠出年金という選択肢も含めて整理していきましょう。

中退共とは、国の制度で従業員退職金を外部積立する仕組み

中退共とは、中小企業が単独では退職金制度を持ちにくい現状を補うために国がつくった共済制度のことです。運営は勤労者退職金共済機構(独立行政法人)。例えば、毎月の掛金を機構へ納め、従業員が退職したときは機構から本人へ直接退職金が支払われる仕組みです1

掛金は全額が会社の損金になり、外部に積み立てるので簿外債務になりません。新規加入や掛金増額の際に国の助成がある点も、中小企業にとっては後押しになります1。従業員退職金の準備手段として、まず検討すべき制度といえます。

中退共のメリットと、見落とされがちな3つの注意点

中退共は使い勝手のよい制度ですが、注意点もあります。設計時に押さえておきたいのが次の3点です。

第一に、掛金の減額がしづらいこと。減額には従業員の同意などが必要で、業績悪化時に柔軟に下げにくい構造があります。第二に、原則として退職金は従業員へ直接支払われるため、懲戒解雇などのケースでも会社が支給をコントロールしにくい点。第三に、加入後すぐの退職では掛金納付月数によって元本割れが起こり得ることです1

税理士YouTuberの脱・税理士スガワラくんは、こうした硬直性を問題視しています。「中退共は今すぐ辞めてください」とまで強い言葉で問題提起するほどです2。掛金の柔軟性を重視する経営者にとっては、確かに引っかかる論点。一方で、外部積立で簿外債務を防げる安心感は中退共ならではの強みです。要は、自社が何を優先するか。制度の特性を理解したうえで選ぶ姿勢が欠かせません。

中退共を選ぶ前に押さえたい5つのポイント

※ チェック項目はクリックで選択できます(状態はページ再読込でリセットされます)。

確定拠出年金(企業型DC)という選択肢と中退共との併用

従業員向けには、中退共のほかに確定拠出年金(企業型DC)という選択肢もあります。

企業型DCとは、会社が拠出した掛金を従業員自身が運用し、その成果が退職金や年金になる制度のことです。例えば、毎月の掛金を従業員が投資信託などで運用し、運用がうまくいけば受取額が増える仕組み。掛金は損金になり、従業員の運用益は非課税という税制メリットがあります。

DCチャンネルの解説でも、この点が論点になっています。従業員の退職金をどう設計するかを理解できているかが、経営者の力量を分けると指摘されています3。中退共で土台をつくりつつ、運用の自由度を求める従業員には企業型DCを併用する。こうした組み合わせも、設計の幅を広げる一手になります。ただし企業型DCは制度運営の手間も伴うため、自社の規模と相談しながら検討するのが現実的です。

経営者・役員の退職金設計|小規模企業共済と保険で「出口」から逆算する

経営者自身の退職金は、会社の損金と個人の手取りの両面から設計します。小規模企業共済・生命保険・確定拠出年金(iDeCo)を、退職という出口から逆算して組み合わせるのが要点です。

「出口から逆算する」とは、いつ・いくら受け取りたいかを先に決めることを指します。受取時期と希望額が決まれば、逆算して毎月の積立額や使う制度が見えてきます。経営者の退職金は、従業員と違って自分で準備するのが基本。退職所得控除という税制メリットを活かせる受け取り方まで含めて設計すると、同じ積立額でも手取りが大きく変わってきます。ここからは、その柱となる3つの手段を見ていきましょう。

小規模企業共済とは、経営者の退職金を自分で積む制度

小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員が、自分の退職金を自分で積み立てるための国の制度のことです。運営は中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)。例えば、毎月の掛金を納めておき、廃業や退任のときに共済金を受け取る仕組みです4

最大の魅力は税制メリット。掛金は全額が個人の所得控除になり、受け取る共済金は退職所得または公的年金等の扱いになります4。経営者個人の節税と退職金準備を同時に進められる、使い勝手のよい制度です。

経営者の退職金準備 3本柱

小規模企業共済

掛金が全額所得控除

経営者・役員が自分で退職金を積む国の制度。受け取る共済金は退職所得などの扱いになります。

生命保険

保障と積立を両立

保障を確保しつつ解約返戻金を退職金原資に。いつ解約していくら受け取るかの設計が要点です。

iDeCo

運用益が非課税

確定拠出年金の個人版。掛金は所得控除、運用益は非課税で、老後資金づくりを後押しします。

※ 3本柱は退職という出口から逆算し、組み合わせて設計するのが基本です。

役員退職金を保険で準備するときの考え方と注意点

役員退職金の原資づくりには、生命保険を使う方法もあります。保障を確保しながら、解約返戻金を退職金原資に充てる考え方です。

ただし、注意が必要です。かつては保険料の多くを損金にしながら退職金原資を貯められる商品が広く使われました。しかし税制改正で、損金算入のルールは厳しくなっています。例えば、解約返戻率が高い保険ほど資産計上の割合が大きくなる扱いに変わりました5

社長の資産防衛チャンネルでも、この点が解説されています。役員退職金の積立方法は商品ごとに一長一短があり、出口の設計とセットで考えるべきだという指摘です6。保険は「入って終わり」ではなく、いつ解約していくら受け取るかまで描いておく。ここを設計しないと、思ったほど効かないという結果になりかねません。

役員在任年数が退職金の手取りを左右する仕組み

見落とされがちですが、役員の在任年数は退職金の手取りに大きく影響します。

理由は退職所得控除にあります。退職所得控除は勤続(在任)年数が長いほど大きくなり、20年を超えると1年あたりの控除額が増える設計だからです7。「役員10年未満で退職金が半分になる」と論じる解説もあるほど、年数の壁は手取りを左右します8

退職所得控除は勤続年数で変わる

勤続20年以下の部分

40万円 / 年

1年あたり40万円を退職金から差し引けます。例えば勤続10年なら控除は400万円です。

勤続20年を超える部分

70万円 / 年

20年超の部分は1年あたり70万円に拡大。在任年数が長いほど控除が大きくなります。

※ 在任年数を積み上げるほど控除枠が増えるため、役員退職金は早期着手が効きます。

だからこそ、役員退職金は出口から逆算した早期着手が効いてきます。在任年数を積み上げながら原資も育てる。時間そのものが、節税という果実を生む構造です。慌てて準備しても、控除の枠は後から増やせません。

退職金の節税設計|「退職所得控除」と損金算入のルールを正しく押さえる

退職金が税制上有利と言われる理由は、退職所得控除と分離課税にあります。ただし役員退職金には損金算入の限度や否認リスクがあり、ルールを外すと節税どころか追徴の不安を抱えることになります。

節税という言葉だけが先行すると、足元のルールを見落としがちです。退職金の優遇は、退職所得控除・2分の1課税・分離課税という三段構えで成り立っています。一方で、会社側が役員退職金を経費に落とすには「不相当に高額」でないことが前提。この個人側の有利さと、会社側の限度を両面で押さえることが、節税設計の出発点になります。ここからは、その仕組みを一つずつ整理していきましょう。

退職所得控除とは、勤続年数に応じて退職金から差し引ける控除

退職所得控除とは、退職金にかかる税金を計算する前に、勤続年数に応じて差し引ける控除のことです。例えば、勤続20年以下なら1年あたり40万円、20年超の部分は1年あたり70万円が控除されます7

さらに、控除後の金額を2分の1にしてから課税する「2分の1課税」と、他の所得と合算しない「分離課税」が組み合わさります。この三段構えが、退職金を受け取るときの税負担を大きく抑える仕組み7。給与で受け取るよりも手取りが残りやすい設計になっているわけです。

DCチャンネルの解説でも、大企業と中小企業では退職金の準備状況に差があると指摘されています9。制度は同じでも、設計して使い切れるかどうかで結果は変わる。控除という有利さを取りこぼさない設計が肝になります。

退職金の税額計算は3ステップ

1

退職所得控除を差し引く

勤続年数に応じた控除額(40万円/70万円)を退職金から引きます。

2

残額を2分の1にする

控除後の金額を半分に。これが課税対象となる退職所得です。

3

分離課税で計算

他の所得と合算せず単独で課税。税負担が大きく抑えられます。

※ 控除・2分の1課税・分離課税の三段構えが、退職金が税制上有利と言われる理由です。

役員退職金の損金算入と「不相当に高額」の壁

役員退職金には、従業員にはない壁があります。「不相当に高額」と判断されると、超過分の損金算入が否認されるルールです。

実務では「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」が支給額の目安として用いられます10。例えば、最終報酬月額100万円・在任20年・功績倍率3.0なら、6,000万円が一つの目安です。この水準を大きく逸脱すると、否認リスクが高まると考えられます10

役員退職金の適正額の考え方(功績倍率法)

最終報酬月額

100万円

×

役員在任年数

20年

×

功績倍率

3.0

適正額の目安

6,000万円

この水準を大きく逸脱すると「不相当に高額」とされ、超過分の損金算入が否認されるリスクが高まります。

※ 功績倍率は実務上の目安です。支給額は規程の整備と根拠づくりまで含めて設計する必要があります。

節税のつもりが、過大支給で追徴を招いては本末転倒。役員退職金は、規程の整備と支給額の根拠づくりまで含めて設計する。ここは専門家と組むべき領域といえます。

退職金を分割で受け取る・年金と組み合わせる視点

退職金は、一度に受け取るだけが選択肢ではありません。分割受取や年金との組み合わせで、手取りを調整する視点もあります。

脱・税理士スガワラくんは、退職金の受け取り方を工夫することで税負担を抑える論点を取り上げています11。退職所得控除の枠と、公的年金等控除の枠。この2つの非課税枠をどう使い分けるかで、生涯の手取りは変わってきます。

一括か分割か、年金併用か。正解は人によって異なります。だからこそ、自分の出口に合わせた組み立てが必要になるのです。受け取り方まで設計してこそ、節税は完成します。

中小企業がやりがちな退職金設計の失敗|「制度任せ」と「出口の未設計」

ここからは、退職金設計の現場で繰り返し見られる失敗パターンを整理します。共通するのは、制度に加入しただけで満足してしまうこと。加入はゴールではなくスタートです。

なぜ「加入して終わり」になりやすいのでしょうか。制度に入った瞬間に、課題が解決したような安心感が生まれるからです。けれど実際には、誰がいついくら受け取るかという出口を描かなければ、制度は十分に機能しません。経営者の方への取材を重ねるなかでも、出口の未設計でつまずいた例を数多く伺ってきました。ここでは典型的な3つの失敗を取り上げ、自社の点検材料にしていただけたらと思います。

「とりあえず中退共」で止まり、役員の退職金が未設計のまま

もっとも多いのが、従業員向けに中退共へ加入して安心し、経営者自身の退職金が手つかずというパターンです。

従業員の退職金を整えるのは大切なこと。ただ、経営者の方が自分の退職金を後回しにしてしまうと、引退時に「自分の分がない」という事態になりかねません。経営者の方への取材を重ねるなかでも、ここに気づくのが遅れたという声を何度も伺ってきました。だからこそ経営者の退職金と老後資金づくりの進め方を早めに押さえておくと、こうした後回しを防げます。

二層構造で設計する、という最初の原則がここで効いてきます。従業員と経営者、両方を同時に視野に入れる。片方だけでは設計とは呼べません。

解約・減額のときに損をする共済の落とし穴

共済制度には、解約や減額のタイミングで損をする落とし穴があります。

例えば小規模企業共済では、加入期間が短いうちの任意解約に注意が必要です。受け取る解約手当金が、掛金の合計を下回ることがあります4。税理士だまちゃんも、小規模企業共済で数百万円規模の損をする人には共通点があると指摘しています12。短期解約や受け取り方の選択ミスが、その代表例。

制度のメリットは、正しい入り方と出方をして初めて活きます。「入れば得」ではなく「使い切って得」。この違いを押さえておきたいところです。

退職金規程と実際の積立がズレている問題

意外と多いのが、退職金規程で約束した支給額と、実際の積立額がズレている問題です。

規程では手厚い退職金を定めているのに、原資の積立が追いついていない。これは将来の簿外債務そのものです。逆に、規程が曖昧なまま積立だけ進めても、支給時にトラブルの火種になります。

退職金設計でやりがちな3つの失敗とあるべき姿

失敗1:制度任せ

× やりがち

従業員向けに中退共へ加入して安心。経営者自身の退職金が未設計のまま。

◯ あるべき姿

従業員と経営者の二層構造で設計。両方を同時に視野へ入れる。

失敗2:出口の未設計

× やりがち

共済の短期解約や受け取り方のミスで、数百万円規模の損をする。

◯ あるべき姿

いつ・いくら受け取るかまで描く。入り方と出方の両方を設計する。

失敗3:規程と積立のズレ

× やりがち

規程で手厚い支給を約束しているのに、原資の積立が追いつかない。

◯ あるべき姿

規程と積立を両輪で合わせる。定期的に両者を突き合わせて運用する。

※ 共通する原因は「加入はゴールではなくスタート」という視点の欠落です。

規程と積立は、両輪で合わせる。どちらか一方だけが先行している状態は、設計が片肺で回っているサインです。定期的に両者を突き合わせる運用が欠かせません。

退職金設計を始めるための3ステップ|現状把握から規程整備まで

退職金設計は、難しく考えるより順番に進めるのが近道です。現状の把握、制度の選定、規程への落とし込み。この3ステップで、明日から動ける形に整えていきましょう。

最初から完璧な設計を目指す必要はありません。むしろ完璧を求めすぎて手が止まるのが、いちばんもったいないところ。まずは現状を書き出し、土台となる制度に入り、規程で約束を文書化する。この順番をたどるだけで、設計は形になっていきます。専門家に相談するタイミングも、3ステップ目で自然と見えてきます。難所だけ専門家の力を借りれば、経営者の方が一人で抱え込む必要はありません。

退職金設計の3ステップ 完璧を目指さず、この順番をたどるだけで設計は形になります
1
STEP 1 現状把握 誰に・いつ・いくら必要かを書き出す。経営者と従業員、それぞれの退職時期と必要額を洗い出し、設計の土台をつくります。
2
STEP 2 制度選定 従業員と役員で別々に組む。従業員向けと役員向けでは適した制度が異なるため、それぞれに合った仕組みを選び、土台となる制度に入ります。
3
STEP 3 規程整備と専門家相談 規程で約束を文書化する。難所だけ専門家の力を借りれば、経営者が一人で抱え込む必要はありません。相談のタイミングもここで自然と見えてきます。
最初から完璧を目指さなくて大丈夫。まずは現状を書き出すことが、最初の一歩です。

ステップ1:現状把握──誰に・いつ・いくら必要かを書き出す

最初のステップは、現状を書き出すことです。

従業員それぞれの入社年・想定退職時期・支給見込み額。そして経営者自身の引退時期と希望する退職金額。これらを紙やシートに並べるだけで、設計の輪郭が見えてきます。例えば「5年後に役員1名・10年後に従業員3名」というように、時期別に必要額を可視化するのが第一歩。

数字が曖昧でも構いません。まずは仮置きで全体像を描くこと。完璧な精度より、書き出して全体を俯瞰する姿勢が出発点になります。

ステップ2:制度選定──従業員と役員で別々に組み合わせる

次に、従業員向けと役員向けで制度を別々に組み立てます。

従業員には中退共を土台に、必要に応じて企業型DCを併用。経営者には小規模企業共済を軸に、保険やiDeCoを出口から逆算して組み合わせる。これが基本形です。それぞれの制度の特性と、自社の優先順位を照らし合わせて選びます。

ここで大切なのは、一度に完璧を目指さないこと。まずは中退共と小規模企業共済という土台だけでも始める。土台ができてから、上に積み増していけばよいのです。

ステップ3:規程整備と専門家への相談タイミング

最後のステップは、退職金規程の整備です。支給基準を文書化し、実際の積立額と整合させます。

規程づくりや役員退職金の損金算入の判断は、専門性が高い領域。税理士や社会保険労務士といった専門家に相談するタイミングがここです。特に役員退職金の支給額は、否認リスクを避けるためにも根拠づくりが欠かせません。

退職金設計は、経営者の方が一人で抱え込む必要はありません。専門家と組み、現状把握から規程整備まで順を追って進める。小さな一歩でも、それが未来の安心につながります。経営の言語化を支援するコントリの経営者インタビューでも、退職金という出口から逆算して会社を整えた経営者の方の歩みを、たびたび伺ってきました。自社の設計を見直すヒントとして、ぜひサービス案内コラム一覧もご覧いただけたらと思います。

まとめ|退職金設計は「二層構造」と「出口からの逆算」で整える

中小企業の退職金設計は、経営者(役員)の分と従業員の分を切り分けることから始まります。従業員には中退共を軸とした外部積立で簿外債務を防ぎ、経営者には小規模企業共済や保険を出口から逆算して組み合わせる。これが基本形でした。

節税の要は、退職所得控除と分離課税という退職金ならではの有利さを取りこぼさないこと。役員退職金では「不相当に高額」の壁に注意し、在任年数を味方につける設計が効いてきます。そして、制度への加入はスタートにすぎません。出口まで描き、規程と積立を両輪で合わせてこそ、設計は完成します。

まずは現状を書き出すところから。誰に・いつ・いくら必要かを並べるだけでも、次の一手が見えてきます。あなたの会社の未来を支える退職金設計を、今日から少しずつ整えていきましょう。


  1. 中小企業退職金共済事業本部(勤労者退職金共済機構)「中退共制度のしくみ」 https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/seido/seido01.html 

  2. 脱・税理士スガワラくん「中小企業退職金共済(中退共)は今すぐ辞めてください!」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=Yanq7HVLYJ0 

  3. DCチャンネル「【退職金制度を解説】従業員の退職金をどう考える?これを理解できない経営者はヤバいです。」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=mEgOVLQTpoY 

  4. 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度の概要」 https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/index.html 

  5. 国税庁「No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm 

  6. 社長の資産防衛チャンネル【税理士&経営者】「【これ絶対やって!】役員退職金の積立方法は何が良いですか?」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=YD-Eyy5yPVw 

  7. 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm 

  8. オーナー社長の出口戦略ラボ「役員10年未満で退職金が半分になる理由」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=D1iMIF-s0UY 

  9. DCチャンネル「【衝撃】中小企業と大企業でこんなに違う!? 退職金のリアル格差とは」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=oz922vk2Qp0 

  10. 国税庁「No.5208 役員の退職金の損金算入時期」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5208.htm 

  11. 脱・税理士スガワラくん「【超優良級】退職金で1億円をもらうのは簡単!?」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=lkzdIB0rgyE 

  12. 税理士だまちゃんの金庫番チャンネル「【超危険】小規模企業共済で数百万円損する人の共通点3選…」(YouTube) https://www.youtube.com/watch?v=HxqxZ7k9Xc4 

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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