コラム

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中小企業の経営者が自伝を書く進め方|想いと歴史を次の世代へ残す

中小企業の経営者が自伝を書く進め方|想いと歴史を次の世代へ残す

「自分が歩んできた道のりを、いつか形に残したい」。長く事業を続けてきた経営者の方なら、そんな想いを胸に抱いたことがあるのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、経営者の自伝は、テーマ決め・年表づくり・エピソード収集・執筆・推敲の5ステップで書き進められます。文章が得意でなくても、順を追えば必ず形になっていくものです。

本記事では、自伝を書く意義、書き始める前に決める3つのこと、書き方の5ステップ、読まれる構成の作り方、そして自費出版や電子書籍での残し方までをお伝えします。あなたの想いと会社の歴史を、次の世代へ手渡すための一冊づくりの参考になれば幸いです。

なぜ今、中小企業の経営者に自伝が必要なのか

経営者の自伝が今あらためて注目されるのは、それが事業承継や組織づくりに活きる経営資産だからです。創業の想いや経営哲学は、放っておけば経営者一代で消えてしまいます。自伝は、その想いを次代へ橋渡しする役割を担います。

経営者が自伝を残す3つの意義
1
想いの承継
創業の想いや経営哲学を次代へ橋渡しする
2
採用・ブランディング
会社の人格が伝わり共感を生む素材になる
3
自己の棚卸し
歩みを振り返り経営を見つめ直せる

自伝は「想いの承継」という経営資産になる

会社に残せるものは、お金や設備だけではありません。なぜこの事業を始めたのか、どんな価値観で意思決定をしてきたのか。こうした目に見えない財産こそ、後継者や社員にとって何よりの指針となるはずです。

私が経営者の方への取材を重ねるなかで痛感するのは、決算書には表れない「想い」こそが会社の芯だという事実です。その芯を言葉に残す作業が、自伝づくりにほかなりません。想いの承継という経営資産を、自らの手で形にできるのです。

採用・ブランディングにも活きる

自伝の価値は、社内だけにとどまりません。経営者の人生と理念が伝わる一冊は、求職者や取引先が会社を深く理解するきっかけになるはずです。数字やサービス説明だけでは伝わらない、会社の人格のようなものが立ち上がってきます。

当社でも、経営者の言葉を丁寧に記録した発信が、共感を呼ぶ場面を何度も見てきました。自伝は、そのまま採用やブランディングの素材としても機能します。想いを綴ることは、未来の仲間との出会いを準備する営みなのかもしれません。

自伝を書く前に決める3つのこと

書き始める前に、目的・読者・ゴールの3つを決めておくと、途中で迷わずに進められます。この土台があいまいだと、話があちこちに飛び、まとまりを欠いてしまいがちです。まずは方向性を言葉にしておきましょう。

書く前に決める3つのこと
目的
何のために
後継者へ?社員へ?
読者
誰に届けるか
読む人の顔を思い描く
ゴール
完成後どう使うか
配布?贈答?販売?

目的と届けたい読者を定める

まず考えたいのは、「何のために書くのか」と「誰に読んでほしいのか」です。後継者に経営哲学を伝えたいのか、社員に理念を共有したいのか、目的によって書くべき内容も変わってきます。読者の顔を思い浮かべると、語り口も自然に定まってきます。

目的が定まらないまま書き進めると、途中で筆が止まりがちです。一行でよいので、「この本は誰に何を伝えるためのものか」を紙に書き出してみてください。その一行こそ、執筆の羅針盤。

完成後の使い道を先に描く

書き上げた自伝を、その後どう使うのかも先に描いておきましょう。社内配布にとどめるのか、取引先へ贈るのか、一般に販売するのか。使い道によって、必要な分量や残し方、盛り込む内容が変わってくるためです。

ゴールを先に決めておくと、逆算して準備が進みます。完成形をイメージすることが、遠回りを防ぐ近道です。使い道が明確なほど、書く内容にも自然と芯が通っていきます。

経営者の自伝の書き方5ステップ

経営者の自伝は、テーマ設定・年表づくり・エピソード収集・執筆・推敲の5ステップで進めると形にしやすいはずです。文章力よりも、順序立てて記憶を掘り起こす作業こそが要です。全体の流れを押さえておきましょう。

自伝の書き方 5ステップ
1
テーマ設定
2
年表づくり
3
エピソード収集
4
執筆
5
推敲

ステップ1〜3:テーマ設定から年表とエピソード集め

前半は、書く土台を整える工程です。まず一冊を貫くテーマを決め、次に人生と事業の年表をつくり、各時期の出来事やエピソードを集めます。この素材集めが充実するほど、後の執筆はぐっと楽になります。

ビジネス書の章立てを扱う執筆日記の動画(田村薫氏)でも、書き始める前の構成づくりが重視されています。いきなり本文を書くのではなく、まず設計図を描く。この順序が、挫折を防ぐ鍵となるでしょう。

ステップ4〜5:執筆と推敲のコツ

素材がそろったら、いよいよ執筆です。ここでのコツは、完璧を目指さず、まず最後まで書き切ること。粗くてもよいので通しで書き上げ、そのあと推敲で磨いていく進め方が現実的です。

本の出版で最初に何をすべきかを解説する動画(ネリサポ)でも、まず一歩を踏み出す大切さが語られています。推敲では、声に出して読むと不自然な箇所に気づきやすいものです。焦らず、一文ずつ整えていきましょう。

読まれる自伝にするための構成と素材集め

読み手の心に残る自伝には、共感を生む構成と、記憶を裏づける具体的な素材が欠かせません。出来事を並べるだけの記録ではなく、物語として読ませる工夫が、読後の印象を大きく変えます。

起承転結で物語として組み立てる

淡々とした年表の羅列では、読者はなかなか引き込まれません。創業の決意、直面した壁、それを乗り越えた転機、そして今の想い。起承転結を意識して組み立てると、一冊が一つの物語として立ち上がってきます。

大切なのは、成功談ばかりを並べないことです。失敗や葛藤こそ、読み手の共感を呼びます。柳井正氏の経営ノートを解説する動画(YouTube図書館)でも、試行錯誤の過程が学びとして語られています。ありのままの歩みが、物語に説得力を与えるのです。

写真・当時の資料で記憶を裏づける

文章だけでなく、写真や当時の資料を添えると、自伝はぐっと豊かになるでしょう。創業時の店舗写真、手書きのメモ、古い名刺。こうした素材は、当時の空気を読み手に伝え、記憶を裏づける証拠にもなります。

素材集めは、家族や古参の社員に声をかけてみるのも一つの手です。当時を知る人の記憶が、自分では忘れていた場面を呼び起こしてくれるでしょう。集めた素材は、日付や場面ごとに整理しておくと執筆時に役立ちます。

自費出版・電子書籍など残し方の選択肢

書き上げた自伝は、紙の本、電子書籍、社内配布用の冊子など、目的に応じて残し方を選べます。それぞれ費用感も届く範囲も異なるため、自社の狙いに合った方法を選ぶことが肝心です。

自伝の残し方 3つの選択肢
残し方費用感届く範囲向いているケース
自費出版(紙)高め広い手元に残す・贈答用にしたい
電子書籍抑えやすい広い費用を抑えて広く届けたい
社内冊子低め限定社員・関係者に共有したい

自費出版と電子書籍の違い

自費出版は、手元に残る形や贈答用に向いていますが、相応の費用がかかるものです。一方の電子書籍は、費用を抑えて広く届けやすい反面、紙ならではの重みは出しにくい面があります。どちらが優れているというより、目的次第で最適解は変わるものです。

個人が紙の本をAmazonから出版できるようになった状況を解説する動画(出版ウラ技SHOW)でも、出版のハードルが下がった今の環境が紹介されています。選択肢が広がった今こそ、自分に合った残し方を選べる時代。焦らず自分の目的に合う一つを選びましょう。

配布範囲と費用で選ぶ

残し方を選ぶ基準は、「誰にどこまで届けたいか」と「かけられる費用」の掛け合わせです。社内配布に限るなら簡易な冊子印刷で十分な場合もあります。広く一般に届けたいなら、電子書籍や商業的な自費出版が候補です。

まずは小さく始めて、反応を見てから広げる方法もあります。最初から大きく構えず、目的に見合った規模から着手する。その柔軟さが、無理のない自伝づくりを支えます。

自伝を経営に活かす活用法

自伝は書いて終わりではなく、経営の現場で活かしてこそ、その真価が引き出されます。社員教育、後継者への引き継ぎ、社外への発信など、活用の場は数多く残されているのです。一冊を眠らせず、経営の道具として使い倒しましょう。

社員教育と後継者への引き継ぎに使う

自伝は、理念を伝える教材として大きな力を発揮します。創業の想いや判断の背景を物語で知ることで、社員は会社の価値観を自分ごととして受け止めてくれます。とりわけ後継者にとって、先代の思考をたどれる一冊は貴重な道しるべです。

言葉で残された哲学は、日々の意思決定の拠りどころになります。経営者インタビューの現場でも、先代の言葉を胸に事業を継いだ経営者に幾度も出会ってきました。想いは、綴られてこそ受け継がれていくのです。

発信素材として社外にも届ける

自伝に綴った物語は、社外への発信素材としても活用できるのです。ブログやオウンドメディアで一部を紹介したり、講演で語ったりすることで、会社への理解と共感が広がっていくはずです。経営者の本を出版し事業成長につなげる動画(出版ウラ技SHOW)でも、書籍を起点にした発信の効果が語られています。

一冊の自伝は、使い方次第でいくつもの発信へと姿を変えていきます。想いを言葉にする支援が必要な場合は、オウンドメディアの伴走のような外部の力を借りる選択肢も検討してみてください。

よくある質問

Q. 文章が苦手でも経営者の自伝は書けますか。

書けます。いきなり完成度の高い文章を目指すのではなく、年表づくりやエピソードの箇条書きから始めれば、少しずつ形が見えてきます。どうしても筆が進まない場合は、話した内容を書き起こすインタビュー形式や、ライターの手を借りる方法もあります。

Q. 自伝を書くのにどのくらいの期間がかかりますか。

分量や進め方によって幅がありますが、素材集めから推敲まで含めると、数か月かけて取り組む方が多いようです。まとまった時間を一度に確保するより、週に少しずつ書き進めるほうが続けやすく、記憶も整理しやすいはずです。

Q. 成功談だけでなく失敗も書くべきですか。

失敗や転機を織り込むことをおすすめします。読み手が共感し、学びを得られるのは、順風満帆な話よりも困難を乗り越えた場面であることが多いためです。ありのままを誠実に綴ることが、物語に深みと説得力を与えます。

Q. 書いた自伝はどう使えばよいですか。

社員教育や後継者への引き継ぎ、採用の場での理念共有、外部への発信素材など、活用の幅は広くあります。自伝に込めた創業の想いや価値観は、言葉として残すことで組織の共通言語となり、経営の現場で長く息づいていくはずです。

Q. 自費出版と電子書籍はどちらがよいですか。

目的によって選び方も一つではありません。手元に残る形や贈答用なら紙の自費出版が向き、費用を抑えて広く届けたいなら電子書籍が適しています。社内配布に限るなら簡易な冊子印刷も候補です。誰にどう届けたいかを基準に選ぶとよいでしょう。

一冊の自伝には、決算書には決して載らない、あなただけの物語が刻まれます。歩んできた道のりの一つひとつが、これから会社を担う人たちへの何よりの贈り物。書き上げる過程そのものが、自らの経営を見つめ直す豊かな時間にもなります。完璧な文章でなくてかまいません。まずは記憶をたどり、一行を綴るところから始めてみましょう。その小さな一歩こそ、想いを未来へつなぐ確かな架け橋になるはずです。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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