自己資本比率を高める7つの方法|中小企業経営者が実践できる財務改善策

自己資本比率を高める7つの方法|中小企業経営者が実践できる財務改善策

自己資本比率を高める7つの方法|中小企業経営者が実践できる財務改善策

「自己資本比率が低くて銀行から指摘された」「融資審査で財務体質を問われた」—— そんな相談を、当社では経営者の方々から数多くいただいてきました。

自己資本比率は、中小企業の財務健全性を示す最重要指標の一つです。この数値を高めることで、融資審査での評価向上・金利交渉力の強化・事業承継時の企業価値アップという3つの効果が期待できます。

本記事では、自己資本比率を高める7つの具体的な方法を優先順位とともに解説します。DES(役員借入金の資本化)など中小企業ならではの手法も取り上げますので、自社の状況に合わせた改善策の参考にしてください。

自己資本比率とは何か|計算式と中小企業の目安

自己資本比率の計算式と構成要素

自己資本比率は、次の計算式で求めます。

自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100

「純資産」とは、総資産から借入金・買掛金などの負債を差し引いた残りの部分です。資本金・資本剰余金・利益剰余金(内部留保)の合計と考えると理解しやすいでしょう。「総資産」は、現金・売掛金・固定資産などすべての資産の合計です。

この比率が高いほど、外部からの借入に頼らず、自力で事業を支える財務基盤が整っています。

業種別・規模別の平均値と目安(中小企業庁調査より)

中小企業庁の「中小企業の財務指標(2023年版)」によると、業種別の平均自己資本比率は次の水準です。

業種別 自己資本比率の平均と安全圏の目安

業種中小企業の平均値金融機関が見る安全圏
製造業30〜40%概ね20〜30%
卸売業20〜30%15〜25%を確保したい
小売業15〜25%最低15%が下限
サービス業25〜35%20〜30%の維持が理想

出典:中小企業庁「中小企業の財務指標(2023年版)」。数値は目安で、業種・規模で個別判断。

業種中小企業の平均値(目安)金融機関が見る安全圏
製造業30〜40%概ね20〜30%が目安
卸売業20〜30%15〜25%を確保したい
小売業15〜25%最低15%が許容下限
サービス業25〜35%20〜30%の維持が理想

数値はあくまで目安です。業種・規模・成長フェーズによって個別判断が必要であり、税理士や担当融資先と相談しながら目標値を設定することが大切です。

自己資本比率が低いと何が問題になるのか

自己資本比率が低い状態が続くと、主に3つの問題が生じます。

第一に、融資審査が厳しくなります。金融機関は貸し倒れリスクを判断する際に自己資本比率を重視するため、低水準だと審査通過率が下がる傾向が確認できます。

第二に、資金調達コストが上昇します。信用力が低いと判断されると、金利条件が厳しくなったり、保証協会付き融資に限定されたりするケースが出てきます。

第三に、事業承継・M&Aの場面での企業価値評価に影響します。純資産が薄いと売却価格の算定根拠が弱くなるため、後継者へのバトンタッチがしにくくなります。

自己資本比率を高めるメリット|融資・信用・経営安定への影響

銀行融資の審査通過率と自己資本比率の関係

私が取材のなかで複数の経営者から聞いた話で共通していたのは、「財務体質を改善したら、銀行の態度が変わった」という実感です。

自己資本比率が20%を超えた時点で、メガバンクや地銀からのプロパー融資(保証なし)の打診が来るようになったという事例も、実際に複数の経営者から伺ってきました。数値が高いほど金融機関にとっての「稟議を通しやすい会社」になる、というのが実態です。なお経営者保証を外した保証なし融資の制度面については、経営者保証とは何か・保証なし融資を実現する制度活用ガイドもあわせてご覧ください。

信用金庫との関係づくりについては、信用金庫との付き合い方|融資を引き出す中小企業の関係構築法で詳しく解説しています。

金利交渉・返済条件の有利化

自己資本比率が高い会社は、融資金利の引き下げ交渉を有利に進めやすい立場に近づきます。「他行と比較検討している」という選択肢を持てるからです。金利差0.3〜0.5%でも、長期の設備投資ローンでは総支払額に大きな差が生まれます。

事業承継・M&A時の企業価値評価への影響

純資産が厚い会社は、事業承継やM&Aの場面でも評価が高くなる傾向があります。純資産価値法(簿価純資産+含み損益の調整)を用いた評価では、自己資本の大きさが直接、企業価値の下限を決めるからです。

自己資本比率を高める7つの方法|優先順位と実践ステップ

自己資本比率を高めるアプローチは、大きく「純資産を増やす」か「総資産を減らす」の2方向に分かれます。中小企業が実践しやすい順に解説します。

方法①:利益を積み上げて内部留保を厚くする

最も根本的で確実な方法が、毎期利益を出して内部留保を積み上げることです。当期純利益は決算を経て利益剰余金として純資産に蓄積されます。

10年かかっても毎年500万円の利益を出し続ければ、累計5,000万円の純資産増加につながります。劇的な変化ではなくても、銀行からは「継続して黒字を出せる会社」という評価が積み上がります。

利益を確保する手段の一つが、節税と利益計上のバランスです。決算賞与の要件と損金算入の条件|中小企業経営者が知るべき注意点では、利益と節税を両立する考え方を詳しく紹介しています。

方法②:役員借入金のDES(デット・エクイティ・スワップ)で資本化

中小企業で特によく活用されるのが、役員借入金のDESです。経営者が会社に貸し付けているお金を、株式と交換することで「負債→純資産」に振り替える手法です。

借入金が減り純資産が増えるため、自己資本比率が大幅に改善します。手元資金の流出がないのも大きなメリットです。

ただし手続きを誤ると税務リスクが生じるため、必ず税理士・司法書士と連携して進めることが前提です(詳しくは次の章で解説します)。

方法③:第三者割当増資や持分の追加払込

株主(役員・家族・既存株主)から追加の出資を受ける増資も、純資産を増やす手段です。外部投資家を入れる増資と、既存株主内で完結する増資の2種類があります。

中小企業の場合は持分比率の変化を嫌うケースが多いため、役員や親族からの払込増資が現実的な選択肢です。

方法④:不採算事業・不要資産の整理と売却

使っていない土地・機械・車両・遊休不動産などの不要資産を売却することで、総資産を圧縮して自己資本比率を高める方法です。

「分子(純資産)を増やす」のではなく「分母(総資産)を減らす」アプローチです。売却益が出れば純資産も増えます。不採算部門を整理することで、残す事業への経営資源の集中も実現できます。

方法⑤:借入金の早期返済と有利子負債の圧縮

借入金の残高を減らすことで、総資産が縮小して分母が小さくなり、自己資本比率が改善します。繰り上げ返済の際は、金融機関との関係を維持しながら進めることが大切です。

ただしキャッシュアウトが先行するため、資金繰りとのバランスを十分に確認した上で実施しましょう。

方法⑥:配当政策の見直しで内部留保を守る

毎年多額の配当を出している会社は、純資産が減り続ける構造になっています。配当を減額または停止し、その分を内部留保として積み上げることで自己資本比率の改善につながります。

株主が役員・家族のみという閉鎖的な株主構成の中小企業では、配当抑制の意思決定が比較的しやすいでしょう。

方法⑦:補助金・助成金の活用で返済不要の原資を確保

ものづくり補助金・IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金などの補助金は、原則として返済が不要です。補助金を受け取ると受贈益として純資産に算入されるため、実質的に自己資本が増加します。

採択後に財務体質が改善するという副次効果があるため、投資計画と補助金申請をセットで考えることをおすすめします。

DES(デット・エクイティ・スワップ)の実務|役員借入金を資本に変える手順

DESの仕組みと自己資本比率への効果

DES(Debt Equity Swap:デット・エクイティ・スワップ)とは、会社が負っている債務(Debt)を株式(Equity)に交換(Swap)する手法です。

DES(債務の資本化)で自己資本比率を高める流れ
STEP1役員借入金を確認資本に振り替える対象を特定
STEP2株主総会で決議現物出資(DES)の実施を決める
STEP3増資の登記借入金を資本金へ振替登記
STEP4税務申告債務消滅益など税務処理を確認

借入金が資本に変わり自己資本比率が上がる。税務・登記は専門家と進める。

役員(経営者)が会社に貸し付けているお金を、株式として引き受ける形にします。帳簿上は「役員借入金(負債)の減少」と「資本金・資本剰余金(純資産)の増加」が同時に起こるため、純資産比率が大きく改善します。

DESの手続きフロー(株主総会・登記変更)

実際のDES実施フローは次のとおりです。

  1. 役員借入金の残高確認:貸借対照表の「役員借入金」「短期借入金(役員分)」を税理士と一緒に整理します
  2. 第三者割当増資の決議:株主総会(または取締役会)で増資を決議し、役員が自身の債権を現物出資する旨を承認します
  3. 変更登記の申請:司法書士に依頼して法務局へ資本金増加の変更登記を申請します(2週間程度)
  4. 税務申告書の修正:DES後の貸借対照表に基づいて申告書を修正します

手続き全体で1〜3か月程度を見込んでおきましょう。

DES実施時の税務上の注意点と落とし穴

DESで最も注意すべきは、「現物出資する債権の時価評価」です。役員が会社に貸しているお金が帳簿価額(額面)と時価が著しく乖離している場合、差額が「みなし贈与」として課税されるリスクがあります。

特に会社の財務状態が悪く、債権の回収可能性が低い場合は時価が帳簿を大きく下回ることがあります。税理士に事前に「時価評価鑑定」を依頼し、課税リスクを確認してからDESに進むことが絶対条件です。

自己資本比率改善を急ぎすぎるリスク|中小企業が陥りやすい失敗パターン

借入金の一括返済で手元資金が枯渇するケース

当社が取材を通じて知った事例の中に、「自己資本比率を上げたくて借入金を一括返済したら、翌月の仕入れ資金が足りなくなった」というケースがありました。

自己資本比率の改善より、手元キャッシュの安全圏(月商の2〜3か月分)を確保することが先です。数字を改善した結果、資金繰りが悪化しては本末転倒です。

不採算事業整理で人材・技術が流出するリスク

不採算事業を整理する際は、その部門に携わる人材・技術・取引先との関係も一緒に失うリスクがあります。将来の事業転換の核になりうる可能性を、財務指標の短期改善のために捨てていないかを慎重に検討する必要があります。

バランスシートの改善と事業成長を両立させる考え方

財務体質と事業成長は、二律背反ではありません。利益を出して内部留保を積み上げる方法①が最も望ましいのは、財務改善と事業成長が同時進行するからです。

短期前払費用の節税活用|要件・仕訳・注意点を経営者向けに解説で紹介した節税手法を活用しながら、内部留保を守ることも選択肢の一つです。

自己資本比率改善の実践ロードマップ|まとめとチェックリスト

自己資本比率改善 3年ロードマップの立て方

3年間で自己資本比率を改善するための基本的な考え方を整理します。

自己資本比率を高める7つの方法(目安評価)

方法即効性難易度費用負担
DES(債務の資本化)
内部留保の積み増し
不要資産の売却
増資(第三者割当等)
借入金の返済
配当の抑制
補助金・助成金の活用

※即効性・難易度・費用の目安(◎○=取り組みやすい/△=要検討)。自社状況で優先順位づけを。

1年目(現状把握と即効策):現在の自己資本比率を正確に算出し、役員借入金のDES・不要資産の売却など即効性のある手法を税理士と検討します。

2年目(利益体質の定着):収益構造を改善し、黒字を安定的に継続できる体制を整えます。補助金申請と組み合わせることで、改善スピードを上げることも可能です。

3年目(金融機関との関係強化):改善した財務体質を武器に、金融機関との関係をプロパー融資の打診が来るレベルに引き上げます。

税理士・金融機関との相談前に用意すべき書類リスト

  • 直近3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書)
  • 役員借入金の残高明細
  • 保有資産の一覧(不動産・機械・車両など)
  • 借入金の返済スケジュール表

これらを用意した上で税理士に相談すると、自社の状況に合った改善策の優先順位をスムーズに決定できます。

自分の足で立てる会社の3条件

TKC全国会の要職を歴任してきた税理士・山下明宏氏(2026年6月の経営実践研究会講演)は、「金融機関から自力で調達できる会社になるには、税理士だけが整えられる2つの条件と、会社自身が作る3つの条件がある」と語っています。

税理士側が証明できる条件(2つ) – 中小会計要領に準拠した帳簿・決算書の作成 – 書面添付(証明書3種:関与内容・試算表・経理実態の証明)

会社自身が作る条件(3つ)2期連続の利益増加(改善の継続性を見せる) – 自己資本比率30%以上(財務体質の基礎水準) – 税引前利益がプラス(直近期の黒字)

「この5条件が揃った会社は、経営者保証なしのプロパー融資の土台に立てる」というのが山下氏の見立てです。自己資本比率30%という水準は一つの到達点として意識しておく価値があります。

まとめ:内部留保の積み上げが最も確実な長期戦略

自己資本比率を高める7つの方法をまとめると、以下の優先順位が見えてきます。

即効性の高い手法(DES・不要資産売却・借入返済)と、持続的な改善(利益積み上げ・補助金活用)を組み合わせるのが現実的です。ただしどの手法も「キャッシュフローを犠牲にしない範囲で」という大前提があります。

なお、山下氏は同講演の中で「自己資本比率の推移をAIに読ませて”物語”にすると、経営が面白くなる」とも述べています。ローカルベンチマーク(経産省の財務6指標+非財務4視点の経営診断ツール)と組み合わせることで、数字の変化を自社の物語として言語化し、金融機関との対話に活かすことができます。財務と理念を一体で語る発展形としては、中小企業の統合報告書で信頼を築く方法も参考になります。

「数字の改善」と「事業成長」を両立させるために、ぜひ信頼できる税理士と3年単位の計画を立ててみてください。

よくある質問(FAQ)

自己資本比率を高めるために最初にやるべきことは何ですか?

まず現在の自己資本比率を計算し、業種平均と比べて低い場合は原因を特定することが先決です。原因が「赤字の累積」なら収益改善が最優先で、「役員借入金が多い」ならDESが有効、「不要な資産がある」なら売却を検討します。直近3期の決算書を税理士と見ながら優先順位を決めましょう。

役員借入金のDESはどんな会社に向いていますか?

役員が会社に多額の貸付金を持っており、その返済よりも財務体質の改善を優先したい場合に向いています。特に事業承継を控えている会社では、自己資本比率を高めておくことで企業価値評価が上がり、後継者への承継がスムーズになるケースが多いです。ただし課税リスクがあるため、必ず税理士・司法書士と連携して実施してください。

自己資本比率が20%を下回ると融資を断られますか?

20%を下回ると融資審査が厳しくなる傾向はありますが、それだけで融資が断られるわけではありません。直近の業績トレンド・キャッシュフロー・担保・経営者の信頼性なども総合的に評価されます。ただし保証協会の保証付き融資が求められたり、金利条件が厳しくなる可能性は考慮しておくべきです。

自己資本比率を高めるのに何年くらいかかりますか?

内部留保の積み上げだけで改善するには、年間利益が薄い中小企業では5〜10年単位になることもあります。一方でDES(役員借入金の資本化)は手続きを踏めば1〜3か月で純資産を増やすことが可能です。不採算事業の整理や資産売却を組み合わせることで、改善スピードを大幅に上げる選択肢も視野に入ります。

増資して自己資本比率を高めることはできますか?

第三者割当増資や株主からの追加払込により純資産を増やすことで自己資本比率は向上します。中小企業では外部投資家を入れることへの慎重さから、増資より役員借入金のDESや内部留保の積み上げを選ぶケースが多い状況です。事業承継や将来の上場・M&Aを視野に入れている場合は、増資も有力な選択肢になります。

参考資料

  • 中小企業庁:中小企業の財務指標(2023年版)
  • 国税庁:法人税基本通達(資本に関する取扱い)
  • 中小企業庁:ものづくり補助金・IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金の概要
飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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