「いい会社」の答えは、もう出ている——なぜ経営者はそれをやらないのか

「いい会社」の答えは、もう出ている——なぜ経営者はそれをやらないのか

経営者と話していると、不思議な共通点に出会うことがあります。

「いい会社をつくりたい」と、みんな言う。けれど、その「いい会社」が具体的に何を指すのか、突き詰めて言語化できている人は意外と少ない。売上なのか、利益なのか、それとも働く人の表情なのか。輪郭がぼんやりしたまま、日々の数字に追われていく。

僕自身、コントリという会社をやりながら、何度もこの問いに引き戻されます。自分の経営の目的は何なのか。これを自分自身に常に問いかける。答えが出ないまま走っている日も、正直あります。

ただ、最近ひとつだけ、自分なりに腹落ちしてきた「答え」のようなものがあるんです。今日はそれを、経営者の一人として書いてみたいと思います。

人が働く理由は、たぶんひとつしかない

人は、何のために働いているのか。

物心両面の豊かさが回る仕組み
01能力開発
02成果が出る
03報酬と誇り
04豊かな人生
この循環が、個人の頑張りや上司の気分ではなく、会社の構造として回っていること。それが「仕組み」。

突き詰めると、物心両面の豊かな人生を手に入れるため——僕はそこに行き着くと思っています。お金だけでも足りない。やりがいだけでも続かない。経済的な安心と、心の充実。その両方がそろって、はじめて人は前を向ける。

だとすれば、経営者の仕事はシンプルになります。社員一人ひとりが、物心両面で豊かになっていく仕組みをつくること。能力が開発され、それが報酬と誇りにつながり、結果として人生が豊かになる。その循環を会社の中に組み込めれば、それは自然と「いい会社」になっていく。

答えは、もう出ているんですよね。能力開発と豊かな人生を手に入れる仕組みをつくる。これが答え。なのに、みんななかなかやらない。理由は、たぶん地味で、時間がかかって、すぐに数字に出ないから。

仕組みという言葉が、少し冷たく響くかもしれません。でも、僕がここで言いたいのは「管理を強める」という話ではないんです。むしろ逆で、社員が自分の力で伸びていける環境を、あらかじめ用意しておくということ。学ぶ機会があって、それを試す場があって、成果がきちんと評価され、報酬や誇りに返ってくる。この流れが個人の頑張りや上司の気分に左右されず、会社の構造として回っている。それが仕組みだと思っています。属人的な熱意だけで支えている会社は、その人がいなくなった瞬間に止まってしまう。だからこそ、構造に落とし込む。

「流されない人」をどう育てるか

仕組みの話をする前に、もうひとつ大事な前提があります。

大地に根を張り、風に流されず立つ一本の木
強い根を張った木は、風に流されない。自ら考え、自ら判断する人も同じ。

世の中の大半の人は、自分の意思を強く持てないまま、流されて日々を過ごしている。これは責める話ではなくて、人間の性質に近いものだと思っています。優柔不断や疑念や恐れは、放っておくと結束して、人を動けなくさせる。

だからこそ、会社というのは、人が自ら考え、自ら行動できるようになる場であるべきだと考えています。トレーニングを通じて、流されない人間になっていく。指示を待つのではなく、自分の頭で判断する。その筋肉を、仕事の中で鍛えていく。

経営者と向き合う中で感じるのは、社員の成長を「研修費」のコストとしか見ていない会社と、「人生を豊かにする投資」として設計している会社では、数年後の景色がまったく違うということ。後者には、流されない人が育っていく。そういう人が増えた会社は、強い。

メンバー選びを、妥協しない

ここは、僕が最近いちばん考えていることかもしれません。

メンバー選びは「順番」を間違えない
×よくある順番 まず相手に合わせる 機嫌をとり、動いてもらおうとする 信念の方向がずれたまま進む 結局、どちらも疲れて不幸になる
本来の順番 まず自分の願望を明確にする 同じ方向を向ける人と組む 強い信念を持った人で固める 成果を出すチームになっていく

成果を出すチームをつくろうと思ったら、強い信念を持った人で固めること。これに尽きると思うんです。能力ももちろん大事だけど、それ以上に、自分の意思で立っている人かどうか。

経営者がやりがちな失敗は、相手に合わせようとすること。この人にどう動いてもらおうか、どう機嫌をとろうか、と。でも本来の順番は逆なんですよね。まず自分の願望を明確にする。そのうえで、それを一緒に実現できるパートナーを見つける。相手に自分を寄せていくのではなく、同じ方向を向ける人と組む。

ドライに聞こえるかもしれません。でも、信念の方向が違う人と無理に進もうとすると、結局どちらも不幸になる。だからメンバー選びは、経営の中でいちばん妥協してはいけないところだと思っています。

価値ある商品が、豊かさの土台になる

仕組みと人。その先に、もうひとつ欠かせないものがあります。

工房の壁に整然と並ぶ手入れされた道具
道具を手入れし、価値を磨き続ける。その過程そのものが、人を育てる。

それは、価値ある商品やサービスを生み出し続けること。どんなにいい組織をつくっても、世の中に価値を届けられなければ、豊かさの原資は生まれません。価値ある商品の開発は、社員の豊かな人生のためにも絶対に必要なんです。

コントリでいえば、経営者インタビューメディアも、ハッシンラボの発信支援も、根っこにあるのは「中小企業の想いを、ちゃんと届く形にする」という価値です。世の中には、本当はすごい技術や哲学を持っているのに、それが伝わっていない会社がたくさんある。その魅力を伝わる形にして届けること。それが僕らの価値であり、僕らが豊かさを生み出す源泉だと思っています。

おもしろいのは、価値を磨く過程そのものが、人を育てるということ。いいものをつくろうと頭をひねる時間は、そのまま能力開発の時間になっている。お客さまに本気で向き合えば、自分たちも本気で考えるしかなくなる。価値づくりと人づくりは、実は同じひとつのことの裏表なんじゃないか。最近はそんなふうに捉えるようになりました。だから僕は、目先の効率より、価値の中身にこだわりたいと思っています。

良い情報を入れ、良い思考を採用し、価値ある商品を磨き続ける。この循環を回せる会社は、外の景気に流されにくくなる。土台が、自分の内側にあるからです。

それでも、問い続けることをやめない

正直に言えば、ここまで書いたことを、僕自身が完璧にできているわけではありません。

仕組みも、まだ途中。メンバーとの関係も、日々試行錯誤。価値ある商品も、満足できるところにはほど遠い。それでも、自分が変わろうとしなければ何も変わらない、という一点だけは握りしめています。外側が変わるのを待つのではなく、内側を先に変える。経営者にできる最初の一歩は、たぶんそこだけなんですよね。

自分の経営の目的は何なのか。この問いを、僕はこれからもずっと自分に投げ続けます。答えが出ない問いを抱え続けることが、流されない経営の正体なのかもしれません。

もし発信のことや、想いの届け方で迷っている経営者がいたら、気軽に声をかけてほしいなと思います。同じ問いを抱える者同士、一緒に考えられたら嬉しいです。


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