コラム

中小企業の経営者・ビジネスパーソンに向けたコラム記事をまとめています。経営戦略やビジネスモデル、人材・組織づくり、マーケティング、財務、法務など、日々の意思決定に役立つ実践的な知見と、経営者自身の言葉による気づきをお届けします。

資金繰りが悪化したときの初動|中小企業が倒産を避ける順番

資金繰りが悪化したときの初動|中小企業が倒産を避ける順番

月末の支払いを前に、通帳の残高を何度も見返してしまう。悪化し始めたときに重いのは、数字よりも「この先どうなるのか」というわからなさではないでしょうか。

資金繰りが悪化したときの初動は、「何日もつか」を数字で出すことから始まります。手元の現金が尽きる週がわかれば、支払いの優先順位、金融機関への相談時期、使える公的支援の順番が決まります。売上を増やす策は、その後で考えても遅くありません。

本記事では、悪化に気づいてから最初の2週間の判断を順番どおりに並べ、危機を越えた経営者の言葉も紹介します。いま厳しい局面にいる方の、次の一手を決める材料になれば嬉しく思います。

資金繰りが悪化したとき、最初に確かめるのは「何日もつか」

資金繰りの悪化に気づいたら、最初に出すべき数字は「今の現金で会社が何日もつか」です。この日数が、打てる手の数と期限を決めます。

売上を増やす策から考えたくなる気持ちは自然なものです。しかし新しい売上が現金になるまでには、受注から請求、入金まで数か月かかることも珍しくありません。手元の日数より先に入金が来なければ、どれほど良い策でも間に合わないのです。

手元資金を日数に直す計算のしかた

計算はシンプルです。手元の現金と普通預金の合計を、1日あたりの平均支出で割ります。1日あたりの平均支出とは、給与・家賃・仕入れ・返済など、毎月出ていくお金の合計を30で割った金額のことです。

以下は編集部による試算で、実際の統計データではありません。手元資金が1,500万円、毎月の支出が1,000万円の会社なら、1日あたりの支出は約33万円です。入金がまったくないと仮定すれば、もつのは約45日という計算です。実際には入金があるため日数は延びますが、最悪のケースを一度数字で見ておくと、判断の基準が定まります。

この数字は、経営者の頭の中にある「なんとなく苦しい」を、具体的な期限に置き換えてくれます。漠然とした不安は、日数に変わった瞬間に、段取りを組める課題へと姿を変えるものです。

13週の資金繰り表で、資金が尽きる週を特定する

日数の次に作りたいのが、週単位で13週先まで見通す資金繰り表です。資金繰り表とは、入ってくるお金と出ていくお金を時系列で並べ、各時点の残高を予測する表のことです。例えば「第6週に入金が少なく、給与支払いと重なって残高がマイナスになる」といった山場が見えてきます。

月単位の表では、月の途中に来る支払いの山を見落としがちです。13週、つまり約3か月を週ごとに区切ると、どの週に何を手当てすべきかがはっきりします。表の基本的な作り方は、資金繰り表の作り方|黒字倒産を防ぐ書き方と資金管理の基本で詳しく解説しています。

数字を社長一人で抱えず、経理と同じ表を見る

資金繰りの数字は、社長一人の頭の中に置いておくほど判断が遅れます。経理担当者や顧問税理士と同じ表を見て、週に一度は残高の見込みを更新する体制を作ってください。

筆者は経営者の方への取材を重ねるなかで、苦しい時期の数字を誰にも見せられなかったというお話を何度も伺ってきました。数字を共有すると、経理担当者から「この入金は前倒しをお願いできます」といった具体策が出てくることもあります。一人で抱えないことは、気持ちの問題である前に、打ち手を増やすための実務です。

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資金繰りが悪化する原因は「利益」ではなく「お金の流れ」にある

資金繰りの悪化は、赤字だけが原因ではありません。黒字でも、入金より支払いが先に来る構造があれば現金は足りなくなります。原因の型を見分けると、打つべき手が変わります。

ここでは代表的な3つの型を取り上げます。自社の型がわかれば、支払いの優先順位や金融機関への説明が具体的になります。資金繰りの基本的な考え方は、資金繰りとは|中小企業が黒字でも倒産しないための資金管理の基本もあわせてご覧ください。

売掛金の回収が延びて現金が入らない

売掛金とは、商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていないお金のことです。例えば「月末締め、翌々月末払い」の取引先が増えると、売上が伸びるほど現金の入りが遅れていきます。

この型では、売上が好調に見えるぶん、悪化に気づくのが遅れがちです。手当ての方法は、回収条件の見直しの交渉、期日を過ぎた売掛金の督促、そして新規取引の支払い条件を最初に決めておくことです。成長期の会社ほど、この型に陥りやすいと言えます。

在庫と前払いに現金が眠っている

在庫は、倉庫に積まれた現金です。売れるまでは1円も現金になりません。

仕入れの単価を下げるためにまとめ買いをした結果、手元の現金が細る。そうした場面は、製造業や小売業で多く見かけます。

この型の手当ては、動きの遅い在庫を洗い出し、値引きしてでも現金に換えるかどうかを決めることです。帳簿上の利益が少し減っても、現金が戻れば資金繰りの日数は延びます。利益と現金のどちらを優先する局面かを、ここで判断することになります。

借入の返済額が利益を上回っている

もう一つ見落とされやすいのが、借入金の返済です。返済の元金部分は経費になりません。そのため利益が出ていても、返済額が利益を上回れば現金は減り続けます。

実質無利子融資とは、コロナ禍で国や自治体が利子を肩代わりした融資のことです。

これを受けた会社は、返済が始まった時点で一度確かめておきたい型です。年間の返済額と、税引後利益に減価償却費を足した金額を並べてみてください。返済額のほうが大きければ、構造的に現金が減る状態です。この場合は、次の章以降で扱う返済条件の見直しが中心の打ち手になります。

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出ていくお金の優先順位を決める

現金が足りないとき、すべての支払いを予定どおりに守ることはできません。守る順番を先に決めておくと、慌てて誤った判断をすることを避けられます。最優先は、従業員の給与と、事業を止めないための支払いです。

優先順位を決めることは、誰かへの支払いを後回しにすることでもあります。だからこそ、後回しにする相手には事前に相談し、勝手に遅らせないことが信用を守る分かれ目です。

次の表は、支払い先ごとの優先度と考え方を整理したものです。

支払い先優先度考え方相談先
従業員の給与最優先遅れると人が離れ、事業そのものが止まる社内で状況を共有する
事業継続に欠かせない仕入れ・外注高止まると売上と入金が止まる取引先に支払い時期を事前相談
家賃・水道光熱費高営業の場を失わないために守る大家・管理会社
税金中猶予制度があるので納期限前に申請する税務署・都道府県・市区町村
社会保険料中滞納前に分割納付を相談する年金事務所
金融機関への返済中条件変更を正式に申し込み、無断で止めない取引金融機関

表の優先度は、事業を止めないことを基準にした編集部の整理です。業種によって順番は入れ替わります。それでも「止めてはいけない支払い」と「相談すれば待ってもらえる支払い」を分ける軸は共通です。

給与と仕入先への支払いを先に守る

給与は、会社を支える人への約束です。遅配は従業員の生活に直結し、信頼が一度崩れると立て直しには長い時間がかかります。仕入先への支払いも、止めれば商品が入らず、売上と入金がそこで途切れます。

この2つを守るために、ほかの支払いを調整するという順番で考えてください。どうしても仕入先への支払いが難しい場合は、期日の前に電話を入れ、いつ・いくら払えるかを具体的に伝えます。黙って遅らせるのと、事前に相談するのとでは、相手の受け止め方がまったく違います。

税金と社会保険料は滞納前に分割を相談する

税金には、一度に納めると事業の継続が難しくなる場合に使える猶予制度が2つあります。国税庁によると、どちらも申請して許可を受ければ、原則1年以内の期間で分割して納付できます(国税庁 No.9206 国税を期限内に納付できないとき)。

1つ目の納税の猶予とは、災害や病気、事業の休廃業、大きな損失などで納付が難しい場合に使う制度のことです。2つ目の換価の猶予とは、そうした特別な事情がなくても、一度に納めると事業の継続が難しくなる場合に使える制度です。換価の猶予は、納期限から6か月以内に申請します。

社会保険料も、年金事務所に相談すれば分割納付が認められることがあります。どちらにも共通するのは、滞納してからではなく、納期限の前に動くほど選択肢が広いという点です。滞納が続くと延滞金がかさみ、最終的には財産の差し押さえに進むおそれがあります。

やってはいけない資金の手当て

資金繰りが苦しいときほど、判断を急いで避けるべき手を選びがちです。代表的なのは、高金利の事業者ローンや、手数料の高いファクタリングに頼り続けることです。ファクタリングとは、売掛金を専門業者に買い取ってもらい、入金日より前に現金化する仕組みのことです。一時的には助かっても、手数料が積み重なると利益が削られていきます。

経営者個人の資産や家族のお金をつぎ込み続けることも、慎重に考えたい手です。会社の構造的な問題が解決しないまま個人の資金だけが減ると、再起の余地まで失いかねません。ここで紹介した手は一時しのぎとして使うものであり、次の章で扱う金融機関との相談とセットで考える必要があります。

金融機関には、資金が尽きる前に相談する

返済の条件を変えてもらう相談は、資金が尽きる前に持ち込むほど選択肢が残ります。直前の相談では、金融機関も検討の時間を取れません。相談の場には、資金繰り表と改善の見通しを持っていくのが基本です。

金融庁は、米国の関税措置を受けた2025年4月の大臣談話で、金融機関にきめ細やかな資金繰り支援の徹底を求めました。条件変更の状況は、銀行と政府系金融機関から毎月報告させる方針です(金融庁 2025年4月22日 大臣談話)。相談すること自体を、ためらう必要はありません。

金融機関への相談時期で、残る選択肢はどう変わるか
資金が尽きる3か月前に相談した場合
3か月前
13週の資金繰り表と改善の見通しを持って、金融機関に相談する。
検討の時間がある
金融機関も内容を確かめる時間を取れる。
選択肢が残る
原因に合わせて、次の手を選べる。
リスケ追加融資計画策定支援の活用
資金が尽きる2週間前に相談した場合
2週間前
直前になってから、金融機関に相談を持ち込む。
検討の時間が取れない
直前の相談では、金融機関も検討の時間を取れない。
選択肢が狭まる
資金が尽きる前に持ち込むほど選択肢が残るため、直前では残る手が少なくなる。
リスケ追加融資計画策定支援の活用
※本文の「資金が尽きる前に持ち込むほど選択肢が残ります」をもとにした編集部の整理です。

リスケジュールで返済を一時的に軽くする

リスケジュール(リスケ)とは、金融機関との合意のもとで、借入金の返済額を減らしたり、返済期間を延ばしたりすることです。例えば毎月100万円の元金返済を、半年間だけ利息の支払いのみにしてもらうといった形があります。

リスケの間は、毎月出ていく現金が大きく減ります。

その時間を使って、事業の立て直しに集中できるのが最大の効果です。一方で、リスケ中は新しい融資を受けにくくなるのが一般的です。だからこそ、リスケの期間で何を立て直すのかを、計画として示すことが求められます。

相談のときに持っていく3つの資料

金融機関に相談するときは、次の3つを用意すると話が早く進みます。

1つ目は、最初の章で作った13週の資金繰り表です。2つ目は、直近の試算表と決算書です。試算表とは、月ごとの売上や費用、資産の状況をまとめた途中経過の決算書のことです。悪化の原因を数字で説明できる状態にしておきます。3つ目は、改善の見通しです。どの費用を削り、どの売上をどう回収するのか、半年から1年の計画を簡単でもよいので文章にしておきます。

金融機関が知りたいのは、「この会社は状況を正しく把握しているか」という一点です。悪い数字を隠さず、自社の言葉で説明できる経営者ほど、相談の場で信頼を得られます。

新しい借入で穴を埋める前に考えること

資金が足りないとき、追加の借入で当面を乗り切るのも一つの手です。ただし、悪化の原因が構造的なものなら注意が必要です。借入は返済の負担を増やし、数か月後に同じ状況を大きくして繰り返すことになりかねません。

借りる前に、「この借入で、資金が足りなくなる原因は解消されるのか」を自問してください。原因が売掛金の回収遅れのような一時的なものであれば、つなぎの融資は有効に働きます。返済が利益を上回る構造なら、まず必要なのは返済条件の見直しのほうです。

一人で抱えない――公的な相談先と制度

資金繰りが悪化したときに使える公的な仕組みは、思った以上に用意されています。国の相談窓口や政策金融を知っているかどうかで、残る選択肢が変わります。専門家に払う費用の一部を国が負担する制度もあります。

民間のコンサルタントや金融業者に相談する前に、まず公的な窓口を一度使ってみてください。相談は無料のものが多く、中立的な立場から状況を整理してもらえます。

資金繰りが悪化したときの公的な相談先4つ
協中小企業活性化協議会
相談できること金融機関との調整や、再生計画の策定支援
公日本政策金融公庫
相談できること一時的に売上が落ちた会社向けのセーフティネット貸付
よよろず支援拠点
相談できること各都道府県にある、無料で利用できる身近な相談先
納税務署・年金事務所
相談できること税金の猶予制度や、社会保険料の分割納付(滞納前に)
民間に相談する前に、まず公的な窓口を一度使ってみる
※公的窓口の多くは無料で、中立的な立場から状況を整理してもらえます。

中小企業活性化協議会に相談する

中小企業活性化協議会とは、国が全都道府県に設置している、中小企業の収益力改善や事業再生を支援する公的な窓口のことです。2022年4月に、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合されて生まれました(中小企業庁)。

協議会では、資金繰りの悪化した会社の相談を受け、必要に応じて金融機関との調整や再生計画の策定を支援します。窓口は各都道府県の商工会議所などに置かれています。顧問税理士やメインバンクに相談しにくい状況でも、第三者の立場から話を聞いてもらえるのが大きな利点です。

日本政策金融公庫のセーフティネット貸付

日本政策金融公庫には、社会的・経済的な環境の変化で一時的に売上が落ちている会社向けの融資制度があります。代表的なものが、セーフティネット貸付の一つである経営環境変化対応資金です。中長期的には業況の回復が見込める会社が対象です。

民間の金融機関で追加融資が難しい場合でも、公庫の制度が使えることがあります。要件や限度額は、時期や事業規模によって変わります。最新の条件は日本政策金融公庫の融資制度一覧や窓口で確認してください。

小さな会社の例もあります。株式会社グラヴィティPRの山田佳奈恵氏は、コロナ禍で月商数万円が3か月続き、廃業を本気で考えました。そこで日本政策金融公庫の融資を受け、その資金で広報の講座に申し込んでいます。受講1か月後から仕事を獲得し、売上は月100万円台まで回復しました(コントリ取材記事より)。借りたお金を、穴埋めではなく次の売上をつくる力に使った例です。

経営改善計画の策定支援で専門家の費用を抑える

金融機関にリスケを相談する際、経営改善計画の提出を求められることがあります。この計画づくりを専門家に頼むとき、費用の一部を国が負担するのが経営改善計画策定支援事業です。中小企業庁の資料では、認定経営革新等支援機関に支払う費用の3分の2を、中小企業活性化協議会が負担するとされています。

認定経営革新等支援機関とは、国が認めた税理士や中小企業診断士、金融機関などの専門家のことです。顧問税理士が認定を受けていれば、そのまま計画づくりを依頼できます。身近な相談先としては、各都道府県のよろず支援拠点も無料で利用できます。

危機を越えた経営者が、あとから振り返って語ること

資金繰りの危機を越えた経営者の話には、共通する気づきがあります。取材した事例では、悪い数字を隠さず周りに伝えた経営者のもとに、人が残っていました。

コントリでは、経営危機を経験した8社の取材記録を横断して読みました。立ち直りの起点に「社員」を挙げたのは、8社中6社でした(経営危機を経験した経営者8人に聞いた|会社が傾いたとき何が起きたか)。融資でもコスト削減でもなく、人だったのです。ただし、これは立ち直った会社だけを見た記録であり、同じ選択で倒れた会社は含まれていない点に留意が必要です。

経営危機を経験した8社の取材記録から
立ち直りの起点に「社員」を挙げたのは 8社中 6社 融資でもコスト削減でもなく、人だった
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損失の規模
月商数万円→1か月8.5億円
※立ち直った会社だけを見た記録であり、同じ選択で倒れた会社は含まれていない点に留意が必要です。
出典:コントリ取材記事「経営危機を経験した経営者8人に聞いた|会社が傾いたとき何が起きたか」

悪い数字を早く伝えたことで、社員が味方になった

株式会社Reviewの藤本茂夫氏は、2,000万円の累損を自ら引き受けて代表に就任しました。就任時の口座残高は50万円。全社員を解雇しなければ自分の給与も出せない状況を、メンバーに正直に伝えています(コントリ取材記事より)。返ってきたのは、次の言葉でした。

「やれるだけやりましょう」

藤本氏を含む3〜4人が、無給のまま働く日々が7か月続きます。8か月後に初めて受け取った給与は10万円でした。藤本氏はこう振り返っています。「あの10万円は、過去の給料の中で一番記憶に残っています」。

藤本氏の例では、状況を隠さず伝えたことが人を残しました。取材を通じて筆者が感じるのは、数字を開示する勇気が、そのまま周りの協力を引き出す力になるということです。

売上を追う前に、利益の出ない構造を見直した

株式会社アケボノの細田健一氏は、前身の会社を年商50億円まで育てました。その会社で、民事再生を経験しています(コントリ取材記事より)。原因について、細田氏は次のように語りました。

「そもそも利益が出ていなかったんですよ。なのに拡大していっちゃった」「売上はあっても利益が残らない、自転車操業ですね」

その後、家業で代表に就いた細田氏は、新築から撤退し、塗装・防水・大規模修繕に領域を絞る判断をしています。資金繰りが悪化したときに売上の拡大で解決しようとすると、利益の出ない仕事まで抱え込むことがあります。利益の出る領域に絞り込むことが、資金の流れを立て直す近道になる場合もあるのです。

危機のあとに残す「毎月の資金の見える化」

株式会社NEXT ONEの斉藤徹氏は、2021年1月に電力市場の高騰に直面しました。1か月で8.5億円の損失です(コントリ取材記事より)。友人に「事故だよ」と慰められても、斉藤氏はこう受け止めています。

「本質的には、自分の経営が甘かったんだと感じました」

危機の原因を外ではなく自分の経営に置いたこと。その姿勢は、危機のあとの仕組みづくりにもつながります。資金繰りの悪化を一度経験した会社にとって、最も価値のある遺産は、毎月の資金の動きを社内で見える状態にしておく習慣です。13週の資金繰り表を危機のときだけで終わらせず、平時も更新し続けることが、次の悪化を早く察知する備えになります。

危機を越えた経営者3人の言葉
「あの10万円は、過去の給料の中で一番記憶に残っています」
藤本茂夫氏(株式会社Review)8か月後に初めて受け取った給与について
「売上はあっても利益が残らない、自転車操業ですね」
細田健一氏(株式会社アケボノ)民事再生を経験した会社の原因について
「本質的には、自分の経営が甘かったんだと感じました」
斉藤徹氏(株式会社NEXT ONE)1か月で8.5億円の損失について
危機のあとに残したいのは、毎月の資金の動きを社内で見える状態にしておく習慣。13週の資金繰り表は、平時も更新し続ける。
出典:コントリ取材記事

まとめ|資金繰りが悪化したら、日数を出して順番に動く

資金繰りが悪化したときの初動は、5つの判断を順番に進めることに尽きます。まず手元の現金で何日もつかを出し、13週の資金繰り表で資金が尽きる週を特定します。次に、悪化の原因が売掛金・在庫・返済のどの型かを見分けます。そのうえで支払いの優先順位を決め、金融機関には資金が尽きる前に相談します。公的な相談先も使い、一人で抱えない体制をつくります。

不安が大きいときほど、全体が見えないことが判断を鈍らせます。逆に言えば、日数と週と相談先が見えれば、やるべきことはかなり絞られます。危機を越えた経営者たちが語っていたのも、数字を早く開示し、周りの力を借りたことでした。

今日できる一つ目の行動は、手元資金を1日あたりの支出で割り、「あと何日」を紙に書き出すことです。その数字が、次に電話をかける相手と、その時期を教えてくれます。

関連して、黒字化の判断軸を整理したい方は損益分岐点の計算方法|中小企業が黒字化を判断する4ステップも参考になります。

よくある質問

Q. 資金繰りが悪化したとき、最初に何をすればよいですか? A. 手元の現金で何日もつかを計算し、13週程度の資金繰り表で資金が足りなくなる週を特定します。その週から逆算して、支払いの優先順位と金融機関への相談時期を決めると、打つ手の順番が見えてきます。

Q. リスケジュールを申し込むと、新しい融資は受けられなくなりますか? A. リスケ中は新規融資が難しくなるのが一般的です。ただし経営改善計画を作り、計画どおりに改善が進めば、正常な取引に戻る道もあります。早めに金融機関と見通しを共有しておくことが、その後の選択肢を守ります。

Q. 税金や社会保険料が払えないときはどうすればよいですか? A. 滞納する前に、税務署や年金事務所に相談してください。国税には申請により原則1年以内の分割納付が認められる猶予制度があり、換価の猶予は納期限から6か月以内に申請します。社会保険料も分割納付を相談できます。

Q. 資金繰りの相談はどこにすればよいですか? A. 顧問税理士やメインバンクに加え、公的な窓口にも相談できます。各都道府県の中小企業活性化協議会、日本政策金融公庫、よろず支援拠点などです。公的窓口の多くは無料で、中立的な立場から状況を整理してもらえます。

Q. 黒字なのに資金繰りが悪化するのはなぜですか? A. 利益と現金の動きが一致しないためです。売掛金の回収が遅れる、在庫に現金が眠る、元金返済が利益を上回る。こうした場合、黒字でも手元の現金は減っていきます。原因の型を見分けることが、手当ての第一歩です。

編集部コメント

記事を読み返して印象に残ったのは、藤本氏が口座残高50万円という状況を、メンバーにそのまま話した事実でした。数字を隠さず伝えたことが、7か月の無給を共に働く仲間を残しました。

資金繰りの悪化は、数字の問題であると同時に、誰と一緒に越えるかの問題でもある。私たちは、取材を続けるなかでそう考えるようになりました。苦しい局面の判断や、それを越えた経験を言葉にしておきたい経営者の方がいらっしゃれば、その声をぜひお聞かせください。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、経営者の方々への取材を重ねている。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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