「ホラ吹き」でちょうどいい——有言実行を仕組みにする経営の話
先日、経営実践研究会の講演で聞いた一言が、ずっと頭に残っている。
「未来を語る人は、全員ホラ吹きだ。それを実現すればいいだけの話。」
会場は笑いに包まれていたけれど、コントリとしてこの話を聞いていると、経営そのものの本質を突いているように思えた。
中小企業の経営者と向き合う仕事を続けていると、似たような場面に何度も出くわす。
「うちは将来こうなりたい」と語る経営者が、周囲から「現実的じゃない」と評される瞬間だ。
「無理でしょう」と言われた数だけ、事業は前に進んできた
コントリという会社も、最初はほとんどの人から懐疑的に見られていた。
無料でインタビューをする、と決めたとき。1社ずつ丁寧に向き合う、と決めたとき。拡散よりも出会いの質を選ぶ、と決めたとき。
どれも、事業として「筋が悪い」と言われても不思議ではない選択だった。実際、そう言われたこともある。
それでも今、100社を超える経営者と関わる中で分かったのは、語った未来と現実の距離を埋める作業こそが、経営という営みの本質そのものだということだった。
語らなければ、距離すら測れない。ゼロと未定義の違い、というべきか。
経営者インタビューという仕事をしていると、この違いがよく見えてくる。数字だけを追う経営者と、まだ形になっていない未来をあえて言葉にする経営者とでは、話を聞いたときの熱量がまるで違う。
前者は正確だ。だが、聞いている側の心はあまり動かない。後者は、根拠が薄いことも多い。それでも、なぜか応援したくなる。
未来を語るという行為には、聞き手を巻き込む力がある。コントリが経営者インタビューにこだわっているのは、この巻き込む力こそが、事業を前に進める燃料になると考えているからだ。
ホラは、公言した瞬間に負債になる
会計の話ではないけれど、経営者が公の場で語った言葉には、負債に近い性質があると思っている。
口にした瞬間、それは「まだ実現していない約束」として、自分の中に居座り続ける。
言葉は、発した瞬間から返済義務のある約束になる。
だから、多くの経営者は無意識に言葉を選ぶことを避けたがる。実現できなかったときの恥ずかしさより、そもそも語らないことのほうが安全に見えるからだ。
けれど、負債を抱えない経営に、成長はほとんど起きない。借りたものを返す過程で、事業は鍛えられていく。ホラも同じで、語った言葉を実現しようとする過程で、組織も本人も変わっていく。
金融の負債と違うのは、返済の期限が誰にも決められない、という点だ。半年で返せることもあれば、五年かかることもある。それでも、抱えている限りは、返そうとする力が働き続ける。
無借金経営という言葉があるように、無言実行という選択肢もある。何も語らず、静かに実現してから発表する経営者もいる。それも一つのやり方だと思う。ただ、コントリが選んでいるのは、先に語ってしまうやり方だ。負債を背負ってでも、周囲を巻き込みながら前に進みたいと思っている。
経営者の言葉が軽くなる理由
もう一つ、講演を聞きながら考えたことがある。
経営者の言葉が軽く受け止められてしまうのは、話し方の問題ではなく、発信の設計が整っていないことが大きいと考えている。
思いつきで語る未来と、繰り返し丁寧に語り続けられる未来では、聞き手にどれだけ伝わるかがまるで違う。一度きりの威勢のいい発言は、右から左に流れていく。だが、同じ想いを形を変えながら何度も届け続けると、伝わる実感が少しずつ積み上がっていく。
コントリが経営者インタビューという事業を続けているのは、ここに理由がある。
一度語って終わりにするのではなく、継続して語れる場をつくること。それが、ホラを現実に変えるための土台になると考えているからだ。
取材の場で、経営者が自分の言葉で未来を語り出す瞬間がある。最初はぎこちなくても、話しているうちにだんだん輪郭がはっきりしてくる。その変化を何度も見てきた。
言葉は、一度で完成しない。語って、聞き返されて、また語り直すという往復の中で、少しずつ研ぎ澄まされていく。経営者本人が一人で頭の中だけで練っていても、この研ぎ澄まし方にはなかなか辿り着けないんです。
コントリが「有言実行」を発信設計に落とし込む理由
正直に言うと、コントリ自身も、まだ実現していない未来をいくつも語っている最中の会社だ。
「想いを伝えることが、未来をつくる」というミッションも、掲げた時点では壮大すぎるくらいの言葉だった。
想いは、語り続けなければ届かない。一度の発信で伝わることは、ほとんどない。だからこそ、経営者インタビューという場を無料で開き、ハッシンラボという発信の仕組みを整えてきた。
継続的に語れる仕組みがなければ、どんなに立派な未来像も、単発のホラで終わってしまう。
発信を仕組みに変えることは、経営者が語った言葉に対して、自分自身で返済のスケジュールを組むようなものだと思っている。
ウェブサイトを立ち上げて満足してしまう経営者を、これまで何人も見てきた。ウェブサイトはあくまで器にすぎない。器の中身を、語り続ける行為で満たしていかなければ、器はいずれ空っぽのまま忘れられてしまう。
実現する力は、語る力とセットでしか育たない
未来を語る力と、それを実現する力は、別々のものだと思われがちだ。
けれど、コントリとして100社を超える経営者と接してきた実感で言うと、この二つは表裏一体になっている。
語ることをやめた経営者は、実現するための行動量も落ちていく。逆に、語り続ける経営者は、自然と行動が積み上がっていく。
信頼というのは、語った言葉と実際の行動の一致度から生まれるものなんだと思う。一度のホラで終わらせず、積み重ねていく先にしか、信頼は育たない。経営者自身の想いも、聞き手からの信頼も、根っこは同じところにあるんだと感じている。
うまくいく保証なんて、どこにもない。それでも語り続ける経営者のもとには、なぜか人が集まってくる。取材を通じてそういう場面を何度も見てきたから、これは偶然ではないと思っている。
未来を語ることと、それを実現する行動は、切り離して考えられがちだ。だが実際には、語ることそのものが、行動の一部なんです。語った瞬間から、もう後戻りできない道を歩き始めている。
コントリという会社も、まだ語っている途中の未来がいくつもある。それをどう実現するかは、これから先の話だ。ただ、語ることをやめるつもりはない。
コントリは、経営者の想いが「届く」その先まで、一緒に伴走していきたいと思っています。

