コラム

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宣伝広告費0円で伸びた経営者、122人中6人いた

宣伝広告費0円で伸びた経営者、122人中6人いた

広告費をかけずに伸びている会社と聞くと、よほど特別な才能や、強力な口コミの仕組みを最初から持っている会社を想像するかもしれない。取材を重ねてきたコントリ編集部も、正直なところ似たイメージを持っていた。

コントリがこれまで掲載した経営者インタビュー122本を、最初の1本目から最後まで読み返した。「広告費をかけていない」「口コミ・紹介だけで顧客が集まっている」と本人が明言していた会社を数え直したところ、該当したのは6社だった。122本のうち6本、割合にすればおよそ20本に1本という頻度である。

この記事では、まず何を基準に6社を数えたのかを説明したうえで、6社それぞれの業種・実績・発言を一覧と本文で紹介する。そのうえで、業種も規模もばらばらな6社に共通していた点を最後にまとめる。

特別な才能の有無を確かめる記事ではなく、実際に何社がその選択をしていたかを数えた記事として読んでもらえればと思う。

122本をどう数えたか

対象と判定基準の絞り込み方

数える基準は一つ。本人が「広告費をかけていない」「口コミ・紹介だけで顧客が集まっている」と、自分の言葉で明言しているかどうかだけである。

対象は、コントリが公開してきた経営者インタビュー記事122本すべてである。この中から、該当する趣旨が語られている記事だけを抽出した。「広告費をかけていない」「宣伝広告費ゼロ」「口コミ・紹介だけで顧客が集まっている」――こうした言い回しが、本人の発言として明確に出てくる記事に絞り込んでいる。

単に「広告に力を入れていない」「広告費を減らした」という程度の記述は対象に含めていない。あくまで、ゼロに近い水準であることや、紹介・口コミが顧客獲得の中心であることを、本人がインタビュー内で明言しているケースに絞っている。

一件ずつ手作業で判定する工程

数え方自体は単純である。122本の記事を一本ずつ開き、広告費や集客手段に言及している箇所を探し、そこで語られている内容が上記の基準を満たしているかどうかを、その都度判定していく。

判定に迷う記事があれば、前後の文脈まで読み直し、本人がどの程度はっきりと言い切っているかを確認したうえで、含めるか除外するかを決めた。特別な集計ツールを使ったわけではなく、記事を読み込みながら一件ずつ手作業で数えている。

実際には、「口コミも大切にしている」「紹介での問い合わせも多い」といった程度の表現をしている記事は、6社以外にもあった。しかし今回は、そうした緩やかな表現までは含めていない。あくまで「広告費をかけていない」「口コミ・紹介だけで顧客が集まっている」という趣旨を、本人が明言している記事だけを厳密に対象とした。

厳格な基準で残った6社という結果

基準を緩めれば該当数は増えたはずだが、それでは何を数えたのかが曖昧になる。基準を厳格にしたうえでの6社、という数字である。

この基準で読み直した結果、該当したのは6社だった。業種は動画制作、整体・コンディショニング、PR支援、自動車整備、人材紹介、奨学金相談と、共通点を探すのが難しいほど分散している。従業員数や創業年もそれぞれ異なり、6社を一つの型に当てはめることは難しい。

それでも6社とも、広告費に頼らずに事業を伸ばしてきたという一点だけは共通していた。なお、この6社という数字は、コントリが取材した企業数の多さを示すためのものではない。122本の記事を対象に、特定の発言を実際に数えた結果としての数字である。

広告費ゼロを明言した3社

6社のうち3社は、広告費が実質的にゼロであることを、具体的な数字や割合とともに語っていた。まずはこの3社を紹介する。

宣伝広告費ゼロで累計売上2億円

株式会社感動ムービーの伊藤大輔氏は、宣伝広告費ゼロで累計売上2億円を達成したと語っている。売上は単発ではなく累計としての数字であり、宣伝広告費という科目そのものがゼロの状態を保ちながら、この金額まで積み上げてきたことになる。経営者の人生をストーリー動画として届けるという、事業内容自体が特殊な会社である。広告よりも口コミや紹介による認知の広がりが、売上に直結してきたことがうかがえる発言だ。

99%が紹介・口コミという信念

白金コンディショニングセンターの田口昌宏氏は、「99%が紹介・口コミで成り立つ」と述べている。残り1%がどこから来ているかは語られていない。だが、ほぼすべてが紹介・口コミという水準であることは、既存の顧客との関係が継続的に新しい顧客を連れてきていることを示している。田口氏はこの状態について、単に広告費を削減するためではなく、信念に基づいた戦略だと説明している。コスト削減の結果ではなく、意図した選択であることを強調している点が特徴的である。

営業担当者ゼロで顧客が集まる仕組み

株式会社LITAの笹木郁乃氏は、「営業担当者は一人もおらず…メディア露出と口コミのみで集まります」と語っている。同社はPR支援(テレビや雑誌に取り上げてもらうための広報活動の支援)を事業としている。他社の露出戦略を支援する立場の会社が、自社の顧客獲得についても同じ考え方を実践している点が興味深い。営業担当者がゼロという体制で顧客が集まり続けている。メディア露出と口コミ、二つの経路だけで営業組織の代わりを果たしていることになる。

紹介・口コミだけで回る3社

残る3社は、広告費という言葉そのものよりも、紹介や口コミが顧客・採用のほぼすべてを占めているという実態を語っていた。

Google口コミ110件超の整備工場

橘モータースの橘徹氏は、Google口コミが110件を超え、評価は4.8となっている。整備工場という、派手な広告展開とは縁遠い業種で、これだけの口コミ件数と評価を積み上げてきたこと自体が、日々の対応の積み重ねを裏づける数字と言える。5点満点中4.8という評価は、110件を超える件数のなかでほとんどの顧客が高い評価をつけていることを意味する。一部の熱心な顧客だけでなく、幅広い顧客からの信頼が反映された数字と見ることができる。

紹介・口コミがすべてを占める2社

ミカタカンパニー株式会社の三宅早菜恵氏は、「求人広告は一切出していません。全部ご紹介です」と語っている。三宅氏の発言で特徴的なのは、顧客獲得だけでなく採用まで100%が紹介だという点で、6社の中でもこの徹底ぶりは際立っている。人材紹介という事業の性質上、顧客企業からの紹介と働き手側からの紹介、両方が重なって初めて成立する状態である。片方だけが紹介中心という会社とは、一段階違う徹底ぶりと言える。

奨学金バンクの大野氏は、「口コミで自然に広がっています」と述べている。他の5社に比べると、意図して口コミを設計したというより、事業の性質上、相談者同士のつながりの中で自然に紹介が生まれてきたという語り口になっている。奨学金という個人的な相談ごとであるからこそ、実際に利用した人の声が同じ悩みを抱える人に届きやすいという側面もありそうだ。

6社の実績と特徴を一覧で比較

以上6社の実績・特徴を一覧にまとめる。

会社実績・特徴
株式会社感動ムービー宣伝広告費ゼロで累計売上2億円
白金コンディショニングセンター99%が紹介・口コミ
株式会社LITA営業担当者ゼロ、メディア露出と口コミのみ
橘モータースGoogle口コミ110件超、評価4.8
ミカタカンパニー株式会社求人広告ゼロ、顧客・採用とも100%紹介
奨学金バンク口コミで自然に拡大
伊藤大輔氏

株式会社感動ムービー

田口昌宏氏

白金コンディショニングセンター

笹木郁乃氏

株式会社LITA

橘徹氏

橘モータース

三宅早菜恵氏

ミカタカンパニー株式会社

大野氏

奨学金バンク

6社に共通していたこと

業種も規模も異なる6社を並べたとき、共通点は発言の内容そのものより、その語り方にあった。数字ではなく、姿勢の共通点。

意図して選んだ状態という語り口

6社とも、広告費をかけていないことを弱みや例外として語っていなかった。むしろ田口氏は「信念に基づいた戦略」と位置づけ、三宅氏は採用まで含めて紹介中心であることを明言していた。意図的に選んだ状態として語られている点が共通している。偶然、広告費がゼロになったわけではない。目の前の顧客や取引先との関係を丁寧に積み重ねた結果として、広告に頼らない状態にたどり着いたという語り口が、6社に共通していた。日々の対応の積み重ねが、そのまま次の顧客を連れてくる。家族や友人に「あの店、良かったよ」と勧めるのと同じ感覚が、6社それぞれの土台にあるとも言えそうだ。

6社の発言を並べると、二つの語り口があることにも気づく。感動ムービー、白金コンディショニングセンター、LITA、ミカタカンパニーの4社は、広告費ゼロや紹介100%という状態を、自ら選んだ戦略として明確に説明していた。一方、橘モータースと奨学金バンクの2社は、狙って作ったというより、日々の対応や事業の性質のなかで自然に紹介が積み重なってきたという語り口だった。狙って選んだのか、結果としてそうなったのかという違いはあるが、どちらも広告費に頼らない状態を否定的には語っていない。

業種と規模を問わない広がり

もう一つの共通点は、業種の幅広さ。動画制作、整体、PR支援、自動車整備、人材紹介、奨学金相談という6業種は、顧客との接点の作り方も口コミが広がる速度もそれぞれ異なる。それでも6社とも同じ結論にたどり着いている。広告費ゼロという状態が、特定の業種だけに許された特殊なものではないことを示している。

規模の面でも、6社は大企業ではない。いずれも経営者自身がインタビューの中で自社の状態を具体的な数字や言葉で語れる規模の会社であり、広告費をかけない選択は、大きな組織だからこそできることではない。経営者自身の判断が事業に直接反映されやすい規模の会社でも実践されていることがうかがえる。

6社という数字が示す意味

122本という母数のなかで6社という数字は少なく見えるかもしれない。だが業種と規模の幅を踏まえると、この選択が一部の特殊な会社に限られたものではないことを裏づけている。6社に共通していたのは、「目の前の相手との関わりを大切にする」という姿勢だ。これは、コントリが大切にしているCommunication × Contributionという考え方とも重なる部分がある。丁寧なコミュニケーションの積み重ねが、相手への貢献につながっていく――そういう発想である。

まとめ

122本中6社に共通していたこと

数え直してわかったポイントは次の3つだ。
  • 広告費をかけない代わりに、目の前の関係を丁寧に積み重ねている
  • 業種・規模はバラバラ
  • 特別な才能ではなく、再現可能な選択の一つ

編集部コメント

122本を数え直す作業を実際に行ったのは私だが、作業の途中で意外だったのは、「広告費ゼロ」という言葉が思ったより頻繁には出てこなかったことだ。122本という本数からすると、もっと多くの経営者がこの種の発言をしていてもおかしくないと予想していた。だが実際に本文を一本ずつ読み返して基準に照らすと、明確に該当したのは6社にとどまった。

数える作業そのものにも、想像していたより手間がかかった。「口コミも多い」という一文だけで判断してしまうと該当数はすぐに増えてしまう。そのため、本人が広告費そのものについて明言しているか、口コミ・紹介が中心だと言い切っているかを、一本ずつ読み直して確認する必要があった。基準を先に固定してから数え始めたつもりでも、境界線上の記事に当たるたびに、含めるかどうかを見直す場面が何度かあった。

もう一つ、私が集計中に気づいたのは、該当した6社の発言が、いずれも聞かれて答えたというより、自分から進んで語っている調子だったことだ。田口氏の「信念に基づいた戦略」という言葉づかいも、三宅氏の「全部ご紹介です」という言い切り方も同じだ。広告費をかけていないことを隠すのではなく、むしろ積極的に説明しようとする姿勢が共通していた。この点は、あらかじめ狙って探していたものではなく、122本を読み返す中で後から気づいた共通点である。

今回の6社という数字は、実際に122本を読み返してみるまで、私自身も見当がつかなかった数字だ。テーマが変われば該当する会社も本数も変わるはずだという予感はあったが、それが具体的に何社になるかは、数え終えるまでわからなかった。

今回の集計は、コントリが取材した122社という母数の中で、ある一つの発言パターンを数えた結果にすぎない。それでも、業種も規模も異なる6社が同じ選択をしていたという事実は、広告費のかけ方に迷っている経営者にとって一つの参考材料になるはずだと考えている。もし自社の顧客獲得の内訳を数字で振り返ったことがなければ、そこから始められるはずだ。まずは直近の新規顧客のうち、広告経由と紹介・口コミ経由がどれくらいの比率になっているかを数えてみる。

私自身は集計の担当者という立場でこの122本を読み返した。読み終えたあとに残ったのは、6社という数字そのものより、6社の語り方の共通点のほうだった。数字だけを見れば122本中6社という小さな割合だが、6社は異なる業種でそれぞれ独立にたどり着いた選択である。この122本に記事が積み重なっていくなかで、同じ発言をする会社がどう増えていくのかも、引き続き数えていきたい。

飯塚昭博

この記事の著者

飯塚 昭博

Akihiro Iitsuka

コントリ株式会社 代表取締役

青山学院大学卒業後、自動車会社にて年間180億円規模の設備調達を担当。中小企業経営者の想いに触れる中でその価値を伝えることに使命を感じ、2023年独立。経営者インタビューメディア「コントリ」を運営し、100社以上の経営者を取材。SEO・AI活用・発信設計を通じて中小企業の「伝わる発信」を支援している。

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